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第11章 北関東・会津郡山方面奪還作戦編Ⅱ

第6話 郡山奪還作戦④

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 ・・6・・
 着地後の孝弘と水帆の戦いぶりはアクション映画のヒーロー達も顔負けのものだった。
 まず激烈な第一撃を放ったのは魔法の詠唱準備を済ませていた水帆だった。

「――『豪風刃ストームブレイド六十重射出ヘキサコンタインジェクション』!」

 彼女が放ったのは多数の中級風属性魔法。自分の前面にいるエンザリアCT七体に対して飛んでいく風の刃は一体漏れずに命中。エンザリアCTが持つ魔法障壁を容易く破壊し、全身に突き刺さって堕天使達をズタズタにしていく。二型である可能性を加味してオーバーキル気味の攻撃にしたのだが、手応えからしてどうやら水帆が倒したエンザリアCTは従来型のようだった。

「ハイチャージ。速射ラピッドショット

 水帆の法撃の直後、孝弘も自分の正面にいるエンザリアCTに向けて銃撃を始めた。まず目標にしたのは三体。それぞれに二発ずつ放った。

 今まで持っていた拳銃と弾薬で相手が二型ならやや心許ないが、彼が手に持つ拳銃はハイチャージに耐えうるし弾薬には対CT弾が用いられている。それもあってか一発目で魔法障壁を破壊し二発目でエンザリアCTの命を絶ってみせた。
 初動で一〇体の撃破。大戦果だ。残るは六体。

「周りのCTが本格的に動いてる」

「火力をさらに上げるわね」

「よろしく」

 敵軍にとって水帆の恐ろしいところはこの会話の間に次の準備詠唱を済ませていることだ。エンザリアCTを一挙に七体屠っておいて、既に次弾装填が済んでいるのだから。

 孝弘が二体のエンザリアCTを目標に定めて水帆からやや離れた直後、水帆が今度は氷属性貫通系魔法を発射する。彼女の周りに現れた魔法陣は二〇を越え、そこから二つずつ氷の槍がエンザリアCT三体と接近する小型・中型CTに飛んでいく。いずれも寸分違わぬ精度で命中した。これでエンザリアCTは残り四体である。

「ハイチャージ、風属性貫通系変更。ダブルラピッドショット」

 孝弘も水帆がエンザリアCT二体をさらに撃破したタイミングとほぼ同時にエンザリアCT二体に向けて銃弾を撃った。
 エンザリアCTとて反撃するつもりなのだが、孝弘は射線を取られないよう不規則に動くから定まらず、敵がロックする前に孝弘は攻撃に移っていた。これも難なく孝弘は撃破。残りのエンザリアCTは二体だ。

 水帆の方はというと、エンザリアCTからのロックオンを阻止する為に孝弘がいる方へやや位置を変えていた。とはいえ孝弘ほど動いていないから、エンザリアCTもすぐに発射方向を変えて光線系魔法を放とうとする。

 エンザリアCTが理性のあるエンザリアのままだったら、貰った。と言ったかもしれない。僅かな間だけ水帆が迫るCTに法撃を向けていたからである。だが。

「甘いわね。その程度は折り込み済みよ」

 エンザリアCTはCTであるが故に動きが単調だったのが仇となった。水帆は既に攻撃予兆を掴んでおり、並行詠唱からの法撃準備を終えていたからである。
 しかし、神聖帝国軍とてやられっぱなしのつもりではいないらしい。
 水帆がエンザリアCTに法撃を叩き込もうとする直前、銃声が複数発せられ内二発が命中し、水帆の魔法障壁が三枚割れた。通常弾ではありえない威力だ。

(魔法狙撃銃……!!)

「『法撃中止キャンセル』!」

 水帆はエンザリアCTへの法撃を止めてその場から離れる。魔法狙撃銃による攻撃となればいくら水帆とはいえ動かないのは得策ではなかった。

「孝弘、敵魔法狙撃銃の攻撃あり!   数は判明分で六、方向もまばら!   注意して!」

『距離は分かるか?』

「たぶん七〇〇から八〇〇!」

『厄介だな。けど、もうすぐ増援が来る。エンザリアは任せてくれ』

「分かったわ。私は接近するCT一個小隊に狙いを移すわね」

『了解。――SA11、悪いけど増速して来てくれ』

『了解しました。あと一五秒で着きます』

 水帆はあと一五秒で着くという言葉を聞いて胸を撫で下ろした。妨害なく五人が来てくれる事が分かったからだ。
 視点を水帆から孝弘の方へ移そう。孝弘は水帆が倒す予定だったエンザリアCTの方へロック先を移した頃、無線が入る。

『割り込み失礼。BTL2だ。狙撃銃兵はこちらに任せてくれ。三人程度なら対処に充てられる』

「有難い。お願いします」

『任せておけ』

 孝弘はたった五人から狙撃銃兵対策に充てずに済んだことに安堵し、視線の先にあるエンザリアCT二体に意識を向ける。

「これで最後だ。ハイチャージ、ラピッドショット」

 孝弘が放った二発ずつ、計四発の魔法銃弾はエンザリアCTに風穴を開けた。この場にいたエンザリアCT全撃破である。直後、予定通り五人が到着した。
 間を置かず、孝弘は慎吾に無線を送った。

『「SA1よりSA5。堕天使達は救済された。繰り返す、堕天使達は救済された」

『SA5よりSA1、了解。目標への着弾まで二五です』

「 SA1了解」

 エンザリアCTがいなくなれば慎吾にとって目標であるホームセンターの破壊は容易いし、孝弘達もまだまだ迫り来るCTへ集中できる。
 七分まで残り二分と少し。知花の負担は減らせそうだった。

『SA5よりホームセンター周辺の友軍へ。目標に対する破壊攻撃を行います。上空及び施設周辺から一時退避を願います』

 孝弘達は慎吾からの無線を聞いてホームセンターから少し離れる。背後からは大輝のゴーレムが近付いてくる音がした。どうやらあちらはあちらで上手くいっているらしい。

 慎吾の宣言通り、二五秒後きっかりにホームセンターに彼の魔法が着弾した。芸術的ともいえる精度で全ての無属性魔法が施設にヒット。近くにある工場に影響を与えず破壊することに成功した。

 建物が全壊してすぐ、ホームセンター周辺のレーダーが回復する。マジックジャミング装置の破壊に成功した証拠だった。
 よしっ!   と孝弘は小さく喜びの声を漏らすとすぐに無線を送り始めた。

「SA1よりセブンスへ。郡山インターポイント回復です!」

『よくやった!!   強襲部隊はそのまま現地点を維持し、友軍の合流を待て!』

「了解!   SA1よりSA4、出力を弱めていいぞ!」

『あ、ありがとう……!』

 知花の声は辛そうだったが、まだ少し余裕がある風には聞こえた。
 あとは中型装置一つと小型装置二つ。その三つについても、すぐに友軍から報告が入ってきた。

『BTL2よりセブンス。中型一の破壊を確認!   レーダー回復!』

NSBL1川越よりセブンス。こちらもマジックジャミング装置の破壊に成功!   小型二!   これで全回復かと!』

『よしっ!!   お前達もよくやった!!   SA4、魔法探知を解除してもよし!』

 レーダー機能がロストしていた範囲が全て回復した直後、璃佳は知花に探知解除を伝え、知花は個別探知を終えた。七分まで残り五〇秒を残して、郡山北西部に展開していた部隊はミッションを成功してみせたのである。

『SA3よりSA4、大丈夫か!』

『だ、だいじょ、ぶ……。でも、頭痛が酷くて……、これ以上は、無理かな……』

『そりゃそうよな……。あとはオレ達に任せろ。ありがとな』

『うん、どういたし、まして』

 やはりというべきか、個別探知の出力を最大まで上げていた知花は処理能力の限界ギリギリを続けたツケが回ってきていた。激しい頭痛と吐き気、目眩などいくつもの症状が出ていた彼女はその場に座り込む。すぐに医療班が駆けつけて運ばれていった。

 知花が運ばれてからすぐ、戦闘がそのま続く中で璃佳から旅団戦闘団の全員に無線が送られる。

『セブンスより旅団戦闘団総員へ。SA4の個別探知情報のお陰でマジックジャミング装置の破壊任務を遂行することが出来た。レーダーは機能を回復。いつも通り戦えるようになった。だからこそ、このままで終えるつもりはない。総員、やられた分以上、徹底的にやり返せ。我々の力を見せつけろ。攻勢続行!  連中を地獄に叩き送ってやれ!!』

『はっ!!』
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