44 / 250
第4章 関東平野橋頭堡構築編
第1話 北海道からの完全撤退を前に駆けつけるは
しおりを挟む・・1・・
10月18日
午後1時半過ぎ
函館市北部・函館最終防衛線
孝弘達のいる中央高地方面軍が甲府方面奪還作戦で勝利を収めた頃、北海道南部の函館市では作戦が最終局面を迎えていた。
『北海道撤退作戦』
戦争突入から間もなく三ヶ月が経過しようとしているが、よく踏ん張っていた北海道方面の日本軍も遂に限界を迎えようとしていた。
北海道防衛を司る陸軍三個師団、海兵隊一個師団、魔法軍一個師団及び北の守護者『北方特務戦闘団』で構成される北方方面統合軍は、一人でも多くの避難民を本土に逃がそうと海軍と連携して奮闘していたが、CTはその兵力が尽きることを知らず徐々に押されていたのである。
本土は関東地方を中心にもう一箇所門が開いたことで手一杯。期待していた程の援軍は得られておらず、ギリギリでやりくりしていた。
しかし、それも一〇月を迎えた時点で悲観的な予測が現実を帯びることとなる。
北海道からの完全撤退。道民及び観光客の避難完了率は一〇月一日時点で八割。恐らく二〇日前後には全完了しているのではないかと分かった時点で軍も撤退しようとなったのである。
旭川は既に落ち、札幌も最早風前の灯火。であるのならば道南以外の兵力は先行して本土に移し、後は道南展開の兵力で最後の避難民を本土に送れば軍も本土へ。
作戦は速やかに裁可され、大阪に移転した軍中央統合本部も許可が出た。
北方方面統合軍は、中央からゴーサインが出た時点で用意していたプランを即発動。道南以外の残存兵力約一五〇〇〇を本土へ送った。
そして、一〇月一九日。
道南展開兵力約五〇〇〇(陸軍二〇〇〇、海兵隊二〇〇〇、北方特務戦闘団約一〇〇〇)は、最後の避難民を輸送する輸送艦及びフェリーからCTを守る為に激戦を続けていた。
・・Φ・・
「蓼科中佐! 国道二二八号線の防衛ライン突破されました! これ以上の戦線維持は困難です!」
「クソッ、やはり持たなかったか! 避難民のフネはどうだ!?」
「全員乗せたと報告あり! 先程出港! 次は我々を乗せる輸送艦だけです!」
「そいつは良い報告だ! 民間人が全員避難出来たんならそれでいい! もうちっと踏ん張るだけだ!」
『北方特務戦闘団』団長、蓼科大吾中佐は聞きたかった報告を受け取って、余裕が無いなかで久しぶりに笑みを見せる。民間人を乗せた船が出るまでは絶対死守命令が出ていたが、出港したのならばそれも間もなく解除されるからだ。
しかし、今の状況では後退するのも難しかった。
「エネミーレポート!」
「道南方面の敵想定兵力約一〇〇〇〇〇以上! 最先鋒は戦闘団司令部まであと三キロです!」
「多すぎて反攻する気にもならねえな……。三〇分持たせろ! そしたら撤退だ! トラップを撒きながら函館港に向かう! 友軍支援はどうだ?」
「沖合の海軍一個艦隊、第四次対地攻撃実施中! 艦載機部隊による第三次攻撃はあと一〇分で到着! 三沢の空軍からも第三次攻撃として一個飛行大隊の支援あり!」
「ありがてえ! 何がなんでも持たせろ! 五稜郭まで迫られるのは俺達が撤退する頃だぞ!」
『了解!!』
蓼科は部下達を鼓舞激励するが、いかんせん多勢に無勢。海軍や空軍の支援はあるものの、すぐに戦闘団の移動司令部付近まで迫られてしまう。
「彼我の距離、一〇〇〇切りました!」
「各中隊単位統制銃撃! 魔力装填後射撃に移れ!」
「了解!」
蓼科は各中隊に命令を出し、自分のいる本部中隊にも魔法銃射撃の準備をする。彼自身、A+ランクの魔法能力者であるから多少の時間は稼げる。生きて帰るつもりだが、場合によっては己の魔法能力を十分に発揮した上で戦死する覚悟はとうに出来ていた。
部下もそれは同じ。避難民全員を逃すことにはほぼ成功したのだから、大戦果。あとは生き残るだけで俄然士気は高いが、生きて帰れる保証が無いのは元々。残りの力を全て振り絞るつもりだった。
「距離八〇〇!」
「七〇〇で撃て! 火属性爆発系! 広散布射撃!」
ヘルハウンド型が先行し、大型、人型と続く。距離七〇〇になるのはあっという間だった。
「各隊、撃てェ!!」
本部中隊含め戦闘団本部付近にいた約四〇〇の将兵は統制魔法銃射撃を行う。
ほぼ同時に行われた陸軍の砲撃と機関銃撃、海兵隊の攻撃と共に高密度の火線が生まれた。
着弾の音は凄まじかった。数多の小型CTは肉塊と化して吹き飛び、大型CTも絶命する。
二度、三度、四度、五度と、統制魔法銃射撃が行われる。その度にCTは肉をばら撒く。
それでもバケモノは数が減らなかった。
「ヘルハウンド型距離四五〇!」
「各個射撃または法撃へ移行! 今のうちに陸さんと海兵隊さんを下げさせろ! あそこあたりずっと出ずっぱりだろ!?」
『馬鹿言わんでくださいよ、戦闘団長。陸はまだまだやれますって。――機関銃どんどんぶっぱなせ! 銃身が焼けついても構わん! どうせ捨ておく!』
『海兵隊も後退は選ばねえぞ! なあ、てめえら!!』
『応っっ!! 撤退なんてクソくらえだ!!』
「ったく、バカヤロウ共め……! だが感謝する!」
まだ余裕のある戦闘団で陸と海兵隊を支えるつもりだったが、どうやらどっちも後退するつもりはないらしい。蓼科は悪態をつきつつも、表情は嬉しそうだった。
攻撃は続く。CTを寄せつけず、距離二〇〇に詰まっても彼等は逃げない。近接戦闘上等の構えである。
距離は一五〇へ。大型CTがその体躯に相応しく壁に見える頃だった。
「フレンドリーレポート入りました! 七時方向より数二五〇! 二手に分かれ、そのうち一〇〇がこちらへ向かっています!」
「援軍だぁ!? 救いの神かよってとこだが、こんな時に来るたぁどこの大バカ野郎だ!」
『大バカ野郎こと、ウェストウィザード只今参上! 間に合って良かったですよっとぉ! 各員、目標ロック!』
『ロック完了!』
『てぇ!!』
無線を送ってきた主は澄んだ声音の女性だった。地上の彼等が上を見上げると、そこにいたのはフェアルで空を舞う約一〇〇の精鋭達。中心にいたのはセミロングの黒髪の女性だった。
その彼女が発射命令を出すと地上に刺さったのは、無属性爆発系。純粋な魔力の暴力がCTを襲った。
それだけでは無い。
『風よ振るえ、魔術の暴力を。風よ切り刻め、鋭利な刃を研ぎ澄まして。風よ、罪在りしバケモノを罰せよ。祖国を守らんが為に。風神が力の一端はワタシに宿る。顕現せよ、『風神刃大乱舞』』
緑白色に輝く巨大な魔法陣が現れた。
魔法陣から射出されたのは数えきれない程の風の刃。神がバケモノへ裁きを与えんが如く、風刃は大量のCTを切り刻んでいく。
大魔法が終わってから、中心から直径二キロには血と肉しか残っていなかった。
その大魔法とは風属性戦術級魔法、『風神刃大乱舞』。これをたった一人で行使可能な人物を、蓼科は一人しか知らなかった。
「西方特殊作戦大隊の『大風塵の魔術師』! 今川中佐か!」
上空約五〇〇メートルにいるから蓼科が賢者の瞳を使って視点ズームをすると、セミロングの女性、西方特殊作戦大隊大隊長・今川月子中佐は手をヒラヒラと振っていた。目鼻立ちの整った、モデルにいそうな美人だと蓼科は感じる。何度か見た事のある人物だが、以前から思っていたし今もそう思っていた。
『そのとーり!! 青森から大阪へ帰還命令が出かけてたんですけど、そっちの窮状を知りましてね。近いからいいでしょって中央に掛け合って、来たんです! いやぁ、ホント間に合って良かったですよ!』
「あんたら命の恩人だよ! 感謝する!」
ニコニコとした表情を向ける彼女に対して、北方特務戦闘団だけではなく、戦闘を続けながら陸や海兵隊の軍人からも大歓声が上がる。西方特殊作戦大隊の隊員達は手を振りながら攻撃を続けていた。
『お気になさらず! 大隊戦闘員で援護しますから、後退を! 避難民輸送船団は既に沖合に向かってて、もうすぐ貴方達を乗せる船も港に着きますから、さぁさぁ早く下がって! 多少は戦って貰いますけど、私達と空軍で援護しますので!』
「恩に着る! 各部隊後退開始! 事前の作戦通りトラップを撒きながら下がれ! トラップマーキングは忘れるなよ!」
『はっ!!』
新たな友軍の登場により、消耗していた北方特務戦闘団は下がり始めた。
この頃にはさらに追加で空軍の援護部隊が続々と駆けつける。西方特殊作戦大隊の隊員達は圧倒的な力を見せつけ、地上部隊を支援する。
「撤退戦はあまり好きじゃないですけど、友軍の為です。大隊総員、戦争の時間です。さぁさぁさぁさぁ、宴を開きますよ! バケモノ共に魔法と火薬のプレゼントをばら撒きましょう!」
『サー、イエッサー!!』
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜
美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊
ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め…
※カクヨム様にも投稿しています
※イラストはAIイラストを使用しています
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる