異世界帰還組の英雄譚〜ハッピーエンドのはずだったのに故郷が侵略されていたので、もう一度世界を救います〜

金華高乃

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第7章 決戦! 首都奪還作戦編

第5話 日比谷公園へ突入せよ!②

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 璃佳の命令は速やかに伝わり、未だ抵抗を続ける敵部隊に彼等は圧倒的火力を持って倒していく。

『キャスター4よりセブンスへ。マジックジャミング装置があると思われる箇所を特定!』

『場所は?!』

『合同庁舎八号館です!   恐らく低層部かと!』

『中央省庁関連の建物は残しておきたかったけど仕方ない!   キャスター4、装置ごとまとめて吹っ飛ばせる?』

『はい、可能です!』

『それじゃあ破壊は任せたよ!』

『了解!』

 孝弘と水帆が敵増強連隊残存と交戦中であり大輝も手が空いてないことから璃佳は発見した本人である知花にマジックジャミング装置の破壊命令を出す。彼女の光属性魔法であれば建物ごと吹き飛ばすのは容易いからだ。
 知花は命令を受けすぐに詠唱を始めた。

 「目標ロック。座標固定完了。――光よ集え、集え。収束せよ。爆ぜれば最後、全てを飲み込む。『光子爆発フォトンエクスプロージョン』」

 知花の澄んだ声が終わると、目標の高層ビルは光に包まれ次の瞬間には大爆発によって木っ端微塵となった。

『セブンスよりキャスター4。法撃によるマジックジャミング装置の破壊を確認。各種レーダーも回復。よくやったよ!』

『1st.CRよりセブンス。こちらでも各種レーダーの回復を確認しました。日比谷公園及び東京駅方面の各レーダークリア。これで攻撃ヘリなども不自由なく飛べるかと。なお、東京駅・日比谷公園方面に展開する敵は一個大隊程度です』

『了解。思ったより数が少ないね。この様子なら日比谷公園辺りを早めに押さえられそうだね』

 都心各地だけでなく横浜川崎方面でも日本軍が進出しており対応に追われているからなのか、元々山手線沿線に展開していたからなのか、皇居や日比谷公園、東京駅周辺にいる神聖帝国軍の数は多くなかった。
 璃佳は神聖帝国軍が単純に予備兵力が払底している可能性も頭によぎったが、楽観論は良くないと浮かんだ推測を振り払って部下に次々と命令を出しつつ、自身も法撃で支援攻撃をしていく。
 その頃孝弘達は国会議事堂の北付近まで到達していた。

 「こちらキャスター1、セブンスへ!   キャスター班と第一大隊のうち二個中隊は国会議事堂北方面に到着!    国会議事堂及び桜田門駅手前に一個大隊程度!   東京駅方面の部隊とは別!   恐らく展開していた連隊麾下大隊かと!」

『こちらセブンス、確認した。抜けられる?』

 「魔力残存は問題なし。キャスター班で穴を開けます」

『じゃあよろしく!』

 「キャスター1、了解。――BTL1へ。俺と水帆で穴を開けます。そのまま傷口を広げて国会議事堂から桜田門に突破口を作れますか?」

『BTL1よりキャスター1、了解した。突破なら任せろ!』

 「キャスターよりBTL1、感謝します。こちらの攻撃を合図にします」

『BTL1了解!』

 「水帆、やるよ」

 「分かったわ」

 水帆は孝弘が言うと頷き、返答。
 数秒間を置いて敵の火線が弱まるのを確認して、三、二、一。とカウントダウンをすると、

 「火属性弾、高出力充填。五重射撃ペンタショット

 「炎の槍は爆ぜ、焼き尽くす。『爆炎槍フレイムスピア二十重射出イコサインジェクション』!」

 孝弘が放った五発の炎属性弾が爆発した直後、水帆が二十の槍を射出して、それらは大爆発を巻き起こす。

『小隊統制法撃、ファイア!』

『BT2、202PT202小隊支援攻撃を開始する』

 孝弘と水帆の法撃からすぐ第一大隊のうち一個中隊が小隊統制法撃を、上空からは第二大隊の一個小隊が低高度支援攻撃を行う。
 濃密な火力を伴った攻撃は瞬く間に敵一個大隊を崩していき、締めの一発と言わんばかりに知花が光属性中級魔法の法撃を発動。光弾の雨が降り注ぎ、神聖帝国兵は命を散らしていった。

 「キャスター1からセブンスへ。突破口を作りました!    突っ込みます!」

『セブンスよりキャスター1了解!   BTL1、日比谷公園に突っ込め!   私達もすぐに後を追える!』

『BTL1からセブンスへ。了解しました!』

『BTL2よりBTL1へ。今上にいるのと合わせて一個中隊を付ける。頼んだぞ』

『助かるぜBTL2!    心強え!』

 孝弘達と第一大隊は所々が崩れている国会議事堂をちらりと見やりながら桜田門方面へ進む。ドラマや映画などでお馴染みの桜の塔、東京の治安を見守ってきた警視庁の建物は崩れてしまっていた。
 警視庁を通過すれば日比谷公園は目の前だ。二個小隊の神聖帝国軍を難なく蹴散らすと、ついに孝弘達は日比谷公園北側に到着した。

 「キャスター1よりセブンス、日比谷公園北側到着!   敵兵の姿は少なく先程潰しました!」

『セブンスよりキャスター1、入口は!』

「駐車場入口を二箇所発見。地図通りなら公園内にも二箇所あるはずです。突入します」

『了解したキャスター1。間もなく茜が到着する。地下駐車場の規模からして繋がっている地下街も含めれば数百人程度は入るはず。公園を確保したら地上グループと地下グループに分けて、地上グループは周辺警戒。すぐに私達も着く。キャスター班はキャスター1と2が地下グループ。茜も同行する。3と4は地上グループ。キャスター3は召喚準備を』

 「キャスター3、了解!」

 「キャスター1、了解です」

『1st.CRより全隊へ。救出作戦支援部隊の戦車部隊、随伴部隊は現在四ツ谷駅を通過。攻撃ヘリ部隊は新宿駅を通過。一時的ではありますが本部が戦闘機部隊を出してくれるとのこと。現在、新宿方面及び原宿方面は拠点を確保。万が一の際には支援に回れるとのこと』

『セブンスより1st.CRへ。戦闘機部隊は有難いね。――さあ、救出に取り掛かるよ!』

『了解!!』

 いよいよ孝弘達は日比谷公園に突入する。公園内の敵兵は第二大隊の上空攻撃で蜂の巣にされており、第二大隊の一部は着陸して地点確保に動いていた。
 さらに公園外縁にある地下駐車場入口へは第一大隊の隊員達が次々と地下に入っていき、孝弘達も公園内にある地下入口へとたどり着く。

 「すまぬ、遅うなった!」

 「これから入るところだったから大丈夫。茜、来てくれて心強いよ」

 「主が忙しいからの。それに地下に行くのなら人手がいた方が良かろ?   暗くとも、ほれ」

 「狐火だね。助かるよ」

 ニコッと笑って狐火を十ほど出した茜に、孝弘は微笑んで答える。

 「さあ行くよ、水帆、茜。一〇三小隊の皆もよろしく。信楽少尉、後ろは任せた」

 「はっ。お任せ下さい」

 孝弘と水帆に茜、第一大隊一〇三小隊の面々は地下に入っていく。
 階段を下りて、駐車場へ。

 「狐火を先行させるぞ。狐火よ、行けい」

 狐火の明るい灯りによって視界は明るくなっていく。

 そこで彼等が目にした光景は、予想はしていたものの出来れば見たくなかった惨たらしいものだった。
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