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第5章 関東平野西部奪還編
第12話 国分寺ナイトダンス
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・・12・・
突如として現れたドラゴンを順調に討伐していった第一特務の第二大隊と航空部隊、孝弘と知花達であったが、彼等も決して無傷ではなかった。
三〇体出現したドラゴンの数を一三体に減らすまでに無人攻撃機は二機が被撃墜。第二大隊で参戦していた一〇〇名の内五名が負傷し戦線離脱(一名は後に重傷で復帰不可能判定)。地上部隊もドラゴンの火炎攻撃により被害が生じていた。
それでも第一特務は精鋭の名に相応しく、また無人攻撃機部隊や地上要員も奮戦しデータの無いドラゴンという相手に大きな優位を持って戦っていた。
あと少しで全滅させることが出来る。そんな時に現れたのがドラゴン第二波の一〇体だった。
『警告。ドラゴン、バンディット31から40は約八三〇まで増速し接近中。距離約一三〇〇〇』
「第二大隊総員へ通達。新たなドラゴンが出現。要警戒せよ」
『りょ、了解!』
『了解』
『サー』
(クソッ。この状況で敵に援軍か。そろそろ戦闘機部隊の援軍も来るだろうが、これ以上ドラゴンが増えてくれると部下達の消耗が激しくなる。あの機動性と速度にいつまでも付き合わされたら尚更だ)
終わりが見えてきたと思いきや新たなドラゴンの出現に、第二大隊の面々も冷や汗が頬を伝う展開になる。高富も内心で悪態をついていた。
第二大隊がフェアルによる空中機動戦闘を得意とする特質上、他の大隊に比べると魔力容量は多く、魔力の効率運用にも長けている。要するに魔力的な意味でスタミナがあるのだ。
しかし彼等とて限界というものはある。
ドラゴンとの戦闘を開始して既に数分が経過しているが、全速力・高機動飛行をぶっ通しで行っているのだ。それに加えて初級魔法では効果が薄いからと中級魔法以上の法撃を間髪入れずに行っている。
明らかに魔力の消耗が激しい戦闘。日頃の厳しい訓練の成果であと数十分なら同じ戦い方を続けられるが、さりとてこれ以上ドラゴンの数が増えるのは許される状況では無かった。
『警告。地上にバンディット6、9、13が接近』
「マジックアーチャー、ライトウィザード。貴官らの射程圏内になる。頼めるか」
『マジックアーチャー了解』
『ライトウィザード了解しました』
孝弘と知花は返答してからすぐさま射撃・法撃行動に移る。
相変わらずその火力は凄まじい。三体のドラゴンが迫るが、二人とも冷静沈着にロックオンをし孝弘が射撃を、知花が法撃を行う。
『バンディット6、9、13、撃墜。即死判定』
「助かった。感謝する」
『バタリオンリーダー2、これくらいであれば問題ありません。間もなく到着する第二波の対処も間もなく始めます。地上には指一本触れさせません』
「真に頼もしいぞ、マジックアーチャー。ライトウィザード」
『警告。バンディット3、23が空域突破を敢行。立川方面へ西進。速度約七五〇』
『バタリオンリーダー2、申し訳ありません! 二体が抜けました!』
『バタリオン2各隊及び各航空部隊よりセブンス。抜けた二体は任せなさい。術式は準備しているから。むしろ指定範囲から退避してくれる?』
『バタリオンリーダー2よりセブンス。了解』
高富の部下からの報告が上がった直後、通信を送ってきたのは立川方面に控えていた璃佳で、彼女は戦闘が始まってからは立川を守るようにやや東へ国立方面に近い地点に展開していた。
璃佳が言った直後、賢者の瞳から警告が流れる。
『警告。友軍が長距離法撃準備を実行準備。ロックオンフェーズ完了。予想される法撃範囲をマップにマーク。法撃実行カウントダウン。二〇秒』
現れたのは赤着色されたかなり細長い長方形。ただし距離が半端ではなかった。
「全上空部隊へ通達。指定範囲より全力離脱!」
『了解!』
『我らがセブンスの上級長射程法撃ですね!』
状況を即時に察した隊員達と無人攻撃機は指定範囲から離脱していく。
二〇秒後、指定範囲を呑み込んだのは夜より深い闇の塊。直径十数メートルの高速で飛ぶ球体。闇属性魔法。放ったのは璃佳だった。
法撃の名は『暗黒帝の絶死線』。限りなく戦術級に近い威力を持つ長射程闇属性上級魔法である。
璃佳のいる方へ向かっていたドラゴン二体は闇に呑まれ消失。射程内にいたドラゴン三体も同じく消失した。
仲間が墜落では無く消失した姿を目の当たりにしたドラゴンに動揺が広がる。それは第二波のドラゴンも同じようで陣形がやや崩れたように見えた。
第二波を含めて残るドラゴンは一五体。上官の有り体に言えばえげつない法撃は、友軍に勝ちを確信させるには十分だった。
今度は日本軍側が、このままでは終わらないの形となる。西の方から高速で飛来する友軍機が近づいていた。
『シャドーランサー1よりセブンス及び各隊。お待たせしました。だいぶ片付いたようですが、ここからは我々も参戦します』
『セブンスよりシャドーランサー。ちょっと早かったね。頼んだよ』
『バタリオンリーダー2よりシャドーランサー。援軍感謝する』
西の宵闇より現れたのは国産戦闘機のFー3Aが三機だった。
『シャドーランサー2より各隊。クソトカゲは我々にお任せあれ』
『こちらシャドーランサー3。攻撃を開始する』
『ヒャッホウ!! 待ってましたァ!!』
『ドラゴン共をぶっ飛ばせー!!』
待ち望んでいた援軍に各方面から歓声が上がる。三機の空翔ける戦士達はその声に応えるようにミサイルを発射。空のバケモノを逃さない機械仕掛けの槍は確実に捉えドラゴンを地へと落としていく。
戦闘機部隊の到着はこの空域においてもドラゴンにとっては追い討ちとなる。
国分寺周辺空域に出現したドラゴンの総数四〇。それらは一匹残らず全てが討伐されたのだった。
突如として現れたドラゴンを順調に討伐していった第一特務の第二大隊と航空部隊、孝弘と知花達であったが、彼等も決して無傷ではなかった。
三〇体出現したドラゴンの数を一三体に減らすまでに無人攻撃機は二機が被撃墜。第二大隊で参戦していた一〇〇名の内五名が負傷し戦線離脱(一名は後に重傷で復帰不可能判定)。地上部隊もドラゴンの火炎攻撃により被害が生じていた。
それでも第一特務は精鋭の名に相応しく、また無人攻撃機部隊や地上要員も奮戦しデータの無いドラゴンという相手に大きな優位を持って戦っていた。
あと少しで全滅させることが出来る。そんな時に現れたのがドラゴン第二波の一〇体だった。
『警告。ドラゴン、バンディット31から40は約八三〇まで増速し接近中。距離約一三〇〇〇』
「第二大隊総員へ通達。新たなドラゴンが出現。要警戒せよ」
『りょ、了解!』
『了解』
『サー』
(クソッ。この状況で敵に援軍か。そろそろ戦闘機部隊の援軍も来るだろうが、これ以上ドラゴンが増えてくれると部下達の消耗が激しくなる。あの機動性と速度にいつまでも付き合わされたら尚更だ)
終わりが見えてきたと思いきや新たなドラゴンの出現に、第二大隊の面々も冷や汗が頬を伝う展開になる。高富も内心で悪態をついていた。
第二大隊がフェアルによる空中機動戦闘を得意とする特質上、他の大隊に比べると魔力容量は多く、魔力の効率運用にも長けている。要するに魔力的な意味でスタミナがあるのだ。
しかし彼等とて限界というものはある。
ドラゴンとの戦闘を開始して既に数分が経過しているが、全速力・高機動飛行をぶっ通しで行っているのだ。それに加えて初級魔法では効果が薄いからと中級魔法以上の法撃を間髪入れずに行っている。
明らかに魔力の消耗が激しい戦闘。日頃の厳しい訓練の成果であと数十分なら同じ戦い方を続けられるが、さりとてこれ以上ドラゴンの数が増えるのは許される状況では無かった。
『警告。地上にバンディット6、9、13が接近』
「マジックアーチャー、ライトウィザード。貴官らの射程圏内になる。頼めるか」
『マジックアーチャー了解』
『ライトウィザード了解しました』
孝弘と知花は返答してからすぐさま射撃・法撃行動に移る。
相変わらずその火力は凄まじい。三体のドラゴンが迫るが、二人とも冷静沈着にロックオンをし孝弘が射撃を、知花が法撃を行う。
『バンディット6、9、13、撃墜。即死判定』
「助かった。感謝する」
『バタリオンリーダー2、これくらいであれば問題ありません。間もなく到着する第二波の対処も間もなく始めます。地上には指一本触れさせません』
「真に頼もしいぞ、マジックアーチャー。ライトウィザード」
『警告。バンディット3、23が空域突破を敢行。立川方面へ西進。速度約七五〇』
『バタリオンリーダー2、申し訳ありません! 二体が抜けました!』
『バタリオン2各隊及び各航空部隊よりセブンス。抜けた二体は任せなさい。術式は準備しているから。むしろ指定範囲から退避してくれる?』
『バタリオンリーダー2よりセブンス。了解』
高富の部下からの報告が上がった直後、通信を送ってきたのは立川方面に控えていた璃佳で、彼女は戦闘が始まってからは立川を守るようにやや東へ国立方面に近い地点に展開していた。
璃佳が言った直後、賢者の瞳から警告が流れる。
『警告。友軍が長距離法撃準備を実行準備。ロックオンフェーズ完了。予想される法撃範囲をマップにマーク。法撃実行カウントダウン。二〇秒』
現れたのは赤着色されたかなり細長い長方形。ただし距離が半端ではなかった。
「全上空部隊へ通達。指定範囲より全力離脱!」
『了解!』
『我らがセブンスの上級長射程法撃ですね!』
状況を即時に察した隊員達と無人攻撃機は指定範囲から離脱していく。
二〇秒後、指定範囲を呑み込んだのは夜より深い闇の塊。直径十数メートルの高速で飛ぶ球体。闇属性魔法。放ったのは璃佳だった。
法撃の名は『暗黒帝の絶死線』。限りなく戦術級に近い威力を持つ長射程闇属性上級魔法である。
璃佳のいる方へ向かっていたドラゴン二体は闇に呑まれ消失。射程内にいたドラゴン三体も同じく消失した。
仲間が墜落では無く消失した姿を目の当たりにしたドラゴンに動揺が広がる。それは第二波のドラゴンも同じようで陣形がやや崩れたように見えた。
第二波を含めて残るドラゴンは一五体。上官の有り体に言えばえげつない法撃は、友軍に勝ちを確信させるには十分だった。
今度は日本軍側が、このままでは終わらないの形となる。西の方から高速で飛来する友軍機が近づいていた。
『シャドーランサー1よりセブンス及び各隊。お待たせしました。だいぶ片付いたようですが、ここからは我々も参戦します』
『セブンスよりシャドーランサー。ちょっと早かったね。頼んだよ』
『バタリオンリーダー2よりシャドーランサー。援軍感謝する』
西の宵闇より現れたのは国産戦闘機のFー3Aが三機だった。
『シャドーランサー2より各隊。クソトカゲは我々にお任せあれ』
『こちらシャドーランサー3。攻撃を開始する』
『ヒャッホウ!! 待ってましたァ!!』
『ドラゴン共をぶっ飛ばせー!!』
待ち望んでいた援軍に各方面から歓声が上がる。三機の空翔ける戦士達はその声に応えるようにミサイルを発射。空のバケモノを逃さない機械仕掛けの槍は確実に捉えドラゴンを地へと落としていく。
戦闘機部隊の到着はこの空域においてもドラゴンにとっては追い討ちとなる。
国分寺周辺空域に出現したドラゴンの総数四〇。それらは一匹残らず全てが討伐されたのだった。
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