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第3章第二次妖魔大戦開戦編
第6話 東部統合軍とアカツキ作戦参謀
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・・6・・
「第三飛行隊からも受信! 我、国境から約百二十キーラにて敵を視認! 魔物の大軍は推定万以上で時速四キーラ程度で西に向かう!」
「第四飛行隊からも! 内容はほぼ同じです!」
「第一飛行隊からも同様の連絡!」
「だ、第六からもです!」
「やはり侵攻してくるか……。妖魔共め、ふざけた宣戦布告文など送ってきやがって。連邦が最初の布告先というのが気にかかるがまあ今はいい。――無線装置にて東部及び南部方面軍に通達! 直ちに防衛行動へ移行! 中央方面軍及び北部方面軍は第一種戦闘配置へ移行し、いつでも動員可能なように! 西部方面軍も準第一種戦闘配置に移行せよ!」
『了解!』
マーチス侯爵による全軍への通達が魔法無線装置を介して行われる。東部及び南部は既に計画通りに配備が進んでいるから他国に比べて何倍も早く情報は伝わるだろう。敵が侵攻してきている以上、このメリットは計り知れない。
「マーチス大将閣下、妖魔軍の推定勢力が割り出せました」
「流石だ。早いな、ジェームズ参謀長。して、状況は?」
命令を下してすぐにマーチス侯爵のもとにやってきたのは統合本部参謀本部作戦参謀長のジェームズ少将だった。
彼はテーブルの端にあった黒く丸い木型を手に取ると、地図上に並べていく。
「まず連合王国に侵攻するであろう妖魔軍は約九万です」
「九万か……。法国より多いな……」
地図に置かれた黒丸の木型は九つ。膨大な数だけあってかなり縦長に展開している。
「ええ。それも統率が取れた魔物がです。対して現在即応で国境に向かわせられる我が軍は三個師団。東部及び南部の軍も現地防衛部隊を除けば四個師団は出せます。急行させれば合わせて七個師団が展開出来るでしょう。そのためには、鉄道輸送が必要です」
「妖魔軍到着までの日数とこちらの必要日数はどうだ?」
「妖魔軍が到達するまで最短で五日です。戦線を下げて、一般侵入禁止エリアギリギリまでであれば六日でしょう。我が軍四個師団の輸送は現地備蓄を活用して、兵站を後回しにすれば三日半から四日あればいけるかと。代わりに民間輸送は全面停止。アカツキ大佐の改革特務部立案の戦時輸送計画に則れば可能です」
「であれば民間輸送は停止して兵員と武器弾薬輸送を最優先、並行して兵站線も構築しろ。兵站計画も改革特務の戦時兵站計画を用いる。国王陛下は戦時の際は自動的に戦時体制移行の勅令が出るよう配慮なさっている。すぐに動くぞ」
「はっ。三個師団については防衛行動として既に動き始めています。残り四個師団についても即時命令を出します。編成はどうなさいますか?」
「従来の戦時編成計画に改良を加えた新編成に則り、東部方面軍と南部方面軍は統合運用。東部統合軍へ移行しろ。総司令官は先日中将に昇進したアルヴィン・ノースロードに。副司令官はオレの息子を置く。あいつが南部方面軍の実質司令官だからな」
新編成というのは、参謀本部がA号改革に併せて研究立案、昨年度に採用された新しい戦時編成計画だ。鉄道輸送と統合情報管理司令本部が生まれた事から、より効率的に軍を運用出来るようにした。
その結果生まれたのが対妖魔用の新編成、東部統合軍だ。従来の数倍の速さで兵を運び、連隊単位で通信可能になったからこそ大規模統合運用が行えるようになった。改革を進めていて良かったと思えるし、東部統合軍を考案した参謀本部は流石軍の頭脳だと思う。
「了解しました。アルヴィン・ノースロード中将とルークス・ヨーク少将閣下に至急連絡します」
「頼んだぞ、作戦参謀長」
「はっ!」
ジェームズ少将は敬礼をすると、すぐさま動き出す。
マーチス侯爵は彼との会話を終えると、僕達の方へ向き真剣な面持ちで口を開く。
「さて、アカツキ大佐。リイナ少佐。お前達をここに呼んだのは司令本部をよく知る者だからだけではない。どちらかというと、こちらが本命だ。これは軍部大臣命令。聞いてもらえるな?」
「軍部大臣命令……。なんでしょうか」
軍部大臣命令。軍においては国王陛下の勅令に次ぎ優先される命令だ。一体どんな命令なのだろうかと体は強ばる。
「アカツキ・ノースロード大佐。貴官を東部統合軍司令本部付作戦参謀に任ずる。叔父であるアルヴィン・ノースロード中将をその知能を持って支えよ。場合によっては魔法能力者としての優れた戦闘能力を発揮せよ。リイナ・ノースロード少佐はアカツキ大佐の副官となり彼をサポートしろ」
「了解しました、マーチス大将閣下。アカツキ大佐を全力で補助します」
「頼んだぞ。……どうした、アカツキ大佐」
「自分が、作戦参謀ですか?」
「そうだ。何か不満か? 貴官に相応しい役職であるが」
「い、いえ。不満ではありません」
むしろ名誉な事だ。新編成の東部統合軍で本部付作戦参謀なら戦略の中核を担うとても重要な役目。しかも叔父さんの元で故郷を守る仕事なんだ。これ以上心が奮う仕事はない。
けれど、一つだけ僕には心配事があった。
「では不都合でもあるか? アカツキの意見なら聞くが」
「僭越ながら、私は改革特務部の部長の任があります。改革はまだ道半ば。それだけが気掛かりです」
「心配するな。本日をもって貴官の改革特務部部長の任を解除する。後任には鉄道改革が一段落しており、二人に次いで統率力のあるジェフ大尉を少佐に昇進の上で当たらせる。人事異動は事後になるが、アカツキ大佐は統合本部所属となり、今回は統合本部から派遣という形にしておく。これなら問題あるまい? どうせ判を押すのはオレだ」
「マーチス大将閣下!?」
「それにだ。お前が一年間手塩をかけて育ててきた部下は無能か? オレはそうは思わんし、有能揃いと判断している。第一、危急の連合王国に貴官等らのような能力の高い軍人を遊ばせておく余裕はない。違うか?」
「その通りであります、マーチス大将閣下……」
「アカツキ。力を存分に発揮してこい。此度のような有事を想定し改革を提案、推進し成功させているお前の智謀なら、やれるとオレは信じているぞ」
マーチス侯爵は僕に対して信頼の眼差しを送り、肩に手を置いて言った。
大将閣下にここまで言わせておいて、断るなんて出来ない。それに戦場はノースロード領に近い。だったら答えは一つしかないだろう。
「了解しました。私の力が役に立つのならば、尽くしてみせましょう」
「よく言ってくれた。任せたぞ、アカツキ大佐」
「はっ!」
「リイナ少佐もよろしく頼む。部下としてだけでなく、妻としてもな」
「アカツキ大佐に万が一あれば、全てを凍らせてみせますよ。指一本触れさせません」
「頼もしい言葉だ。さあ、二人共。急かして悪いがすぐに動いてくれ」
「マーチス大将閣下。一つよろしいですか?」
「なんだ? 可能な範囲なら応えよう」
「戦争をするにあたり、用意したいものがあります。手配はしますから鉄道輸送の工面をしてくださいませんか?」
「工面? まさか、また面白い事を考えているな?」
僕の提案を察したのか、マーチス侯爵は獰猛な笑みを浮かべる。彼は僕をなんだと思っているのだろうか。認識は間違っていないんだけどさ。
「ええ。この一年、考えておいた策などがありますので」
「聞かせろ。どのような策だ?」
僕はマーチス侯爵に自身の策を披露する。
すると彼は。
「くくくっ、くははははははっ! 相変わらず容赦ない作戦を思いつくものだな!」
「これなら敵の損害を拡大させられますから」
「気に入った! 鉄道輸送は心配するな。優先的に輸送させよう」
「ありがとうございますマーチス大将閣下」
「『冷血の二丁拳銃』の名は伊達では無いな」
「大将閣下、その二つ名は些か自分には過分ですよ……」
リイナとの初訓練以来広まった二つ名を言われて、僕は苦笑いをする。まさかこんな仰々しいネームドで呼ばれるとは思わなかったけれど、既に軍内に広まりきっているので半ば諦めている。だとしても冷血って……。とは思うけれど……。
「過分なものか。これから相応しい戦果を持って帰ってくるのだろう?」
「国を守る為であれば、無論です」
「期待している。では二人共、話は以上だ」
「はっ!」
「任務を果たしてきます、マーチス大将閣下。いえ、お父様」
「うむ」
五の月二十六の日。
後に第二次妖魔大戦と呼称される激動の大戦はこの日に幕を開け、運命が大きく変わり始めた僕とリイナは戦地に赴く。
戦争に必要な物資の手配を済ませ輸送を任せた僕達がまず向かう先は故郷のノイシュランデ。
翌々日には鉄道を使ってノイシュランデへ向けて発ったけれど、到着したのはこれまでよりずっと早いその日の夕方だった。
「第三飛行隊からも受信! 我、国境から約百二十キーラにて敵を視認! 魔物の大軍は推定万以上で時速四キーラ程度で西に向かう!」
「第四飛行隊からも! 内容はほぼ同じです!」
「第一飛行隊からも同様の連絡!」
「だ、第六からもです!」
「やはり侵攻してくるか……。妖魔共め、ふざけた宣戦布告文など送ってきやがって。連邦が最初の布告先というのが気にかかるがまあ今はいい。――無線装置にて東部及び南部方面軍に通達! 直ちに防衛行動へ移行! 中央方面軍及び北部方面軍は第一種戦闘配置へ移行し、いつでも動員可能なように! 西部方面軍も準第一種戦闘配置に移行せよ!」
『了解!』
マーチス侯爵による全軍への通達が魔法無線装置を介して行われる。東部及び南部は既に計画通りに配備が進んでいるから他国に比べて何倍も早く情報は伝わるだろう。敵が侵攻してきている以上、このメリットは計り知れない。
「マーチス大将閣下、妖魔軍の推定勢力が割り出せました」
「流石だ。早いな、ジェームズ参謀長。して、状況は?」
命令を下してすぐにマーチス侯爵のもとにやってきたのは統合本部参謀本部作戦参謀長のジェームズ少将だった。
彼はテーブルの端にあった黒く丸い木型を手に取ると、地図上に並べていく。
「まず連合王国に侵攻するであろう妖魔軍は約九万です」
「九万か……。法国より多いな……」
地図に置かれた黒丸の木型は九つ。膨大な数だけあってかなり縦長に展開している。
「ええ。それも統率が取れた魔物がです。対して現在即応で国境に向かわせられる我が軍は三個師団。東部及び南部の軍も現地防衛部隊を除けば四個師団は出せます。急行させれば合わせて七個師団が展開出来るでしょう。そのためには、鉄道輸送が必要です」
「妖魔軍到着までの日数とこちらの必要日数はどうだ?」
「妖魔軍が到達するまで最短で五日です。戦線を下げて、一般侵入禁止エリアギリギリまでであれば六日でしょう。我が軍四個師団の輸送は現地備蓄を活用して、兵站を後回しにすれば三日半から四日あればいけるかと。代わりに民間輸送は全面停止。アカツキ大佐の改革特務部立案の戦時輸送計画に則れば可能です」
「であれば民間輸送は停止して兵員と武器弾薬輸送を最優先、並行して兵站線も構築しろ。兵站計画も改革特務の戦時兵站計画を用いる。国王陛下は戦時の際は自動的に戦時体制移行の勅令が出るよう配慮なさっている。すぐに動くぞ」
「はっ。三個師団については防衛行動として既に動き始めています。残り四個師団についても即時命令を出します。編成はどうなさいますか?」
「従来の戦時編成計画に改良を加えた新編成に則り、東部方面軍と南部方面軍は統合運用。東部統合軍へ移行しろ。総司令官は先日中将に昇進したアルヴィン・ノースロードに。副司令官はオレの息子を置く。あいつが南部方面軍の実質司令官だからな」
新編成というのは、参謀本部がA号改革に併せて研究立案、昨年度に採用された新しい戦時編成計画だ。鉄道輸送と統合情報管理司令本部が生まれた事から、より効率的に軍を運用出来るようにした。
その結果生まれたのが対妖魔用の新編成、東部統合軍だ。従来の数倍の速さで兵を運び、連隊単位で通信可能になったからこそ大規模統合運用が行えるようになった。改革を進めていて良かったと思えるし、東部統合軍を考案した参謀本部は流石軍の頭脳だと思う。
「了解しました。アルヴィン・ノースロード中将とルークス・ヨーク少将閣下に至急連絡します」
「頼んだぞ、作戦参謀長」
「はっ!」
ジェームズ少将は敬礼をすると、すぐさま動き出す。
マーチス侯爵は彼との会話を終えると、僕達の方へ向き真剣な面持ちで口を開く。
「さて、アカツキ大佐。リイナ少佐。お前達をここに呼んだのは司令本部をよく知る者だからだけではない。どちらかというと、こちらが本命だ。これは軍部大臣命令。聞いてもらえるな?」
「軍部大臣命令……。なんでしょうか」
軍部大臣命令。軍においては国王陛下の勅令に次ぎ優先される命令だ。一体どんな命令なのだろうかと体は強ばる。
「アカツキ・ノースロード大佐。貴官を東部統合軍司令本部付作戦参謀に任ずる。叔父であるアルヴィン・ノースロード中将をその知能を持って支えよ。場合によっては魔法能力者としての優れた戦闘能力を発揮せよ。リイナ・ノースロード少佐はアカツキ大佐の副官となり彼をサポートしろ」
「了解しました、マーチス大将閣下。アカツキ大佐を全力で補助します」
「頼んだぞ。……どうした、アカツキ大佐」
「自分が、作戦参謀ですか?」
「そうだ。何か不満か? 貴官に相応しい役職であるが」
「い、いえ。不満ではありません」
むしろ名誉な事だ。新編成の東部統合軍で本部付作戦参謀なら戦略の中核を担うとても重要な役目。しかも叔父さんの元で故郷を守る仕事なんだ。これ以上心が奮う仕事はない。
けれど、一つだけ僕には心配事があった。
「では不都合でもあるか? アカツキの意見なら聞くが」
「僭越ながら、私は改革特務部の部長の任があります。改革はまだ道半ば。それだけが気掛かりです」
「心配するな。本日をもって貴官の改革特務部部長の任を解除する。後任には鉄道改革が一段落しており、二人に次いで統率力のあるジェフ大尉を少佐に昇進の上で当たらせる。人事異動は事後になるが、アカツキ大佐は統合本部所属となり、今回は統合本部から派遣という形にしておく。これなら問題あるまい? どうせ判を押すのはオレだ」
「マーチス大将閣下!?」
「それにだ。お前が一年間手塩をかけて育ててきた部下は無能か? オレはそうは思わんし、有能揃いと判断している。第一、危急の連合王国に貴官等らのような能力の高い軍人を遊ばせておく余裕はない。違うか?」
「その通りであります、マーチス大将閣下……」
「アカツキ。力を存分に発揮してこい。此度のような有事を想定し改革を提案、推進し成功させているお前の智謀なら、やれるとオレは信じているぞ」
マーチス侯爵は僕に対して信頼の眼差しを送り、肩に手を置いて言った。
大将閣下にここまで言わせておいて、断るなんて出来ない。それに戦場はノースロード領に近い。だったら答えは一つしかないだろう。
「了解しました。私の力が役に立つのならば、尽くしてみせましょう」
「よく言ってくれた。任せたぞ、アカツキ大佐」
「はっ!」
「リイナ少佐もよろしく頼む。部下としてだけでなく、妻としてもな」
「アカツキ大佐に万が一あれば、全てを凍らせてみせますよ。指一本触れさせません」
「頼もしい言葉だ。さあ、二人共。急かして悪いがすぐに動いてくれ」
「マーチス大将閣下。一つよろしいですか?」
「なんだ? 可能な範囲なら応えよう」
「戦争をするにあたり、用意したいものがあります。手配はしますから鉄道輸送の工面をしてくださいませんか?」
「工面? まさか、また面白い事を考えているな?」
僕の提案を察したのか、マーチス侯爵は獰猛な笑みを浮かべる。彼は僕をなんだと思っているのだろうか。認識は間違っていないんだけどさ。
「ええ。この一年、考えておいた策などがありますので」
「聞かせろ。どのような策だ?」
僕はマーチス侯爵に自身の策を披露する。
すると彼は。
「くくくっ、くははははははっ! 相変わらず容赦ない作戦を思いつくものだな!」
「これなら敵の損害を拡大させられますから」
「気に入った! 鉄道輸送は心配するな。優先的に輸送させよう」
「ありがとうございますマーチス大将閣下」
「『冷血の二丁拳銃』の名は伊達では無いな」
「大将閣下、その二つ名は些か自分には過分ですよ……」
リイナとの初訓練以来広まった二つ名を言われて、僕は苦笑いをする。まさかこんな仰々しいネームドで呼ばれるとは思わなかったけれど、既に軍内に広まりきっているので半ば諦めている。だとしても冷血って……。とは思うけれど……。
「過分なものか。これから相応しい戦果を持って帰ってくるのだろう?」
「国を守る為であれば、無論です」
「期待している。では二人共、話は以上だ」
「はっ!」
「任務を果たしてきます、マーチス大将閣下。いえ、お父様」
「うむ」
五の月二十六の日。
後に第二次妖魔大戦と呼称される激動の大戦はこの日に幕を開け、運命が大きく変わり始めた僕とリイナは戦地に赴く。
戦争に必要な物資の手配を済ませ輸送を任せた僕達がまず向かう先は故郷のノイシュランデ。
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