異世界帰還組の英雄譚〜ハッピーエンドのはずだったのに故郷が侵略されていたので、もう一度世界を救います〜

金華高乃

文字の大きさ
上 下
93 / 250
第7章 決戦! 首都奪還作戦編

第4話 日比谷公園へ突入せよ!①

しおりを挟む
 ・・4・・
『目標前方の一個連隊!!     特務さんが進む道を作るぞ!!   大隊各車……、ファイア!!』

『榴弾砲、諸元入力完了!!   撃てぇ!!』

『BT1、小隊統制法撃。放てッッ!!』

『敵連隊に穴を開けろ!   火力集中、機関銃各隊発射ァ!!』


 第一特務連隊が行く道を作るため、戦車大隊、陸軍連隊、海兵隊連隊、第一特務自身も火力を集中させ、中野にいる砲兵隊の榴弾砲も火を噴く。局地的かつ短時間とはいえ一挙に火線が敵一個連隊に集まったことで神聖帝国軍部隊は崩れ、隙間が生じた。

『セブンスより連隊各員、道が出来たぞ突っ込め!!    キャスター3|《大輝》、魔力使用制限解除!    盾役《ガーディアン》の役目を頼んだ!』

『キャスター3了解!』

『各員も魔法障壁を前面展開!   突撃、突撃!』

『キャスター1、これより2、4と共にキャスター3とフォーメーション組みます!』

『セブンスよりキャスター1へ了解!    君達を矛として敵部隊を穿つ!    徹底的にやれ!』

『キャスター1よりセブンス了解!』

 第一特務連隊は原宿にいる第三大隊内二個中隊を除く全てが日比谷公園・東京駅方面へ向けて動き出した。神聖帝国軍にとってはよりにもよって一番の精鋭が突っ込んでくる事に恐怖を覚えるものの、逃げ出すものはいない。むしろ果敢にも攻撃を加えてきた。

「邪魔よどきなさい!   氷の剣は風を纏い、全てを貫く!    『氷風剣アイスウィンドソード三十重前面発射トリアコンタ・フロントインジェクション』」

「そこのけ、そこのけ、立ち塞がるなら容赦はしないよ。『光弾フォトンバレット速射開始ラピッドショット・スタート』」

「魔力充填、完了。射撃開始」

 防御役に専念している大輝を除く三人は、道を塞ごうと迫る神聖帝国軍部隊をなぎ倒していく。水帆の法撃がまとめて敵を吹き飛ばし、知花の法撃は反撃の隙を与えず、二人の法撃をかわしきったとて孝弘の正確無比な射撃が近付くことすら許さない。

 それだけでは無い。地上では第一大隊が、低高度からは第二大隊が猛攻撃を与え続ける。こうなると敵は加熱されたバターのように溶けていき、第一特務の部隊は容易く突破することが出来た。

『陸軍一一連隊より第一特務へ。後は我々に任せてくれ』

『海兵隊二一連隊より第一特務へ。ここを終わらせてからすぐ、必ず後から追いつく』

『三一戦車大隊より第一特務へ。作戦の成功を祈る。後で会おう』

『セブンスより陸海兵隊各隊へ。ありがとう。新宿は頼んだよ!』

 璃佳が明るい声で返答すると、再び彼女は前を向く。

「七条大佐、新宿御苑駅付近を通過しました」

「おっけい。そのまま四ツ谷方面から永田町に向かうよ」

「了解しました。各隊へ通達。そのまま作戦通り四ツ谷方面へ。後、永田町を突っ切る」

『BT1了解』

『BT2了解した』

『キャスター1、了解』

『こちらBTL3!    お待たせしました!   二個中隊、合流するっすよ!』

『セブンスよりBTL3へ。思ったより早かったね』

『原宿の敵部隊は早々に蹴散らせたので!』

『助かるよ。BT3はBT1と共に行動して』

『了解っす!』

 第一特務連隊が新宿御苑駅付近を過ぎて信濃町・四ツ谷方面に向かう頃になると、神聖帝国軍将兵の数は一時的とはいえ減っていた。しかし全くいないわけではなく、散発的に攻撃を加えてくる。
 とはいえ、その程度では第一特務の敵ではない。敵部隊は各個撃破されていく。

「大佐、間もなく四ツ谷付近に到達します。永田町付近はマジックジャミングの区域内になるので、そろそろ各種レーダーが使えなくなります」

「了解。各隊へ通達。間もなくマジックジャミングの区域内になる。索敵は魔力探知形式に変更。警戒を厳とせよ。キャスター4、マジックジャミング装置の特定を頼んだ。作戦区域の中で手の届く範囲なら破壊しておきたい」

『キャスター4よりセブンス。了解しました』

 まばらながらも展開する神聖帝国軍を潰していくうちに第一特務は四ツ谷付近に到着。熊川の言う通りレーダーの反応が心許なくなってきていた。この頃には最前面にいる孝弘達も探知形式を魔力探知に変えていた。

「知花、敵の様子はどうだ?」

「マジックジャミングのせいで見つけにくくなっていたけど、やっぱりいたよ。溜池山王付近に増強一個連隊程度かな」

「了解。マジックジャミング装置の特定をよろしく。――キャスター1よりセブンスへ。キャスター4が溜池山王方面に増強一個連隊程度を探知。情報共有します」

『セブンスからキャスター1へ。了解。針路の途上にいて邪魔だ。撃滅せよ』

「キャスター1よりセブンス。了解しました。――大輝、魔法障壁の密度を上げてくれ」

「おう、任せとけ!」

 璃佳との通信を終えると孝弘、水帆、知花の三人は詠唱準備に入り、大輝は魔法障壁の密度を高めていく。第一大隊も詠唱準備に入り、第二大隊は先行して溜池山王付近にいる敵部隊へ上空からの射撃と法撃を開始した。

 孝弘達が四ツ谷を抜けて麹町の手前まで着くと、敵のまとまった部隊と接敵。銃撃と法撃の混じり合う大きな音が、大戦前は日本の政治的中枢だった地区に響き始めた。

「よくもまあ永田町をここまで瓦礫の山にしてくれちゃって。ここ自体に愛着はあんま無いけど、いい気分はしないわね」

「一部は司令部機能に使っていたっぽいな。無事な建物もいくつかある。とっととここの部隊も潰して日比谷公園方面に行こう。時間が惜しい」

「ええ。それじゃあ、ギアを上げていこうかしら!!」

 水帆は敵部隊を視認するとロックオン、準備していた詠唱を発動する。

「――『雷撃槍ライトニングスピア五十重射出ペンタコンタインジェクション』!!」

「火属性爆発系弾、高出力充填ハイチャージ三連続射撃トリプルショット

「第一大隊、中隊統制法撃よぉい!   放て!」

「第二大隊、半円に広がれ!    攻撃開始!」

「第三大隊法撃準備!   小隊統制法撃用意!   ファイア!」

 敵と射線が鉢合ってすぐ、水帆と孝弘の順に攻撃を開始。続けて第一大隊と第二大隊、第三大隊の攻撃が続く。

 まず水帆の法撃で最前面の敵部隊が黒焦げになり、孝弘のハイチャージショット三発によって小隊単位で敵兵は吹き飛ぶ。

 そこへ地上と空中から逃げ場のない法撃が加えられるとなれば、神聖帝国軍に為す術は無い。増強連隊程度の数はいるから時折第一特務連隊に攻撃や法撃は届くものの、数名が負傷する程度であり、戦闘に大きな影響は無く夏に溶ける氷菓子のように神聖帝国軍の将兵は倒れていった。

『セブンスより各員へ。敵増強連隊程度の部隊は半数が戦闘不能。第一大隊と第三大隊の一部でこれら部隊に追い討ちをかけ、残りは一気に日比谷公園に向かうよ!!』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます

竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論 東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで… ※超注意書き※ 1.政治的な主張をする目的は一切ありません 2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります 3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です 4.そこら中に無茶苦茶が含まれています 5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません 6.カクヨムとマルチ投稿 以上をご理解の上でお読みください

この争いの絶えない世界で ~魔王になって平和の為に戦いますR

ばたっちゅ
ファンタジー
相和義輝(あいわよしき)は新たな魔王として現代から召喚される。 だがその世界は、世界の殆どを支配した人類が、僅かに残る魔族を滅ぼす戦いを始めていた。 無為に死に逝く人間達、荒廃する自然……こんな無駄な争いは止めなければいけない。だが人類にもまた、戦うべき理由と、戦いを止められない事情があった。 人類を会話のテーブルまで引っ張り出すには、結局戦争に勝利するしかない。 だが魔王として用意された力は、死を予感する力と全ての文字と言葉を理解する力のみ。 自分一人の力で戦う事は出来ないが、強力な魔人や個性豊かな魔族たちの力を借りて戦う事を決意する。 殺戮の果てに、互いが共存する未来があると信じて。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

改造空母機動艦隊

蒼 飛雲
歴史・時代
 兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。  そして、昭和一六年一二月。  日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。  「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。

処理中です...