異世界帰還組の英雄譚〜ハッピーエンドのはずだったのに故郷が侵略されていたので、もう一度世界を救います〜

金華高乃

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第7章 決戦! 首都奪還作戦編

第10話 新たな白ローブの正体は双子

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 ローブを下ろして現れた瓜二つの顔は、二人が一卵性双生児、つまりは双子である事を表していた。髪色は白銀で、璃佳よりやや短い程度のロングヘアー。身長は一七〇センチ程度と日本人女性の平均より一回り大きい。体型は白ローブを身に纏っているから分かりにくいが、ちらりと覗く脚と前腕から、程々に鍛えられた体躯と分かる。

 いずれの特徴も二人共ほぼ同じであるためにどちらが姉か妹か判別がやや難しいが、お姉様と呼ばれた槍を持った方はやや声が高いのでそれが見分ける手段になるだろうか。妹であろう長杖を持った方は孝弘達を見つめてくすくすと笑っていた。

「一、二、三、四。ちょっと足りナイみたいねぇ、お姉様」

「そうねェ、あと二人くらイいない気がするけれど、まあいいわァ。四人釣れたナラ十分よぉ」

「警戒すべキ六人、だったかしラァ。あのおじ様がこっぴどくやられたのも、そこにいル四人の中にいるのよネェ」

「確か、あそこの銃持ちと召喚体だったはずヨ。お姉様」

 二人の会話は今までの神聖帝国人に比べて随分と流暢に聞こえた。賢者の瞳による翻訳が初期に比べてかなり進展していた事が一番の理由だが、だとしてもかなり聞き取りやすいものになっていたのだ。

 ただ、孝弘達は言語学者ではない。今は目の前の敵に集中していたし、何よりすぐ前に転がっている小柄白ローブが死体になった理由の方を気にしていた。
 様々な謎はともかくとして、最初に口を開いたのは璃佳だった。

「ペラペラ喋っているけど、随分と余裕ぶっこいてるみたいだね?」

「アレと同じくらいか小さイの、七条リカ、だったかしらァ。いきなり突っかかってコナイあたり、冷静ナ人間みたいネェ。そこにいるのトは大違い」

「ふぅん。随分と買ってくれているみたいじゃない。で、ソレをやったのは貴様達か?」

「ええ、ええ、そうヨぉ」

「お姉様の邪魔をしたもの、死んで当然よォ」

「ソイツったら、作戦通り動かないもノ。タイミングってものがあるでしョウ?   その癖返り討ちに遭ったンじゃ、作戦は変わってしまウシ、我々の面汚しもいいとコろ。だから陛下に変わって罰を下したのぉ。資格は事前に頂いているしィ」

「その代償がこれって、随分手厳しいもんだね」

 璃佳はチラリと死体になった少女をみやって皮肉って言うと、双子の姉の方はけらけらと笑う。

「当然じゃなイ。畏れ多くも、皇帝陛下の命に逆らったンだものォ」

「そうよ、そうよ。だから死んで当たり前ェ」

「ちっ、話が通じそうで通じない相手だ。まぁ、いい。一人分手間を省いてくれた事だけは感謝するけど、どの道こっから出るためには貴様らが結界を張った本人だろうがそうじゃなかろうが、殺すしかなさそうだね」

「アナタ達が降伏してくれるなら、その限りジャ無いけどぉ」

「結界も解いてあげるわよぉ?   ねぇ、お姉様ぁ?」

「ええ、ええ。そうねぇ」

「ふざけるな」

「あらあら、ちっさいのに怖いったらァ」

 ハナから交渉する気がなかったであろう双子はわざとらしく勧告してから嘲笑する。
 璃佳は一蹴すると大鎌を構え、孝弘達も魔法障壁を全力展開し準備詠唱を完了。戦闘態勢を整え終わる。

「アナタ達は強いらしいから、帝国の流儀に則って名乗ってあげるゥ。私の名は『モルスターズ・ドゥタール・セリン・アルクレア』。皇帝陛下直属、『皇帝陛下エンペラーズ十五人衆フィフティーン』が一人よぉ」

「私の名は『モルスターズ・ドゥタール・セリン・イルクレア』。お姉様と同じく、『皇帝陛下の十五人衆』が一人。さァ、美しい死に様を見せてちょうダい?」

「古風なことに名乗ってくれてありがと。でも、こっちは名乗るつもりは無いよ。知ってそうだし、ねっっ!!」

 璃佳は言い切ると、身体強化魔法で一気に近づく。
 事前に打ち合わせをハンドサインで終えており、孝弘達も璃佳の動きは織り込み済みだった。日本刀を持つ茜は璃佳と同じ前衛へ。召喚符を用意し終えた大輝は薙刀を持っているから中衛に。二丁拳銃を持つ孝弘は後衛に。

 四対二。数の上では有利。全員がSランクか戦術級召喚体。
 しかし一切の油断と隙も許されぬ戦いが始まった。
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