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第1章転生編
第14話 父上と母上と、国王陛下との謁見と
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・・14・・
召還命令を受けて二日後。国王陛下謁見の為の準備を終えた僕はノイシュランデを発った。ノイシュランデから王都までは馬車で二日半程度で到着する。鉄道があれば一日どころか半日足らずで着けるだろうけど、無いものは仕方ない。今後の事を考えればますます鉄道の必要性を感じながら、馬車に揺られ予定通り二日半。
朝に王都へ着くよう調整して、晴天の空の下僕、は王都の目の前にたどり着いた。
「王都はすごいなあ。ノイシュランデと比較にならないくらい大きいや」
僕は馬車の窓から見えた王都の街並みを眺めながら感想を呟く。
連合王国王都アルネセイラの人口はノイシュランデの約六倍。政治・経済・軍事など国の首都に相応しく市街地は広大で中心市街地方面には高層建築物も見受けられるていて、高層建築物は無尽蔵に伸びたりはしておらず景観の観点から高さはおよそ四十メーラから五十メーラくらいで揃っていた。
技術的限界もあるだろうけれど、高層建築物の高さが揃っているのは景観の面だけではない。これ以上の高さで建てるのが勅令で禁止されているから。その理由が。
「王城のまた立派な事。てか、でかい。六十メーラくらいあるね」
王都中心にあるのが国王陛下がいる王城。百年前に建築が開始され、五十年前に完成という前世では考えられない期間を経て建設された王城は威容を誇っており、一番高い建築物の高さが六十メーラ。国王陛下がおわす建物より高いのは不敬。よって他の建築物の高さは最大五十メーラというのも政治体制的に頷ける話だね。
ファンタジー作品のような外観でありながら技術水準が産業革命期らしい近代化も進んでいる王都。馬車はいよいよその市街地へと入っていく。
「アカツキは先程から随分と楽しそうにしておるのお。王都はそう珍しくもなかろ?」
「王都の活気はノイシュランデでも参考になるかと思いまして。国の首都ともなれば先進的な部分はあるでしょうから」
「ふむ、勉強熱心なのは良い事じゃて」
向かい側に座るお爺様は、柔らかい表情で僕を見ながら言う。
今回の王都行きにはお爺様も同行している。王都には別件で父上と母上がいるけれど、今回の事は詳細には知らない。また、召還命令にはお爺様の指名もあった為に僕とお爺様二人で行くことになったんだ。ちなみに領主代行はアルヴィンおじさんが変わってくれている。
「ところで、アカツキや。準備中どころか移動中ですら何か書いておったようじゃが、一体それはなんじゃ?」
「これですか?」
お爺様に聞かれたものが分かった僕は、鞄の中から紙の束を取り出す。この世界は製紙技術も相応に発展しており、前世には劣るけれどそれなりの質の紙が存在している。新聞があるくらいだからね。ただ、僕が取り出した紙はこの世界ではかなり上質なもので表紙には僕の署名と家紋まで付けてあった。
内容は今後の連合王国の行く末にも繋がるもの。この世界で二度目の人生を歩むにあたって決めたばかりの目標にもなる事が書かれていた。
「その書類に家紋まで付けるということはつまり……」
「はい。謁見の際に使うものです。本当はもっと時間が欲しかったのですが、仕方ありません。国王陛下との謁見はそう滅多に叶うものではありませんし」
「国王陛下に、のお。報告書にしては随分と分厚いようじゃが……。まさか、儂に話してくれた事も書いてあるのかの?」
「無論です。魔人の件さえ無ければ焦る事もありませんでしたが、事態が不穏ともなれば話は別ですから」
「儂は先見の明がある案だ思うておるが、国王陛下はともかくとして……、果たして側近達がどう思うかじゃな……」
「そこは僕の説得と、お爺様にもご協力頂きたく」
僕はお爺様にどうかお願いします。と、頭を下げる。するとお爺様はふむ、と深く息をつきながらも。
「孫たっての願いじゃろ?断れる爺なんぞおらぬよ。初めて話を聞いた時には大層驚いたが、理には適っておる。どこからそんな発想が生まれたかと感心するくらいにはの」
「ありがとうございます。これで後は父上に話をするだけです」
「なに、あやつの事じゃ。少々先進的過ぎる部分もあるが、保守的という性格でも無い。自分の息子が歴史に名を残すやもしれん行動をしようとしておるのなら、反対はせんじゃろ。ノースロード領を守る為でもあるのなら尚更じゃて」
「であるのならば、心強いです」
「なあに、もし反対するようならば儂からも言うわい。案ずるな」
僕を安心させるためにもか、微笑むお爺様。一抹の不安が残っていた僕にとって、お爺様の言葉と表情は幾分か心が楽になった。
お爺様と話している間に王都旧市街地に入り、貴族の屋敷がある区画まで進んでいた。領地に屋敷がある貴族達も王都滞在中に拠点となる別邸が必要で、ノースロード家も類に漏れずこの区画にノースロード別邸が存在していた。父上と母上はそこにいるので、まずはそっちに向かっているわけだ。
「さて、到着のようじゃの」
「国王陛下との謁見は昼過ぎからです。余り悠長にはしていられないですね」
「忙しないが仕方あるまいて」
「ええ」
ノースロード別邸に着くと、門の衛兵かれ敬礼を受けて敷地内へと入っていく。屋敷の正面玄関前には数人の使用人と、中央には二人の男女がいた。あれが僕の父上と母上だ。
馬車は二人の前で止まり、ドアが開けられる。
「お出迎えありがとうございます、父上。母上」
「報告を聞いて驚いたけれど、無事で良かった。アカツキ。怪我は無かったかい?」
まず僕に声を掛けたのが父上だ。
本名、ルドルア・ノースロード。四十代半ばで僕と同じ黒髪を持ち、温厚で心優しそうな風貌。父上の弟であるアルヴィンおじさんは偉丈夫で武将のような体格に対して、父上は軍師のような感じかな。現当主にしてお爺様から受け継いだ領地経営を堅実に、しかし時には大胆に行う経済分野に強みを持つ人物。優しくも敏腕の領主。それが父上だ。
「はい、怪我はありません。ご心配ありがとうございます」
「大変だったみたいね。けれど、あなたに何も無くて良かったわ」
「むう、僕はもう立派な成人ですよー?」
僕のもとにまで寄ってきて、優しく頭を撫でたのが母上。あの、僕二十二歳なんですが……。
母上の名前はアリシア・ノースロード。実年齢は四十代初頭でありながら、見た目は三十代半ばのように見える若さを保ち、暗い茶色の髪を肩の下くらいまで伸ばしている。時に厳しく時に優しい、息子想いの母親だ。
父上と結婚する前は連合王国北西部の領主、オランドハイツ家の令嬢で、父上と出会ったのは王都での舞踏会。そこでの交流がきっかけで今に至るという貴族の中では珍しい恋愛を経ての結婚だ。幸い、両家の格も同じでメリットもある事から障害なく婚約し現在も互いの家の仲は良好だ。
「幾つになっても母親は息子の身を案ずるものよ。ましてやあなたは一人息子で、遭遇したのが魔人だったんですもの……」
「この通り僕は無傷ですからご心配無く、母上。ところで父上。早速で悪いのですが、お話する事がございます」
「ん、ぼくにかい?」
「はい。お爺様には既に話してありますが、父上にもと思って。無論、母上にもです」
「あらあら、どんな話かしら」
「分かったよ。外は冷える。謁見に向かう前までに簡単な昼食が取れるようにと用意してあるから中で聞こうか」
「ありがとうございます」
父上の案内で僕は前世の記憶が戻る前には何度も訪れた別邸の中に入る。
本当はもう少し腰を落ち着かせたいけれどのんびりしている時間はないので、昼食を摂りながら僕はお爺様に話した事を父上や母上にも伝える。
内容が内容だけに一部は反対されるかと思っていたけれど、父上や母上から出た言葉は。
「よろしい、のですか?」
「いいんじゃないかな。アカツキの好きなようにしなさい」
「知らない間にとても勉強していたのね。頭のお固い保守の方々はどう思うか知らないけれど、少なくとも私は反対しないわ」
「こらこら、アリシア。彼等をそう悪く言わないでくれ。長年戦争が無かったんだから、急進的な考えに及ぶものは少ないんだから仕方ないよ」
「だけどあなた。ここに書かれているのは的を射ているわよ?少々革新的だけれども、国の利益にもなるわ」
「だからぼくも賛成した。アカツキ、根回しはぼくに任せなさい。お前はお前の考えた事を国王陛下にお伝えすればいい。なあに、父様も付いているんだから心配ないさ」
父上は柔らかく笑み、母上も微笑む。二人共僕の行動に賛同してくれるのは心強いし、何より嬉しかった。
「ありがとうございます。これで心置き無く謁見に挑(のぞ)めます」
「アカツキも知っておるじゃろうが、国王陛下と儂は魔法士官学校の同期での。あのお方は身分を隠して様々な者と交流しておって、儂もその一人じゃ。真相を知った時は大層驚いたが、お陰で当主時代は何かと助かったものじゃて」
国王陛下、何やってるんですか……。身分隠して魔法士官学校に潜ったって……。
だけど、そんなお茶目(?)な国王陛下なら少なくとも保守的に偏っている事はないだろう。それが分かっただけでも心は楽になる。
「父様もこう言っている。アカツキ、自信を持って国王陛下の前で話しなさい」
「はい!」
こうして父上、母上にも賛同してもらい、僕は二人に見送られてお爺様と共に王城へと向かった。
謁見一時間前に到着してからまずは控え室に案内され、時間が近付くと謁見の間へと通される。国王陛下が来る前にいたのは宮内大臣のレオルディ・マーシャル伯爵。五十代後半のいかにも官僚といった風貌を漂わせる国王陛下側近の一人。国王陛下の身辺や王宮行事全般を司る、宮内省のトップだ。前世でも宮内庁があったから立ち位置はイメージしやすいね。
他にも、南部一帯の領主でありながら軍部大臣のマーチス・ヨーク侯爵。階級は陸軍大将で魔法能力者。さらには外務大臣のエディン・トール侯爵もいた。まさに錚々(そうそう)たる顔ぶれだ。
「間もなく国王陛下が入られる。もう暫くお待ちを」
「はっ。かしこまりました」
「うむ」
僕は軍の礼装を、お爺様は貴族が着る礼装を身にまとって国王陛下登場を待つ。
しばし、と言っていたけれどその時は割とすぐに訪れた。
「国王陛下、あらせられます」
宮内大臣の号令と共に僕とお爺様、国の重臣たる三人も片膝をついて顔を伏せる臣下の礼を取る。
足音が聞こえ、正面にあった豪奢な椅子に国王陛下が座った音が聞こえる。陛下が登場した瞬間に謁見の間は荘厳な雰囲気に包まれた。
そして。
「皆の者、顔を上げよ」
『はっ!』
顔を上げるとそこにいたのは、連合王国の君主に相応しい威厳に満ちた老齢の男性がいた。
この人がアルネシア連合王国第四十一代国王、エルフォード・アルネシアであった。
召還命令を受けて二日後。国王陛下謁見の為の準備を終えた僕はノイシュランデを発った。ノイシュランデから王都までは馬車で二日半程度で到着する。鉄道があれば一日どころか半日足らずで着けるだろうけど、無いものは仕方ない。今後の事を考えればますます鉄道の必要性を感じながら、馬車に揺られ予定通り二日半。
朝に王都へ着くよう調整して、晴天の空の下僕、は王都の目の前にたどり着いた。
「王都はすごいなあ。ノイシュランデと比較にならないくらい大きいや」
僕は馬車の窓から見えた王都の街並みを眺めながら感想を呟く。
連合王国王都アルネセイラの人口はノイシュランデの約六倍。政治・経済・軍事など国の首都に相応しく市街地は広大で中心市街地方面には高層建築物も見受けられるていて、高層建築物は無尽蔵に伸びたりはしておらず景観の観点から高さはおよそ四十メーラから五十メーラくらいで揃っていた。
技術的限界もあるだろうけれど、高層建築物の高さが揃っているのは景観の面だけではない。これ以上の高さで建てるのが勅令で禁止されているから。その理由が。
「王城のまた立派な事。てか、でかい。六十メーラくらいあるね」
王都中心にあるのが国王陛下がいる王城。百年前に建築が開始され、五十年前に完成という前世では考えられない期間を経て建設された王城は威容を誇っており、一番高い建築物の高さが六十メーラ。国王陛下がおわす建物より高いのは不敬。よって他の建築物の高さは最大五十メーラというのも政治体制的に頷ける話だね。
ファンタジー作品のような外観でありながら技術水準が産業革命期らしい近代化も進んでいる王都。馬車はいよいよその市街地へと入っていく。
「アカツキは先程から随分と楽しそうにしておるのお。王都はそう珍しくもなかろ?」
「王都の活気はノイシュランデでも参考になるかと思いまして。国の首都ともなれば先進的な部分はあるでしょうから」
「ふむ、勉強熱心なのは良い事じゃて」
向かい側に座るお爺様は、柔らかい表情で僕を見ながら言う。
今回の王都行きにはお爺様も同行している。王都には別件で父上と母上がいるけれど、今回の事は詳細には知らない。また、召還命令にはお爺様の指名もあった為に僕とお爺様二人で行くことになったんだ。ちなみに領主代行はアルヴィンおじさんが変わってくれている。
「ところで、アカツキや。準備中どころか移動中ですら何か書いておったようじゃが、一体それはなんじゃ?」
「これですか?」
お爺様に聞かれたものが分かった僕は、鞄の中から紙の束を取り出す。この世界は製紙技術も相応に発展しており、前世には劣るけれどそれなりの質の紙が存在している。新聞があるくらいだからね。ただ、僕が取り出した紙はこの世界ではかなり上質なもので表紙には僕の署名と家紋まで付けてあった。
内容は今後の連合王国の行く末にも繋がるもの。この世界で二度目の人生を歩むにあたって決めたばかりの目標にもなる事が書かれていた。
「その書類に家紋まで付けるということはつまり……」
「はい。謁見の際に使うものです。本当はもっと時間が欲しかったのですが、仕方ありません。国王陛下との謁見はそう滅多に叶うものではありませんし」
「国王陛下に、のお。報告書にしては随分と分厚いようじゃが……。まさか、儂に話してくれた事も書いてあるのかの?」
「無論です。魔人の件さえ無ければ焦る事もありませんでしたが、事態が不穏ともなれば話は別ですから」
「儂は先見の明がある案だ思うておるが、国王陛下はともかくとして……、果たして側近達がどう思うかじゃな……」
「そこは僕の説得と、お爺様にもご協力頂きたく」
僕はお爺様にどうかお願いします。と、頭を下げる。するとお爺様はふむ、と深く息をつきながらも。
「孫たっての願いじゃろ?断れる爺なんぞおらぬよ。初めて話を聞いた時には大層驚いたが、理には適っておる。どこからそんな発想が生まれたかと感心するくらいにはの」
「ありがとうございます。これで後は父上に話をするだけです」
「なに、あやつの事じゃ。少々先進的過ぎる部分もあるが、保守的という性格でも無い。自分の息子が歴史に名を残すやもしれん行動をしようとしておるのなら、反対はせんじゃろ。ノースロード領を守る為でもあるのなら尚更じゃて」
「であるのならば、心強いです」
「なあに、もし反対するようならば儂からも言うわい。案ずるな」
僕を安心させるためにもか、微笑むお爺様。一抹の不安が残っていた僕にとって、お爺様の言葉と表情は幾分か心が楽になった。
お爺様と話している間に王都旧市街地に入り、貴族の屋敷がある区画まで進んでいた。領地に屋敷がある貴族達も王都滞在中に拠点となる別邸が必要で、ノースロード家も類に漏れずこの区画にノースロード別邸が存在していた。父上と母上はそこにいるので、まずはそっちに向かっているわけだ。
「さて、到着のようじゃの」
「国王陛下との謁見は昼過ぎからです。余り悠長にはしていられないですね」
「忙しないが仕方あるまいて」
「ええ」
ノースロード別邸に着くと、門の衛兵かれ敬礼を受けて敷地内へと入っていく。屋敷の正面玄関前には数人の使用人と、中央には二人の男女がいた。あれが僕の父上と母上だ。
馬車は二人の前で止まり、ドアが開けられる。
「お出迎えありがとうございます、父上。母上」
「報告を聞いて驚いたけれど、無事で良かった。アカツキ。怪我は無かったかい?」
まず僕に声を掛けたのが父上だ。
本名、ルドルア・ノースロード。四十代半ばで僕と同じ黒髪を持ち、温厚で心優しそうな風貌。父上の弟であるアルヴィンおじさんは偉丈夫で武将のような体格に対して、父上は軍師のような感じかな。現当主にしてお爺様から受け継いだ領地経営を堅実に、しかし時には大胆に行う経済分野に強みを持つ人物。優しくも敏腕の領主。それが父上だ。
「はい、怪我はありません。ご心配ありがとうございます」
「大変だったみたいね。けれど、あなたに何も無くて良かったわ」
「むう、僕はもう立派な成人ですよー?」
僕のもとにまで寄ってきて、優しく頭を撫でたのが母上。あの、僕二十二歳なんですが……。
母上の名前はアリシア・ノースロード。実年齢は四十代初頭でありながら、見た目は三十代半ばのように見える若さを保ち、暗い茶色の髪を肩の下くらいまで伸ばしている。時に厳しく時に優しい、息子想いの母親だ。
父上と結婚する前は連合王国北西部の領主、オランドハイツ家の令嬢で、父上と出会ったのは王都での舞踏会。そこでの交流がきっかけで今に至るという貴族の中では珍しい恋愛を経ての結婚だ。幸い、両家の格も同じでメリットもある事から障害なく婚約し現在も互いの家の仲は良好だ。
「幾つになっても母親は息子の身を案ずるものよ。ましてやあなたは一人息子で、遭遇したのが魔人だったんですもの……」
「この通り僕は無傷ですからご心配無く、母上。ところで父上。早速で悪いのですが、お話する事がございます」
「ん、ぼくにかい?」
「はい。お爺様には既に話してありますが、父上にもと思って。無論、母上にもです」
「あらあら、どんな話かしら」
「分かったよ。外は冷える。謁見に向かう前までに簡単な昼食が取れるようにと用意してあるから中で聞こうか」
「ありがとうございます」
父上の案内で僕は前世の記憶が戻る前には何度も訪れた別邸の中に入る。
本当はもう少し腰を落ち着かせたいけれどのんびりしている時間はないので、昼食を摂りながら僕はお爺様に話した事を父上や母上にも伝える。
内容が内容だけに一部は反対されるかと思っていたけれど、父上や母上から出た言葉は。
「よろしい、のですか?」
「いいんじゃないかな。アカツキの好きなようにしなさい」
「知らない間にとても勉強していたのね。頭のお固い保守の方々はどう思うか知らないけれど、少なくとも私は反対しないわ」
「こらこら、アリシア。彼等をそう悪く言わないでくれ。長年戦争が無かったんだから、急進的な考えに及ぶものは少ないんだから仕方ないよ」
「だけどあなた。ここに書かれているのは的を射ているわよ?少々革新的だけれども、国の利益にもなるわ」
「だからぼくも賛成した。アカツキ、根回しはぼくに任せなさい。お前はお前の考えた事を国王陛下にお伝えすればいい。なあに、父様も付いているんだから心配ないさ」
父上は柔らかく笑み、母上も微笑む。二人共僕の行動に賛同してくれるのは心強いし、何より嬉しかった。
「ありがとうございます。これで心置き無く謁見に挑(のぞ)めます」
「アカツキも知っておるじゃろうが、国王陛下と儂は魔法士官学校の同期での。あのお方は身分を隠して様々な者と交流しておって、儂もその一人じゃ。真相を知った時は大層驚いたが、お陰で当主時代は何かと助かったものじゃて」
国王陛下、何やってるんですか……。身分隠して魔法士官学校に潜ったって……。
だけど、そんなお茶目(?)な国王陛下なら少なくとも保守的に偏っている事はないだろう。それが分かっただけでも心は楽になる。
「父様もこう言っている。アカツキ、自信を持って国王陛下の前で話しなさい」
「はい!」
こうして父上、母上にも賛同してもらい、僕は二人に見送られてお爺様と共に王城へと向かった。
謁見一時間前に到着してからまずは控え室に案内され、時間が近付くと謁見の間へと通される。国王陛下が来る前にいたのは宮内大臣のレオルディ・マーシャル伯爵。五十代後半のいかにも官僚といった風貌を漂わせる国王陛下側近の一人。国王陛下の身辺や王宮行事全般を司る、宮内省のトップだ。前世でも宮内庁があったから立ち位置はイメージしやすいね。
他にも、南部一帯の領主でありながら軍部大臣のマーチス・ヨーク侯爵。階級は陸軍大将で魔法能力者。さらには外務大臣のエディン・トール侯爵もいた。まさに錚々(そうそう)たる顔ぶれだ。
「間もなく国王陛下が入られる。もう暫くお待ちを」
「はっ。かしこまりました」
「うむ」
僕は軍の礼装を、お爺様は貴族が着る礼装を身にまとって国王陛下登場を待つ。
しばし、と言っていたけれどその時は割とすぐに訪れた。
「国王陛下、あらせられます」
宮内大臣の号令と共に僕とお爺様、国の重臣たる三人も片膝をついて顔を伏せる臣下の礼を取る。
足音が聞こえ、正面にあった豪奢な椅子に国王陛下が座った音が聞こえる。陛下が登場した瞬間に謁見の間は荘厳な雰囲気に包まれた。
そして。
「皆の者、顔を上げよ」
『はっ!』
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