異世界妖魔大戦〜転生者は戦争に備え改革を実行し、戦勝の為に身を投ずる〜

金華高乃

文字の大きさ
225 / 390
第2部 戦間期に歩むそれぞれの道 第14章 戦間期編1

第8話 宿りし命は皆に祝福され

しおりを挟む
 ・・8・・
「妊娠しておりますね。間違いありません。おめでとうございます、リイナ様」

「魔法医学の観点からも同様の結論に至りました。生命反応が微弱過ぎて精密探知しないと掴めませんが、確かに子が宿られておりますよ。おめでとうございます、リイナ准将閣下」

「本当……!? 本当かい!?」

「ええ、アカツキ中将閣下。エイジス特務官殿の検知にも引っかからなかったのは、恐らくまだ妊娠初期故かと。意図して探した私ですら、この通り時間がかかりましたから」

「申し訳ありませんマスター。新しい命に気付くのに遅れてしまいました」

「そっか!! そっか!! ――いやいいんだよエイジス。アイラ軍医大尉の言うように精密探知してやっとくらいなんだから」

 リイナの体調などを検診したノイシュランデの病院から呼び出された男性非魔法医師のサイデイ医師と、軍病院にいて緊急呼集を受けた女性魔法軍医はアイラ軍医大尉はリイナが妊娠していることを笑顔で告げる。
 室内からは、おお! という喜びの声と歓声が上がる。
 今思えば、リイナが妊娠してもおかしくはない環境は整っていた。休戦以降は避妊魔法を解除していて定期的にそういう機会はあったし、そのどこかで当たっていたということになるんだろう。
 この世界の医療は未発達で、前世の産婦人科のように機械を用いて今何週と精密な数値までは割出せない。けれど、非魔法医師の検査と魔法軍医の生命反応探知からして恐らくは第七週から九週程度であるとまでは推測された。
 さあこうなってくると色んな物事が動くことになるわけで。

「アレン少佐、中央へリイナの妊娠の件を伝えて。宛先はマーチス元帥閣下。真っ先に知るべき人だよ」

「了解しました! 元帥閣下のお孫様ですからね! 至急連絡します!」

「任せたよ。父上母上、お爺様、アルヴィンおじさん。今日のパーティー出席は僕も取りやめます。ただ、皆には伝えてください」

「分かった、アカツキ。しかしぼくにも孫が出来るのかあ。実感がないけど、嬉しいものだね」

「私はおばあさんになるのね。とても、とても素晴らしい日になったわ!」

「儂に至ってはひいじぃ、と呼ばれることになるわけじゃ。長生きはするものじゃのぉ」

「こいつはめでてぇ!! めでてぇぜ!! ノースロード家にとっちゃ記念すべき日だぜ! 急ぎ使用人達にも報告してこれからの準備を伝えてくるぜ! 馬だ馬を持ってこい!」

「了解しましたアルヴィン大将閣下! 自分も同行します!」

「おうよ!」

 アルヴィンおじさんは豪快に笑いながらも喜色満面に部屋を出ていき屋敷に向かっていった。あれは確実にテンションがハイに振り切っている様子だ。
 けれどそれは僕も同じで、一通り指示を飛ばしたところで感極まって。

「おめでとう、おめでとうリイナ! ありがとう!」

「もう旦那様ったら。でも私も同じ気持ちよ。だって、旦那様と私の子供がお腹にいることが分かったんですもの。体調が悪かったのも納得したわ」

 僕はリイナを抱きしめ、瞳から一筋涙を零して頭を撫でる。
 異世界で生きることになって四年。リイナと過ごすことになってからだともう三年以上になる。大戦が始まって前線に立ち続けていたから子供を、なんて叶わなかったけれど一時の平和とはいえやっと機会が生まれた矢先、まさかこんなにも早く叶うとは思わなかったから喜びもひとしおだった。

「ひとまず今日はゆっくりしよう? お腹には僕達の子供もいるんだ。そうだ、新しく生まれてくる子供の為に色んな事を僕達でもしないと。王都別邸に部屋を作ったり家具だっている。服とかも手配しなきゃ。名前、名前も決めなきゃ。ああもうどうしよう、僕、赤ちゃんの事とかどうすればいいとかあんまり知らないや……」

「旦那様、旦那様。気が早すぎよ。まだ十週にも満たないって医師や軍医も言っていたじゃない」

 リイナの頬を撫でながらも先走りまくっていた僕に、彼女は苦笑いをしながら言う。
 サイデイ医師とアイラ軍医大尉も微笑ましいといった様子で僕を見ながら、

「僭越ながらアカツキ中将閣下、今の魔法医学では妊娠も後期にならないと性別が分かりませんから名前はそれまでにお決めになればよろしいかと思われます。それに、お二方は魔法能力者でありますから濃い血が受け継がれ魔法能力者として産まれるでしょう。しかし魔力反応も判明するのはまだ先です」

「アイラ軍医大尉殿に同意です。それにまだ妊娠初期であり、静養が必要な時期です。私は内科医故に詳しい事までは言えませんが、専門の友人曰く第二十の週までは母体が健康であっても流れ子だけは注意せねばならないと言っておりました。ですので、リイナ様には絶対的な安静が必要になるでしょう。室内の段差ですとか、歩く時も含めてです」

「そうですね。サイデイ医師の言う通りです。軍医としてはまず、様々な届出と書類の提出が必要になるかと。用意に関してはお任せ下さい。急ぎ軍病院院長に連絡致しますので」

 と的確なアドバイスをくれた。
 僕はちょっと恥ずかしくて頬をかきながら、

「二人とも助言をありがとう。そうだね、ちょっと慌てすぎたかな」

「いえ、アカツキ中将閣下とリイナ准将閣下の間にお子が授けられたのですからお気持ちはよく分かります。私の夫もアカツキ中将閣下と同じようになっておりましたから」

「初々しいですよね、アイラ軍医大尉殿」

「ふふっ。はい、とても。そして何より喜ばしいのは、英雄閣下もお父様になられること。そこに立ち会えた事です。一生の誇りになりますよ」

「確かにそうですね! 自分がアカツキ様とリイナ様のお子がいるのを最初に確認したなんて、親族にも自慢できますよ。さあ、帰って報告しましょうかアイラ軍医大尉殿」

「ええ! きっと院長も喜びます! それでは自分はこれにて! 失礼致します!」

「私も失礼致します!」

 サイデイ医師とアイラ軍医大尉はにこやかな顔つきで部屋を後にする。
 だいぶ時間も経ったし、迎えの馬車はとっくに来ているはず。そろそろ僕らも移動しようかなと思っていると父上は。

「アカツキ、そろそろぼく達も屋敷へ戻ろう。ひとまず今日の予定は全部ぼくやアリシア、父上や弟に任せてリイナさんの傍にいてあげなさい。色々話すこともあるだろう?」

「はい!! ありがとうございます!!」

「ご配慮感謝しますわ、お義父様とうさま

「いいんだいいんだ。こんなにも心が踊る日なんてめったにない機会だし、それにリイナさんにはお腹に大切な子がいるんだからね」

「リイナさん。妊娠してから三ヶ月まではちょっと辛いかもしれないけれど、そこを越えれば安定するわ。しばらくの辛抱だけれど、頑張ってね。ノイシュランデには明後日の朝まではいるんでしょう? 色々と経験した事を伝えるわ」

「先輩として御教授感謝しますわ、お義母様かあさま。とても助かりますの」

 それからすぐに僕達は屋敷に戻り、到着すると使用人達の喜びと嬉しさと、歓声に包まれた。王都別邸から同行していたレーナとクラウドは自分の事のように喜んでくれていて、レーナはお子様のお世話は私にお任せ下さい。とクールさなんてどこへやら、満面の笑みを見せてくれた。クラウドに至っては「感激でありますぞ……!」と男泣きしていた。
 皆の祝福に、僕とリイナは包まれる。
 愛する人との間についに出来た、愛の結晶。自分達の子供。
 この日、僕には守るべき大切なかけがえのない存在がまた一人増えたのだった。


 ・・Φ・・
 一八四二年二の月二十二の日。
 アカツキやリイナにとって記念すべき日は、アルネシア連合王国にとっても記念すべき日となった。
 二人の間に子が授けられた。リイナ懐妊の報は国内に張り巡らされた魔法無線装置により瞬く間に全土へと広まる。
 ノースロード鉄道開通記念パーティーでは早速、ノースロード家当主ルドルア・ノースロードの口から告げられノイシュランデの要人やパーティーの参加者は二重の意味でめでたき日になった事で祝福に満ちていたという。
 当日中に知らせを聞いたリイナの父、マーチス元帥の返信は公式に軍の記録として残されており、感涙していた様等を目撃した軍人達などから、その喜びようは語り継がられる事になる。
 翌二十三の日には、連合王国全土へ向けて国王エルフォード・アルネシアから祝いの御言葉が発表され、人類諸国に勝利をもたらした英雄に向けて各国からも同様に祝福が届けられた。
 以下はその公式の記録である。


【アルネシア連合王国国王:エルフォード・アルネシア】

『我が国の至宝、英雄たるアカツキ・ノースロードとリイナ・ノースロードとの間に生まれし新たな命が宿りし事を、余は自らの事のように喜ばしく思う。二人の英雄に幸あらんことを。無事誕生することをここに祈らんとす』


【イリス法国法皇:ベルヘルム十五世】

『人類諸国の英雄、アカツキ・ノースロードとリイナ・ノースロードの間に生まれし新たなる命は必ずや主しゅのお導きにより無事産まれ健やかに育つであろう。主は我らを救いし英雄の子に必ずや加護を与えられ、見守るであろう。ヨルヤ教の法皇として、ここに祝詞を届ける』

【ロンドリウム協商連合大統領:アルフォンス・クロスフィールド】

『この日は我が国にとってもめでたき日となった。我が国を含め人類諸国に勝利とさらなる繁栄をもたらした英雄、アカツキ・ノースロードとリイナ・ノースロードの間に授けられた新しき命に幸福を。我々ロンドリウム協商連合を代表し、ここに祝福の言葉を届ける』

【アルネシア連合王国エルフ理事会会長:アレゼル・イザード】

『大戦において悲願である我らが故郷を取り戻すにあたってはアカツキ・ノースロードとリイナ・ノースロードの存在は不可欠であった。その二人に宿りし英雄の子に、エルフ族を代表して私から新たな子に幸あらんことを祈る』


 その他、各国要人など百数十名から祝福の言葉が届いた。
 いかにアカツキ・ノースロードとリイナ・ノースロードが慕われているかが理解出来る一幕であろう。

【アルネシア連合王国王国史:アカツキ・ノースロードとリイナ・ノースロードの子、――の誕生より抜粋】

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...