異世界妖魔大戦〜転生者は戦争に備え改革を実行し、戦勝の為に身を投ずる〜

金華高乃

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終章 人類諸国の英雄と終焉の堕天戦乙女

第6話 バケモノと化したパラセーラとの戦い

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・・6・・
 パラセーラ。
 以前あの人と二回目の接触で戦闘の時にいた、妖魔帝国においてはリシュカの片腕と知られている女だ。
 パラセーラについて僕は捕虜等から得た程度しか個人情報を知らなくて、接触したのもあの戦闘の一回だけ。記憶に残っていたのは戦闘においてリイナが彼女の片腕を飛ばし、その際にあの人が放った『駒』という冷たい言葉を覚えていたからこそだった。
 とはいえまさかそのパラセーラが現れるとは思わなかった。腕が飛んだのだから負傷兵扱いで後送されていたと思ったけれど……。
 まあいい。今は原因や理由を探すより目の前のバケモノに集中しないと。中身が彼女と判明した以上、厄介って単語じゃ片付かなくなったわけだし。
 このままじゃエイジスの第二解放を使わざるを得なくなる。だけど、第二解放は活動限界が第一解放に比べて大幅に短くなる。既に第一解放を行っているから最大値よりもっと短くなるだろう。さすがに無いとは信じたいけどさらなる攻撃の対処も頭に入れておかないといけないから……。

『司令部よりロイヤル1。応答可能ですか』

『知っておる。あと二分半じゃ』

『素早い対応感謝します。経緯は不明ですがバケモノの正体はリシュカの片腕。並大抵の兵士では対応不可です』

『あいわかった。実朝を連れてなるべく飛ばす。待っておれ、すぐに駆けつける』

『了解しました。お願いします』

 連絡先はココノエ陛下だ。エイジスを中継して思念通話をリンクさせた。
 さて、二分半か。長い二分半になりそうだ。
 怨嗟交じりの咆哮をした、バケモノと化したパラセーラとの睨み合いは終わりを告げた。

「ユルザナイユルザナイユルザナイ!!」

目標捕捉ロックオン。『十六重聖光弾ヘキサデカ・ホーリーバレット』」

「不遜の輩を焼き尽くせ。『八重炎弾オクトナリー・ファイアバレット』」

「氷の槍は、討つべき敵を凍てつかせ。『十六重氷槍弾ヘキサデカ・アイスランス』」

 エイジス、僕、リイナの順に突っ込んでくるバケモノの衝撃力を減じさせる為に多重攻撃を行う。

『ダアァァアアガァァアア!!!!』

「あれだけの攻撃でも突っ込んでくるのか!  エイジス!」

「任せてくださいマスター!」

 多少のダメージは通ってスピードが落ちたとはいえ、まだ突撃してくるパラセーラの拳による攻撃をエイジスは受け止める。

「ゾゴヲドゲェェェ!!」

「させません」

 力任せだけではない、明らかな技術を感じる一撃をエイジスは受け流し剣戟を加えていく。でも決定打には至らない。
 僕やリイナだけじゃなく、アレン大佐に選抜射手達もピンポイントに射撃や法撃を加えるもこれすら回避するか、高い防御力を活かして攻撃を食らっても隙が生まれない。
 そこでエイジスは方針転換をする。

武装変更ウェポンチェンジ。双剣発現」

 エイジスは右手にも片手剣を発現させ、双剣へと武装を変更。一気に手数を増やす。
 さすがのパラセーラもこの猛攻全てを躱すことは出来ず、若干ずつながらもダメージを受けていく。
 とはいえ向こうパラセーラもやられっぱなしではないようで、驚くべき手段に出る。
 双剣による連撃を仰け反る形で寸前で回避した上に、身体を浮かせた蹴りあげ動作を行ったんだ。

「だァァァァァ!!!!」

「甘い。その程度見切れま、なっ?!」

 さらに直後、身体が宙に浮いた状態から回し蹴りを行う。ソズダーニアの巨体とは思えない動きだ。
 さすがにエイジスもここまで読めてはおらず、攻撃態勢を解くけれど回避が間に合わない。
 そのタイミングで、最高の援軍が現れた。

「敵は目の前だけではないのじゃがのぉ!!」

「陛下!!」

「ドゥァ!?!?   ガアオァァア!!」

 空中からソズダーニアを蹴っ飛ばしたのは人型に変化をしたココノエ陛下。落下エネルギーをモロに食らったバケモノは派手に吹っ飛んでいく。

「ふん。バケモノ風情が小賢しい真似をしおって。じゃが、終いじゃよ。実朝」

「御意」

 ココノエ陛下は一瞬だけこちらを向いて頷くと、相手が立ち上がるのを待たず追撃を加えに向こう。
 が、しかし。

「『ロズド・グラヴィディ』ィィィ!!!!」

「陛下!!   危険です!!」

「ちぃ!!   復帰が早いの!!」

 倒れたまま呪文を詠唱したソズダーニアの『ロスト・グラビティ』が危うくココノエ陛下に直撃しそうになり、陛下と実朝が急遽交代して退避する。

「とはいえ、妾の攻撃は効いておろう。いかに攻撃に耐えうるバケモノとはいえ、タダでは済んでおらんはずじゃ」

「陛下、助かりました。仰る通り、相当ダメージを受けているようです」

「数百メーラからの蹴りじゃからの。が、立ち上がろうとしている辺り、やはりしぶといようじゃが」

「奴の中身はパラセーラ。ただの素体ではなく、リシュカの片腕です。以前の戦闘でリイナが片腕を飛ばして後方送りにしたはずですが……」

「むぅ、ややこしい相手なのは理解した。ま、理由を探るのは後じゃ。ヤツも自爆するとなると、警戒はせねばな。ちなみにじゃがアカツキ、ソズダーニアの自爆までの時間は何秒じゃった?」

「報告ではまちまちですが、二型なら約二〇秒。しかしアレは三型なのでデータがまだ……」

「ならば確実に二〇秒より短ろう。自爆を許さず殺すか、自爆するならば爆ぜる前までに対処せねばの」

「はっ。はい。ですので全員で総攻撃と致しましょう」

「うむ」

「やるよ、エイジス、リイナ」

「ええ」

「サー、マスター」

「アレン大佐、後方援護は任せた」

「はっ!」

 アレン大佐は立ち上がろうとするソズダーニアに妨害目的で射撃を行いながら返答。リイナとエイジスは剣を構え、僕も狙いをヤツに。
 ココノエ陛下の攻撃でかなりの傷を負ったのか、ようやく立ち上がる。

「攻撃再開!!」

 僕の声に、まずエイジスとリイナが遠距離法撃。ココノエ陛下と実朝も皇国式術式の法撃を行う。

「ゴァァァァァ!!!!   ゴンナドノデェェエ!!」

「ケリをつけるよ」

「サー」

「了解したわ」

「うむ」

「御意に!」

 僕も法撃を行った後に、全員でこの戦いを終わらせる為に接近戦へ。バケモノに先程までの余裕は無くなっている。今なら!!

「死ねぃ、バケモノが。抜刀、一閃」

「抜刀、斬る」

「ギィァアアアァァ!!!!」

 最初に攻撃を行ったのはココノエ陛下と実朝。実朝がソズダーニアの左脚の腱を斬り体勢を崩させ、すかさず陛下が右腕を飛ばす。 悲鳴を上げるバケモノ。形勢逆転は明らかだった。

「断罪開始」

「ガァァァァァァ!!」

 続いてエイジス。
 脚を地に着けたソズダーニアに対してもう片方の脚を斬り飛ばす。一気に行動する力を奪われたバケモノ。これで終いだ。
 そして最後に僕とリイナ。
 僕は左を、リイナは右へ。
 目標は頚部けいぶ。大量出血による行動不能を狙う一撃。自爆される訳にはいかないから、既に先の攻撃を終えたエイジスは念の為にと攻撃準備を終えている。三型の自爆時間が分からない以上、エイジスは自己判断ですぐに仕留められるようにしていた。例え僕とリイナの攻撃でも死ななければ、五秒もあれば倒せるくらいに。

「終わりだよ、パラセーラ」

 風属性を最大出力まで纏わせた、『風斬』による一撃。
 直後、リイナが必殺の斬撃を放とうとする。
 それは従来中距離から遠距離攻撃である『アブソリュート』、だが今回は違う。
 先までの戦闘から『アブソリュート・ソロ』『アブソリュート・デュオ』でも即死に至らない可能性があるからと選んだ、必殺の一撃。
 その名は。

「凍てつき、果てなさい。『アブソリュート・ゼロ』」

 『アブソリュート・ゼロ』。
 アブソリュートの出力をゼロ距離で敵に当てることによる、リイナの新技。
 それは確かにバケモノを、パラセーラを貫いた。
 バケモノは凍りついていき、リイナが細剣を引き抜くと彫刻のようになっていった。

「終わった、ね」

「ええ……。流石に、疲れたわ……」

「お疲れ様、リイナ」

「旦那様もね」

 ソズダーニアからやや離れた所で、僕とリイナは互いの健闘を称え合う。
 周りからは歓声が広がり、エイジスもほっとした様子で僕の隣にやってきた。
 エイジスにも、お疲れ様。
 と、そう声を掛けようとした時だった。

「マスター!!   目標再活性化!!   氷が破壊されます!!」

「はぁ!?!?」

「どうして?!   アブソリュートで確実に仕留めたはずなのに!!」

「不明!   同時に目標に高出力魔力反応!!   自爆です!!   想定、あと五秒!!」

「エイジス!!」

「魔法障壁最大出力展開!!」

「ジネェェェエエェェェ!!!!!!   アガヅキ、リイナァァァァァァ!!!!」

 完全に氷の呪縛から解かれたパラセーラは、残された片腕に最後の力を振り絞って地面を叩き、突っ込んでくる。
 爆発まであと三秒。
 僕達がバックステップを行ったとしても、あの速さだと爆発する頃には奴との距離は約一〇メーラと少し。致死距離だ。
 エイジスが魔法障壁を急速展開するも、あと三秒じゃ合計八枚まで展開するのがやっと。
 あと二秒。
 奴との距離は約一八メーラ。
 アレン大佐達が魔法銃による各個射撃を行う。
 だが止まらない。僕達はさらに距離を取ろうとするけど焼け石に水だ。二型ですらこの距離だと死亡率が高いんだから。
 あと一秒。
 後方からココノエ陛下の詠唱完了が聞こえる。が、もう間に合わない。
 ゼロ秒。
 ソズダーニアは自爆。
 凄まじい爆風はすぐに届くだろう。
 エイジスが前に立ってくれている。僕とリイナも可能な限り魔法障壁を展開したけれど、どれだけ意味があるか。
 まさか。まさか、こんな所で終わるのか?
 終戦も、あと少しなのに?
 僕とリイナは顔を見合わせる。
 爆風が届く直前。
 互いの左手が強く、強く光り輝いた。
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