異世界妖魔大戦〜転生者は戦争に備え改革を実行し、戦勝の為に身を投ずる〜

金華高乃

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終章 人類諸国の英雄と終焉の堕天戦乙女

第1話 ホルソフの戦いを前に

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・・1・・
 遂に人類諸国統合軍は最終決戦に向けて軍を動かした。
 アカツキ達が作戦の最終確認会議を行った翌日には予備兵力を除く統合軍四個軍、三二〇〇〇〇がムィトーラウを進発。
約一三〇キーラ離れたホルソフへと向かう。
 ホルソフには扇形の半包囲を行うため、途中統合軍は三つに軍勢を分ける。作戦会議でも言及のあった、ホルソフを南北から攻撃する各一個軍と正面から対峙する二個軍だ。このうち、帝国軍の部隊展開からして最も激しくなる正面側にはアカツキやアレゼルがいた。二人がいることで、当然ながら能力者化師団とエルフ中心の師団等はこの正面側に多くが展開していた。
 統合軍は順調に進軍を続けた。途中反乱軍が設置した魔石地雷地帯が複数存在していたが、判明次第すぐに砲兵隊による面砲撃や大隊以上の魔法攻撃という、数が有利かつ物資に余裕があるからこそ可能な強引な魔石爆破でこれを対処した。さらに道中の川に架かる橋も落橋させられていたが、これも工兵隊などですぐに簡易架橋を実施。軽装備の部隊を先行させたうえで重砲が輸送可能な耐久性の高い橋を建設していった。
 このように統合軍は途中で反乱軍の妨害を受け、時には少数の攪乱部隊を戦闘になることはあったが大規模な戦闘は発生しなかった。反乱軍はホルソフ周辺に兵力を集中せざるを得ず、その上で敵と化した帝国軍と相対しにらみ合いをしなければならなくなったからである。
 進軍が当初の予定よりやや遅れた統合軍であったが、五の月三の日までにはホルソフから西約三五キーラまで到達。五の日までに当初の計画通り扇形の半包囲をおおよそ完成させていた。
 理由はある程度想定できるとはいえあまり反撃のなかったことに若干の不気味さを感じる統合軍と、いかに反乱軍とはいえ元々は友軍だからと戦闘まではしたくない帝国軍。そして、郊外で大規模野戦を行うのではなくあえて市街戦に持ち込ませようとしか思えない陣容の反乱軍。
 それぞれの思惑が混じりながら、統合軍は攻勢前準備砲撃を行っていた。


・・Φ・・
5の月6の日
午後3時過ぎ
ホルソフより西約45キーラ
統合軍南部方面軍・野戦司令部

「――以上のように、各方面からの報告を総合しますと反乱軍指揮官リシュカの厳命もあってか、攻勢準備砲撃を行いつつ一部部隊を用いた敵軍つり出しの攻撃を行いましたが、反乱軍は無闇矢鱈な反撃を行ってきませんでした。また、砲撃後に航空観測は都度行っておりますが期待していたほどの打撃を与えられないように思います。恐らくですが、ここ二日の砲撃では不足の可能性がございます」

「むう……。反乱を起こすなどというトチ狂った判断をしたとはいえ、戦術眼までは曇っていないか……。ヤケになっていなければ、郊外での決戦など図ってこんだろうな。報告ご苦労」

 ランメル大将は作戦参謀長からの報告を受けて渋い顔をする。統合軍が行っている攻勢準備砲撃と、敵誘引と戦力減衰を目的とした半包囲円を狭めたうえでの作戦に反乱軍は引っかからなかったからだ。

「最後の悪あがきにしてはタチが悪いよねえ。元々郊外の野戦なんて期待していなかったけれど、こうも引きこもられちゃ市街戦は確定だね。それも相手はあのリシュカ。泥沼で済んでほしいところだけど」

「恐らく一筋縄ではいかないかと思われます。帝国軍捕虜からの情報では、リシュカの市街戦に対する理解度と戦術的能力は帝国軍でも一線を画しているとのこと。我々の勝利は違いないでしょうが、予想を上回る戦死傷者は覚悟した方がいいかと。私が育てた能力者化師団や直轄のアレン大佐の大隊は市街戦の訓練をほかの統合軍に比べかなり行っておりますが、それでも、勝利のために相応の代償を払うことは織り込んでおります」

「アカツキくんがそう言うんじゃ、私のとこも気をつけなきゃだね」

「アレゼル大将閣下に提言。アレゼル大将閣下のゴーレムや統合軍全体に配備しているゴーレム搭乗能力者兵部隊は市街戦では身動きが取りづらく敵伏兵や狙撃兵の格好の的になります。航空偵察の報告では、ホルソフの新市街と旧市街共に急造ながら巧みな塹壕とバリケード、狙撃ポイントを確認したとのこと。整然とした新市街地は多少見通しがいいのですが、旧市街では複雑な路地も多いですから随伴歩兵の護衛は必須かと。加えて、搭乗兵は頭上や側面に魔法障壁を重点展開する必要もあるかと」

 エイジスの助言にアレゼル大将はうへぇ、と苦いものを食べたような顔になる。
 市街戦というのはそこらじゅうに障害物があって視界は郊外での戦闘とは比較にならないほど悪くなるのは周知の事実。統合軍も市街戦に対する経験はそれなりに積んできているけれど、相手があの人となると警戒度合いが変わってくる。あの人は僕と同じ転生者で、こと市街戦に関しては正規戦から非正規戦に至るまで現場レベルで数えきれないほど経験を積んできているからだ。いざ市街での戦闘になったら、あの手この手で僕達を苦しめてくるだろう。

「アカツキくん。市街戦で苦労するのは確定として、対応策とかはあるのかな?」

「自分も聞きたいところだな。貴官はここまで我々を導いてきた。奇策でなくともよい。王道でもよい。何かあるか?」

「そうですね……」

 何かあるかと言われても困ったもんだな……。あの人と直接対決になるから色々考えてはいたけれど、大体は進言済みで実行できるように手配までしてある。とはいえ、大将位の二人に言われれば正直に話しながら何かを言うしかないか……。

「正直に申しますと、私が考えうる対抗策のほとんどは作戦立案段階で提言済みです。帝国を通じて、セヴァストゥーポラはリシュカに従うふりをしてこちらに内通し物資の妨害を行う。についてはいまだに確定しておりません。その為にまだ海軍を展開させているのもありますし……。他もしかりです。市街戦になることから無線装置の増備や、指令センターの能力強化。これらを行ったうえでの過去最大級の航空支援と砲撃支援。建物や一区画程度に限定した毒ガスの小規模利用。火炎放射の利用にその他もろもろ。あとは、マーチス元帥にここへお越し頂き切り札として独自魔法を使用、もその一つ。しかし結局は現場の将兵に励んでもらうしか」

「まあ、そうなるか……」

「いくらアカツキくんでも、なんでもは出ないよねえ……」

「ですが一つなら。ただ、効果は期待できませんよ?」

「おお! やはりあるか!」

「なになに?!」

「これはかなり相手が消耗してからになる上に、帝国の協力が必要になるのですが――」

 それから僕は、考えてはいたけれど使えるかどうかは分からなかったので言わなかった作戦ともいえないそれを説明していく。
 すると、意外な反応が返ってきた。

「悪くないんじゃないか? この作戦のみで考えるのならば血は流れない。連中がレオニードが再起してくれていると思っているのなら好都合であるだろう。何より、我々がすることは単純で一つだけだ」

「昔から思ってたけど、やっぱりアカツキくんって敵に嫌がらせをする天才だよね。今聞いた作戦、私すごーく身に覚えがあるんだけど」

「アレゼル大将閣下、それは褒め言葉として受け取っておきますね」

「もちろん褒めてる!!」

「そ、そうですか……。なんにせよ、今私が提案した作戦は終盤に近づくまではこれまでと何ら変わりありません。成功する保証もありません。それでもよろしれければ実行していただければ」

「総司令部に立案しておく。貴官の提言だから通るだろうさ。作戦の内容的にもな」

「あと一つだけ」

「まだあるのか!?」

「いえ、驚かれるほどのものではありません。先ほどの報告を聞いて、準備砲撃を六時間延長していただきたく思っただけであります。どれほど意味があるかはわかりませんが、不足を不足のまま看過したくなかっただけですので」

「相分かった。六時間程度までなら自分の権限でなんとかしよう」

「ありがとうございます。では、明日の正午から攻勢開始ということで」

「であるな。アカツキ中将とアレゼル大将は部隊と能力の性質上、前線に出ることとなる。二人と部下達の武運を祈る」

「はっ! ありがとうございます」

「まっかせて!」

 翌日、僕の提案通り攻勢準備砲撃は六時間の延長がされ正午前まで続くことになった。
 そして正午。ついにホルソフの戦いが始まった。
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