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第22章 死守せよ、ムィトゥーラウ―オチャルフ絶対防衛線編
第15話 発動する棺桶作戦
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・・15・・
「もう遅いよ。作戦発動。『蓋を閉じろ』」
まず、作戦通り起爆した地雷や爆弾が大爆音を起こしながら通りを塞ぐように倒壊。これでリシュカや駆けつけたオットーと、その後ろにいた部隊を遮断して、彼等を孤立化させる。
それだけじゃない。ラウンドアバウトと大きな広場を兼ねているこの場に、鉄の火も降り注ぐ。
作戦発動と同時に用意していた後方配置の重砲、野砲の砲火類とロケット部隊の投射がリシュカを含めた帝国軍のいた場所に着弾していく。
その砲火は凄まじい。たかだか大隊程度の人員に対しては明らかな過剰火力。本来は師団規模に向けられるそれが襲い掛かる。
「追い討ちをかけろ。総員、前方に向け火力投射。法撃、銃撃、手段は問わない。撃滅せよ」
『了解!!』
重火力だけで終わらせる訳が無い。
僕はここにいる全ての者達に攻撃を命じる。
「マスター、ロック完了」
「私も準備詠唱は終わったわ」
「大隊総員、詠唱完了しました」
エルフ部隊も準備詠唱を終わらせる。
「よし。総員、目標孤立化した部隊」
「マスター、次の重火力投射はもうまもなくです」
「了解。重火力投射着弾と同時に攻撃開始。一射目終了以後は自由攻撃とする。とにかく叩き込め」
砲撃はロケットを中心に途絶えさせない為に断続的に続くけど、次の大きな集中投射を表す音が聞こえてきた。
これを目安にするか。
「総員、攻撃開始」
「サー、マスター。オフェンス、集中投射を開始」
「――『アブソリュート・デュオ』!」
「大隊、攻撃開始!」
「エルフ部隊総員、攻撃始め! 残存魔力は気にせず叩き込んで!」
『はっ!』
これまで散々してやられてきた恨みも込めて、どうせ後は後退するだけだと中級魔法や上級魔法も発動する者もいた。
「エイジス、どう?」
「魔法障壁を全壊させて損害を与えつつありますが、リシュカは健在。何やら罵声が聞こえてきますが」
「何を言っているかはこの音じゃ分からないね。反撃はさすがに、そんな暇無いか」
「これだけ火力を投入してますから。…………動きがありました。リシュカ、オットーと共に後退を開始。一部の兵を引き連れて後退し始めました。瓦礫は、飛び越えましたね」
「あれを飛び越えるんだ……。まあ、やれない事はないか……」
これだけの猛攻を受けつつも、リシュカとオットーや僅かな部隊を離脱させるあたりいかに手練かよく分かる。普通なら纏めて消し飛ばされるからね。
とはいえ、防戦一方に変わりはない。
「追撃はどうされますか?」
「いや、しない。このまま攻撃続行。どうせあそこにいるのはリシュカを逃す為の殿だろうし。あとこちらの余力が乏しい。この状態で追撃して、リシュカやオットー達と戦うのは厳しいし、その前に今目の前にいる相手も殲滅しないといけないなら尚更だよ」
「サー、マスター。攻撃を続行します」
もし僕達に余裕があればリシュカ討伐を主目標として追撃をしただろう。戦況は有利にひっくり返ったのだから。
けど、あいにく今は会戦直後ではなく、連日の誘引で部隊に疲弊している者が多く消耗している状態だ。
僕も残存魔力が四十五パルセントを下回り、リイナも五十パルセントを割った。エイジスの第一解放活動可能時間も余裕は無く、アレゼル大将閣下に至っては手持ちのゴーレムが尽きている。
この状況でそこにいる殿を短時間で潰して追撃し、あの人と戦闘になったところで勝算は無いに等しい。
であれば、次の戦いで勝敗を決した方がいいと僕は判断したんだ。
「エイジス、殿の封殺は出来てる?」
「サー。ほぼ反撃出来ずに次々と討ち取れていますが……、訂正、特攻を仕掛けてきそうです」
「やぶれかぶれなのか、はたまたリシュカに対する忠誠の賜物なのか。だとしても、よくやるよ」
こちらの攻撃の手が若干緩んだ瞬間だった。
ボロボロになっているにも関わらず、帝国軍の兵士達が突撃を敢行してきた。軍服は二種類。断頭大隊の兵士と、近衛師団の兵士。前者がリシュカが連れてきた方で、後者がオットーが連れてきた方だ。
ここに残ったのはリシュカの撤退を支援する為についていった二個小隊を除いたおよそ約三〇〇名程度。
それも先程から始めた僕達の全力攻撃で半数以下になっていた。
「リシュカ閣下、万歳!!」
「全てはリシュカ閣下の為に!!」
「我らが命と引き換えに、閣下は貴様らを殺すのだ!!」
鬼気迫る様子で僕達に向かってくる帝国軍の殿。
全ては閣下の為に、か。
分かる。分かるよ、その気持ちは。僕もかつてのあの人なら、同じ状況になれば同じ行動をしただろうさ。
けど、悪いけど、君達には死んでもらう。
「構わず撃て。敵が白兵戦距離に近付いたら、エイジスは近接戦へ。アレン大佐、余力のある者で同じく近接戦。僕もリイナと共に続く」
「サー、マスター」
「了解しました」
「了解よ、旦那様」
「エルフ部隊は火力支援に。敵は手負いだけど、追い込まれた奴等だ。躊躇せず殺せ」
『了解!!』
形成が逆転し、この場のみとはいえ勝敗が決したも同然になったとしても僕は手を緩めない。
結局、十分かかるかかからないかくらいで殿の部隊は文字通りの壊滅。誰一人として投降せず命を散らしていった。
「終わった、ね」
「肯定。殿部隊は消えました。続けて戦況報告。棺桶の蓋は閉じられ、帝国軍は各所で寸断。統合軍は重火力攻撃の後に孤立した敵部隊を殲滅していっています。作戦は成功です」
「目論見通りいって良かったよ。あの人の戦術眼が曇っていて、助かった」
「一時はどうなるかと思ったけれど、これで棺桶作戦は上手くいったといってもいいわね。けれども、私達の方も」
「出血が多すぎるね……。無事な者も消耗がひどい。エイジス、予定している後方予備部隊は?」
「間もなくこちらに到着します」
「なら引き継いで後退しよう。これ以上、僕達がムィトゥーラウにいる用事はない」
「サー」
(リシュカ・フィブラ。いや、如月中佐。貴女は変わり果ててしまいましたね。ですが。いや、だからこそ、僕は僕の手で貴女を次こそ殺してみせます)
・・Φ・・
アカツキ考案の『ムィトゥーラウの棺桶作戦』は成功した。
統合軍は作戦第一段階から最終段階までに死傷者約四万を越える多くの死者と負傷者を出したものの、見事にムィトゥーラウ中心街へ深入りした帝国軍、それも精鋭中も精鋭の第八軍や第一近衛師団に大打撃を与えた。
特に被害が大きかったのが第一近衛師団だ。
第八軍にしてもそうなのだが、リシュカがアカツキを深追いしたが為に追随するように第一近衛師団は全ての人員が作戦発動地帯に侵入しており、発動時には袋叩きにされている。
結果、第一近衛師団単独だけでも死者約一八〇〇。負傷者約三〇〇〇と戦力の約半数を喪失し再編成を強いられる事となる。
第八軍も統合軍が撤退したからこそムィトゥーラウを奪還できたものの、無視出来ない程に増えた死傷者数によりそこから先へ前進出来るはずもなく、第八軍もまた再編成を瓦礫の街と化したムィトゥーラウで行うことになる。
対して、統合軍はムィトゥーラウを失ったものの元より承知の上。作戦が成功した事と、最も脅威としていた第八軍や第一近衛師団に大打撃を与えた事は大きな戦果であった。
初めての敗北を味わうこととなり、ついに歯車が狂い始めたリシュカ。
ムィトゥーラウを生贄としながらも作戦を成功させたアカツキ。
再び相見えた二人の道には、大きな差が出来つつあった。
「もう遅いよ。作戦発動。『蓋を閉じろ』」
まず、作戦通り起爆した地雷や爆弾が大爆音を起こしながら通りを塞ぐように倒壊。これでリシュカや駆けつけたオットーと、その後ろにいた部隊を遮断して、彼等を孤立化させる。
それだけじゃない。ラウンドアバウトと大きな広場を兼ねているこの場に、鉄の火も降り注ぐ。
作戦発動と同時に用意していた後方配置の重砲、野砲の砲火類とロケット部隊の投射がリシュカを含めた帝国軍のいた場所に着弾していく。
その砲火は凄まじい。たかだか大隊程度の人員に対しては明らかな過剰火力。本来は師団規模に向けられるそれが襲い掛かる。
「追い討ちをかけろ。総員、前方に向け火力投射。法撃、銃撃、手段は問わない。撃滅せよ」
『了解!!』
重火力だけで終わらせる訳が無い。
僕はここにいる全ての者達に攻撃を命じる。
「マスター、ロック完了」
「私も準備詠唱は終わったわ」
「大隊総員、詠唱完了しました」
エルフ部隊も準備詠唱を終わらせる。
「よし。総員、目標孤立化した部隊」
「マスター、次の重火力投射はもうまもなくです」
「了解。重火力投射着弾と同時に攻撃開始。一射目終了以後は自由攻撃とする。とにかく叩き込め」
砲撃はロケットを中心に途絶えさせない為に断続的に続くけど、次の大きな集中投射を表す音が聞こえてきた。
これを目安にするか。
「総員、攻撃開始」
「サー、マスター。オフェンス、集中投射を開始」
「――『アブソリュート・デュオ』!」
「大隊、攻撃開始!」
「エルフ部隊総員、攻撃始め! 残存魔力は気にせず叩き込んで!」
『はっ!』
これまで散々してやられてきた恨みも込めて、どうせ後は後退するだけだと中級魔法や上級魔法も発動する者もいた。
「エイジス、どう?」
「魔法障壁を全壊させて損害を与えつつありますが、リシュカは健在。何やら罵声が聞こえてきますが」
「何を言っているかはこの音じゃ分からないね。反撃はさすがに、そんな暇無いか」
「これだけ火力を投入してますから。…………動きがありました。リシュカ、オットーと共に後退を開始。一部の兵を引き連れて後退し始めました。瓦礫は、飛び越えましたね」
「あれを飛び越えるんだ……。まあ、やれない事はないか……」
これだけの猛攻を受けつつも、リシュカとオットーや僅かな部隊を離脱させるあたりいかに手練かよく分かる。普通なら纏めて消し飛ばされるからね。
とはいえ、防戦一方に変わりはない。
「追撃はどうされますか?」
「いや、しない。このまま攻撃続行。どうせあそこにいるのはリシュカを逃す為の殿だろうし。あとこちらの余力が乏しい。この状態で追撃して、リシュカやオットー達と戦うのは厳しいし、その前に今目の前にいる相手も殲滅しないといけないなら尚更だよ」
「サー、マスター。攻撃を続行します」
もし僕達に余裕があればリシュカ討伐を主目標として追撃をしただろう。戦況は有利にひっくり返ったのだから。
けど、あいにく今は会戦直後ではなく、連日の誘引で部隊に疲弊している者が多く消耗している状態だ。
僕も残存魔力が四十五パルセントを下回り、リイナも五十パルセントを割った。エイジスの第一解放活動可能時間も余裕は無く、アレゼル大将閣下に至っては手持ちのゴーレムが尽きている。
この状況でそこにいる殿を短時間で潰して追撃し、あの人と戦闘になったところで勝算は無いに等しい。
であれば、次の戦いで勝敗を決した方がいいと僕は判断したんだ。
「エイジス、殿の封殺は出来てる?」
「サー。ほぼ反撃出来ずに次々と討ち取れていますが……、訂正、特攻を仕掛けてきそうです」
「やぶれかぶれなのか、はたまたリシュカに対する忠誠の賜物なのか。だとしても、よくやるよ」
こちらの攻撃の手が若干緩んだ瞬間だった。
ボロボロになっているにも関わらず、帝国軍の兵士達が突撃を敢行してきた。軍服は二種類。断頭大隊の兵士と、近衛師団の兵士。前者がリシュカが連れてきた方で、後者がオットーが連れてきた方だ。
ここに残ったのはリシュカの撤退を支援する為についていった二個小隊を除いたおよそ約三〇〇名程度。
それも先程から始めた僕達の全力攻撃で半数以下になっていた。
「リシュカ閣下、万歳!!」
「全てはリシュカ閣下の為に!!」
「我らが命と引き換えに、閣下は貴様らを殺すのだ!!」
鬼気迫る様子で僕達に向かってくる帝国軍の殿。
全ては閣下の為に、か。
分かる。分かるよ、その気持ちは。僕もかつてのあの人なら、同じ状況になれば同じ行動をしただろうさ。
けど、悪いけど、君達には死んでもらう。
「構わず撃て。敵が白兵戦距離に近付いたら、エイジスは近接戦へ。アレン大佐、余力のある者で同じく近接戦。僕もリイナと共に続く」
「サー、マスター」
「了解しました」
「了解よ、旦那様」
「エルフ部隊は火力支援に。敵は手負いだけど、追い込まれた奴等だ。躊躇せず殺せ」
『了解!!』
形成が逆転し、この場のみとはいえ勝敗が決したも同然になったとしても僕は手を緩めない。
結局、十分かかるかかからないかくらいで殿の部隊は文字通りの壊滅。誰一人として投降せず命を散らしていった。
「終わった、ね」
「肯定。殿部隊は消えました。続けて戦況報告。棺桶の蓋は閉じられ、帝国軍は各所で寸断。統合軍は重火力攻撃の後に孤立した敵部隊を殲滅していっています。作戦は成功です」
「目論見通りいって良かったよ。あの人の戦術眼が曇っていて、助かった」
「一時はどうなるかと思ったけれど、これで棺桶作戦は上手くいったといってもいいわね。けれども、私達の方も」
「出血が多すぎるね……。無事な者も消耗がひどい。エイジス、予定している後方予備部隊は?」
「間もなくこちらに到着します」
「なら引き継いで後退しよう。これ以上、僕達がムィトゥーラウにいる用事はない」
「サー」
(リシュカ・フィブラ。いや、如月中佐。貴女は変わり果ててしまいましたね。ですが。いや、だからこそ、僕は僕の手で貴女を次こそ殺してみせます)
・・Φ・・
アカツキ考案の『ムィトゥーラウの棺桶作戦』は成功した。
統合軍は作戦第一段階から最終段階までに死傷者約四万を越える多くの死者と負傷者を出したものの、見事にムィトゥーラウ中心街へ深入りした帝国軍、それも精鋭中も精鋭の第八軍や第一近衛師団に大打撃を与えた。
特に被害が大きかったのが第一近衛師団だ。
第八軍にしてもそうなのだが、リシュカがアカツキを深追いしたが為に追随するように第一近衛師団は全ての人員が作戦発動地帯に侵入しており、発動時には袋叩きにされている。
結果、第一近衛師団単独だけでも死者約一八〇〇。負傷者約三〇〇〇と戦力の約半数を喪失し再編成を強いられる事となる。
第八軍も統合軍が撤退したからこそムィトゥーラウを奪還できたものの、無視出来ない程に増えた死傷者数によりそこから先へ前進出来るはずもなく、第八軍もまた再編成を瓦礫の街と化したムィトゥーラウで行うことになる。
対して、統合軍はムィトゥーラウを失ったものの元より承知の上。作戦が成功した事と、最も脅威としていた第八軍や第一近衛師団に大打撃を与えた事は大きな戦果であった。
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