異世界妖魔大戦〜転生者は戦争に備え改革を実行し、戦勝の為に身を投ずる〜

金華高乃

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第3章第二次妖魔大戦開戦編

第8話 ノイシュランデへ

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・・8・・
5の月28の日
連合王国北東部・ノイシュランデ市
ノイシュランデ中央駅

 戦争中だとは思えない晴天が広がり今は夕焼け空になりつつある、連合王国北東部の主要都市ノイシュランデ。
 早朝にアルネセイラを出発した軍用列車は夕方には僕の故郷であるノイシュランデに到着した。これまでに比べて六倍も早く着いたのには鉄道の凄さを実感するね。

「んんー、つーかれたー」

「お疲れ様、旦那様。鉄道は早かったけれど、これでも遅れていたのね」

「開通一ヶ月でやっと慣れてきたところにいきなり戦時輸送になったからね。混乱もするさ。むしろ一時間程度の遅延で済んでるのは優秀なくらいだね」

「鉄道本部の人達に感謝ね」

「ほんとね。さて、そろそろ停車だ」

 魔法蒸気機関車は減速しながら、ホーム進入の際に行う汽笛を鳴らして一分後には停車する。今回乗車したのは軍用列車なので降りる人物は全員が軍服を纏った軍人だ。
 僕とリイナは長距離移動に用いる大型の鞄を持って客車からホームに降りる。
 多くの人物がホーム上を行き交う中、僕はとある人達を見つける。

「父上、母上にお爺様! アルヴィンおじさんも!」

 僕をホームで出迎えてくれたのは父上達四人だった。父上とお爺様は背広に近い服を、母上はゆったりとした装飾が程々に施されたワンピースを、アルヴィンおじさんは戦時だけあって軍服を着用していた。

「おかえり、アカツキ。汽車は遅れると聞いていたけれど、あまり遅くならなくて良かったよ」

「おかえりなさい。戦争ですぐに行ってしまうのは寂しいし心配だけれど、あなたの顔が見られて嬉しいわ」

「ただいま戻りました、父上母上」

「アカツキや、よく戻ってきてくれたの」

「お爺様もご健康で何よりです。宣戦布告には驚かれたと思いますが……」

「全くの……。じゃが、アルヴィンが良くやってくれておる」

「よう、アカツキ。戻ってきた理由はマーチス大将閣下から聞いている。また出世だな」

「ありがとうございます。国を守るためにも、アルヴィンおじさんを全力でサポートするつもりです」

「そいつはありがてえ。お前が参謀なら心強いぜ」

 父上や母上、お爺様と挨拶を交わしてからアルヴィンおじさんにも同様にすると、アルヴィンおじさんは笑顔で肩を叩く。

「にしても綺麗な奥さんを貰ったと聞いていたけれど、実際に見ると美しい人だな。リイナだっけか。俺はノイシュランデから離れられなかっから初めましてだな。アカツキの事をよろしく頼むぜ」

「初めまして、アルヴィン中将閣下。リイナです。皆様と同じノースロードの姓を名乗らせて頂き、嬉しく思います。旦那様を支え、アルヴィン中将閣下とも親交を深めたいと思っておりますわ」

「こちらこそ。戦場ならともかく俺の事は中将閣下じゃなくてアルヴィンさんとでも呼んでくれていいぜ」

「アルヴィンおじ様はいかがでしょうか?」

「ははっ! 悪くねえな。じゃ、その呼び方で」

「かしこまりました、アルヴィンおじ様。御父様、御母様、御祖父様もよろしくお願いしますね」

「よろしく、リイナ。息子を頼むね」

「リイナさんならお強いから安心ね」

「うむ。孫をよろしくの」

 リイナは流麗な所作と言動でアルヴィンおじさんなど僕の親族と挨拶を交わす。仕事モードのリイナはプライベートと違って貴族の令嬢に相応しい振る舞いをしていた。こういう時の彼女は僕も美しいと思う。

「早速で悪いんだが時間が押してるからな。東部統合軍司令本部に向かうが構わないか?」

「はい、僕とリイナは荷物をひとまずは屋敷に運んで頂ければそれで構いません。父上達は?」

「ぼくは東から避難してきた民間人や領主としてやるべき事がある。けど、アリシアや父上が補助してくれているからアカツキは心配せずに軍務に集中しなさい。ここに来たのはお前の顔が見たかったからなんだ」

「分かりました、父上。ただどうかご無理なさらず。母上も、お爺様も」

 忙しい中でも迎えてくれた父上達の心遣いに感謝し、とはいえゆっくりと話す時間は無いので残念だけれど駅で別れて僕達は東部統合軍司令本部が設置されている陸軍第五師団本部に馬車で向かう。
 その道中、僕はある事に気付いた。

「アルヴィンおじさん。市内は思ったより混乱は少ないみたいですね。二百五十年振りの開戦で国境からそう遠くはないノイシュランデは最悪恐慌状態になっているかもしれないと想定していました」

「兄上の手腕のお陰だな。避難民はノイシュランデだけでもこの後数万人になるかもしれねえんだが、上手いこと呼びかけて最小限に抑えているんだわ。けどそれだけじゃねえ。事後報告になって悪ぃがお前とリイナの名前を使わせて貰った」

「僕に」

「私ですか?」

「おう。開戦にあたり、王国を守るため次期当主のお前と魔法能力者ランクA+のリイナが参戦する。改革を提案し現状成功させていて、『冷血の二丁拳銃』の二つ名を持つ次期当主と、強力な魔法能力者であり『絶対零度の氷雪姫』のリイナが来たからには勝利は間違いなしで案ずることは無いってな」

「二つ名はここでも広まっていましたか。……ならば責任重大ですね」

「私は旦那様を、ひいてはアルヴィンおじ様をサポートするのみ。頂いている名に相応しき行動をするのみです」

「アカツキの奥さんは肝が据わってんなあ。だが気に入ったぜ」

「由緒あるヨーク家の産まれですから。それに、私は旦那様に全てを捧げる所存ですので」

「げほっ、ごほっ!」

「おうおう、お熱いこって」

 僕はリイナの突拍子も無い発言に思わずむせてしまった。いい加減彼女の愛情表現には慣れたつもりだったけれど、今のは不意打ちだったよ……。

「あら旦那様。どうしたのかしら?」

「な、なんでもない……」

「ぷははっ! 普段は狼狽えねえアカツキの珍しい姿が見れたな!」

「そんな旦那様も私は愛しく思っております」

「リ、リイナ!」

「こいつは傑作だ! いいもん見れたぜ。平静を保ってるように見えるけどよ、仕方ねえが現場は突然の侵攻にどいつもこいつも冷静さを欠いちまってる。だがお前等が冗談言えるくらいには余裕があって助かるぜ」

「そこがリイナのいい所でもありますから」

「貴族が恐慌していては、庶民や兵達が不安になりますもの。ところでアルヴィンおじ様。確か統合軍本部にはお兄様が既にいらっしゃるのですよね?」

 和やかな会話をしていたけれど、それもここでおしまいのようだ。リイナが話を振ることで話題は軍務関係に移っていく。

「おうとも。リイナのお兄さん、ルークス少将なら今日の昼に到着したぜ。今までなら四日以上かかる所だが一日でノイシュランデ着だ。最低限のモノだけ持ってきて後は鉄路で輸送するらしい。鉄道様々だぜ」

「南部は東部と共に優先的に敷設させましたからね。最大時速は六十キーラ。これまでの五倍から六倍で移動可能です。今回の急速展開も鉄道あってこそです」

「お前の改革立案の功績だな。もし鉄道が無い状態で今を迎えてたと思うとぞっとするぜ……。――お、もう着いたみたいだな。司令室は一階だ」

 司令本部の正面玄関に到着すると、僕達は足早に指揮所になっている司令室へ向かう。
 司令室は統合本部のそれに比べて規模はやや小さいものの、統合情報管理司令支部だけあってかなりの広さだった。

「ルークス少将! 二人を連れてきたぞ!」

 アルヴィンおじさんは司令室の中央、戦況を示す地図や丸木型が置かれた大きなテーブルに傍にいたルークス少将に声をかける。彼は司令要員の一人と話していたけれどアルヴィンおじさんの呼びかけに反応すると、こちらを向き笑顔でやってきた。

「アルヴィン中将閣下、ありがとうございました! よくきてくれたよ、リイナ。それに、アカツキくんも」
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