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第4章 関東平野橋頭堡構築編
第11話 閉鎖型魔法障壁内近接戦(中)
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・・11・・
さて、戦闘は璃佳や茜に熊川だけではない。ほぼ同じタイミングで近接戦闘に移っている者もいた。
大輝と孝弘、川崎達である。
「土の加護は鋼鉄の加護に等しい、ってな!!」
大輝は薙刀に土属性の魔力を込める。物質硬化。武器そのものにバフを施す。
大輝に近付いたのは三人の軽鎧だった。
三人の軽鎧は魔法剣で斬撃、刺突などといった攻撃を行おうとするが大輝はこれを躱すか受け流し剣を自身に寄せ付けない。
「『石弾』!」
「ガァ!!」
幾つか敵の攻撃をいなすと、大輝は反撃に移る。ほぼゼロ距離で石弾を放ち、直撃を受けた敵は魔法障壁と鎧を石弾に貫かれ心臓付近に穴を開けて絶命。
「そらよっと!!」
「グァ!!」
「もういっちょぉ!!」
今度は薙刀で魔法障壁を破壊され、横薙ぎを受けて斬り伏せられた。この間、僅か数秒であった。
「大輝のやつ、あれだけ薙刀を使いこなして専門じゃないって言うんだから恐ろしいよな」
孝弘は大輝の戦闘の様子を横目で見つつ、自身に迫る敵に視線を移す。数は四名だった。
「コロコロ属性は変えられないな。無属性魔力弾でやるか」
既に二名の軽鎧を倒したが、残弾数には余裕がある。孝弘は魔力をさらに込めると、魔法自動拳銃が放つ白色の光はより強くなった。
「まずは一人目!」
目の前にいる軽鎧に向けて三発。一発、二発目で魔法障壁を破壊し、三発目が命中。胸部に弾丸が貫通し、一人目が倒れる。
両側面から二人が突っ込んでくるが、これを孝弘は踊るかのように回避。
「銃だけが武器だと思ったか?」
左側面にいた軽鎧に対して、孝弘は回し蹴りを放つと知花の身体強化魔法によって最早一つの武器となった彼の脚は魔法障壁を砕く。
敵の障壁を破ってから敵の心臓に向けて一発。
軽鎧のもう一人は仲間が倒れる間に魔法を展開。至近距離の相討ち覚悟で短縮詠唱を行おうとする。
しかし孝弘が気づかない訳がなく、魔法陣が顕現された所で彼は敵の魔法陣に銃口を向ける。
「遅い。あと二文節は短くしないと間に合わないぞ」
孝弘はバックステップをしながら銃弾を発射。魔力が練られた銃弾と魔法陣が衝突すると、起きるのは魔力の暴走。正しく動くはずの魔法陣に別者による別モノの魔力が割り込んだ事で制御不能となる。
その果ては、魔法陣を起点とした爆発。もう一人の軽鎧は木っ端微塵に吹き飛んだ。
「よし、次」
孝弘はバラバラになった軽鎧に一瞥もすること無く、次の目標に。
その様子を目にしながら、恐るべき固定砲台の役目を果たしていたのは水帆だ。
「孝弘ってば、相変わらずえげつないことするわねえ。ま、降伏しない限り敵に容赦せずは常識だけども、ねっ!」
事前に詠唱しておいた術式を発動し、孝弘や大輝に迫ろうとする軽鎧へ風の刃を振り向ける。
この頃になると、軽鎧の一団の数は約三〇まで減っていた。ただし甲府の事を思うと減少ペースは遅い。彼等とてA-からAランク相当の魔法能力者の上、近接戦もこなしてくる。近衛騎士団の名は伊達では無さそうだった。
友軍にも少々被害が出始めていた。死者は無く軽傷者が二名だが、手負いとなれば動きも鈍る。
水帆は全体を見渡しながら、火力をさらに上げることを決める。
「雷の槍は、地に落ち焦がす。『雷槍・七重射出』」
水帆の頭上には七つの青白い魔法陣。射出されたのは電撃を纏った槍だった。
「大輝! 左に退きなさいな!」
「おうよ!!」
大輝が大立ち回りをしていた事で四人の軽鎧が集中していたのを視線で追っていた水帆は、そこへ向けて雷槍を飛ばす。
大声をかけられた大輝は左後方にバックステップ。直後に雷槍が軽鎧四人の残っていた魔法障壁に衝突し、全破壊をさせた。
だがそれでは終わらない。
「大輝くんに、指一つ触れさせないよっ! 『光槍、十六重射出』!!」
声の主は知花。大輝へ迫る敵に対して、日常ではするとは思えない程に強い語気で詠唱をし、恐るべき速度で光の槍が四人の軽鎧に飛来する。既に魔法障壁を失い、守る壁がない軽鎧に一人四本ずつ槍は貫通。即死であった。
「愛の力って怖いわね……。どう見てもオーバーキルよ……」
「えっ?」
「えっ?」
「水帆さんがそれ言う?」
「なんのことやら」
わざとらしく口笛を吹く水帆とジト目を送る知花。しかしすぐに冗談じみたやり取りを二人は終えて、再び詠唱と補助に移っていく。
孝弘と大輝が近接戦を、水帆と知花が後方から直接法撃と援護を行っていく。見事な連携でみるみる敵の数は減っていった。
ただそれは、一筋縄ではいかない敵が残ることでもある。
璃佳達や孝弘達が倒しつつもまだしぶとく残っている者達がいた。部隊長格とその周辺にいる約一五名だった。
「大輝、粗方は片付けたか?」
「おう。けどよ、あん中じゃ強えのが残ってるぜ」
「隊長格とその取り巻きか。七条大佐達は、今突っ込んでいったな」
「合流すっか。いくらあの三人でも、人数的には分が悪いだろ」
「ああ、そうしよう」
川崎達――軽傷を負った二人が念の為離脱しており、代わりに水帆達の所にいた二人が入っている――――が軽鎧七人を相手に、璃佳と茜と熊川が隊長格含めた一〇人を相手にしている。
川崎達は互角の戦いを、璃佳達は若干押してはいるもののAランク相当の敵とあって瞬殺というわけにはいかなくなっていた。
(もしかしたら、隊長格と一部の軽鎧はA+相当の実力かもしれないな。近接戦も手馴れている。少々手強いだろうけど、だからどうした。とっとと終わらせて、魔法阻害装置を壊さないと)
孝弘は心中で思いつつ、大輝と共に激しい戦闘が繰り広げられる鉄火場へ再び突っ込んでいった。
さて、戦闘は璃佳や茜に熊川だけではない。ほぼ同じタイミングで近接戦闘に移っている者もいた。
大輝と孝弘、川崎達である。
「土の加護は鋼鉄の加護に等しい、ってな!!」
大輝は薙刀に土属性の魔力を込める。物質硬化。武器そのものにバフを施す。
大輝に近付いたのは三人の軽鎧だった。
三人の軽鎧は魔法剣で斬撃、刺突などといった攻撃を行おうとするが大輝はこれを躱すか受け流し剣を自身に寄せ付けない。
「『石弾』!」
「ガァ!!」
幾つか敵の攻撃をいなすと、大輝は反撃に移る。ほぼゼロ距離で石弾を放ち、直撃を受けた敵は魔法障壁と鎧を石弾に貫かれ心臓付近に穴を開けて絶命。
「そらよっと!!」
「グァ!!」
「もういっちょぉ!!」
今度は薙刀で魔法障壁を破壊され、横薙ぎを受けて斬り伏せられた。この間、僅か数秒であった。
「大輝のやつ、あれだけ薙刀を使いこなして専門じゃないって言うんだから恐ろしいよな」
孝弘は大輝の戦闘の様子を横目で見つつ、自身に迫る敵に視線を移す。数は四名だった。
「コロコロ属性は変えられないな。無属性魔力弾でやるか」
既に二名の軽鎧を倒したが、残弾数には余裕がある。孝弘は魔力をさらに込めると、魔法自動拳銃が放つ白色の光はより強くなった。
「まずは一人目!」
目の前にいる軽鎧に向けて三発。一発、二発目で魔法障壁を破壊し、三発目が命中。胸部に弾丸が貫通し、一人目が倒れる。
両側面から二人が突っ込んでくるが、これを孝弘は踊るかのように回避。
「銃だけが武器だと思ったか?」
左側面にいた軽鎧に対して、孝弘は回し蹴りを放つと知花の身体強化魔法によって最早一つの武器となった彼の脚は魔法障壁を砕く。
敵の障壁を破ってから敵の心臓に向けて一発。
軽鎧のもう一人は仲間が倒れる間に魔法を展開。至近距離の相討ち覚悟で短縮詠唱を行おうとする。
しかし孝弘が気づかない訳がなく、魔法陣が顕現された所で彼は敵の魔法陣に銃口を向ける。
「遅い。あと二文節は短くしないと間に合わないぞ」
孝弘はバックステップをしながら銃弾を発射。魔力が練られた銃弾と魔法陣が衝突すると、起きるのは魔力の暴走。正しく動くはずの魔法陣に別者による別モノの魔力が割り込んだ事で制御不能となる。
その果ては、魔法陣を起点とした爆発。もう一人の軽鎧は木っ端微塵に吹き飛んだ。
「よし、次」
孝弘はバラバラになった軽鎧に一瞥もすること無く、次の目標に。
その様子を目にしながら、恐るべき固定砲台の役目を果たしていたのは水帆だ。
「孝弘ってば、相変わらずえげつないことするわねえ。ま、降伏しない限り敵に容赦せずは常識だけども、ねっ!」
事前に詠唱しておいた術式を発動し、孝弘や大輝に迫ろうとする軽鎧へ風の刃を振り向ける。
この頃になると、軽鎧の一団の数は約三〇まで減っていた。ただし甲府の事を思うと減少ペースは遅い。彼等とてA-からAランク相当の魔法能力者の上、近接戦もこなしてくる。近衛騎士団の名は伊達では無さそうだった。
友軍にも少々被害が出始めていた。死者は無く軽傷者が二名だが、手負いとなれば動きも鈍る。
水帆は全体を見渡しながら、火力をさらに上げることを決める。
「雷の槍は、地に落ち焦がす。『雷槍・七重射出』」
水帆の頭上には七つの青白い魔法陣。射出されたのは電撃を纏った槍だった。
「大輝! 左に退きなさいな!」
「おうよ!!」
大輝が大立ち回りをしていた事で四人の軽鎧が集中していたのを視線で追っていた水帆は、そこへ向けて雷槍を飛ばす。
大声をかけられた大輝は左後方にバックステップ。直後に雷槍が軽鎧四人の残っていた魔法障壁に衝突し、全破壊をさせた。
だがそれでは終わらない。
「大輝くんに、指一つ触れさせないよっ! 『光槍、十六重射出』!!」
声の主は知花。大輝へ迫る敵に対して、日常ではするとは思えない程に強い語気で詠唱をし、恐るべき速度で光の槍が四人の軽鎧に飛来する。既に魔法障壁を失い、守る壁がない軽鎧に一人四本ずつ槍は貫通。即死であった。
「愛の力って怖いわね……。どう見てもオーバーキルよ……」
「えっ?」
「えっ?」
「水帆さんがそれ言う?」
「なんのことやら」
わざとらしく口笛を吹く水帆とジト目を送る知花。しかしすぐに冗談じみたやり取りを二人は終えて、再び詠唱と補助に移っていく。
孝弘と大輝が近接戦を、水帆と知花が後方から直接法撃と援護を行っていく。見事な連携でみるみる敵の数は減っていった。
ただそれは、一筋縄ではいかない敵が残ることでもある。
璃佳達や孝弘達が倒しつつもまだしぶとく残っている者達がいた。部隊長格とその周辺にいる約一五名だった。
「大輝、粗方は片付けたか?」
「おう。けどよ、あん中じゃ強えのが残ってるぜ」
「隊長格とその取り巻きか。七条大佐達は、今突っ込んでいったな」
「合流すっか。いくらあの三人でも、人数的には分が悪いだろ」
「ああ、そうしよう」
川崎達――軽傷を負った二人が念の為離脱しており、代わりに水帆達の所にいた二人が入っている――――が軽鎧七人を相手に、璃佳と茜と熊川が隊長格含めた一〇人を相手にしている。
川崎達は互角の戦いを、璃佳達は若干押してはいるもののAランク相当の敵とあって瞬殺というわけにはいかなくなっていた。
(もしかしたら、隊長格と一部の軽鎧はA+相当の実力かもしれないな。近接戦も手馴れている。少々手強いだろうけど、だからどうした。とっとと終わらせて、魔法阻害装置を壊さないと)
孝弘は心中で思いつつ、大輝と共に激しい戦闘が繰り広げられる鉄火場へ再び突っ込んでいった。
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