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第8章 CT大群決戦編
第10話 激戦を終えて①
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・・10・・
一二月一日から始まった首都奪還オペレーション『反撃の剣』作戦は、一二月六日に日本軍勝利の形で作戦終了となった。現地将兵達は勝利に沸き、そして戦いに一旦区切りがついたことに深く安堵した。
ただ、勝利の代償は小さくなかった。
地龍の出現。ドラゴンの出現。白ローブ三人の襲撃。極めつけにCTの大群との交戦。元から不確定要素が複数あり想定外の事象が起こりうると構えていたとしても、だとしても想定外があまりにも多すぎた。
地龍やドラゴンはまだいい。白ローブについても被害状況を鑑みれば無視してもいいものだった。だが、CT大群との交戦はとても無視出来るものでは無かった。
長期的にみれば銚子転移門の消失は、流入地が無くなり本州においてこれ以上CTが増えないという非常に大きなメリットを生んだ。しかし転移門の消失後、南関東一帯にいたCTが大挙して戦線に押し寄せるという悪夢は、一歩間違えれば戦線を崩壊させていたかもしれなかったのである。
それは人的被害と物的消耗にもよく現れていた。
約半日に及ぶCT大群との戦闘だけでも死者は一三六五人。戦傷者三五四二人。行方不明者一七二人。総計死傷者及び行方不明者、五〇七九人。たった半日で約五〇〇〇人もの戦死傷者と行方不明者を出したのだ。ここにCT大群襲来前の戦死傷者を加えるとさらに多くなり、八八五二人。本作戦に投入された日本軍五軍の兵力が一一〇〇〇〇人なのだから、戦死傷率は約八パーセントになる。これは日本軍にとって今後の作戦に影響を与えるに十分な数字だった。
それだけではない。人的資源の損失より激しかったのが物的資源の消耗だった。
食糧などはともかく、砲弾薬・武器類の消耗は五軍全てにおいて当初想定を大きく上回っていた。やはり一番影響を及ぼしたのはCT大群との交戦だ。約八三〇〇〇〇という果てしないCTの大半を撃滅したかわりに、日本軍はギリギリまで砲弾薬を消費してしまったのである。
人はクタクタ。魔法能力者の魔力はほとんどが空っぽ手前まで使い切り、物資弾薬は当面の攻勢停止をせざるを得ないほどに消費。
勝ったからいいものの、統合参謀本部は今後の作戦見直しに忙殺されることになる。
・・Φ・・
12月7日
綾瀬駅周辺・第一特務連隊連隊前線本部近辺
激戦の翌日。孝弘達は戦勝祝いのどんちゃん騒ぎに参加することなくすぐに眠りについていた。彼等が目を覚ましたのは正午前。孝弘が「太陽が高い……」と寝ぼけ眼で言うくらいには熟睡だった。
数日ぶりにまとまった睡眠を取った孝弘達が魔法軍の冬用戦闘軍服に着替えたのが午後一時半。もそもそと昼食を取ったのが午後二時前。平時であれば怒られるどころの騒ぎではない生活リズムだが、誰も咎める者はいなかった。少なくとも第一特務連隊将兵のかなりが孝弘達と同じだったからである。
午後二時半前。四人が休んでいた建物にある人物がやってきた。
「米原少佐。三時半から七条大佐が第一特務連隊大隊長と君達でミーティングを行う。準備をして、連隊前線本部の方に来てくれ」
「了解しました。色々整えて向かいます」
「そうだな。確かに全員酷い顔だ」
「熊川少佐も二日酔い明けみたいな感じですね」
「バレたか。流石に昨日までの疲労は一日では抜けなかったよ」
「でしょうね。自分もまだ魔力が回復しきってません。あとは魔力回復薬の飲みすぎですかね……」
「アレはなあ……。最終上限まで制限を緩めたから、皆似たようなものさ。ただ、ミーティングまでにはある程度しゃきっとしておいてくれ」
「分かりました」
熊川といくつか会話を交わした孝弘は三人に声を掛け、身だしなみを改めて整えて眠気覚ましの魔法を自身に付与して連隊前線本部に向かった。
途中、四人は長浜と合流する。
「はよっすー……。ダメな酒の飲み方した後みたいにキツいっす……。米原少佐達も、同じかな……?」
「そらまあ……。例えるなら、あるアクションモノでシリーズ映画のラストシーンでもちゃもちゃ飯食べてるあんな感じ」
「あぁー、二〇年くらい前のあのシリーズ物の映画っすね……。うん、あんな気分……」
どうやら長浜は孝弘達よりも酷いようだった。
一二月一日から始まった首都奪還オペレーション『反撃の剣』作戦は、一二月六日に日本軍勝利の形で作戦終了となった。現地将兵達は勝利に沸き、そして戦いに一旦区切りがついたことに深く安堵した。
ただ、勝利の代償は小さくなかった。
地龍の出現。ドラゴンの出現。白ローブ三人の襲撃。極めつけにCTの大群との交戦。元から不確定要素が複数あり想定外の事象が起こりうると構えていたとしても、だとしても想定外があまりにも多すぎた。
地龍やドラゴンはまだいい。白ローブについても被害状況を鑑みれば無視してもいいものだった。だが、CT大群との交戦はとても無視出来るものでは無かった。
長期的にみれば銚子転移門の消失は、流入地が無くなり本州においてこれ以上CTが増えないという非常に大きなメリットを生んだ。しかし転移門の消失後、南関東一帯にいたCTが大挙して戦線に押し寄せるという悪夢は、一歩間違えれば戦線を崩壊させていたかもしれなかったのである。
それは人的被害と物的消耗にもよく現れていた。
約半日に及ぶCT大群との戦闘だけでも死者は一三六五人。戦傷者三五四二人。行方不明者一七二人。総計死傷者及び行方不明者、五〇七九人。たった半日で約五〇〇〇人もの戦死傷者と行方不明者を出したのだ。ここにCT大群襲来前の戦死傷者を加えるとさらに多くなり、八八五二人。本作戦に投入された日本軍五軍の兵力が一一〇〇〇〇人なのだから、戦死傷率は約八パーセントになる。これは日本軍にとって今後の作戦に影響を与えるに十分な数字だった。
それだけではない。人的資源の損失より激しかったのが物的資源の消耗だった。
食糧などはともかく、砲弾薬・武器類の消耗は五軍全てにおいて当初想定を大きく上回っていた。やはり一番影響を及ぼしたのはCT大群との交戦だ。約八三〇〇〇〇という果てしないCTの大半を撃滅したかわりに、日本軍はギリギリまで砲弾薬を消費してしまったのである。
人はクタクタ。魔法能力者の魔力はほとんどが空っぽ手前まで使い切り、物資弾薬は当面の攻勢停止をせざるを得ないほどに消費。
勝ったからいいものの、統合参謀本部は今後の作戦見直しに忙殺されることになる。
・・Φ・・
12月7日
綾瀬駅周辺・第一特務連隊連隊前線本部近辺
激戦の翌日。孝弘達は戦勝祝いのどんちゃん騒ぎに参加することなくすぐに眠りについていた。彼等が目を覚ましたのは正午前。孝弘が「太陽が高い……」と寝ぼけ眼で言うくらいには熟睡だった。
数日ぶりにまとまった睡眠を取った孝弘達が魔法軍の冬用戦闘軍服に着替えたのが午後一時半。もそもそと昼食を取ったのが午後二時前。平時であれば怒られるどころの騒ぎではない生活リズムだが、誰も咎める者はいなかった。少なくとも第一特務連隊将兵のかなりが孝弘達と同じだったからである。
午後二時半前。四人が休んでいた建物にある人物がやってきた。
「米原少佐。三時半から七条大佐が第一特務連隊大隊長と君達でミーティングを行う。準備をして、連隊前線本部の方に来てくれ」
「了解しました。色々整えて向かいます」
「そうだな。確かに全員酷い顔だ」
「熊川少佐も二日酔い明けみたいな感じですね」
「バレたか。流石に昨日までの疲労は一日では抜けなかったよ」
「でしょうね。自分もまだ魔力が回復しきってません。あとは魔力回復薬の飲みすぎですかね……」
「アレはなあ……。最終上限まで制限を緩めたから、皆似たようなものさ。ただ、ミーティングまでにはある程度しゃきっとしておいてくれ」
「分かりました」
熊川といくつか会話を交わした孝弘は三人に声を掛け、身だしなみを改めて整えて眠気覚ましの魔法を自身に付与して連隊前線本部に向かった。
途中、四人は長浜と合流する。
「はよっすー……。ダメな酒の飲み方した後みたいにキツいっす……。米原少佐達も、同じかな……?」
「そらまあ……。例えるなら、あるアクションモノでシリーズ映画のラストシーンでもちゃもちゃ飯食べてるあんな感じ」
「あぁー、二〇年くらい前のあのシリーズ物の映画っすね……。うん、あんな気分……」
どうやら長浜は孝弘達よりも酷いようだった。
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