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第15章 滅亡を防ぐために
第7話 AR式模擬戦 孝弘VS璃佳(前)
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・・7・・
「閣下と私とで、訓練試合ですか?」
「そそ。AR訓練機能を使って本気でやるよ」
「明後日には出港ですが……」
「大丈夫だって。ARなら怪我の心配はほぼ無いでしょう?」
「確かにそうではありますが……」
孝弘は歯切れの悪い返答をする。明後日には出港して戦地へ向かうのにSランク同士の実戦形式訓練なんてやって不測の事態でもしたらどうするという理由もあったが、それ以外にもワケはあった。
孝弘の内心はともかく、彼が訓練に渋り気味なのは璃佳にも易々と伝わった。
「なになに、乗り気じゃないの? デカめの魔法以外は近距離特化の私と近中距離メインのキミとでは相性が悪いからとか?」
「いえ。距離を詰められば私の不利ですが、裏を返せば詰められる頻度さえ減らせば勝機はありますし、近接格闘戦に心得がないわけではありません」
「……ごめんごめん。意地悪な聞き方したね。キミが気にしてるコトには気付いてるって言えば分かるかな?」
「…………!」
璃佳の心中を見透かしたような言いぶりに孝弘はドキリとさせられる。二人の周りには遠巻きながらなんだろうと数人が集まり始めていたが、璃佳は声のトーンを落として会話を続けた。
「あの日以降、色んなことが目まぐるしく動いて話す機会をほとんど設けられなかったし、それにかまけてキミと話す時間が取れなかったことを、申し訳なくは思ってる。でも。いや、だからこそかな。今から私のワガママにちょっと付き合ってもらえると嬉しい。たぶん、米原中佐の悩みを解決できると思うから。それに」
「それに?」
「クヨクヨしてる時は、身体を動かすと少しはマシになるからかな」
舌をちろりと出しておどけてみせる璃佳に、孝弘は彼女をじっと見つめると。
「……分かりました。Sランク同士の実戦訓練なんて滅多にありません。私も決戦前にいい経験になりますし、彼等にとっても楽しめるでしょう」
「ふふ、分かってんじゃん。――おーい! 今から私と米原中佐でAR式実戦訓練やるよ!」
璃佳が個人訓練などをしていた隊員達に声をかけると、すぐにゾロゾロ集まり始めていた。少し遠くで訓練に励んでいた者達もなんだなんだ寄ってきていた。その数、六五名。
「七条閣下と米原中佐が!?」
「SランクとSランクの実戦訓練とかやべえな!」
「なあなあ、どっちが勝つと思う?」
「やっぱ我らが七条閣下だろ! 米原中佐は近距離戦をあんましてないだろ? 閣下に分があると思うけどなあ」
「いーや米原中佐ね。数は多くないけど作戦中に銃撃+近接格闘の組み合わせで戦ってるから、全くの不利ってことはないわ」
「だったら皆で予想しようぜ!」
「いいなそれ!」
「いいんですか、アレ。賭けになってないだけまだいいですけど……」
孝弘のいうように賭けまではいかないが、勝者予想をし始める隊員達に彼はややジト目をして璃佳へ視線を送る。対して璃佳はニコニコしていた。
「いいんじゃない? どうせ数日後には生きるか死ぬかなんだし、今を楽しむのは重要だと思うよ。――私と米原中佐、どっちに何人いるー?」
「七条閣下が三四人、米原中佐が三一人です! 閣下の方がやや多めですが、ここまでの僅差は初ですよ!」
「おー、そいつは面白くて楽しい予想になったね!」
「僅差? 初?」
「川島中佐の時にも似たようなことがあってね。その時は今よりもうちょっと差があったかな。確か五六対四五。五六が私ね」
「アイツ、いつの間にそんなことを……。閣下の方が票数が多くなるのは妥当だと思いますよ。どちらかというと、彼は後衛タイプですから」
「まあね。私と同じ召喚士で近接武器タイプだけど、自身と召喚体の戦う比率でいったら私の方が自分で戦う率が高いし。……さて。親友の事をさておいてさ、戦い方的には私の方が有利にも関わらず、私より米原中佐を選んだ人がほぼ半数いる事実が分かったわけだけど?」
璃佳は孝弘へ、キミの悩みと現実の結果に大きな差があるんじゃない? キミの憂いは杞憂では?
と暗に示していた。随分と遠回しな言い方ではあるが。
孝弘もそれに気づかないほど抜けていない。ならば、やることは一つ。
「私に期待してくれた人達のためにも、全力でお相手致しましょう」
「そうこなくっちゃ♪」
AR方式訓練のルールはすぐに決められた。
◾︎制限時間は三分。
◾︎魔法障壁展開数は同時に一○枚まで。累計三○枚まで展開可能。
◾︎米原中佐の魔法拳銃のマガジン数は一丁につき三つまで。計六つ。七条准将は魔法拳銃の装備無し。
◾︎即死もしくは致命的ダメージが入った時点で訓練終了。
◾︎三分間で決着がつかなかった場合、割られた魔法障壁数が少ない方が勝ちとする。
◾︎フィールド全体が効果範囲になりうる上級魔法以上の魔法使用は不可。
◾︎フェアルの使用は不可。
「って感じでどう?」
「了解しました。問題ありません」
「よーし。なら、位置につこっか」
『両者位置につきましたか!』
開始の合図を引き受けた士官が孝弘と璃佳に問いかける。
「大丈夫だ」
「オッケー!」
『ならば、両者AR訓練モードを起動し武装の準備と魔法障壁の準備を!』
孝弘と璃佳はAR訓練モードを起動し武装を出し、魔法障壁を展開する。
『両者の準備完了を確認。カウント開始します! 五、四、三、二、一』
始め!!
の合図から間髪入れずに急接近をしてきたのは璃佳だった。
「悪いけど最初っからフルスロットルでいくよ!!」
「…………!!」
(速いッッ!! おまけに最小限の動きで乱数機動を取ってやがる! 的も小さければ動きも早いとか銃で戦う俺にしたら悪夢だな!)
身体強化魔法で最大まで加速した彼女は孝弘が牽制も兼ねて放った一発を軽くジャンプして避けると、そのついでに木を蹴ってさらに加速。三五メートルあった二人の間は一気に数メートルまで縮まった。
璃佳はデスサイズをまるで重さを感じさせないような様子で横薙ぎに振るい孝弘がこれを難なく避けると、彼女はあろうことか持ち手を変えて逆薙ぎに移る。
あわや魔法障壁を数枚破られかねない展開だが、孝弘は踵の先に顕現させた青白い何かで弾いてみせた。
「両踵の先に風属性の刃っ!! 面白い!!」
「そうじゃないと、七条閣下相手に俺は即死なんで!」
「うそつけ!!」
「嘘じゃないですよ! そうそうこれやんないんですから!」
「ふうん! じゃあこれはどうかな!」
璃佳が放ったのは下からの斬撃。孝弘は鼻先を掠めるかどうかの寸前で回避をする。璃佳は隙も無く今度は上から振り下ろしにかかった。孝弘はこれを避けきれないと判断し、回転蹴りを入れることで風属性の刃とデスサイズの刃をぶつけさせることで攻撃をなんとか受け流した。
「いいねいいねえ面白い! そうこないと! だったら、ギアをあげるぞっ!」
璃佳がデスサイズを振るう速度を上げ、鋒が迫る方向も不規則という予測難易度が極めて高い攻撃を続ける。孝弘はこれを回避はするものの、四枚の魔法障壁が破られた。
対する孝弘もやられっぱなしではない。彼が放つ銃撃は銃弾の発数が限られていることもあり全てをハイチャージショットにしている。加えて無駄撃ちを避けるために確実に当たる時にのみ撃っていた。その回数は十数秒で僅かに二回だが、いずれも命中させていた。
開始から三○秒で、孝弘の魔法障壁被破壊数は四。璃佳の魔法障壁被破壊数は五。僅かながら孝弘が有利だった。
開始から一分までは互いに致命的になるような距離まで詰められず、さりとて牽制のために間を開けるようなこともせず、銃撃と剣戟を繰り返すヒリついた展開が続いた。
「銃とリーチの長いデスサイズじゃキミの方が不利になるのに、なかなかやるじゃんか!」
「これでもずっとギリギリの展開ですよ! 閣下は絶対敵に回したくありません!」
「そっくりそのまま言葉を返すよ! ハイチャージ食らったらあっちゅう間に魔法障壁持ってかれるような相手とか悪い夢みさせられてるようなもんだっての!」
「水帆みたいな魔法力もなければ大輝みたいな召喚適正もなく、知花みたいに情報処理能力に優れた上に光属性適正も無かった俺の答えはこれです! 指揮能力を培い、戦う時は二丁拳銃と風属性のダガーで可能な限り隙を無くす。決定力には欠けますがね!」
「どこが決定力を欠いてんだか! 普通の連中なら何人も死んでんぞ!」
「閣下相手じゃなかなか通用しないですが、やるからには負けられませんので! 俺の行動は俺だけのものじゃない。きか――」
「皆まで言わなくても分かる理由を持って必死に戦う姿は上官としても嬉しいよ! ずっとこのまま戦ってたい!」
璃佳はあえて孝弘の帰還組という言葉を遮った。ここにいる者達は孝弘が帰還組であることを知っている。だが、璃佳にとって孝弘が帰還組だろうがなんだろうがどうでもいいのだ。
大切な人を守るために、この大戦に身を投じて命を懸けているのに、そんな野暮な属性なんえ関係ないと。
「ただね、そろそろ決定打を与えたいんだよねぇ」
(閣下の湿り気を帯びたニタァとした笑いは大抵ロクでもない! 何が来る!?)
孝弘の視線に何か失礼なものを感じた璃佳だったが、だからこそ期待に応えようと悪役にしか見えないような悪辣な笑みを彼女は浮かべてみせた。
「複合魔法展開。『重力喪失、大気消失』。狙いはもちろん、米原中佐だ。さぁ、避けてみなぁ?」
「閣下と私とで、訓練試合ですか?」
「そそ。AR訓練機能を使って本気でやるよ」
「明後日には出港ですが……」
「大丈夫だって。ARなら怪我の心配はほぼ無いでしょう?」
「確かにそうではありますが……」
孝弘は歯切れの悪い返答をする。明後日には出港して戦地へ向かうのにSランク同士の実戦形式訓練なんてやって不測の事態でもしたらどうするという理由もあったが、それ以外にもワケはあった。
孝弘の内心はともかく、彼が訓練に渋り気味なのは璃佳にも易々と伝わった。
「なになに、乗り気じゃないの? デカめの魔法以外は近距離特化の私と近中距離メインのキミとでは相性が悪いからとか?」
「いえ。距離を詰められば私の不利ですが、裏を返せば詰められる頻度さえ減らせば勝機はありますし、近接格闘戦に心得がないわけではありません」
「……ごめんごめん。意地悪な聞き方したね。キミが気にしてるコトには気付いてるって言えば分かるかな?」
「…………!」
璃佳の心中を見透かしたような言いぶりに孝弘はドキリとさせられる。二人の周りには遠巻きながらなんだろうと数人が集まり始めていたが、璃佳は声のトーンを落として会話を続けた。
「あの日以降、色んなことが目まぐるしく動いて話す機会をほとんど設けられなかったし、それにかまけてキミと話す時間が取れなかったことを、申し訳なくは思ってる。でも。いや、だからこそかな。今から私のワガママにちょっと付き合ってもらえると嬉しい。たぶん、米原中佐の悩みを解決できると思うから。それに」
「それに?」
「クヨクヨしてる時は、身体を動かすと少しはマシになるからかな」
舌をちろりと出しておどけてみせる璃佳に、孝弘は彼女をじっと見つめると。
「……分かりました。Sランク同士の実戦訓練なんて滅多にありません。私も決戦前にいい経験になりますし、彼等にとっても楽しめるでしょう」
「ふふ、分かってんじゃん。――おーい! 今から私と米原中佐でAR式実戦訓練やるよ!」
璃佳が個人訓練などをしていた隊員達に声をかけると、すぐにゾロゾロ集まり始めていた。少し遠くで訓練に励んでいた者達もなんだなんだ寄ってきていた。その数、六五名。
「七条閣下と米原中佐が!?」
「SランクとSランクの実戦訓練とかやべえな!」
「なあなあ、どっちが勝つと思う?」
「やっぱ我らが七条閣下だろ! 米原中佐は近距離戦をあんましてないだろ? 閣下に分があると思うけどなあ」
「いーや米原中佐ね。数は多くないけど作戦中に銃撃+近接格闘の組み合わせで戦ってるから、全くの不利ってことはないわ」
「だったら皆で予想しようぜ!」
「いいなそれ!」
「いいんですか、アレ。賭けになってないだけまだいいですけど……」
孝弘のいうように賭けまではいかないが、勝者予想をし始める隊員達に彼はややジト目をして璃佳へ視線を送る。対して璃佳はニコニコしていた。
「いいんじゃない? どうせ数日後には生きるか死ぬかなんだし、今を楽しむのは重要だと思うよ。――私と米原中佐、どっちに何人いるー?」
「七条閣下が三四人、米原中佐が三一人です! 閣下の方がやや多めですが、ここまでの僅差は初ですよ!」
「おー、そいつは面白くて楽しい予想になったね!」
「僅差? 初?」
「川島中佐の時にも似たようなことがあってね。その時は今よりもうちょっと差があったかな。確か五六対四五。五六が私ね」
「アイツ、いつの間にそんなことを……。閣下の方が票数が多くなるのは妥当だと思いますよ。どちらかというと、彼は後衛タイプですから」
「まあね。私と同じ召喚士で近接武器タイプだけど、自身と召喚体の戦う比率でいったら私の方が自分で戦う率が高いし。……さて。親友の事をさておいてさ、戦い方的には私の方が有利にも関わらず、私より米原中佐を選んだ人がほぼ半数いる事実が分かったわけだけど?」
璃佳は孝弘へ、キミの悩みと現実の結果に大きな差があるんじゃない? キミの憂いは杞憂では?
と暗に示していた。随分と遠回しな言い方ではあるが。
孝弘もそれに気づかないほど抜けていない。ならば、やることは一つ。
「私に期待してくれた人達のためにも、全力でお相手致しましょう」
「そうこなくっちゃ♪」
AR方式訓練のルールはすぐに決められた。
◾︎制限時間は三分。
◾︎魔法障壁展開数は同時に一○枚まで。累計三○枚まで展開可能。
◾︎米原中佐の魔法拳銃のマガジン数は一丁につき三つまで。計六つ。七条准将は魔法拳銃の装備無し。
◾︎即死もしくは致命的ダメージが入った時点で訓練終了。
◾︎三分間で決着がつかなかった場合、割られた魔法障壁数が少ない方が勝ちとする。
◾︎フィールド全体が効果範囲になりうる上級魔法以上の魔法使用は不可。
◾︎フェアルの使用は不可。
「って感じでどう?」
「了解しました。問題ありません」
「よーし。なら、位置につこっか」
『両者位置につきましたか!』
開始の合図を引き受けた士官が孝弘と璃佳に問いかける。
「大丈夫だ」
「オッケー!」
『ならば、両者AR訓練モードを起動し武装の準備と魔法障壁の準備を!』
孝弘と璃佳はAR訓練モードを起動し武装を出し、魔法障壁を展開する。
『両者の準備完了を確認。カウント開始します! 五、四、三、二、一』
始め!!
の合図から間髪入れずに急接近をしてきたのは璃佳だった。
「悪いけど最初っからフルスロットルでいくよ!!」
「…………!!」
(速いッッ!! おまけに最小限の動きで乱数機動を取ってやがる! 的も小さければ動きも早いとか銃で戦う俺にしたら悪夢だな!)
身体強化魔法で最大まで加速した彼女は孝弘が牽制も兼ねて放った一発を軽くジャンプして避けると、そのついでに木を蹴ってさらに加速。三五メートルあった二人の間は一気に数メートルまで縮まった。
璃佳はデスサイズをまるで重さを感じさせないような様子で横薙ぎに振るい孝弘がこれを難なく避けると、彼女はあろうことか持ち手を変えて逆薙ぎに移る。
あわや魔法障壁を数枚破られかねない展開だが、孝弘は踵の先に顕現させた青白い何かで弾いてみせた。
「両踵の先に風属性の刃っ!! 面白い!!」
「そうじゃないと、七条閣下相手に俺は即死なんで!」
「うそつけ!!」
「嘘じゃないですよ! そうそうこれやんないんですから!」
「ふうん! じゃあこれはどうかな!」
璃佳が放ったのは下からの斬撃。孝弘は鼻先を掠めるかどうかの寸前で回避をする。璃佳は隙も無く今度は上から振り下ろしにかかった。孝弘はこれを避けきれないと判断し、回転蹴りを入れることで風属性の刃とデスサイズの刃をぶつけさせることで攻撃をなんとか受け流した。
「いいねいいねえ面白い! そうこないと! だったら、ギアをあげるぞっ!」
璃佳がデスサイズを振るう速度を上げ、鋒が迫る方向も不規則という予測難易度が極めて高い攻撃を続ける。孝弘はこれを回避はするものの、四枚の魔法障壁が破られた。
対する孝弘もやられっぱなしではない。彼が放つ銃撃は銃弾の発数が限られていることもあり全てをハイチャージショットにしている。加えて無駄撃ちを避けるために確実に当たる時にのみ撃っていた。その回数は十数秒で僅かに二回だが、いずれも命中させていた。
開始から三○秒で、孝弘の魔法障壁被破壊数は四。璃佳の魔法障壁被破壊数は五。僅かながら孝弘が有利だった。
開始から一分までは互いに致命的になるような距離まで詰められず、さりとて牽制のために間を開けるようなこともせず、銃撃と剣戟を繰り返すヒリついた展開が続いた。
「銃とリーチの長いデスサイズじゃキミの方が不利になるのに、なかなかやるじゃんか!」
「これでもずっとギリギリの展開ですよ! 閣下は絶対敵に回したくありません!」
「そっくりそのまま言葉を返すよ! ハイチャージ食らったらあっちゅう間に魔法障壁持ってかれるような相手とか悪い夢みさせられてるようなもんだっての!」
「水帆みたいな魔法力もなければ大輝みたいな召喚適正もなく、知花みたいに情報処理能力に優れた上に光属性適正も無かった俺の答えはこれです! 指揮能力を培い、戦う時は二丁拳銃と風属性のダガーで可能な限り隙を無くす。決定力には欠けますがね!」
「どこが決定力を欠いてんだか! 普通の連中なら何人も死んでんぞ!」
「閣下相手じゃなかなか通用しないですが、やるからには負けられませんので! 俺の行動は俺だけのものじゃない。きか――」
「皆まで言わなくても分かる理由を持って必死に戦う姿は上官としても嬉しいよ! ずっとこのまま戦ってたい!」
璃佳はあえて孝弘の帰還組という言葉を遮った。ここにいる者達は孝弘が帰還組であることを知っている。だが、璃佳にとって孝弘が帰還組だろうがなんだろうがどうでもいいのだ。
大切な人を守るために、この大戦に身を投じて命を懸けているのに、そんな野暮な属性なんえ関係ないと。
「ただね、そろそろ決定打を与えたいんだよねぇ」
(閣下の湿り気を帯びたニタァとした笑いは大抵ロクでもない! 何が来る!?)
孝弘の視線に何か失礼なものを感じた璃佳だったが、だからこそ期待に応えようと悪役にしか見えないような悪辣な笑みを彼女は浮かべてみせた。
「複合魔法展開。『重力喪失、大気消失』。狙いはもちろん、米原中佐だ。さぁ、避けてみなぁ?」
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