異世界妖魔大戦〜転生者は戦争に備え改革を実行し、戦勝の為に身を投ずる〜

金華高乃

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第25章 帝国皇后クーデターと落日の堕天戦乙女編

第7話 一時停戦協定の成立は最終決戦の序曲

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・・7・・
 第二次妖魔大戦において、最も事態が急転したのは一八四七年の四の月だと言われている。

 サンクティアペテルブルク強襲上陸作戦。
 『L3ロケット』による帝国軍司令部強襲。
 『L4ロケット』による長距離弾道弾攻撃。
 統合軍による大反転攻勢。
 そして、ルシュカによるクーデター。

 当時の文献に目を通してみるとこの月だけでも膨大なページ数になっており、この部分だけで後世の学生達は関連テーマの卒業論文が書けるほどだ。
 しかし、この月に起きたのは今挙げた出来事だけでは無い。
 二一の日以降にもさらなる動きがあったのだ。それが以下の通りである。

【帝国本土における統合軍行動記録。四の月二一の日から二五の日まで】

・二一の日
 この日には南部方面軍本隊約三〇〇〇〇〇がムィトゥーラウへ到着。ただし、総司令部より停止命令が下されている為、事前の予定通りムィトゥーラウ及び周辺の防衛設備構築とここまで大きく前進しており疲労が蓄積していた兵士達への休息を南部方面軍総指揮官ランメル大将が命じる。

・二二の日
 連合王国、法国、連邦、共和国等から帝国提案の一時停戦交渉の許可が下りる。代表団として連合王国軍マーチス元帥や法国大将マルコ等が出席。帝国から提案があった時点で一時停戦交渉における統合軍側が提示する内容の作成は行われているが、本国と連絡を取り合いながら作成が続く。

・二三の日
 サンクティアペテルブルク方面軍と北部方面軍及び妖魔諸種族連合共和国軍が連絡線を確立。この日を持って帝国本土南北双方の沿岸部を一部地域とはいえ統合軍は確保する。

・二四の日
 統合軍側代表団はオチャルフを出発。会談場所はコルロフカから西、ツォルク川西岸にある町のコチャンスカで行うことに。

・二五の日
 統合軍側代表団コチャンスカに到着。帝国軍側代表団は、帝国軍総参謀長・帝国陸軍大臣。この日の夕方より交渉を開始。

・二六の日
 交渉会談がこの日本格的に行われ、事態は急を要する為に翌日二七の日の昼には交渉は纏まる。

 このように、統合軍と帝国軍の今後を決める非常に重要な会談であるにも関わらずかなり短い時間で決まった。
 以下がその内容である。

【統合軍及び帝国軍緊急一時停戦交渉会談の概要】

1,双方の捕虜については後日返還とするが、後述の一時停戦発効後に行える分は随時行うこととする。ただし全面返還には時間を要する為、双方の捕虜に必要な食糧などについては融通をする。特に帝国軍捕虜が多い為、統合軍で不足する分は帝国軍が負担する。

2,1について双方の捕虜の返還金等については後述する事態の終結後に開催する予定の別会談にて決定する。それまでは保留とする。

3,双方が得た武器弾薬など鹵獲品については返還しない。

4,コルロフカはリシュカ・フィブラに関する問題の解決まで人類諸国統合軍による保障占領とする。ただしコルロフカにおける自治については一部その権限は維持する。

5,一時停戦ラインはツォルク川を基準とし、コルロフカはこの一時停戦監視拠点として活用する。ただし対象はムィトゥーラウより北七〇キーラ以北であり、ムィトゥーラウ周辺はこの限りではない。

6,5に関して人類諸国統合軍は一時停戦監視として兵力を配置することが出来る。ただしコルロフカ周辺やムィトゥーラウ周辺を除いてツォルク川西岸までを配置地点とする。また、停戦ラインから東四〇キーラは非武装地帯とする。

7,一時停戦について、反乱者リシュカ・フィブラとその勢力に対する攻撃はこの一時停戦には含まない。また、リシュカ・フィブラが勢力下に置いている地域を人類諸国統合軍が占領した場合、後日開催する予定の会談等で条約が締結されるまで、人類諸国統合軍が該当地域を保障占領とする。

8,反乱者リシュカ・フィブラとの戦闘について、妖魔帝国政府及び妖魔帝国軍は最大限協力する。具体的には、以下の通り。

①反乱者側への兵器類・物資補給の一切を停止。民間物資輸送も必要最低限を除いて禁止。

②反乱者側への情報提供の禁止。

③ホルソフ・セヴァストぅーポラ等の地形図だけでなく機密情報を含むあらゆる情報の提供。反乱者側にいる指揮官クラスの情報の提供。帝都にあるリシュカ・フィブラ所有及び彼女の関係する全ての情報の提供。

④反乱者側へついた将兵に対して、皇后ルシュカの勅令による投降推奨の通達。従わない場合は賊軍扱いとなる旨の通達をすること。

9,人類諸国統合軍占領地域から遠く離れた、具体的には反乱者勢力下北部や東部において妖魔帝国軍は包囲網を構築。万が一反乱者側が攻撃の際は躊躇せず反撃。

10,7に関する戦闘において、該当海域の封鎖及び海路の遮断。また、該当海域において人類諸国統合軍の航行のあらゆる自由を帝国軍は認めること。

11,反乱者リシュカ・フィブラの身柄について、その生死に関わらず帝国法では裁かず、全て人類諸国統合軍側に一任すること。対象は存在そのものが危険である上、生きていれば対象が死ぬまで人類諸国にとって最大級の脅威である為、戦闘の結果殺害したとしても止む無きものとする。

12,以上の条件及び要求を全て帝国側が了承すれば、反乱者リシュカの件が片付き次第、正式な『終戦に関する条約交渉を開始する』密約とする。

13,本会談終了をもって、一時停戦は発効される。効力は反乱者リシュカの件が完了するまでとする。

 一時停戦協定とはいえ、このような条項は帝国側にとって極めて不利な内容であった。
にも関わらず、帝国側は『どのような条件を提示されたとしても、皇后陛下より首を縦に振るように言われている。我々に拒否権は無い。むしろ、現段階で賠償金の前払い等が無い分助かった』と、心情を吐露していたという。
 この時の帝国側の反応について、人類諸国側の英雄が一人であるマーチス元帥の手記にはこう残されていた。

【マーチス元帥の手記】
 『この時の帝国側の反応は意外極まるというのが正直な感想であった。我々統合軍側が提示した条項は一部は国家主権に関わる内容であり、我々が帝国側であれば首肯出来かねるものでもあった。しかし、帝国側は首を縦に振った。どうしてそうしたか、皆目見当もつかない。強いて言うのならば、皇后ルシュカは我々が考えているよりずっと聡明な人物なのかもしれない。皇帝レオニードのお飾りでは無いのは間違いないだろう。このまま戦争を続けたとしても帝国は建て直しに多大な時間を費やす必要があり、それまでに我々統合軍はドエニプラのその先。帝都に迫る地点まで侵攻するつもりであったからだ。とにもかくにも、一時停戦交渉は決したのである。そうなると、唯一の懸案は叛逆のリシュカ・フィブラだけであった』

 なんにせよ、一時停戦協定は結ばれ当日に即時発効された。
 直後、会談開始前から従来作戦の修正計画案が練られていたことから本大戦の最終作戦を人類諸国統合軍総司令部は各部隊へ命令する。
 大戦最後の戦いは、目の前に迫っていた。
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