異世界妖魔大戦〜転生者は戦争に備え改革を実行し、戦勝の為に身を投ずる〜

金華高乃

文字の大きさ
2 / 390
第1章転生編

第1話 生まれ変わった世界は異世界で、僕は合法ショタでした

しおりを挟む
・・1・・
「ああああああぁぁぁぁ!?」

  僕は甲高い悲鳴を上げて飛び起きる。全身に冷や汗が流れていて、そのせいで服もびしょ濡れだった。息も絶え絶えで、脈拍は酷く乱れている。心臓の鼓動も……。
  …………いや、待て。待つんだ僕。
  僕は確か、あの場で死んだはずだ。無抵抗で死ぬのはごめんだからと持っていた小銃を撃ち尽くした上で、一発だけ残した自動拳銃で自分の頭を確実にぶち抜いたはず。なのに、今こうして僕は生きている。
  となると、ここは天国か? もしくは、地獄か?
  ……地獄では、ないね。だとしたら余りにも平穏過ぎる光景だ。
  違うそうじゃない。てか、ここどこだよ。
  目を覚まして、目の前に広がっている景色に僕は混乱する。
  そこにあったのは、それなりに大きな部屋だった。自分がいるのはベッドで、上質な素材の白色のパジャマを着ている。シーツは上等で、ベッドそのものも豪奢ではないけれど、まるで高級ホテルのようにふかふかで寝心地の良さそうなものだった。
  視線を前に移す。ベッドの向こうにあるのは執務に使えそうな立派な木製の机と椅子があり、羽ペンとインクが机に置いてあった。いずれも華美ではないけれど機能的であり貴族の部屋には相応しい。机と椅子の隣には本棚がいくつもあって、ぎっしりと分厚い本が収納されている。
  ……貴族の部屋? そう、そうだよ。そもそもこの部屋、まるで欧州の貴族の部屋みたいじゃないか。ベッドもあるから寝室だろうか。あとは書斎も兼ねてる?
  ……本当にどこだよここ。僕は戦闘用の軍服を着ていたはずなのにパジャマだし、部屋は資料館で見るようなのに似たものばかりだし、電化製品は見当たらない。テレビも無いし蛍光灯も無い。エアコンも無いし、携帯端末も無いじゃないか。
  天国でも無ければ地獄でもない。ここがどこか分からない僕は混乱する。

「どういうことなんだ……。どこだここ……、あぐぅ!? あああああああああ!?」

  すると瞬間。僕は酷い頭痛に襲われる。頭が割れそうな位に痛い。けれどこの痛みはすぐに判明する。
  なぜならば、僕の脳内に大量の情報が流入してきたからだ。
  ここはどこで、どんな世界で、僕は誰で。ありとあらゆる情報が大量にダウンロードされるかのように入ってくる。それに耐えられなくて、僕はまた悲鳴を上げた。

「はぁ……、はぁ……、はぁ……。うっそ、だろ……。一昔の、物語か、よ……」

  ここは、地球の日本ではなくてヨールネイト大陸西部に位置するアルネシア連合王国のノースロード領。その領主の館の一室。世界の仕組みが次々と流れてくる。
  僕は高槻亮ではなくて、アカツキ・ノースロード。伯爵家であるノースロード家の長男で今年二十二歳。ノースロード家は古くから続く家系で軍人貴族。僕はそこの跡取り。僕が誰なのかも、情報が入ってきた事で判明する。
  いずれもまるで空想の世界の話のようなのだけれど、そもそも僕は死んだはずなのにこうやって生きているのがこれが現実である事の何よりの証拠だ。
  だけど、驚くべきはそれだけでなかった。いやまあ、生きてる事自体信じられないんだけどさ。

「この世界には、魔法が存在する……」

  そうなんだ。この世界が地球ではない事の証が、魔法が存在しているということ。僕が死ぬ前にいた世界には魔法なんてモノは空想の産物で、小説やマンガ、ドラマや映画でのみにあるフィクションのシロモノだった。けれども、ここには魔法が確かにある。というのも、本棚に入っている書籍のタイトルには魔法に関するものが幾つも見受けられたからだ。さらに、机に置いてあるランプには火をつける場所が存在しない。そして、魔法があると嫌でも受け入れざるをえない理由がこれだった。

「外は冬、だよね? 晴れてはいるけど、雪が残ってる。なのに部屋は暖かい」

  ベッドから体を起こして、窓から――ガラスの質が悪いのか地球で見てきた頃のガラスよりほんの少しだけ透明度が低い気がする――外の景色を見てみると外には雪景色になっていた。貴族の家らしく広くて整えられている庭には雪が十センチ程度ではあるけれど積もっている。にも関わらず部屋は適温になっていた。暖房機器も見当たらないのにこれはおかしい。ああ、あの器具か……。となると、流入してきた情報は間違いではないわけだ。

「…………ええと。ダメだ、頭がこんがらがってるぞう」

  だけれども、如何(いかんせん)死んだはずが生きていてしかも自分は別人物になっている。この世界が地球ではなく別の世界でしかも貴族だ。他にも大量にこれまでの人生とは全く違う
 この状況に混乱しないはずが無かった。
  とはいえ、これはどう足掻いても現実。僕は亮ではなくて今はアカツキなのだ。こればかりかは受け入れざるを得ない。と、とにかくとりあえず落ち着かないと……。
  そう思う事にした僕は、深呼吸を何度かする。
  すると、自室(でいいんだよね?)のドアの向こうからノックの音がした。

「アカツキ様、入ってもよろしいですか?」

「あ、うん。いいよ」

  扉の向こうから聞こえてきたのは若い女性の声だった。ベッドの隣に置いてあったタオルで額に残っていた汗を拭いて、僕は入室の許可をする。

「失礼します」
 
  現れたのは二十代手前くらいの女性だった。銀色の髪の毛はセミロングで、瞳の色はサファイアのよう。整った顔立ちの、真面目そうな女の子だった。格好は前世ではコスプレでしかなかなか見られなかったメイド服。ただしメイドカフェのようなミニではなくロング丈のスカートだね。アカツキとしての記憶は、彼女が誰かを知っている。だから彼女の名前はすんなりと出てきた。

「どうしたの、レーナ」

「近くを通った際にアカツキ様の叫び声が聞こえたので駆けつけました。大丈夫ですか?」

  あぁ、起きた時か頭痛の時の声を聞いたのか。彼女、レーナは僕の専属メイドらしいので、主人のそんな声を聞いたら心配もするよね。しかし、専属メイドか。まさに貴族って感じだよね。

「大丈夫、ちょっと夢見が悪かったんだ」

「夢見ですか……。三日前からかなり体調を崩されていましたから無理もありませんね。お加減の方はいかがですか?」

  どうやら僕は酷い風邪を引いていたらしい。ベッドの隣に置いてある、さっき汗を拭いた時に使った冷たいタオルは元はと言えば額に乗せられていたのだろう。それらはレーナが看病してくれたものだった。と、流入した記憶が伝えてくれている。

「お陰様でだいぶ良くなったよ。だけど、汗でびっしょりだね」

「それでしたら身体の汗を拭うタオルを持ってきますね」

「いや、出来れば湯浴みがしたいな……」

「かしこまりました。すぐに手配致しますね」

  レーナは微笑みながら言う。どうやら真面目ではあるものの感情の起伏が乏しいというわけではなさそうだ。僕を安心させるための表情だと言うのが伝わってくる。

「うん、ありがとう」

「とんでもございません。御用意できましたらまたお呼びしますね。では、失礼致します」

  レーナは流麗な所作で僕の部屋を後にする。流入した記憶によると彼女が僕の専属メイドになって二年で、ここに来てから三年半だっけか。動作一つで彼女が優秀なメイドなんだと感じた。

「さて、僕も準備しないと」

  いい加減この汗のせいで気持ち悪くベタベタの寝間着も着替えたいし、ということで僕はゆっくりとベッドから立ち上がる。着替えなどは用意してくれるから――ここも貴族らしい点だよなと思う――やる事なんて少ないけどさ。

「んー、んんー? そういえば僕ってこんなに声が高かったっけ」

  レーナと会話をし、立ち上がり独りごちたところでふと気付いた事がある。
  それは、僕の外見はどうな風なのだろうか。である。
  というのも、亮だった時の僕に比べて声が高い気がするし起立した時の目線が少し低いからだ。
  亮だった頃の僕は身長百六十五センチ。男性にしてはやや低めで少し童顔だったとはいえ、声は男性としては普通の部類だった。体つきだって、特殊部隊の軍人だったから鍛えられてそれなりにがっしりとしていた。
  けれど、僕の視界に映る自身の腕は細い。アカツキとしての僕もそこそこには鍛えている記憶が入ってきたから鍛錬を怠ってはいないのは分かるんだけど、にしても細い。これだと華奢、の部類に入る。

「鏡、そうだ鏡で見ればいいじゃんか。どこだっけ……。あ、あった」

  僕は鏡を探すとすぐに見つかった。身だしなみの確認をする為の縦長の全身が写るタイプの鏡だ。
  僕は縦長の鏡の方まで移動する。
  鏡の前まで着いて、写っていたのは僕のはすま。なのに、その姿は前世とはかけ離れていた。
 
「おと、おん、おん、おんんん!?」

  目の前にいたのは、まるで女の子のような外見の自分だった。
  髪の毛は前世と同じ黒に近いけれど、髪色は烏の濡れ羽色のように艶やかで美しい。髪質はサラサラとしていて絹のよう。瞳の色は灰色で、可愛らしい女の子のようなくりりとしている。輪郭は以前にも増して童顔で、とても二十二歳とは思えない。十代半ばと言われても違和感がないくらいだ。鼻筋も通っていて、唇はぷるりと柔らかそうだ。
  総合的に評価すると、鏡にいる自分は控えめに言っても可愛かった。思わずウィンクなんてしてみてしまう。……ちくしょう可愛い。自分なのにね!
  だからこそ、自分を見つめてまず最初に取った行動はコレしか無かった。

「股間は……、うん。あるわ。あったわ」

  良かったのか悪かったのか。確認したらちゃんと男としてあるはずのモノはついていた。見た目は女の子みたいだけど、性別は入ってきた記憶の通りのようだ。こういう姿で性別なのを何と呼称するかは知っている。僕自身も漫画やアニメとかサブカル系の趣味が多少はあったから。
  …………どう見ても合法ショタです本当にありがとうございました!
  うん、まあそのアレだ……。

「本当に、生まれ変わったんだな……」

  頬をつねってみる。痛い。夢ではなくて、現実のようだ。目が覚めてから改めて確証を得る。
  どうやら僕は、本当に別世界の別人物に生まれ変わったらしい。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...