異世界帰還組の英雄譚〜ハッピーエンドのはずだったのに故郷が侵略されていたので、もう一度世界を救います〜

金華高乃

文字の大きさ
上 下
242 / 250
最終章 『 オペレーション・ブレイクドア』

第7話 転移門を目指せ

しおりを挟む
 ・・7・・
 2037年4月25日
 午前七時過ぎ
 釧路方面上陸部隊輸送艦隊
 旗艦 強襲揚陸艦『若狭』飛行甲板

 遂に運命の一日が始まった。

 午前六時前。
 事前の予定通り釧路市街地方面上陸部隊への支援として、海軍の艦砲射撃・ミサイル攻撃及び空軍戦闘機部隊の爆撃が敢行される。この時点で釧路市街地にあったマジックジャミング装置は破壊され、市街に展開していた虚ろ目のエンザリアなど対空迎撃生命体を撃破。加えて神聖帝国軍の道東方面司令部施設の大部分の破壊に成功する。

 午前六時半。
 海軍と空軍の猛烈な攻撃が行われる中で、釧路方面上陸部隊は釧路市大楽毛から益浦にかけての海岸に奇襲的上陸を開始。
 マジックジャミング装置や司令部施設、通信設備を破壊された神聖帝国軍は混乱に陥っており、これら上陸部隊に対して反撃出来た神聖帝国軍部隊はあまり多くなかった。

 そして午前七時。
 釧路ゲートの破壊に向かう孝弘達は強襲揚陸艦『若狭』の飛行甲板で、離陸の時を迎えようとしていた。

「水帆、最終チェック頼んだ」

「分かったわ。孝弘のが終わったら私のもよろしくね」

「もちろん」

 孝弘と水帆は、フェアルを含めた各装備の最終チェックを行う。
 彼らだけでは無い。世界の命運を分ける作戦を前にしても、いつもと違うのは彼等のいる所が陸上ではなく飛行甲板上であるくらいで、それら以外はこれまでと同じような光景があった。

「賢者の瞳相互点検機能起動。…………オールグリーン。異常なし。孝弘のフェアル、よし。魔力残量九九パーセント、よし。魔力回復薬の携行五本、よし。主装備、よし。背部装備、対物魔法ライフルよし。流石に試製対物ライフルは持っていけないわよね」

「機動力が落ちるからな。――じゃあ俺もチェックするぞ。賢者の瞳相互点検機能。…………オールグリーン。異常なし。水帆のフェアル、よし。魔力残量九九パーセント、よし。魔力回復薬の携行五本、よし。主装備、杖、よし。副装備魔法拳銃、よし。大丈夫だ、問題ない」

「ありがとう、孝弘」

「どういたしまして」

 孝弘と水帆は相互点検を終えると璃佳達のいる方へ向かう。やや遅れて、大輝と知花もやってきた。

 釧路ゲートへ向かう部隊は『北特団第一大隊』と『特務第二大隊』に、璃佳や熊川など本部中隊の中でも本作戦に耐えうる少数の隊員と孝弘達の『本部中隊付特戦分隊』。
 作戦の性質上、揚陸艦から約二個大隊を素早く離陸させないといけないから、小隊単位で次々と離陸していた。

 孝弘達が離陸する番はすぐにまわってきた。

「特戦分の皆さん、お気をつけて」

「ご武運を」

「皆さんならやり遂げると信じて、待ってます」

「阿寒は自分の故郷で……。お願いです。阿寒を奴等から取り返して下さい。お願いします」

「分かった。貴官の故郷を、北海道を取り戻してみせる」

「はい……!!」

「特戦分、離陸よろし!!   いつでもどうぞ」

 甲板作業員から声がかかると、孝弘達は強襲揚陸艦の甲板にいた将兵達へ敬礼し、空へと飛び立っていった。

『若狭コントロールよりSA1へ。今後の通信は全て日本語とします。SAはセブンスの本中と合流してください。セブンスは現在、一○時方向距離九○○にて待機中』

「SA1より若狭コントロール了解。セブンスへ合流する」

 孝弘は返答し、璃佳達のいる方へ向かった。

「SA1よりセブンス。特戦分一一名、合流しました」

『セブンスよりSA1。合流確認。もうちょっとしたら集まるから、そしたら向かうよ』

「SA1了解」

 約二分後。転移門へ向かう部隊が集まった。

『若狭コントロールよりセブンスへ。総員離陸、集合を確認。高度制限及び速度制限解除』

『セブンスより若狭コントロールへ。高度制限及び速度制限解除を確認。――セブンスより総員へ。これより釧路ゲートへ向かう。所定の飛行陣形へ移行次第、速度九五○で作戦地域へ向かう』

「了解!」

 孝弘を含め璃佳の命令に答えると、彼らは速やかに飛行陣形を形成していった。

『さぁ、行くよ!!』

『はっ!!』

 釧路ゲート奇襲部隊は一斉に加速。ジェット旅客機並の速度にまで加速して針路を北北西にして向かう。

『若狭コントロールよりセブンスへ。あと七キロで無線封鎖地点に入ります。ゲート付近のマジックジャミング装置を破壊するまでは無線封鎖は続行。ご武運を』

 璃佳は若狭との通信を終えると、送り先を部下達へ変えた。

『言いたいことはこの前までにあらかた伝えたから、これだけ言っておく。私達の手で、この戦争を終わらせよう。以上』

「了解」

 ごくわずかなやり取り。
 それでも彼等には十分伝わった。
 璃佳は二、三呼吸を整えると口を開く。

『まもなく無線封鎖区域に突入。高度三○○まで降下。海岸沿いの根室本線が見えたら、一五○まで降下。釧路空港の右方を突っ切るよ』

 璃佳の指示に孝弘達は素早く従い、一糸乱れぬ動きをみせる。

 孝弘が視線を北東の方へ向けると、空軍に海軍、一○一旅団含む魔法軍が釧路市街地へ徹底的な空爆を行っているのがよく見えた。ヘリには海兵隊員の先遣上陸隊が満載されていて、海上には上陸部隊第一陣にすぐ続く形で上陸部隊第二陣が数多くいた。

 奇襲効果はそう長く続くわけではない。
 彼等が引っ掻き回している間に、自分達がケリをつけなければ。孝弘は拳に力を入れてそう強く思った。

 転移門の奇襲部隊は海外線すぐの根室本線を通過。さらに高度を落としていく。市街地方面への奇襲上陸に人を割いたからなのか、海岸線での迎撃は無かった。

 だが、そのような時間は案の定長くは続かなかった。
 釧路空港の右方に差し掛かった頃だった。
 賢者の瞳からけたたましい警告音が彼等の耳に鳴り響く。

『警告。八時方向から一○時方向にかけて多数の光線系術式を感知。発射まであと五秒』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます

竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論 東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで… ※超注意書き※ 1.政治的な主張をする目的は一切ありません 2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります 3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です 4.そこら中に無茶苦茶が含まれています 5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません 6.カクヨムとマルチ投稿 以上をご理解の上でお読みください

この争いの絶えない世界で ~魔王になって平和の為に戦いますR

ばたっちゅ
ファンタジー
相和義輝(あいわよしき)は新たな魔王として現代から召喚される。 だがその世界は、世界の殆どを支配した人類が、僅かに残る魔族を滅ぼす戦いを始めていた。 無為に死に逝く人間達、荒廃する自然……こんな無駄な争いは止めなければいけない。だが人類にもまた、戦うべき理由と、戦いを止められない事情があった。 人類を会話のテーブルまで引っ張り出すには、結局戦争に勝利するしかない。 だが魔王として用意された力は、死を予感する力と全ての文字と言葉を理解する力のみ。 自分一人の力で戦う事は出来ないが、強力な魔人や個性豊かな魔族たちの力を借りて戦う事を決意する。 殺戮の果てに、互いが共存する未来があると信じて。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

改造空母機動艦隊

蒼 飛雲
歴史・時代
 兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。  そして、昭和一六年一二月。  日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。  「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。

処理中です...