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第3章 中央高地戦線編
第17話 地下壕にいたのは
しおりを挟む 後半も戦う選手やコーチの迷惑になってはいけないので、俺はリーシャさんレイさんを屋内のウォーミングアップスペース――ゴルルグ族戦でそのリーシャさん他がお世話になった場所の、リーブススタジアム版だ――へ連れて行った。
「(やっば! 怒ってるんちゃう?)」
「(あんたのせいよ!)」
背を向けているので表情までは分からないが、彼女たちが囁き声で何か言い合うのが聞こえる。ほう、自分たちでも分かってはいるのか。
「じゃ、地面に座ってクールダウンしながら聞いて下さい……ってうわぁ!」
振り返り指示を出した俺は、レイさんの姿を見て思わず目を逸らした。
「どしたんショーキチにいさん?」
「上はまだ脱がないで下さい!」
ニヤニヤと笑いながら問いつめてくるレイさんはユニフォームを脱いでスポーツブラの姿だった。
「何で? もう試合に出えへんからええんちゃう?」
「俺が良くないです! あ、何でリーシャさんも!?」
俺とレイさんが言い合うのを見ていたリーシャさんまで上を脱ぎだし、俺は手を振って止める。
「だって言われてみればそうだし、スポーツブラだからエロい感じじゃないし」
レイさんと比べて、リーシャさんはごく普通の口調で言った。そうだ、彼女は一貫して『スポブラはエロくない』派だった。
「ええい! そういう話で誤魔化そうとしない! お二方とも、前半で交代して貰った理由を説明するので座って下さい!」
俺はそう言いながら先にドスン! と地面に座る。その勢いを見てリーシャさんとレイさんは顔を見合わせ、ストン! と女の子座り――正座を外に崩し足を八の字にする座り方だ。男性にはできない、というかお尻を完全につけるのは骨の構造上難しい。ってエルフもそうなのかな? 近々、分かるかもしれない――で座った。
「ごめんて……。ハットトリックを狙ってセルフィッシュなプレイに走り過ぎたから、って言うんやろ?」
俺の剣幕にやや罪悪感を覚えていたのか、レイさんが先に口を開く。
「え? いや別にそれは」
「じゃあ私とこの子が互いのチャンスにパスを出さなかったから?」
次いで、俺が首を横に振ったのを見てリーシャさんが言う。
「あ、そうだったんですか? よくフィールド上で見えてたんですね、凄いです!」
リーシャさんもレイさんも上から見ていた俺でも――まあ隣に騒がしくも魅力的な女性がいたので集中できていなかったという言い訳もあるが――見えていなかったコースが見えていた様だ。俺は素直に称賛を返した。
「じゃあなんなん?」
「じゃあなんなの?」
リーシャさんとレイさんは同時にハモるように言った。おう、この子たち自分達が思っているよりもコンビネーション良いな。面倒くさいし心の中ではもう『LRコンビ』と呼ぶ事にしよう。リーシャがLでレイがRなのは俺が勝手に決めた事だが。
「どちらも舐めプをやり出していたじゃないですか? それが結構、危ないなーと思って」
「舐めプ?」
この疑問を口にしたのはリーシャさんだ。レイさんは俺の予想通りこの言葉を知っていたらしく、無言でスポブラに覆われた大きな胸を押さえている。
「舐めたプレイ、の略です。さっきお二方が言ってた様なプレイはまだ良いんですよ。貪欲さの表れなんで。でも相手選手を舐めた、馬鹿にした様なプレイも見受けられたんで。あ、柔軟は続けて下さい」
俺は言葉を切ってクールダウンの為の体操を促した。アリスさんにも説明した様に大量リードの際に相手を嘲る様な動きをすると、激しい報復行為を受ける可能性がある。そして先ほどの言葉と矛盾するように感じてしまう所だが、貪欲なプレイと舐めプは意外と共存してしまうものなのだ。
「リーシャさんもレイさんも自分の得点を優先して、やや強引で派手なプレイを選択しがちになっていましたよね? それを逆に言うと、より得点の可能性が高い選択肢を捨ててエンタメに走った、と」
「私は、そんなつもりは……無い、わよ!」
リーシャさんが上体を前に倒しながら言う。柔軟で苦しい姿勢になっていようとも俺への反論は諦めない。彼女らしい。
「まあリーシャさんはそうでしょうけどね。そこは相手DFの主観になりますよ。逆にレイさんは心当たりありまくり、って所でしょ?」
俺がそう言うとレイさんはお喋りな彼女に珍しく苦笑いしながら小さく頷いた。彼女は胡座をかく姿勢で身体を大きく捻って腰のストレッチをしている。声が出ないのだろう。
「でも所詮、ハーピィでしょ? 身体も弱いしアイドルやってるような軟弱な娘たちじゃない。別に蹴られたって痛くも痒くもないわ」
今やった体前屈の方がよっぽど痛かったわよ! とでも言わんばかりの顔でリーシャさんが反論する。おまえ、アイドルを舐めんなよ? アレでかなりのアスリートだし、何というかその、芸能界のいがみ合いやイジメってキツいんだぞ?
例えばシューズの中に画鋲を入れるとか……WillUは鳥の足なのでシューズ無いけど。あ、でも気にくわない子を無視するとか……WillUは血縁者が多いのでそんなの無いけど。他にも例えば……いやWillUはそんなことやらないって信じてるし!
あれ? 何の話だっけ?
「それは彼女らを誤解しています。何せ彼女らの足には鉤爪がありますし。それを使えば……あ、レイさん失礼」
俺はそう言うとレイさんの足首を掴んで持ち上げた!
「(やっば! 怒ってるんちゃう?)」
「(あんたのせいよ!)」
背を向けているので表情までは分からないが、彼女たちが囁き声で何か言い合うのが聞こえる。ほう、自分たちでも分かってはいるのか。
「じゃ、地面に座ってクールダウンしながら聞いて下さい……ってうわぁ!」
振り返り指示を出した俺は、レイさんの姿を見て思わず目を逸らした。
「どしたんショーキチにいさん?」
「上はまだ脱がないで下さい!」
ニヤニヤと笑いながら問いつめてくるレイさんはユニフォームを脱いでスポーツブラの姿だった。
「何で? もう試合に出えへんからええんちゃう?」
「俺が良くないです! あ、何でリーシャさんも!?」
俺とレイさんが言い合うのを見ていたリーシャさんまで上を脱ぎだし、俺は手を振って止める。
「だって言われてみればそうだし、スポーツブラだからエロい感じじゃないし」
レイさんと比べて、リーシャさんはごく普通の口調で言った。そうだ、彼女は一貫して『スポブラはエロくない』派だった。
「ええい! そういう話で誤魔化そうとしない! お二方とも、前半で交代して貰った理由を説明するので座って下さい!」
俺はそう言いながら先にドスン! と地面に座る。その勢いを見てリーシャさんとレイさんは顔を見合わせ、ストン! と女の子座り――正座を外に崩し足を八の字にする座り方だ。男性にはできない、というかお尻を完全につけるのは骨の構造上難しい。ってエルフもそうなのかな? 近々、分かるかもしれない――で座った。
「ごめんて……。ハットトリックを狙ってセルフィッシュなプレイに走り過ぎたから、って言うんやろ?」
俺の剣幕にやや罪悪感を覚えていたのか、レイさんが先に口を開く。
「え? いや別にそれは」
「じゃあ私とこの子が互いのチャンスにパスを出さなかったから?」
次いで、俺が首を横に振ったのを見てリーシャさんが言う。
「あ、そうだったんですか? よくフィールド上で見えてたんですね、凄いです!」
リーシャさんもレイさんも上から見ていた俺でも――まあ隣に騒がしくも魅力的な女性がいたので集中できていなかったという言い訳もあるが――見えていなかったコースが見えていた様だ。俺は素直に称賛を返した。
「じゃあなんなん?」
「じゃあなんなの?」
リーシャさんとレイさんは同時にハモるように言った。おう、この子たち自分達が思っているよりもコンビネーション良いな。面倒くさいし心の中ではもう『LRコンビ』と呼ぶ事にしよう。リーシャがLでレイがRなのは俺が勝手に決めた事だが。
「どちらも舐めプをやり出していたじゃないですか? それが結構、危ないなーと思って」
「舐めプ?」
この疑問を口にしたのはリーシャさんだ。レイさんは俺の予想通りこの言葉を知っていたらしく、無言でスポブラに覆われた大きな胸を押さえている。
「舐めたプレイ、の略です。さっきお二方が言ってた様なプレイはまだ良いんですよ。貪欲さの表れなんで。でも相手選手を舐めた、馬鹿にした様なプレイも見受けられたんで。あ、柔軟は続けて下さい」
俺は言葉を切ってクールダウンの為の体操を促した。アリスさんにも説明した様に大量リードの際に相手を嘲る様な動きをすると、激しい報復行為を受ける可能性がある。そして先ほどの言葉と矛盾するように感じてしまう所だが、貪欲なプレイと舐めプは意外と共存してしまうものなのだ。
「リーシャさんもレイさんも自分の得点を優先して、やや強引で派手なプレイを選択しがちになっていましたよね? それを逆に言うと、より得点の可能性が高い選択肢を捨ててエンタメに走った、と」
「私は、そんなつもりは……無い、わよ!」
リーシャさんが上体を前に倒しながら言う。柔軟で苦しい姿勢になっていようとも俺への反論は諦めない。彼女らしい。
「まあリーシャさんはそうでしょうけどね。そこは相手DFの主観になりますよ。逆にレイさんは心当たりありまくり、って所でしょ?」
俺がそう言うとレイさんはお喋りな彼女に珍しく苦笑いしながら小さく頷いた。彼女は胡座をかく姿勢で身体を大きく捻って腰のストレッチをしている。声が出ないのだろう。
「でも所詮、ハーピィでしょ? 身体も弱いしアイドルやってるような軟弱な娘たちじゃない。別に蹴られたって痛くも痒くもないわ」
今やった体前屈の方がよっぽど痛かったわよ! とでも言わんばかりの顔でリーシャさんが反論する。おまえ、アイドルを舐めんなよ? アレでかなりのアスリートだし、何というかその、芸能界のいがみ合いやイジメってキツいんだぞ?
例えばシューズの中に画鋲を入れるとか……WillUは鳥の足なのでシューズ無いけど。あ、でも気にくわない子を無視するとか……WillUは血縁者が多いのでそんなの無いけど。他にも例えば……いやWillUはそんなことやらないって信じてるし!
あれ? 何の話だっけ?
「それは彼女らを誤解しています。何せ彼女らの足には鉤爪がありますし。それを使えば……あ、レイさん失礼」
俺はそう言うとレイさんの足首を掴んで持ち上げた!
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