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第12章 ブカレシタ攻防戦決着編
第6話 三カ国軍の前に現れ立ち塞がるは、妖魔帝国軍の切り札
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・・6・・
午後3時15分
ブカレシタ星型要塞・東側
ラットン中将を中心とする攻略部隊
アカツキ達西側の攻略部隊が交戦を始めた頃、東側の攻略部隊を率いる協商連合陸軍中将ラットン達もまた敵との交戦を始めていた。
西側と要塞総司令部が対象となった一連の作戦の中でも、特にマーチスの独自魔法の衝撃は大きく、東側防衛部隊への直接的な被害は少なかったものの士気は大いに低下していた。
そこへ追い討ちをかけたのが城塞破壊用の戦術級魔法とラットンの独自魔法、通称『死神大隊』であった。
ラットンが率いる北東側に配置していた三カ国軍は協商連合軍が中心の約四万。戦術級魔法で防壁に大穴を開け、突破口を作り出したのが『死神大隊』である。
不死者の大隊と言っても差し支えない彼らに人間のような恐怖心は無い。ただひたすらに突撃する様だけでも恐ろしいというのに、『死神大隊』の一体一体は魔法能力者B+からA-ランクに相当する練度を誇る。
また、戦場の常ならば恐怖を感じる人間の兵士であっても大戦以来常勝である自信からか練度と精神の両面で妖魔帝国軍を圧倒していた。
そのラットン中将は前線司令部から戦況を見守っていた。隣にいるのはラットン中将が指揮する軍付の作戦参謀である。
「ラットン中将閣下。最前方の部隊は既に東側の一割を占領しつつあり、橋頭堡の構築は間もなく完了します」
「ふむ、報告ご苦労じゃ作戦参謀」
「はっ」
「のお、ノルマン作戦参謀」
「なんでしょうか、中将閣下」
「儂は時代の変化を、歴史が塗り変わる瞬間におるのかもしれんの」
「と、言いますと」
「星型要塞については妖魔帝国軍でなくとも儂ら人類諸国でもあるじゃろう? 儂ら協商連合にせよ、陸軍大国の連合王国にせよじゃ。共和国も法国も。じゃがの、星型要塞の時代は終わりを迎えるかもしれん。要塞の重要性に変わりはない。しかし、以前ほどの堅牢さは保てんじゃろとな。無論、元より戦術級魔法の前では有効性は疑われておったが、戦術級魔法は連発出来ぬ。だから平和な時代であっても建設もされてきた。ところがじゃ。お主なら分かるじゃろ」
「アカツキ少将閣下が設立なされた、召喚士攻撃飛行隊などの空軍という要素ですか」
「そうじゃ。あの空軍は今後さらに大きな戦略要素になりうると思うのじゃよ。術式を簡略化していけば内包魔力を増加させられる。増加させれば威力を上げられる。他にもあるぞよ。今は爆弾という大量消費するものじゃから高純度魔石は使われておらんが、魔石の採掘量は増えておるし、旧東方領の全域奪還が完了すれば新たな資源地帯を獲得出来る。となれば高純度魔石にも余裕が生まれ、より高威力の魔石爆弾に使えるわけじゃ」
ラットン中将が述べた話は既に人類諸国各国軍で進捗の差があれど既になされていた。
人類諸国は旧東方領を奪還した事で多くの魔石採掘地を得ることとなり、それは通常資源でなく兵器にも使われる魔石にも多く転用可能ということである。
召喚士飛行隊の育成という問題があるのですぐに投下量が増えるということはないが、先駆者たる連合王国を含め急速に拡充されている。ともなればアカツキが考えている絨毯爆撃などの戦略爆撃も遅かれ早かれ実現の可能性が高くなる。
また、そうでなくとも魔石一つあたりの高威力化や高純度魔石を用いた魔石爆弾についても順次開発がなされている。前者については逐次反映され、後者については間もなく実戦投入可能な状況。
となればラットン中将が言いたい答えは簡単である。
召喚武器の独自魔法に頼らなくても、魔法科学兵器で星型要塞は攻略可能となるわけだ。今回はマーチスも現場にいた事から戦闘期間短縮のために独自魔法が用いられたが、今後は独自魔法抜きでの要塞攻略も十分に達成可能ということ。
全ては、空にも戦場の舞台が作られた一点に尽きるのである。
最も、アカツキは技術開発の進展に伴いそのうち航空機も出るのではないか。魔法科学によって前世より早く開発されるのではないかとまで読んでいるのだがそれは本人以外誰も知らない。
「アカツキ少将閣下は、まさに教科書に載る人物ですね……。少将閣下とお話した時に仰っておりました。彼が目指しているのは召喚武器はあくまで切り札で、召喚武器に依存せずとも、頼らなくても多数のカードが揃えられる軍にしていきたいと」
「あやつの知識は底知れぬよ。開戦から僅か約一年半の今ですら連合王国軍や儂ら協商連合軍、進展の差があれど遅れながら法国や連邦、共和国ですら召喚武器以外の戦力は上昇しておる。連合王国軍に至っては真っ先に始めておるから現状では妖魔帝国軍と一国のみでも渡り合えるまでになった。それでもまだ進めるというのじゃ。あやつは間違いなく、連合王国軍を妖魔帝国軍を凌駕する軍に育て上げるじゃろて」
「となると面白く思わない国も出てきますが、それはまだまだ先の話でしょうね。少なくとも大戦が終結したと仮定しても暫くは」
「未来に関しては分からぬ。そもそも妖魔帝国がどうしてくるかも分からぬしの」
「そうでありますね。まずは、ここブカレシタです」
「うむ」
ラットン中将とノルマン情報参謀の未来の話はここで一旦区切りとなった。
戦況は引き続き有利。時刻は既に午後四時半を過ぎた。しかし、ここで新たな展開が生じたのである。
それは、三カ国軍にとって好ましくないものであった。
感知したのは、前線にいる兵士達だけでなくラットン中将達のいる場所からも分かってしまった。情報は魔法無線装置を介してすぐさま伝えられる。
「ぜ、前線より緊急報あり! 妖魔帝国軍から戦術級魔法複数を確認とのこと! す、すす、既に最終準備を終え発動!」
「どういうことじゃ! 確かにここからでも分かる……。奴らは何をしでかそうとしておるんじゃ……!」
「要塞西部、北部、南部、東部いずれからも同様の報告あり! 攻撃系にしては魔法陣は小さいと!」
「攻撃系ではない……。防御系をするには遅すぎるじゃろ……。ということはまさか……!」
ラットン中将の予想は的中した。
戦術級魔法には種類がある。フィリーネ達がリチリア島で発動したものや、ラットン中将達ブカレシタ星型要塞東部で発動したものは攻撃系。発動時間が長い故に大抵は間に合わないか効率が悪いとされる防御系。
そしてもう一つは、召喚系。
「最前線より報告、あり! 妖魔帝国軍が発動したのは戦術級召喚系魔法! 顕現したのは……、とてつもなく大きいオーガ種! 推定、オーガ・キング!」
「なんじゃ、と……。オーガ・キング……。あやつら先の大戦で繰り出した既に文書でしか残っておらぬ存在を出してきおったのか……!」
ラットン中将は頭を抱え、俯く。
ブカレシタ星型要塞の各所で出現したのは洗脳したオーガ・コマンダーなど比較にならない程に強力な、戦術級召喚系魔法でのみ顕現可能なオーガ・キング。しかもそれが十数体。
実行したのは現れたオーガ・キングの数だけ揃えられた妖魔帝国軍魔法能力者部隊。エイジスが発見したものを含め、地下深くにいるため攻撃不可能だった魔法能力者の一団であった。
ラットン中将達が担当する東部側だけではない。それは北部や南部、アカツキ達がいる主戦たる西部にも出現した。
夕刻にして、ブカレシタ星型要塞は短時間に新たな局面を迎えたのであった。
午後3時15分
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そこへ追い討ちをかけたのが城塞破壊用の戦術級魔法とラットンの独自魔法、通称『死神大隊』であった。
ラットンが率いる北東側に配置していた三カ国軍は協商連合軍が中心の約四万。戦術級魔法で防壁に大穴を開け、突破口を作り出したのが『死神大隊』である。
不死者の大隊と言っても差し支えない彼らに人間のような恐怖心は無い。ただひたすらに突撃する様だけでも恐ろしいというのに、『死神大隊』の一体一体は魔法能力者B+からA-ランクに相当する練度を誇る。
また、戦場の常ならば恐怖を感じる人間の兵士であっても大戦以来常勝である自信からか練度と精神の両面で妖魔帝国軍を圧倒していた。
そのラットン中将は前線司令部から戦況を見守っていた。隣にいるのはラットン中将が指揮する軍付の作戦参謀である。
「ラットン中将閣下。最前方の部隊は既に東側の一割を占領しつつあり、橋頭堡の構築は間もなく完了します」
「ふむ、報告ご苦労じゃ作戦参謀」
「はっ」
「のお、ノルマン作戦参謀」
「なんでしょうか、中将閣下」
「儂は時代の変化を、歴史が塗り変わる瞬間におるのかもしれんの」
「と、言いますと」
「星型要塞については妖魔帝国軍でなくとも儂ら人類諸国でもあるじゃろう? 儂ら協商連合にせよ、陸軍大国の連合王国にせよじゃ。共和国も法国も。じゃがの、星型要塞の時代は終わりを迎えるかもしれん。要塞の重要性に変わりはない。しかし、以前ほどの堅牢さは保てんじゃろとな。無論、元より戦術級魔法の前では有効性は疑われておったが、戦術級魔法は連発出来ぬ。だから平和な時代であっても建設もされてきた。ところがじゃ。お主なら分かるじゃろ」
「アカツキ少将閣下が設立なされた、召喚士攻撃飛行隊などの空軍という要素ですか」
「そうじゃ。あの空軍は今後さらに大きな戦略要素になりうると思うのじゃよ。術式を簡略化していけば内包魔力を増加させられる。増加させれば威力を上げられる。他にもあるぞよ。今は爆弾という大量消費するものじゃから高純度魔石は使われておらんが、魔石の採掘量は増えておるし、旧東方領の全域奪還が完了すれば新たな資源地帯を獲得出来る。となれば高純度魔石にも余裕が生まれ、より高威力の魔石爆弾に使えるわけじゃ」
ラットン中将が述べた話は既に人類諸国各国軍で進捗の差があれど既になされていた。
人類諸国は旧東方領を奪還した事で多くの魔石採掘地を得ることとなり、それは通常資源でなく兵器にも使われる魔石にも多く転用可能ということである。
召喚士飛行隊の育成という問題があるのですぐに投下量が増えるということはないが、先駆者たる連合王国を含め急速に拡充されている。ともなればアカツキが考えている絨毯爆撃などの戦略爆撃も遅かれ早かれ実現の可能性が高くなる。
また、そうでなくとも魔石一つあたりの高威力化や高純度魔石を用いた魔石爆弾についても順次開発がなされている。前者については逐次反映され、後者については間もなく実戦投入可能な状況。
となればラットン中将が言いたい答えは簡単である。
召喚武器の独自魔法に頼らなくても、魔法科学兵器で星型要塞は攻略可能となるわけだ。今回はマーチスも現場にいた事から戦闘期間短縮のために独自魔法が用いられたが、今後は独自魔法抜きでの要塞攻略も十分に達成可能ということ。
全ては、空にも戦場の舞台が作られた一点に尽きるのである。
最も、アカツキは技術開発の進展に伴いそのうち航空機も出るのではないか。魔法科学によって前世より早く開発されるのではないかとまで読んでいるのだがそれは本人以外誰も知らない。
「アカツキ少将閣下は、まさに教科書に載る人物ですね……。少将閣下とお話した時に仰っておりました。彼が目指しているのは召喚武器はあくまで切り札で、召喚武器に依存せずとも、頼らなくても多数のカードが揃えられる軍にしていきたいと」
「あやつの知識は底知れぬよ。開戦から僅か約一年半の今ですら連合王国軍や儂ら協商連合軍、進展の差があれど遅れながら法国や連邦、共和国ですら召喚武器以外の戦力は上昇しておる。連合王国軍に至っては真っ先に始めておるから現状では妖魔帝国軍と一国のみでも渡り合えるまでになった。それでもまだ進めるというのじゃ。あやつは間違いなく、連合王国軍を妖魔帝国軍を凌駕する軍に育て上げるじゃろて」
「となると面白く思わない国も出てきますが、それはまだまだ先の話でしょうね。少なくとも大戦が終結したと仮定しても暫くは」
「未来に関しては分からぬ。そもそも妖魔帝国がどうしてくるかも分からぬしの」
「そうでありますね。まずは、ここブカレシタです」
「うむ」
ラットン中将とノルマン情報参謀の未来の話はここで一旦区切りとなった。
戦況は引き続き有利。時刻は既に午後四時半を過ぎた。しかし、ここで新たな展開が生じたのである。
それは、三カ国軍にとって好ましくないものであった。
感知したのは、前線にいる兵士達だけでなくラットン中将達のいる場所からも分かってしまった。情報は魔法無線装置を介してすぐさま伝えられる。
「ぜ、前線より緊急報あり! 妖魔帝国軍から戦術級魔法複数を確認とのこと! す、すす、既に最終準備を終え発動!」
「どういうことじゃ! 確かにここからでも分かる……。奴らは何をしでかそうとしておるんじゃ……!」
「要塞西部、北部、南部、東部いずれからも同様の報告あり! 攻撃系にしては魔法陣は小さいと!」
「攻撃系ではない……。防御系をするには遅すぎるじゃろ……。ということはまさか……!」
ラットン中将の予想は的中した。
戦術級魔法には種類がある。フィリーネ達がリチリア島で発動したものや、ラットン中将達ブカレシタ星型要塞東部で発動したものは攻撃系。発動時間が長い故に大抵は間に合わないか効率が悪いとされる防御系。
そしてもう一つは、召喚系。
「最前線より報告、あり! 妖魔帝国軍が発動したのは戦術級召喚系魔法! 顕現したのは……、とてつもなく大きいオーガ種! 推定、オーガ・キング!」
「なんじゃ、と……。オーガ・キング……。あやつら先の大戦で繰り出した既に文書でしか残っておらぬ存在を出してきおったのか……!」
ラットン中将は頭を抱え、俯く。
ブカレシタ星型要塞の各所で出現したのは洗脳したオーガ・コマンダーなど比較にならない程に強力な、戦術級召喚系魔法でのみ顕現可能なオーガ・キング。しかもそれが十数体。
実行したのは現れたオーガ・キングの数だけ揃えられた妖魔帝国軍魔法能力者部隊。エイジスが発見したものを含め、地下深くにいるため攻撃不可能だった魔法能力者の一団であった。
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