異世界妖魔大戦〜転生者は戦争に備え改革を実行し、戦勝の為に身を投ずる〜

金華高乃

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第17章 ムィトゥーラウの戦い編

第7話 オディッサへの一時帰還

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 ・・7・・
 結果から先に言うと、僕が第二副司令官を務めていたムィトゥーラウ方面侵攻軍がムィトゥーラウの占領に成功した。四の日に投入した塩素ガスは、市内中心部の地上だけでなく地下にまで立てこもっていた妖魔帝国軍への効果は大きかったんだ。
 僕は魔法があるこの世界では、僕達が塩素ガスに巻き込まれないように風属性魔法を使って防ごうとしていたのと同じく、妖魔帝国軍も同じ手を使ってくると踏んでいたけれど、実際は半分正解で半分不正解だった。
 半分正解とは、案の定風属性魔法を使ってガスを吸わないよう必死の抵抗をしてきた点。いくら初投入の兵器とはいえ、目の前でいきなりバタバタと味方が倒れた事で妖魔帝国軍は一時的に混乱に陥ったけれど、何かの気体によって死傷した事にいち早く気付いたのか、翌日同じように使用したところ、風属性魔法を相手は使ってきた。
 これは占領後に判明したのだけれど、妖魔帝国軍も光龍皇国で類似兵器を使用したらしく、その存在を妖魔帝国ムィトゥーラウ方面軍司令官は投入初日にして見破ったらしい。捕虜にした副官がそう言っていたのだから間違いないだろう。
 僕はこの話を聞いた時に、どうりでオディッサ以降の戦いで想定以上にこちらが苦しむ場面が増えたわけだと改めて痛感する。
 オディッサの戦いでもそうだったけれど、妖魔帝国軍将官クラスの質が高くなっているし年齢も比較的若い者が多かった。これは妖魔帝国中央で改革があった何よりの証拠と言えるだろうね。
 閑話休題。
 半分不正解の方は、単純に妖魔帝国軍に余力が無かっただけという点だ。
 既に緒戦で消耗しているというのに、敵を殺す為でなく自身の命を守る為に多くの魔法兵が風属性を行使せざるを得なかった。これがどうやら追い討ちになったみたいで、結果として降伏を早まったわけ。
 まあなんにせよ、僕達はムィトゥーラウの戦いでも勝った。この事実は揺るがない。
 僕も戦いに勝利したことでホッと一息ついていたけれど、立場ゆえかゆっくりは出来なかった。
 八の月十三の日。妖魔帝国軍が五日前に降伏してから後処理に追われている中で統合軍総司令部からこんな通信が届く。

『ムィトゥーラウ方面侵攻軍第二副司令官アカツキ・ノースロード。副官リイナ・ノースロード、エイジス特務官は本戦闘の報告の為総司令部に出頭されたし。なお、本出頭においては今後の方針についても会議を行う予定なので、貴官の意見を纏めておくよう』

 マーチス侯爵からの通達だった。
 確かにムィトゥーラウを占領したのならば実際に何が起きてどうなったかを話すそれなりの立場の人間は必要になるし、さらに今後の方針についても会議があるのならば、尚更指揮官クラスが行った方がいいだろう。
 そこで白羽の矢が立ったのが僕なんだろうね。方面侵攻軍の総司令官たるブリック大将は離れられないし、占領したムィトゥーラウの復旧にはゴーレムを多数召喚可能なアレゼル大将も不可欠。となれば僕しかいないわけだ。
 僕はこの通達を受けてから即日返信。現地で片付けなければならない軍務だけは片付けて翌々日にはオディッサへと向かう。
 オディッサとムィトゥーラウの間に敷設されている鉄道は破壊工作と戦闘による損壊で復旧まで二十日以上はかかるらしく、蒸気自動車で向かった。念の為、護衛としてアレン中佐以下五〇名を同行させてね。
 オディッサに到着したのは16の日夕方。
 将兵の関係無しに歓迎を受けた僕達はこの日はもう遅いからと軍務の話をせず、参謀本部の面々も企画してくれたらしい、ささやかながら祝勝会に参加して、次の日の朝を迎えたのだった。


 ・・Φ・・
 8の月17の日
 午前9時50分
 妖魔帝国西部・オディッサ市中心部
 人類諸国統合軍南部統合軍総司令部


 祝勝会の翌朝、総司令部から手配された完成したばかりの将官用宿営地の建物から早速向かったのはマーチス侯爵のいる執務室だった。
 僕達は男性士官の案内を受けて、マーチス侯爵の執務室に到着する。
 ドアをノックすると、向こうからマーチス侯爵の声が聞こえ僕達は入室する。

「おはようございます、マーチス元帥閣下。ムィトゥーラウ方面侵攻軍第二副司令官アカツキ・ノースロードです」

「同じく副官リイナ・ノースロード」

「同じくエイジス特務官」

「以上、三名。通達を受け、報告に参りました」

「うむ、御苦労。ここにはオレ以外おらん。楽にしていいぞ。そこのソファに座ってくれ」

 マーチス侯爵は最初の一言こそ部下に向けた話し方だったけれど、楽にしていいぞと言ってからは親族に向ける表情へと変わる。
 執務室のソファに座るよう促された僕達は敬礼をしてから座る。
 マーチス侯爵がコーヒーを用意してくれていたので、僕とリイナも手伝う。
 コーヒーが注がれたカップとソーサー、それに本国から取り寄せたらしいクッキーが乗せられた皿を置くと、僕とリイナは再び座り、マーチス侯爵も対面側に座った。

「まずはアカツキ、リイナ、エイジス。ムィトゥーラウの戦い御苦労だった。お前達が無事であり元気そうで安心したぞ」

「ありがとうございます、義父上」

「今回も兵士達の勇気と努力で勝つことが出来たわ、お父様」

「同意。即席ながら編成した『ゴーレム搭乗魔法兵』部隊は元帥閣下の期待通りの戦果をもたらしたと考えます」

「うむ。その件については本当に良くやってくれた。参謀本部も数が揃えられないのが弱点だが早速全軍にて情報を共有、近日正式な編成をさせると言っていたぞ。また一つ、歴史書に名を残す功績が増えたな」

「戦場を恐れずに最前線に立ってくれた召喚兵や攻撃役の魔法兵、そして情報を総統括してくれたエイジスのお陰です、義父上。僕はいつものように提案し、発案者として共に戦場に立っただけですから」

「お前は当たり前のように言い義務のように果たすが、現実では少数派だ。誰でも行動出来るものではない。謙遜は程々にして素直に受け取ってくれ」

「はい。失礼しました、義父上」

「構わん、許す。今の発言を聞くと、お前の爪の垢を北部統合軍の方の協商連合軍指揮官に飲ませてやりたい気分だからな。まあ、察してくれ」

 マーチス侯爵は苦笑いしながらコーヒーを一口飲む。
 例の書簡を送り付けた先である協商連合軍の中でも北部統合軍の指揮官は、マーチス侯爵によるとあまり前線には赴かないらしい。その癖独断専行するのだから始末におえないよね。
 だからかアルヴィンおじさんから送られた手紙には、北部統合軍の方の協商連合軍指揮官は兵士達どころか要になる下士官クラスの評判も悪い。と書かれていた。無理もない話だね。

「心中お察し致します……」

「あぁ……。だが、お前が送った書簡の効果が出たのか行動に改善が見られたらしい。少なくとも表立っては勝手な動きはしておらんらしいし、命令も正直に聞くようになったとアルヴィン大将が通信を送ってきた」

「それは何よりです。あの書簡は元から退路を絶つ内容ですからね。腹を立てて何らかの声明を出せば公式書簡に変わる上、内容はこちらが正論ですから逆にあちらが非難されかねない展開になります。金と権益にしか目がない国防大臣はともかく、多少は頭の回る大統領であればどうなるか理解してくれると思いましたから」

「アカツキ……。なんというかお前も逞しくなったな……。やり口がまるで外務大臣のエディンみたいだとオレは思ったぞ」

「私も同じ様に思ったわお父様。旦那様の書簡の文面は私も見たけれど、一言で表すと容赦無い。かしら」

「それだ、リイナ。理路整然と並べた上で逃げ道も塞ぐ。なおかつ、公表したら自滅するがどうする? と暗に示したあの文面。確かに容赦無いな。アカツキよ、またお前の二つ名が増えるのではないか?」

 マーチス侯爵は笑いながら言う。
 もうこれ以上二つ名は増えてほしくないんだけどね……。

「そうさせたのは協商連合ですから……。とはいえ、アレで確実に僕は恨まれ目の敵にされる事になるでしょうね。まあ、協商連合軍の身勝手な行動で何十万人に被害が及ぶよりよっほどマシだからいいですけど」

「案ずるなアカツキ。お前には味方が多いし、此度は協商連合が悪い。もし奴等が何かしてきたらオレが返り討ちにしてやるさ」

「私もよ、旦那様。冷凍の標本なんてどうかしら?」

「親子で物騒な事を……。本当にしないでくださいよ……?」

『ははは、まさか、なあ(ねえ)?』

「本当にしないでくださいね!?」

 二人ならマジでやりかねないのが怖いとこだよね!!

「まあ、冗談はさておきだ。本題に移ろうか」

「え、ええ……。了解しました義父上。リイナ、取り纏めた報告書を出して貰えるかな?」

「分かったわ」

 リイナは軍務鞄から僕が作成してリイナやエイジスがチェックとアドバイスをしてくれた資料を取り出すとマーチス侯爵に渡す。

「ふむ、では早速目を通させてもらおうか」

「はい、お願い致します」

 マーチス侯爵は煙草に火をつけると、紫煙をくゆらせながら資料を読み始めた。
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