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第5章 関東平野西部奪還編

第13話 空のバケモノ達との戦いを終えて

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 ・・13・・
◾︎とある陸軍士官の手記
『ドラゴンは決して空想な産物では無い。一一月二四日。この日以降、俺達はクソトカゲを現実のものとして受け入れるしか無かった』

◾︎とある空軍パイロットの手記
『スクランブル発進を命じられた時は自分の耳を疑ったさ。管制官から言われたのは、ドラゴンが出現したからこれを撃滅せよ。なんだから。自分は今まで色んな映画やアニメやマンガを観たり読んだりしたから、戦闘機パイロットがエイリアンと戦ったり、ドラゴンぶっ飛ばすような展開も知っていた。けど、だからって自分が物語と同じ経験をすると思わないだろう?』

◾︎空軍管制官の手記
『ドラゴン出現。これを撃滅せよ。上から来た命令をパイロットに伝えた時、いよいよこの世界もかなりイカれて来たんだと実感した。ただ一つホッとしたのは、昔見てた小説みたいにめちゃくちゃ強い世界の終わりみたいなドラゴンが出てこなくて良かったことだった』

◾︎今川月子の手記
『ドラゴンの出現は作戦のあり方を変えた。私達は決して無敵ではない。有り得ないは有り得ないを改めて認識したのが、この一一月二四日という日だった』

◾︎七条璃佳の手記
『ドラゴンを小さな被害で倒せたのは幸いだったと私は思う。もし現れたドラゴンが伝説級のバケモノで、核爆弾で倒せるかどうかだったとしたら、あの日私と部下達は刺し違えてでも戦ったが多分死んでいただろう。異世界の連中と戦うことはすなわち、常識を捨て去ること。これを無くした時が、私達が負ける時だろう』


 ・・Φ・・
 一一月二四日の夜に発生したドラゴン迎撃戦は、日本軍側の勝利で幕を閉じた。太平洋方面と東京西部方面に出現したドラゴンの数は六三体。突然の出現、初接敵、攻撃するまでは防御力も攻撃力も不明。これまで創作の産物でしか無かった――そもそも異世界からの侵略者自体が創作の産物だったが――ドラゴンに対して現実で相対する事となったが、全ての討伐を果たしたのは西特大や第一特務、無人攻撃機部隊や戦闘機部隊など現地部隊の活躍あってこそと言えるだろう。

 関東方面に現れたドラゴンであったが、空のバケモノはここだけに出現したわけでは無かった。もう一つの激戦地、東北・新潟方面にも出現したのである。青森方面に一〇体、新潟方面に八体のドラゴンが現地部隊を襲ったのだ。
 無論現地フェアル部隊や無人攻撃機部隊、青森方面は三沢基地が、新潟方面は小松基地のFー35やFー3A部隊が応戦した。

 結果は関東方面と同様に全ドラゴンの討伐により勝利。ドラゴンの速度がレシプロ機の全速力並で、防御力も中級魔法以上が通り現代兵器でも通用したからこそ得られた結果であると言えるだろう。

 しかし、日本軍側も無傷では無かった。
 以下はドラゴンが出現した地域における戦闘での被害である。

・フェアル部隊
 負傷者:一二名(内、重傷四名)

・無人攻撃機部隊
 被撃墜:七機
 破損:六機

・戦闘機部隊
 被撃墜:一機

・地上部隊(ドラゴンによる推定の被害のみ)
 死者:二六名
 負傷者:一七七名

 以上のように日本軍側は少なからず被害を受けており、特にそう多くない無人攻撃機のうち七機が撃墜され六機が破損したのは手痛かった。

 さて、ドラゴンとの戦闘では被害を最小限に抑えられたものの、それよりも日本軍側が懸念したのは作戦への影響であった。
 大戦が始まってからこれまで、空は軍にとって自分達が安心して攻撃を行える領域であった。不用意にレーダー阻害区域に近づかなければ余程のことが無い限り大きく損害を受ける領域では無かった。それはエンザリアCTの出現が確認されてもあまり変わらず、せいぜいが出現したら回避機動を取ること。というこれまでの地上からの攻撃を警戒するレベルとさして変わるものでも無かった。

 ところが、ドラゴンの出現が開戦以来の常識を覆した。開戦初期の航空部隊に大損害をもたらした攻撃や魔法を除けば前時代的とされた神聖帝国軍は、空にもその戦力を放ったのだ。
 無人攻撃機部隊とは互角に戦い、フェアル部隊とて数次第では不利になりかねず質で優位を保てる程度。戦闘機部隊でやっと優位に戦える存在。それがドラゴンだった。

 一一月二四日以降、日本軍はこれまでの作戦方針を転換せざるを得なくなる。それは対空攻撃手段の強化。無人攻撃機部隊や海軍艦載機部隊を含む戦闘機部隊の配置転換などにも現れるようになる。
 東京奪還への道のりは、やはり平坦では無さそうであった。








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