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最終章 『 オペレーション・ブレイクドア』
第8話 世界の命運を決める15分(1)
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・・8・・
『警告。八時方向から一○時方向にかけて多数の光線系術式を感知。発射まであと五秒』
『無線封鎖解除!! 総員突っ切れ!! 動きを止めるな!!』
賢者の瞳の無機質な音声が孝弘の耳に届いてすぐ、彼の視線の先に無数とも思える光線系魔法が上下左右のあらゆる方角に発射された。
この時に放たれた光線系魔法は約七○。転移門がある地区の入口たる釧路空港付近には迎撃部隊ときて、小隊単位の虚ろ目のエンザリアや光属性魔法能力者が配置されていたのだ。
『回避!! 回避!!』
『クソッ、避けられ――』
『ああっ、ちくしょ――』
高高度侵入では位置を悟られるからと低高度侵入で向かったのが仇となったが、今更ああだこうだ言ったところでどうしようも無い。
『警告。七時方向から九時方向。二時方向から四時方向より多数の光線系術式を探知』
『キリがないなもう!! 各員増速しつつ反撃!!』
璃佳の命令にすぐ従ったのは一回目の法撃時点で詠唱準備に入っていた人達だった。属性統一はないが、強力な反撃だ。
第一射と第二射を行った敵部隊は約二○○。そのうち約四○がこの反撃で沈黙した。それでも約一六○が残った。無視できる数ではない。
『BTL2よりセブンスへ。ここの敵部隊は我々第二大隊に任せて転移門へお向かい下さい』
『セブンスよりBTL2へ。了解。生きてまた会おう』
『ええ、必ず。NBTL2(川越中佐)、あとは頼む』
『もちろん』
『第二大隊、反転!! 釧路空港付近の敵を殲滅する!!』
『了解!!』
特務第二大隊の隊員達は方角を南へ急転回し、釧路空港付近にいる敵部隊への法撃を始めた。孝弘は彼等の無事を祈りながら速度を時速九○○から九五○へと上げる。
孝弘達が国道二四○号桜田付近から北海道横断自動車道阿寒インターにまで差し掛かると、敵の迎撃火力はさらに強まる。二八一人いた釧路転移門奇襲部隊は二六○人にまで減っていた。
それでも彼らは突き進む。
ついに孝弘達は釧路転移門が視認出来る位置にたどり着いた。
阿寒町の中心街から転移門までの距離は約一○キロ。今の速度なら一分足らずでたどり着ける距離だが、門に着くのが目的では無い。門周辺の敵と交戦しこれを撃破するのが孝弘達の役目である。
だが、彼等の前に広がっていたのは。
『阿寒の長閑な景色が跡形もない……』
『知ってる建物がなんも残っちゃいねえ!!』
『分かっちゃいたけど、ここまで大規模で堅牢な基地にされているとは』
北海道の道東出身者達が唖然とする。
かつての阿寒の姿はどこにも無い。彼等の瞳に映るのは、街のような大きな軍の基地だった。
『ならばかつての景色を取り戻す。それだけ。さて、世界の命運を決める戦を始めるよ!! 作戦は超シンプル。釧路転移門基地周辺の敵部隊を徹底的に叩き、戦闘機部隊が安心してブツをぶち込めるようにする。以上!! 上空でデカい一撃叩き込んだらすぐ着陸しろ!! 各員、所定の位置に展開し攻撃部隊!!』
『了解!!』
『サー、イエッサー!!』
『了解しました!!』
『やってやらぁ!!』
『セブンスよりSA1へ。本中と本中特戦分は敵が最も集中する上阿寒周辺に着陸する。いいね』
『SA1よりセブンスへ。了解しました』
『さぁさぁさぁさぁ、最初からフルスロットルで行くよ!! 準備はいいか!!』
『応ッッ』
三○名の雄叫びが響く。
ここに集うは日本最精鋭能力者達と称しても何ら大袈裟ではない強者達。
三○名の内、Sランク能力者五名。最上位能力者比率一割二分五厘は世界の戦争史において最も高い率である。
それはまるで、映画の終盤にヒーロー達が集う一大決戦の姿のようで。
事実、ここにいるのは今から世界を救おうとする英雄達だった。
上空から凄まじい対地法撃が注がれる。
直後、三○名は道の駅の南付近に着陸した。
「――空狐『茜』召喚。続けて発動。茜ッッ!!」
「んむ。最後の戦に我が華を咲かせようぞ。『一の鍵、解錠』」
璃佳の命にて舞い降りるは、神の片鱗を漂わせる一柱たる茜。躊躇いもなく、一の鍵は開けられた。
「四人で必ず生きて帰るぞ」
「ええ!」
「おう!」
「うん!」
「賢者の瞳、全制限機能停止。残余魔力警告を生命維持限界値に設定」
『全制限システム停止。残余魔力警告極限値設定完了』
「『完全解除』、始め」
『『完全解除』承認。『MODE:スサノオ』起動。カウントスタート。残余時間、一○八○』
全ての枷を外した孝弘、水帆、大輝、知花は獰猛な笑みを浮かべた。
大輝はゴーレムジェネラルを召喚し。
知花は白く光り、神々しさを感じる魔法陣を多数展開させ。
水帆は知花以上に魔法陣を顕現させた。無数とも思えるほどに。
孝弘は身体強化に感知強化魔法、ありとあらゆる強化魔法を自身に付与させ、二丁の魔法拳銃に最大限の魔力を注ぎ込む。
四人とも長くは持たないだろう。
残余時間一○八○秒を越えれば、その場から歩くどころか立つことすら叶わなくなる。
それが、『完全解除』の代償だ。
でも、それでも構わない。
孝弘達の決意は、とっくに済んでいたから。
研ぎ澄まされた感覚に、璃佳の呼吸音はよく聞こえた。
さあ、合図が始まると。肌にチリチリと伝わる。
「吶ッッッッ喊ッッッッ!!!!」
世界の命運が決するまで、あと一五分。
『警告。八時方向から一○時方向にかけて多数の光線系術式を感知。発射まであと五秒』
『無線封鎖解除!! 総員突っ切れ!! 動きを止めるな!!』
賢者の瞳の無機質な音声が孝弘の耳に届いてすぐ、彼の視線の先に無数とも思える光線系魔法が上下左右のあらゆる方角に発射された。
この時に放たれた光線系魔法は約七○。転移門がある地区の入口たる釧路空港付近には迎撃部隊ときて、小隊単位の虚ろ目のエンザリアや光属性魔法能力者が配置されていたのだ。
『回避!! 回避!!』
『クソッ、避けられ――』
『ああっ、ちくしょ――』
高高度侵入では位置を悟られるからと低高度侵入で向かったのが仇となったが、今更ああだこうだ言ったところでどうしようも無い。
『警告。七時方向から九時方向。二時方向から四時方向より多数の光線系術式を探知』
『キリがないなもう!! 各員増速しつつ反撃!!』
璃佳の命令にすぐ従ったのは一回目の法撃時点で詠唱準備に入っていた人達だった。属性統一はないが、強力な反撃だ。
第一射と第二射を行った敵部隊は約二○○。そのうち約四○がこの反撃で沈黙した。それでも約一六○が残った。無視できる数ではない。
『BTL2よりセブンスへ。ここの敵部隊は我々第二大隊に任せて転移門へお向かい下さい』
『セブンスよりBTL2へ。了解。生きてまた会おう』
『ええ、必ず。NBTL2(川越中佐)、あとは頼む』
『もちろん』
『第二大隊、反転!! 釧路空港付近の敵を殲滅する!!』
『了解!!』
特務第二大隊の隊員達は方角を南へ急転回し、釧路空港付近にいる敵部隊への法撃を始めた。孝弘は彼等の無事を祈りながら速度を時速九○○から九五○へと上げる。
孝弘達が国道二四○号桜田付近から北海道横断自動車道阿寒インターにまで差し掛かると、敵の迎撃火力はさらに強まる。二八一人いた釧路転移門奇襲部隊は二六○人にまで減っていた。
それでも彼らは突き進む。
ついに孝弘達は釧路転移門が視認出来る位置にたどり着いた。
阿寒町の中心街から転移門までの距離は約一○キロ。今の速度なら一分足らずでたどり着ける距離だが、門に着くのが目的では無い。門周辺の敵と交戦しこれを撃破するのが孝弘達の役目である。
だが、彼等の前に広がっていたのは。
『阿寒の長閑な景色が跡形もない……』
『知ってる建物がなんも残っちゃいねえ!!』
『分かっちゃいたけど、ここまで大規模で堅牢な基地にされているとは』
北海道の道東出身者達が唖然とする。
かつての阿寒の姿はどこにも無い。彼等の瞳に映るのは、街のような大きな軍の基地だった。
『ならばかつての景色を取り戻す。それだけ。さて、世界の命運を決める戦を始めるよ!! 作戦は超シンプル。釧路転移門基地周辺の敵部隊を徹底的に叩き、戦闘機部隊が安心してブツをぶち込めるようにする。以上!! 上空でデカい一撃叩き込んだらすぐ着陸しろ!! 各員、所定の位置に展開し攻撃部隊!!』
『了解!!』
『サー、イエッサー!!』
『了解しました!!』
『やってやらぁ!!』
『セブンスよりSA1へ。本中と本中特戦分は敵が最も集中する上阿寒周辺に着陸する。いいね』
『SA1よりセブンスへ。了解しました』
『さぁさぁさぁさぁ、最初からフルスロットルで行くよ!! 準備はいいか!!』
『応ッッ』
三○名の雄叫びが響く。
ここに集うは日本最精鋭能力者達と称しても何ら大袈裟ではない強者達。
三○名の内、Sランク能力者五名。最上位能力者比率一割二分五厘は世界の戦争史において最も高い率である。
それはまるで、映画の終盤にヒーロー達が集う一大決戦の姿のようで。
事実、ここにいるのは今から世界を救おうとする英雄達だった。
上空から凄まじい対地法撃が注がれる。
直後、三○名は道の駅の南付近に着陸した。
「――空狐『茜』召喚。続けて発動。茜ッッ!!」
「んむ。最後の戦に我が華を咲かせようぞ。『一の鍵、解錠』」
璃佳の命にて舞い降りるは、神の片鱗を漂わせる一柱たる茜。躊躇いもなく、一の鍵は開けられた。
「四人で必ず生きて帰るぞ」
「ええ!」
「おう!」
「うん!」
「賢者の瞳、全制限機能停止。残余魔力警告を生命維持限界値に設定」
『全制限システム停止。残余魔力警告極限値設定完了』
「『完全解除』、始め」
『『完全解除』承認。『MODE:スサノオ』起動。カウントスタート。残余時間、一○八○』
全ての枷を外した孝弘、水帆、大輝、知花は獰猛な笑みを浮かべた。
大輝はゴーレムジェネラルを召喚し。
知花は白く光り、神々しさを感じる魔法陣を多数展開させ。
水帆は知花以上に魔法陣を顕現させた。無数とも思えるほどに。
孝弘は身体強化に感知強化魔法、ありとあらゆる強化魔法を自身に付与させ、二丁の魔法拳銃に最大限の魔力を注ぎ込む。
四人とも長くは持たないだろう。
残余時間一○八○秒を越えれば、その場から歩くどころか立つことすら叶わなくなる。
それが、『完全解除』の代償だ。
でも、それでも構わない。
孝弘達の決意は、とっくに済んでいたから。
研ぎ澄まされた感覚に、璃佳の呼吸音はよく聞こえた。
さあ、合図が始まると。肌にチリチリと伝わる。
「吶ッッッッ喊ッッッッ!!!!」
世界の命運が決するまで、あと一五分。
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