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第1章転生編
第16話 A号改革
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・・16・・
この世界においては余りにも先進的な改革の内容に、謁見の間は二度目の騒然に包まれる。
ただ、この反応は僕にとっては予想の内だった。
僕が示した改革の中身はいずれもこの国を大きく変えることになるからだ。鉄道敷設は経済的に、その他の案は軍のシステムを変貌させ大幅に質的向上を叶えてくれるはず。全て実現したとしたら現在も発展を続ける連合王国がさらなる飛躍を遂げ、長年の平和で軍拡をしてこなかった各国の中でも飛び抜けて強力な軍を持つに至るだろう。
量的向上も必要だけれど、まずは質の面から。これらを行えば召喚武器に依存しない屈強な軍隊を作れるはず。
無論、召喚武器を安全保障に組み込む事までは否定しない。強力な戦術兵器になりうるのは確かだからだ。ただ、これに頼り過ぎるのはいけないだけ。だから僕は改革案を提示したんだ。
しかし、当然ながら謁見の間には戸惑いの声が出ていた。まず懸念を示したのは一時感情的になったエディン侯爵だった。
「驚愕の一言に尽きるな……。魅力的な改革案と思えた。だが、鉄道建設はともかくとして、師団増設を伴わないにしても急激な軍改革は各国の反応が不安だ。現状、他国は魔人の件を知らない。ともすれば、理由なき改革にも取られかねない。そうなれば外交においては面倒な事になる……」
外務大臣として最もな意見を述べるエディン侯爵。
続けて発言したのはマーチス侯爵だ。
「徴兵追加による安易な増員より、アカツキ少佐の言う改革は余程効果的だろうな。せっかくの最新鋭武器が導入されても更新が遅いと感じていたからオレも賛成だ。だがなあ、肝心なのは予算だ……。予算決定は陛下にお見せする前に財務大臣が作るから、彼がどう言うか……」
マーチス侯爵は賛同しながらも手痛い所をついてきた。前世でも軍予算は常に国家予算との戦いだった。新しい銃が完成したとなっても、すぐに全更新とはならない。予算には限りがあるからだね。なので、マーチス侯爵の指摘は的を得ていたものだった。
そして三番目に口を開いたのは宮内大臣だった。
「この改革が国にとって有益であると自分は感じた。国王陛下はどう思われましたでしょうか?」
宮内大臣の発言の後、聞かれた国王陛下は玉座の肘掛に肘を乗せて手を顎の下に置いて少しの間沈黙をする。そして。
「余にとっては非常に興味深い改革案であった。故に、アカツキ。挙げた七つの詳細を話せ」
国王陛下の発言に僕はひとまずホッとする。少なくとも頭ごなしに反対される可能性は消えたからだ。ここからはもうひと勝負。僕は心の中で気合いを入れて一つ一つ丁寧に説明し始めた。
「はっ。まずは鉄道敷設についてです。連合王国においては魔法蒸気機関が既に各所に導入されており、蒸気船などの物流にも欠かせなくなっております。陸上にも同様に、魔法蒸気機関を用いた交通システムの構築はどうかと思案したところ、資料で目にした現在実機開発済みの魔法蒸気機関車でした」
「先進的な視点を持つそちなら目を通したであろうな。その通りだ。我が国では陸上交通革命を目指して国家主導で鉄道の敷設は計画されておる。王都については設置する予定の駅だったか。その土地も確保済みぞ」
転生当初は目を通した文献に記載は無かったけれど、案の定専門書を読むと鉄道への言及もなされていた。しかも魔法蒸気機関車や諸々のシステムは開発済みで、後は敷設のみの実行段階間近になっていた。ともなれば、早急な導入をしない理由はないよね。
「私は鉄道敷設に関しては一挙に実行すべきと思いました。王都と主要都市を鉄道で結べば人とモノの交流は著しい進化を遂げるでしょう。商工業何れにも恩恵が生まれます。そして、鉄道は軍にも大きな利点となるでしょう」
「利点というのは何だ?」
「有事における緊急展開です。これまでは徒歩か馬による移動手段しか無く、展開速度も遅かった。しかし、鉄道であれば何倍ものスピードで兵や武器の輸送が可能となります。この利点は計り知れません。ただ、有事には軍輸送ダイヤグラムが必要ですから平時ダイヤとの折衝も必要になりますが」
「そちの言うのは最もだ。魔法蒸気機関車は八両で人を満載しても時速三十キーラメートルは出ると実験で出ておる。これは徒歩の七倍だ。効力は凄まじいだろうよ」
「聡明な国王陛下ならばお気付きだと思っておりました。よって、鉄道敷設は速やかにかつ一挙に進める事を進言します。具体的には王都を中心の駅として西はスィスィーを経由し北西部オランディア。北はキース。南はマーチス侯爵閣下のミュレヒュン。そして東部は我がノイシュランデを経由してワルシャーまで。さらにワルシャーからは南北に路線を敷設します」
総合計すれば数千キーラに及ぶ鉄道敷設計画。壮大な計画に投じる予算の事を考えたのかエディン侯爵は、これだけでも泡を吹いて倒れそうだな……。と呟いていた。
「まさに主要都市とこの王都を線で結ぶ一大事業であるな。だが、改革案はこれだけでは無かったであろう。次を話せ」
「かしこまりました。次に二つ目と三つ目について。後装式ライフルD1836の更新を三カ年で行います。ガトリング砲や後装式駐退機付大砲も極力早い更新を推進します」
「三カ年とは、これまた思い切ったな……」
マーチス侯爵はこれまでのライフルに比べて数倍早い全部隊導入に目を丸くしていた。現在主流のL1815は更新に十八年かかったのでその六倍だ。驚くのも当然ではあるね。
「ほう、三カ年とは随分急ぐな。ガトリング砲も最新式の大砲も強力だが、やはり導入を急いておるのはやはり妖魔共の存在か?」
「はい。仰る通りでございます。D1836もガトリング砲も大砲も、魔法能力者軍人を除いた全体八割の火力を驚異的に上昇させるでしょう」
「なるほどの。しかしだ。そちは先程から非能力者兵の武器ばかりの導入を言うておる。召喚武器ではいかんのか?連合王国軍にはSランク召喚武器所有者が十人、SSランクも四人おる。所謂、十人守護者、四極将軍は我が国が誇る万騎無双の英雄。今、そちの目の前におるマーチスも四極将軍が一人ぞ?」
はい来ました、召喚武器。Sランク召喚武器所有者は十人守護者、SSランク召喚武器所有者
は四極将軍と呼ばれ、ほとんどが軍の重要な地位ないし長に就いている。国王陛下の言うようにマーチス侯爵は四極将軍の一角で、彼は軍部大臣である為に国王陛下に次いで軍指揮権第二位となっている。えーっと、確かマーチス侯爵が所有する召喚武器は『神の杖』だったっけか。召喚武器専用魔法は『神光閃火』で、拡散型が数千本の追尾型光線による攻撃。収束型が半径二キーラが範囲の爆発魔法。
…………うん、マーチス侯爵は歩く核兵器か何かかな?
とまあ、マーチス侯爵一人例にしてもこのように戦術クラスで考えれば圧倒的ではある召喚武器。しかし、その弱点を僕は国王陛下に述べてゆく。
「召喚武器は国防の観点上欠かせない存在ではあります。しかし、これにばかり頼りきりでは危険です。ちなみにですが、召喚武器最上級のSSランクの顕現率は幾つでありましょうか?」
「……一万回召喚武器を召喚しようとして、一回の確率であるな」
ほらね!SSレア排出確率が0.01%とかソーシャルゲームならクソ運営って言われるレベルだよ!?戦争中にSSレア出てこい!なんて祈願しようとしたらもう末期も末期だよ……。
確率を聞いて僕は語調を強めていく。
「となると、魔人に対抗する為に新たな召喚武器を願おうとしても、一万回に一回ではあまりにも運任せです。もし出なかった場合は目も当てられません。また召喚武器所有者は召喚武器により英雄的強さを誇りますが、無敵ではありません。万が一にも戦死してしまった場合、連合王国軍は甚大なダメージを負います。要するに、対抗手段を失うわけです。その後の結末は凄惨な事になるでしょう」
「そちは召喚武器者の強さを信じておらぬと?」
「いいえ。召喚武器所有者の方々の強さは私も信じていますし、Aランクとはいえ召喚武器を保有している私自身もその頼もしさを実感しています。ですが、召喚武器は戦争における戦術はひっくり返せても戦略までには大きな影響は及ぼせません。扱うのは人で、武器はあくまでも武器です。それに数に限りがあります。限界があるのです」
「なるほどの……。だからこそ、召喚武器に依存せず大多数の底上げを図ると……」
「はい。戦争は質も大切ですが、行く末を決めるのは火力と物量です。少数の大火力より、大多数の火力は少数の大火力を凌駕します。故に、私は二つ目、三つ目の案を出したのです」
「そちの思考はよう分かった。さて、四つ目だがこれは二つ目三つ目で戦争のやり方が変わるから戦法を変えるという事であろう?」
「その通りです。ただ、大きな変化にはならないかと思われます。というのも、現在採用してちる散兵方式への移行だけですので」
「ならば四つ目は一番簡単に実行出来るであろうな。なら五つ目と六つ目に話を変えよう。どういう事なのか説明を続けよ」
「はい、国王陛下。現在、連合王国軍では王都主要施設や各領主居館、師団司令部に魔法無線装置が設置されています。しかしこれは数が少なく国全体を網羅するに至らず、情報網としては心許ない存在です。事実、今回のリールプル遭遇戦においてはリールプルに通信装置が無かった為に従来の伝令方式での報告となり初動対応が遅れました。これを改善するのが目的です」
前世では情報伝達速度と共有システムは極限まで効率的になされていた。軍事衛星、高処理能力を持つサーバーとコンピューター群にレーダー。お陰で分隊どころか個人レベルにまで戦況が把握できる程に高度化していたわけだ。C4Iなんてそれのいい例だ。戦略レベルから個人レベルにまでこれで戦況が判断出来たのだから。
だけど、この世界にはそんな便利なものは存在しない。魔法無線装置を除けば無線通信はまだ登場しておらず、電信の登場はもう少し後になるだろう。
だからこそ、魔法無線装置は活用しない手はない。かなり限定的ながらも前世現代に近い戦い方も可能になる。これは妖魔帝国との戦争で間違いなく大きな助けになるだろう。だからこその五つ目と六つ目の提案なんだ。
「具体的には連隊規模での導入とあるが、何故であるか」
「理想としては最低戦術単位の大隊までの導入が理想ですが、それでは相当数の通信装置が必要となり実現困難の可能性があります。通信装置は銃のように簡単に作れる訳ではありませんので。また、連隊規模であればある程度の網羅が可能です。連隊下大隊への通達は比較的楽ですので。なので、有事においても緊密な連携が叶うでしょう。何故ならば、戦争の勝敗は情報で決する事もあるからです。味方との連携だけでなく、敵の動きを迅速に全体へ察知させることも可能なのですから」
「なるほどの。確かに網の目のように魔法無線装置によって連絡を取りあえばこれまで不可能だった連隊間での協同も素早く行えるという訳か。他にも万が一妖魔共が再侵攻してきおっても、今より早く察知可能であるな」
「しかし、これにも問題があります。通信装置導入が連隊までとなれば今より通信量が大幅に増えます。そうなると、情報が錯綜する恐れがあります。対処しきれず混乱してしまったら導入の意味がありません。なので、情報を管理統合する為に上位指揮権限を持つ各軍本部に統合情報管理司令本部を設置。命令を迅速に伝えます。これに各方面軍に司令支部を設置すれば、混乱無く、素早くかつ効率的な情報管理体制が構築される事になるでしょう」
「素晴らしい考案であるな。今までに比べて圧倒的に情報伝達速度が上昇すれば間違いなく戦争の方法が変わるであろう。妖魔共が現れてもすぐに伝わるのであれば民も心強いであろう。避難となっても余裕時分が増える訳であるしの。さて、最後の兵站であるがこれは余も理解した。鉄道を利用すれば可能であろう?」
「流石は国王陛下にございます。鉄道を用いればこれまでより素早く運ぶことができますので。さらに、兵站に関しては現在大型と中型の軍兵站倉庫がありますが、有事の際には小型の物流拠点も設置します。これにより、欲しい時に欲しい物を届けることが可能になるでしょう。――以上がA号改革の各案詳細となります。……いかがで、しょうか?」
改革案について話すべき事は全部話した。後は国王陛下がどう判断するかだけ。
さあ陛下の判断は是なのか、非なのか。
僕はその瞬間を息を呑んで待つ。
そして、結論は。
この世界においては余りにも先進的な改革の内容に、謁見の間は二度目の騒然に包まれる。
ただ、この反応は僕にとっては予想の内だった。
僕が示した改革の中身はいずれもこの国を大きく変えることになるからだ。鉄道敷設は経済的に、その他の案は軍のシステムを変貌させ大幅に質的向上を叶えてくれるはず。全て実現したとしたら現在も発展を続ける連合王国がさらなる飛躍を遂げ、長年の平和で軍拡をしてこなかった各国の中でも飛び抜けて強力な軍を持つに至るだろう。
量的向上も必要だけれど、まずは質の面から。これらを行えば召喚武器に依存しない屈強な軍隊を作れるはず。
無論、召喚武器を安全保障に組み込む事までは否定しない。強力な戦術兵器になりうるのは確かだからだ。ただ、これに頼り過ぎるのはいけないだけ。だから僕は改革案を提示したんだ。
しかし、当然ながら謁見の間には戸惑いの声が出ていた。まず懸念を示したのは一時感情的になったエディン侯爵だった。
「驚愕の一言に尽きるな……。魅力的な改革案と思えた。だが、鉄道建設はともかくとして、師団増設を伴わないにしても急激な軍改革は各国の反応が不安だ。現状、他国は魔人の件を知らない。ともすれば、理由なき改革にも取られかねない。そうなれば外交においては面倒な事になる……」
外務大臣として最もな意見を述べるエディン侯爵。
続けて発言したのはマーチス侯爵だ。
「徴兵追加による安易な増員より、アカツキ少佐の言う改革は余程効果的だろうな。せっかくの最新鋭武器が導入されても更新が遅いと感じていたからオレも賛成だ。だがなあ、肝心なのは予算だ……。予算決定は陛下にお見せする前に財務大臣が作るから、彼がどう言うか……」
マーチス侯爵は賛同しながらも手痛い所をついてきた。前世でも軍予算は常に国家予算との戦いだった。新しい銃が完成したとなっても、すぐに全更新とはならない。予算には限りがあるからだね。なので、マーチス侯爵の指摘は的を得ていたものだった。
そして三番目に口を開いたのは宮内大臣だった。
「この改革が国にとって有益であると自分は感じた。国王陛下はどう思われましたでしょうか?」
宮内大臣の発言の後、聞かれた国王陛下は玉座の肘掛に肘を乗せて手を顎の下に置いて少しの間沈黙をする。そして。
「余にとっては非常に興味深い改革案であった。故に、アカツキ。挙げた七つの詳細を話せ」
国王陛下の発言に僕はひとまずホッとする。少なくとも頭ごなしに反対される可能性は消えたからだ。ここからはもうひと勝負。僕は心の中で気合いを入れて一つ一つ丁寧に説明し始めた。
「はっ。まずは鉄道敷設についてです。連合王国においては魔法蒸気機関が既に各所に導入されており、蒸気船などの物流にも欠かせなくなっております。陸上にも同様に、魔法蒸気機関を用いた交通システムの構築はどうかと思案したところ、資料で目にした現在実機開発済みの魔法蒸気機関車でした」
「先進的な視点を持つそちなら目を通したであろうな。その通りだ。我が国では陸上交通革命を目指して国家主導で鉄道の敷設は計画されておる。王都については設置する予定の駅だったか。その土地も確保済みぞ」
転生当初は目を通した文献に記載は無かったけれど、案の定専門書を読むと鉄道への言及もなされていた。しかも魔法蒸気機関車や諸々のシステムは開発済みで、後は敷設のみの実行段階間近になっていた。ともなれば、早急な導入をしない理由はないよね。
「私は鉄道敷設に関しては一挙に実行すべきと思いました。王都と主要都市を鉄道で結べば人とモノの交流は著しい進化を遂げるでしょう。商工業何れにも恩恵が生まれます。そして、鉄道は軍にも大きな利点となるでしょう」
「利点というのは何だ?」
「有事における緊急展開です。これまでは徒歩か馬による移動手段しか無く、展開速度も遅かった。しかし、鉄道であれば何倍ものスピードで兵や武器の輸送が可能となります。この利点は計り知れません。ただ、有事には軍輸送ダイヤグラムが必要ですから平時ダイヤとの折衝も必要になりますが」
「そちの言うのは最もだ。魔法蒸気機関車は八両で人を満載しても時速三十キーラメートルは出ると実験で出ておる。これは徒歩の七倍だ。効力は凄まじいだろうよ」
「聡明な国王陛下ならばお気付きだと思っておりました。よって、鉄道敷設は速やかにかつ一挙に進める事を進言します。具体的には王都を中心の駅として西はスィスィーを経由し北西部オランディア。北はキース。南はマーチス侯爵閣下のミュレヒュン。そして東部は我がノイシュランデを経由してワルシャーまで。さらにワルシャーからは南北に路線を敷設します」
総合計すれば数千キーラに及ぶ鉄道敷設計画。壮大な計画に投じる予算の事を考えたのかエディン侯爵は、これだけでも泡を吹いて倒れそうだな……。と呟いていた。
「まさに主要都市とこの王都を線で結ぶ一大事業であるな。だが、改革案はこれだけでは無かったであろう。次を話せ」
「かしこまりました。次に二つ目と三つ目について。後装式ライフルD1836の更新を三カ年で行います。ガトリング砲や後装式駐退機付大砲も極力早い更新を推進します」
「三カ年とは、これまた思い切ったな……」
マーチス侯爵はこれまでのライフルに比べて数倍早い全部隊導入に目を丸くしていた。現在主流のL1815は更新に十八年かかったのでその六倍だ。驚くのも当然ではあるね。
「ほう、三カ年とは随分急ぐな。ガトリング砲も最新式の大砲も強力だが、やはり導入を急いておるのはやはり妖魔共の存在か?」
「はい。仰る通りでございます。D1836もガトリング砲も大砲も、魔法能力者軍人を除いた全体八割の火力を驚異的に上昇させるでしょう」
「なるほどの。しかしだ。そちは先程から非能力者兵の武器ばかりの導入を言うておる。召喚武器ではいかんのか?連合王国軍にはSランク召喚武器所有者が十人、SSランクも四人おる。所謂、十人守護者、四極将軍は我が国が誇る万騎無双の英雄。今、そちの目の前におるマーチスも四極将軍が一人ぞ?」
はい来ました、召喚武器。Sランク召喚武器所有者は十人守護者、SSランク召喚武器所有者
は四極将軍と呼ばれ、ほとんどが軍の重要な地位ないし長に就いている。国王陛下の言うようにマーチス侯爵は四極将軍の一角で、彼は軍部大臣である為に国王陛下に次いで軍指揮権第二位となっている。えーっと、確かマーチス侯爵が所有する召喚武器は『神の杖』だったっけか。召喚武器専用魔法は『神光閃火』で、拡散型が数千本の追尾型光線による攻撃。収束型が半径二キーラが範囲の爆発魔法。
…………うん、マーチス侯爵は歩く核兵器か何かかな?
とまあ、マーチス侯爵一人例にしてもこのように戦術クラスで考えれば圧倒的ではある召喚武器。しかし、その弱点を僕は国王陛下に述べてゆく。
「召喚武器は国防の観点上欠かせない存在ではあります。しかし、これにばかり頼りきりでは危険です。ちなみにですが、召喚武器最上級のSSランクの顕現率は幾つでありましょうか?」
「……一万回召喚武器を召喚しようとして、一回の確率であるな」
ほらね!SSレア排出確率が0.01%とかソーシャルゲームならクソ運営って言われるレベルだよ!?戦争中にSSレア出てこい!なんて祈願しようとしたらもう末期も末期だよ……。
確率を聞いて僕は語調を強めていく。
「となると、魔人に対抗する為に新たな召喚武器を願おうとしても、一万回に一回ではあまりにも運任せです。もし出なかった場合は目も当てられません。また召喚武器所有者は召喚武器により英雄的強さを誇りますが、無敵ではありません。万が一にも戦死してしまった場合、連合王国軍は甚大なダメージを負います。要するに、対抗手段を失うわけです。その後の結末は凄惨な事になるでしょう」
「そちは召喚武器者の強さを信じておらぬと?」
「いいえ。召喚武器所有者の方々の強さは私も信じていますし、Aランクとはいえ召喚武器を保有している私自身もその頼もしさを実感しています。ですが、召喚武器は戦争における戦術はひっくり返せても戦略までには大きな影響は及ぼせません。扱うのは人で、武器はあくまでも武器です。それに数に限りがあります。限界があるのです」
「なるほどの……。だからこそ、召喚武器に依存せず大多数の底上げを図ると……」
「はい。戦争は質も大切ですが、行く末を決めるのは火力と物量です。少数の大火力より、大多数の火力は少数の大火力を凌駕します。故に、私は二つ目、三つ目の案を出したのです」
「そちの思考はよう分かった。さて、四つ目だがこれは二つ目三つ目で戦争のやり方が変わるから戦法を変えるという事であろう?」
「その通りです。ただ、大きな変化にはならないかと思われます。というのも、現在採用してちる散兵方式への移行だけですので」
「ならば四つ目は一番簡単に実行出来るであろうな。なら五つ目と六つ目に話を変えよう。どういう事なのか説明を続けよ」
「はい、国王陛下。現在、連合王国軍では王都主要施設や各領主居館、師団司令部に魔法無線装置が設置されています。しかしこれは数が少なく国全体を網羅するに至らず、情報網としては心許ない存在です。事実、今回のリールプル遭遇戦においてはリールプルに通信装置が無かった為に従来の伝令方式での報告となり初動対応が遅れました。これを改善するのが目的です」
前世では情報伝達速度と共有システムは極限まで効率的になされていた。軍事衛星、高処理能力を持つサーバーとコンピューター群にレーダー。お陰で分隊どころか個人レベルにまで戦況が把握できる程に高度化していたわけだ。C4Iなんてそれのいい例だ。戦略レベルから個人レベルにまでこれで戦況が判断出来たのだから。
だけど、この世界にはそんな便利なものは存在しない。魔法無線装置を除けば無線通信はまだ登場しておらず、電信の登場はもう少し後になるだろう。
だからこそ、魔法無線装置は活用しない手はない。かなり限定的ながらも前世現代に近い戦い方も可能になる。これは妖魔帝国との戦争で間違いなく大きな助けになるだろう。だからこその五つ目と六つ目の提案なんだ。
「具体的には連隊規模での導入とあるが、何故であるか」
「理想としては最低戦術単位の大隊までの導入が理想ですが、それでは相当数の通信装置が必要となり実現困難の可能性があります。通信装置は銃のように簡単に作れる訳ではありませんので。また、連隊規模であればある程度の網羅が可能です。連隊下大隊への通達は比較的楽ですので。なので、有事においても緊密な連携が叶うでしょう。何故ならば、戦争の勝敗は情報で決する事もあるからです。味方との連携だけでなく、敵の動きを迅速に全体へ察知させることも可能なのですから」
「なるほどの。確かに網の目のように魔法無線装置によって連絡を取りあえばこれまで不可能だった連隊間での協同も素早く行えるという訳か。他にも万が一妖魔共が再侵攻してきおっても、今より早く察知可能であるな」
「しかし、これにも問題があります。通信装置導入が連隊までとなれば今より通信量が大幅に増えます。そうなると、情報が錯綜する恐れがあります。対処しきれず混乱してしまったら導入の意味がありません。なので、情報を管理統合する為に上位指揮権限を持つ各軍本部に統合情報管理司令本部を設置。命令を迅速に伝えます。これに各方面軍に司令支部を設置すれば、混乱無く、素早くかつ効率的な情報管理体制が構築される事になるでしょう」
「素晴らしい考案であるな。今までに比べて圧倒的に情報伝達速度が上昇すれば間違いなく戦争の方法が変わるであろう。妖魔共が現れてもすぐに伝わるのであれば民も心強いであろう。避難となっても余裕時分が増える訳であるしの。さて、最後の兵站であるがこれは余も理解した。鉄道を利用すれば可能であろう?」
「流石は国王陛下にございます。鉄道を用いればこれまでより素早く運ぶことができますので。さらに、兵站に関しては現在大型と中型の軍兵站倉庫がありますが、有事の際には小型の物流拠点も設置します。これにより、欲しい時に欲しい物を届けることが可能になるでしょう。――以上がA号改革の各案詳細となります。……いかがで、しょうか?」
改革案について話すべき事は全部話した。後は国王陛下がどう判断するかだけ。
さあ陛下の判断は是なのか、非なのか。
僕はその瞬間を息を呑んで待つ。
そして、結論は。
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