異世界妖魔大戦〜転生者は戦争に備え改革を実行し、戦勝の為に身を投ずる〜

金華高乃

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第7章一冬(ひとふゆ)の戦間期と祝福の結婚披露宴編

第10話 ロンドリウム二大臣会談・開幕

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・・10・・
12の月4の日
午後0時35分
ロンドリウム特別市中心街・アカツキ達宿泊ホテル内にある会談会場の大会議室前

 レセプションの翌日からいよいよ僕達の国であるアルネシア連合王国とロンドリウム協商連合の二大臣級会談が始まった。
 開催場所は僕とリイナも宿泊している、ロンドリウム特別市で一番のハイクラスホテルであり政治的舞台としても十分な設備を持つ伝統と格式高い『クランウズ・ロンドリウムホテル』の大会議室。
 その大会議室の前にあるホールには既に多くの両国関係者が会談前の交流を行っていた。
 その中を僕とリイナはマーチス侯爵とエディン侯爵と共に歩いていた。

 「アカツキ准将、昨日は大変そうだったがアルコールは抜けたかね?」

 「ご心配ありがとうございます、エディン外務大臣。早めに果実水や水などを飲むようにしたのと、日付が変わる頃には寝ましたので今は大丈夫です」

 「ははっ、それは良かった。いくら始める前にある程度は取り纏めているとはいえ、これから協商連合を引き入れるかどうかが決まる重要な会談だ。私やマーチス侯のように外交慣れしておらぬ貴君だから緊張するかもしれんが、いつも通りやればいい」

 「体が硬くならないように気をつけたいですが、やはり重圧は感じますね……」

 「なに、エルフォード陛下を前にあそこまで言い切れる貴君だ。私は心配しておらんがな」

 「オレもだ。これまでのアカツキ准将の振る舞いを見ていれば、安心して会議に臨める」

 マーチス侯爵、エディン侯爵。僕はいっつも緊張してますよ……?

 「いや、あれは陛下がお話しやすくしてくれておりますだけなので」

 「あー……。そうか、貴君は陛下のお気に入りと王宮内では話題だからな。陛下も随分と親身になさってくださっている。とはいえだ。普段の貴君でいてくれればそれでいい。貴君の立場故に発言も求められるが、改革提示や将官級会議の時と同じようにやればな」

 「ご助言、有難く受け止めます。いつも通り、ですね」

 「うむ、そうだ。ただ、私の仕事と苦労をあんまり増やさないでくれよ?」

 「気をつけます……」

 「ちなみに今のは冗談だ」

 「冗談だったんですか!?」

 真顔でしれっと言ってのけるエディン侯爵。真面目が歩いていると言われる彼のジョークは分かりづらいよ!

 「仕事はともかく苦労が増えて欲しくないのは本当だが、肩の力は抜けたかね?」

 「え、ああ、まあ……」

 「ならばよし。ここも戦場だと思いたまえ。外交とはすなわち形態の違う戦争だからな」

 「ありがとうございます、エディン外務大臣」

 どうやら彼は彼なりに僕に気を遣ってくれていたらしい。やはり専門の人は頼もしいね。
 歩いていたらリイナがこっそりと、不器用だけどいい人よね。と耳打ちをしてきた。こらこらそんな事言わない、と僕は返すとちょうど大会議室に到着し、大きな扉が開く。
 ロンドリウム一の豪華絢爛なホテルの大会議室は普段式典会場に使われているからか、きらびやかだった。シャンデリアに高価な調度品。もし転生直後にこんな場所に連れてかれたら浮いていただろうし場違いと感じていただろう。
 僕達が入室すると、既に控えていた連合王国や協商連合の軍人達が敬礼し、官僚達も礼をする。そして、協商連合側の重要人物も気付き僕達はそこまで歩くと。

 「やあ、マーチス国防大臣にエディン外務大臣。昨日は楽しかったねえ」

 「ああ、美味いワインやエールも飲めて満足だったぞ」

 「私は嗜む程度だったが、料理も絶品であったな」

 まず初めにエリアス国防大臣が陽気に手を振って互いに挨拶を交わす。ちなみにマーチス侯爵とエリアス国防大臣はあの後日付が変わるまで飲んでいたらしいのに両方とも顔色は良好だ。鉄壁の肝臓かよ。

 「アカツキ准将にリイナ中佐も昨日はすまなかったねえ。リイナ中佐は平気そうだったけれど、アカツキ准将は随分と酔いが回っていただろう?」

 「いえ、ぐっすりと寝られましたから今はこの通り平常ですよ。美味しいお酒と料理をありがとうございました」

 「とんでもない! 協商連合は歓迎する者にはああしないと気が済まないお国柄だからね!」

 「おや、先にもう揃っておったのか! どうやら我々が最後の到着だったようだな」

 僕とエリアス国防大臣が話していると、会場に通る豪快な声が聞こえてきた。
 振り返るとそこにいたのは協商連合軍の首脳陣だ。
 大きな声を出していたのは短い茶髪の五十代後半の男性、陸軍総司令官のエイブラハム・ブラックマン大将だ。

 「それは貴様が昨日飲み過ぎたからであろう。あれだけ控えておけと言ったのに……」

 「なにおうノーティラス。お前だって随分と酔っ払っておっただろう」

 「なっ……。いやまあ、そうだが貴様よりはマトモだったはずだ……」

 続いてエイブラハム大将に溜息をついて話しているのが、前世ならイケてる渋いおじさんとして雑誌にも紹介されそうな風貌を持つ、こちらも五十代後半の、やや長めの色素の薄い金髪を持つ海軍総司令官のノーティラス・キャクストン大将。彼はエイブラハム大将に比べると冷静なタイプだが、エイブラハム大将に自分だって飲みまくっていただろうと指摘されるとやや焦りながら答えていた。

 「まあまあ、二人共。どちらにしろアカツキ准将にお酒を勧めすぎたのは変わりませんから、今のうちに謝罪をしておきましょう? アカツキ准将、申し訳ありませんでした。酒はしっかり抜けたようだけどね」

 「いえ、お気遣いなく……。酒宴でもあった場ですから」

 最後に発言し、両大臣をたしなめて僕に謝ってきたのは陸軍参謀本部長のアンネリオン・シュレイタール中将。見た目は二十代後半の薄い緑髪のイケメン男性にしか思えないんだけど、その理由は耳にある。彼はアレゼル中将と同じエルフなんだよね。協商連合は第一次妖魔大戦以降連合王国に次いでエルフ人口を抱えている国になっている。元々いた人達に加えて難民を受け入れたからだ。理由は魔法の発展の為。協商連合も連合王国と同じくエルフに対する差別なんて大昔の話で、今ではすっかり受け入れられているどころか魔法分野では絶対に欠かせない人達になっているね。
 ちなみにアンネリオン中将もやはり年齢は不詳だ。謎があった方がミステリアスでいいでしょう? らしい。

 「うむ、確かにやりすぎた。アカツキ准将、すまんな。ほらノーティラスも謝れ」

 「貴様に言われたくないんだが……。しかし、事実いい歳した我らが浮かれていのは事実。すまぬ。だが、それだけ貴官と会えるのを楽しみにしていたということだけは覚えておいてほしい」

 「私のような将官の末席のような存在には有難いお言葉です。気にしておりませんので、どうかお気に病まないよう」

 「可憐な上に優しいとはまさに英雄の器よな! ノーティラス、やはり我が軍にもこやつのような者が欲しいぞ」

 「それだけは同意してやる。貴官がいれば協商連合軍の未来はさらに明るくなるんだがな」

 「嬉しいお言葉を頂きましたが、申し訳ございません。私は国王陛下とアルネシア連合王国に忠誠を誓った貴族であり軍人でありますので」

 「むう。だが軍人の鏡の回答だな」

 「ああ。若い頃の貴様とは違って出来た人間だ」

 「今それを持ち出すか!?」

 わーわーと言い合う陸海軍総司令官と、再び仲裁に入るアンネリオン中将。
 一見仲が悪そうな二人だけれど、実は昔からの友人らしくこんな様子だけど腐れ縁なんだとか。エリアス国防大臣も慣れているらしく、軽いため息をついて。

 「あれが無ければすごく有能なんだけどねえ。私からしたらいい歳なんだからもう少し落ち着いたらどうだと思うんだよなあ」

 「はははっ……」

 「旦那様。あれが喧嘩するほどなんとやら、の典型ね」

 「言えてる」

 リイナが肩を竦めて言うと、僕は苦笑いをして返す。

 「こらこらエイブラハム大将とノーティラス大将。程々にしておきなよお」

 「わ、分かった」

 「エリアス国防大臣に言われては仕方あるまいな……」

 今ので力関係が分かった。きっと二人は温厚なエリアス国防大臣を怒らせた事があって、それからうだつが上がらないんだろうね……。

 「さーてと。エミリー外務大臣、そろそろ始めようかー」

 「陸海軍総司令官が揃っての茶番は終わったのですね。賑やかしいのはいいですけれど、程々にね?」

 エリアス国防大臣に呼ばれてやってきたのは六十代手前のまさに淑女といった立ち振る舞いと言動の、プラチナブロンドの女性。協商連合外務大臣のフェリシア・ヘンダーソンだ。
 連合王国に比べて女性の社会進出が進んでいる協商連合は有能ならば男女関係なく議員に選ばれる。とはいえ未だ男性優位の社会の中で彼女は協商連合唯一の女性大臣だ。
 淑やかだが芯が強い彼女だからだろう、両大臣もフェリシア外務大臣に注意されると。

『イエス、マム!』

 と、背筋を正しくしていた。彼女は外務大臣でありながら、協商連合の魔法の名家な上に当主でもある。おまけにフェリシア外務大臣は今でこそ文官だけど昔は軍にいたらしく、彼女は両総司令官の二年先輩だからそれはもう頭が上がらないん。
 なんだかんだで大変だなあ、陸海軍の二人……。

 「アカツキ准将、ごめんなさいね。あとでわたくしからもきつーく言っておきますから」

 「い、いえ。皆様に心配して頂いておりますし、私は気にしていませんから……」

 「貴方が気にしていなくとも、協商連合の名誉に関わりますのよ? こんなに可憐な英雄さんに無茶をさせてはいけませんもの。大事なお客さんでもありますから」

 「程々にしてあげてくださいね……?」

 「ええ、もちろん」

 うわあ、笑顔なのに目が笑ってないや……。絶対この人も怒らせたらいけないタイプだな……。

 「ああでも、会談が始まれば別ですよ? 対等にいきましょう?」

 「はい、フェリシア外務大臣」

 「可愛らしくも、精悍な顔ですわね。――それではエリアス国防大臣も仰ていましたし、各自席につきましょうか。会談を始めましょう」

 フェリシア外務大臣の呼びかけに、両国側全員が頷き席につく。
 連合王国側は中央にマーチス侯爵とエディン侯爵。僕は今回の会談の役職が『連合王国軍部大臣特別首席アドバイザー』とややこしい名前だけど、軍部大臣のサポートをするという役目なのでマーチス侯爵の隣に座る。リイナは副官としてその隣に着席だ。さらに左にはアルネシア連合王国軍部省官僚や高級将校達が、エディン侯爵の右には外務省高級官僚が並ぶ。
 対して協商連合側は中央にエリアス国防大臣とフェリシア外務大臣が。エリアス国防大臣の隣には陸海軍総司令官とアンネリオン中将が、続いて国防省官僚や軍人が着席し、フェリシア外務大臣の隣には外務省官僚が座る。
 総勢七十名近くに及ぶ、後に『ロンドリウム二大臣会談』と呼ばれることになる会談の初日が今ここに始まった。
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