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第3章第二次妖魔大戦開戦編

第16話 ウィディーネ陥落

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「とにかく! これで学べたな? 無謀な試みはしないことだ」
「ハ? ヤラレッパナシハ俺ノポリシーニ反スルンダガ?」
 たった一度の敗北で諦めるなんて男がすたる! 愛の戦士ならば勝つまで、命燃え尽きるまで何度だって立ち向かうまでよ!
「知らんがな。だったら一人で頑張れ」
 新山は付き合ってられないと俺に手を振ってきびすを返すが、
「ぐえっ」
 俺は奴の首根っこを掴んで九十度回した。
「オイオイ自分ダケ尻尾しっぽ巻イテ逃ゲンノカ? ヲ前本当ニソレデイイノカ?」
「逃げますしそれがベストな選択ですけど何か?」
「ワシャアヲ前ヲソンナ風ニ育テタ覚エハナイワヨ?」
「お前に育てられた覚えがないんだけど?」
「カァ~ッ、ペッ! コレダカラヘタレキモヲタ陰キャハヨォ」
 まったく、コイツはいつまで経っても成長しねーな。
「オッサンじゃないんだから道端みちばたに唾を吐き散らすなよ」
 新山がやかましくてキチーっすわ。
「……お前、こんなところで何やってんの?」
 俺たちが騒いでいると、不意に横から汚く湿った声をかけられた。
 そこには俺の宿敵永田大地とバーターの田村が立っていた。自分たちがイケてると勘違いしたバスケ部コンビだ。今日もいけ好かないことこの上ない。
「ムムムッ! 出タナバスケ部コンビ! ブサイクペンギン永田大地ニチャラ男タラシ魔人田村!」
 俺は二人に指を差して魂を込めた声を張り上げた。ったく、いつもいつも唐突に現れるんじゃないっての。
「お前はいちいち変な蔑称べっしょうで人を呼ばないといてもたってもいられない病気なのか?」
「俺的ニハ最上級ノ賛辞さんじナンダガ?」
 永田大地は相変わらず俺の才能を認めたくないんだな。いい加減嫉妬は卒業しろや。
「それが賛辞さんじとか。もっと国語の勉強時間を増やしたらどうだ?」
「俺様コソガ歩ク国語辞典ジャボケナスビメ!」
 なーにが国語のスタディアップじゃい。俺は国語教師よりも日本語詳しいんじゃバカチンが。
「ここ――アレでしょ。『ヤ』の事務所」
「イカニモ? 暴力団ノ事務所近クダゾ」
「せっかく田村さんがぼかしたのにはっきり口にするなよ」
 田村が濁してきたのではっきり補足してやると、永田大地がイチャモンをつけてきやがった。
「どうせ新山さんを無理矢理巻き込んでちょっかい出そうとしてるんだろ」
「ハ? 事後ダワ」
「実行済かよ」
「その通りなんだよ。マジ勘弁してほしいわ」
 ややっ!? 新山! 貴様また長いものに巻かれようって魂胆か? 小狡こずるい輩なり!
「新山さんも新山さんです。はっきり断らないから共犯になるんですよ」
「……ウス。ごもっともで」
 あっさりと年下の永田大地に論破された新山。弱いやっちゃなぁ。情けない。
「しわ寄せも全て新山さんに行くんですよ? 気を確かに持って強い意志で圭と距離を置くべきです」
「俺もそうしたいんだけどなかなかコイツの呪縛じゅばくから解放されなくてな……」
「ハ? 俺様カラ距離ヲ取ルトカ正気ノ沙汰ジャネーゾ」
「お前が常に正気じゃないんだがな」
 永田大地の言ってる意味が一切分からないぜ。
「永田君たちはここで何を?」
「隠れた名店に向かってる途中です」
「確かに隠れた店ならこんな辺鄙へんぴで危険な場所の近くにありそうだね」
 新山と永田大地が当たり障りのない会話を展開している。はぁ、つまらん会話。なんの意義もない。
「そっちの人は……」
 田村が新山を見て首を傾げた。どうでもいいけどこの二人は初顔合わせだったな。
「ども、新山鷹章です。短大二年生です。お初にお目にかかります」
「田村です。邦改高校二年生です」
 意味があるのか疑問だが二人は自己紹介し合った。
「ジャ●ーズ顔の美少年だね」
「たまに言われます」
「オイソリャ俺ノコトダロ」
 新山の奴は何勘違いしてやがるんだ。見る目ねーな。敵に忖度そんたくしてどうすんだよ。
「平原はジャ●ーズというよりもゴリラ……」
「新山ァ! 貴様身ノ程ヲ知ラナイヨウダナァ!?」
 まだまだ洗脳――もとい調教が足りないらしいな!?
「新山さんなかなか見る目ありますね」
「オイ永田大地! コノ俺ヲ勝手ニゴリラニスンジャネェ!」
「すまんすまん。ゴリラに失礼だったわ」
「ウ●コ投ゲツケンゾコルァ!?」
「それ新山さんじゃないですか」
「俺はゴリラだった……?」
 この中で最もゴリラに近いのは新山だった。
 いや待て。ゴリラか否かの議論は今重要ではない。
「ソレニシテモ、マサカヲ前等ヤクザガ怖イノカ?」
 はっきりとヤクザや暴力団の単語を口にする度胸すらなさげだが?
「そりゃ怖いわ。力の差は歴然だろ」
「不要なちょっかいは身を滅ぼすだけだよ」
 二人は隠すこともなく自らのヘタレ具合をお披露目してきた。ククッ、これだから小物悪党はしょっぱいんだよ。
「フハッハハ! ダカラヲ前等ハ一生脇役止マリナノダ」
 俺は意気揚々と二人に指を差した。
「確かにお前視点だと脇役だな」
 俺視点って、そもそもこの作品は俺の伝説の数々を語るストーリーだし?
「無謀な挑戦はいらない苦労だと思うけどね」
「ウッサイ田村! 涼シイ顔デダッセェ台詞吐クンジャネェ!」
 顔だけよくてモテても、いざという時に女を守れない男なんぞ愛の戦士失格だわ。
「トイウワケデ新山、リベンジマッチスッゾ!」
「どういうわけだよ。しないから」
「連中ハ力デ街ヲ牛耳ッテデカイつらシテイル。気ニ入ラネエ」
「平原が気に入る気に入らないとかの問題じゃないんだよ」
「新山ヲ前ウゼーカラ喋ンナ!」
「抗議の権限すら与えられないとか理解できないんすけど……」
 必要悪だかなんだか知らんが、悪党を野放しにして日本国のトップの座を掴めるものか!
「あ~はぁ~頑張ってね~平原圭くーん」
「俺たちはお店へと向かうかね」
 ヘボダサコンビはリベンジに燃える俺を放置して目的地へと向かっていった。
 俺は嫌がる新山を引っ張って再び事務所前まで戻った。
 一応歩きながら策を考えてはみたものの、何も妙案は浮かばず、先制攻撃をしかけるくらいが関の山だと結論付けた。
 さて、奇襲をかけるとするか。
「新山! ヤクザニダメージヲ与エロ! ヤレ!」
 俺は落ちてる石を拾って事務所の窓に投げつけた。
 パリィン!

『誰じゃゴルァアアアアアアーーッ!!』

 中から怒号が響いてきた。よし、導入部分はいい感じだぞ。
「ストゥラァーイクゥ!」
 ナイスコントロール! 自分の才能が末恐ろしいぜ。やはり俺が本気を出せばプロも余裕で行けるな。メジャーまで行けたら尚更面白い。
「平原あぁ!! お前はバカかぁーーっ!?」
 身の危険を感じて逃亡を図ろうとする新山をすかさず取り押さえた。行動パターンが単純明快だと対応が楽だぜ。
「一緒ニ立チ向カエバ怖クネェ!」
「いや普通にこえーよ!? 二人の戦力足しても向こうにはてんで追いつかないんだけど!?」
「サッキト状況ハ違ウダロ。簡単ニヤラレハシナイ。善戦デキル」
「どこが違うんだよ!? さっきこれっぽっちも通用してなかったのに善戦だぁ!?」
 キレ気味に自己主張をわめく新山。やれやれ、そんなんじゃ俺様が内閣総理大臣になった時に重要ポストは任せられないぞ。
「ポチットナ」
 インターホンを鳴らす。
『誰じゃゴルァ!?』
 窓ガラスが割られたことで頭に血が上ってる男の声がスピーカー部から聞こえてきた。
「オイッス。先ホドノ高校生ッス。石投ゲタラタマタマガラスニ当タッチマイマシタ」
『テメェらの仕業か! 今すぐ向かうからそこで待ってろ! いいな!』
 外からでもドタドタ聞こえてくるほどの乱暴な足取りで向かってきてると分かる。
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