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第6章『鉄の暴風作戦』

第8話 ジトゥーミラの戦い4~対敵援軍迎撃作戦の名は~

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・・8・・
「お疲れ様ですアレゼル中将閣下。ここ数日、閣下の連隊には負担をかけっぱなしで申し訳ありません」

「おつかれさまー。んーん、気にしないで。故郷を取り戻す戦争だからさ、みんなやる気は十分だよっ」

「ありがとうございます」

「どういたしましてー」

「アカツキの案って、もしかしてアレゼル中将閣下の事か?」

 現れたアレゼル中将と僕を交互に見て、アルヴィンおじさんは質問する。どういうことなのか聞きたそうにしていた彼に対してアレゼル中将が口を開いた。

「実は問題が発生した翌日からアカツキと話し合っていてね。彼と相談しながら作戦を纏めたんだー。で、完成したのが丁度今日の午前中ってとこかなー。出来立てほやほやだよ?」

「いつの間に……。いや、時間の余裕は少ないのに議論がなかなかまとまんねえから助かるが……。念の為聞くが、実現可能なんだよな?」

「SSランクの召喚武器持ち二人が揃って考え、しかも一人はアカツキくんだよ?」

「まあそりゃそうだが……。聞こうか。テントに戻るぜ」

「そうこなくっちゃ!」

 アレゼル中将はぱぁ、と笑顔で言うと僕達はテントに戻る。

「旦那様、もしかしてたまにアレゼル中将閣下が訪れてたのって」

「そそ、このこと。空いた時間を作って詰め合わせしてたんだ」

「道理で旦那様のコーヒー摂取量が増えるわけだわ」

「たはは……。本来の仕事もあるからね……」

 実はアレゼル中将と合同で考えたこの作戦の為に睡眠時間が少し犠牲になったんだよね……。だから僕は欠伸を手で覆って隠しながら司令部テントに入る。
 アレゼル中将が入ってくると、SSランク持ちの一人だけあってテント内の全員が一斉に敬礼をした。

「そこの女の子ー、えっとニナちゃんだっけ。何も書き込んでない地図を取ってくれる?」

「了解しました。僭越ながらワタシも同席してもよろしいでしょうか」

「どうぞー? だって君、アカツキくんが引っ張ってきた子でしょ」

「はい。こちらが地図になります」

 ニナ大尉はジトゥーミラ周辺の地図を大きなテーブルの上に広げる。周りには僕達の他にも参謀達が集まっていた。

「んじゃ、アカツキくん説明よろしくっ!」

「僕が全部ですか!?」

「だってキミの方が説明上手じゃん。参謀長だし?」

「そうですが……。了解しました。皆さん、地図に注目してください。あと味方と敵を示す駒、そうそれ。ありがとうニナ大尉」

「いえ」

 僕はニナ大尉から味方を示す白の駒と敵を示す黒の駒を受け取ると、現状を並べていく。

「これが現在の状況です。皆さん知っての通りですね。そして、アレゼル中将と合同立案したのが、これと、これ、それとこうなります」

 僕が味方の駒を並べたのは包囲によって既に移動可能になった地帯。北側包囲網よりさらに北へ十五キーラ進んだ場所だ。置いた駒は師団を示すのが一つと、連隊を示したのが一つ。さらに小さな駒、大隊を示したものが一つの計三つだ。

「現在予備としている第一師団を展開。さらにここへアレゼル中将閣下直轄の連隊と、僕直轄の大隊を配置。計一万三千五百で敵援軍三万八千と相対します」

「たった一万三千五百で!?」

「三倍近くも違うじゃないか……」

「いや、でもこの面子なら……」

「最精鋭の第一に、アレゼル中将閣下とアカツキ准将閣下の部隊となれば……」

 いくら連合王国軍が火力に勝るとはいっても僕が置いたのは敵の約三分の一。テーブルの周りからはどよめきが起きる。けど、抽出した部隊から既に勘づいた人もいた。

「そういうことかアカツキ准将。切り札となるSS二人が揃って出陣ってわけだな」

「これなら数が不利でもアレゼル中将閣下にアカツキくんなら火力不足が補えるね。二人の部隊なら数字以上の活躍が確約されたも同然だから数的不利もカバー可能ではある」

「はい、アルヴィン中将閣下ルークス少将閣下。別働隊の指揮官はアレゼル中将閣下、副官を私が務めます。アレゼル中将閣下は『土人形王召喚』があり、その効果は北側の防衛ライン突破でご存知の通りでしょう。土人形王だけでなく配下のゴーレム五十体は非常に強力ですし、アレゼル中将閣下自身が放つ風や土魔法そのものも同様です」

「そして旦那様、アカツキ准将にはエイジス。彼女が放つ初級魔法は威力もさることながら、発数が尋常じゃないわ。旦那様もエイジスによって消費魔力は半減。まさに移動砲台よ」

「ワタクシの最大捕捉攻撃数は百二十八。必要とあらば最大火力にて攻撃行動をします」

 アレゼル中将と僕も攻撃に参加する。この事実にそれまで戸惑っていた参謀達からはおおお、と歓声が上がった。

「ジトゥーミラ市街戦の現状では多くを別働隊に割くのは得策ではありません。しかし少なすぎても対処は厳しい。だからこそ個人で戦術級となるアレゼル中将閣下と私を投入。中将閣下の部隊と私の部隊が加われば、参戦する第一師団は安心して戦え、士気は大いに上がるでしょう」

「わたしの子達は連隊で旅団級かそれ以上の実力があるからね。アカツキくんの部隊も大隊規模以上の実力があるもん。それに、二つの部隊に共通しているのは召喚武器使いにも魔法銃を装備させてるとこ。生産の都合で少数しか揃えられないけど魔法銃の火力が凄いのはみんな知ってるでしょー?」

 僕とアレゼル中将の話に、全員が頷く。すると、ニナ大尉が挙手して。

「一つ提案してもよろしいでしょうか」

「どうぞニナちゃーん」

「この陣容ならば勝てるでしょうしかし損耗を減らしたいと考えますアレゼル中将閣下とアカツキ准将閣下の部隊は精鋭。犠牲が少なく済む方が良いかと」

「戦いで死傷者が少なく済むに越したことはないねー。具体的にどうやって?」

「ルブリフのように『魔石型遠隔作動式地雷』を用います魔石は突入前倒しで未使用分になったものを転用可能なはずです。この距離ならルブリフに比べれば数は必要ないはずですいかがでしょうか」

「そっか! 魔石型遠隔作動式地雷が使えるね!」

「名案だよ、ニナ大尉。別働隊を配置する前面に地雷を設置すれば、相手の出鼻をくじける。ここらへんならルブリフでやった時よりそんなに数はいらない。今ある分で十分に実現出来るね。やりましょう、アルヴィン中将閣下。ルークス少将閣下」

「おうよ! 別働隊に関してはこれで決定だな!」

「敵軍到着は九の月末から十の月頭だ。地雷敷設も十分に間に合いそうだね」

「うし! そうと決まれば早速動き出すか! アレゼル中将、アカツキ准将。そっちへ任せたぜ!」

「りょーかい! お任せあれ!」

「了解しました。参謀長としての軍務から逸脱していますが、SSランク持ちとしての軍務を私は果たします。ジトゥーミラの方、お願いします」

「ったりめーよ。背中は預けてくれ」

「アカツキくん達が北側を担当するなら大丈夫だ。こっちは任せてくれよ」

「ありがとうございます中将閣下、少将閣下。リイナ、また忙しくなるよ。もちろんだけど」

「別働隊でも一緒にでしょ? 当然じゃない。旦那様の横にはいつも私がありだもの!」

 リイナは胸を張って笑顔で答える。僕が言おうとしなくても察してくれて、付いてきてくれるリイナは本当に頼もしい。

「エイジス。敵が圏内に入ったら探知を定期的にしてくれるかな。動きは逐次知っておきたいんだ」

「サー、マスター」

 エイジスは暫く戦場にいて学習したのだろう、敬礼をして答える。
 作戦は実行が決定された。あとは準備をして敵を迎え撃つだけ。僕は僕のやれることをしよう。
二極将軍作戦オペレーション・ツインジェネラル』のね。
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