異世界帰還組の英雄譚〜ハッピーエンドのはずだったのに故郷が侵略されていたので、もう一度世界を救います〜

金華高乃

文字の大きさ
11 / 250
第1章 ハッピーエンドは幻夢の如く

第10話 感動の再会と、古川少将の発言

しおりを挟む
 ・・10・・
 豊川翔吾。二六歳。現・日本魔法軍中尉。

 四人が転生前に通っており、日本で一一じゅういち校しかない魔法関連学部を設置している清秋学院大学――人口約三〇〇万人の愛知県名古屋市より数十キロ北にある、人口約七〇万人で県庁所在地の岐阜県井口市にキャンパスがある――の卒業生である。

 豊川翔吾が四人と仲良くなるきっかけは入学式の直後のオリエンテーションで孝弘と出会ったことだった。大学生がその後の四年間や卒業後も仲良くする相手を得るパターンは幾つかあるが、それなりに多い部類はオリエンテーションであり、翔吾と孝弘の出会いもその一つだった。

 清秋学院大学は生徒数一〇〇〇〇人を越える大規模大学であるが、魔法学部の学部生は他学部に比べると余り多くない。魔法学部五本の指と呼ばれる清秋学院大学魔法学部ですら一学年生徒数は定員九〇。魔法科学学部で定員八〇。魔法医学部に至っては定員四〇だ。これだけ生徒数が少ないとなると、横の繋がりは他学部に比べて強くなる。孝弘と彼もその例に漏れずオリエンテーションをきっかけに仲良くなった。

 そこから学部の専門講義をきっかけに四人と翔吾は仲良くなった。世間の大学生らしく昼食を共にしたり、学校周辺のカラオケやゲームセンターで遊んだり、時には徹夜で遊ぶこともあった。

 二年生になると専門科目が増え、授業で接する事も増えていった。他愛もない会話も積み重ねていった。大学卒業したらどうしようね。いやその前にゼミだろゼミ。院進だって結構あるんだし。
 四人と翔吾はこれからもこの緩くも楽しい関係が続くと思っていた。

 ところが、突如四人と翔吾の関係は断ち切れる。
 翌日が金曜日になるものの元から五人とも授業が少ない上に四月の段階で休みがあることが分かっていたので、四日間を使って旅行に行く話が出た。大学入学後割と直ぐに免許を取って車も持っていた大輝がドライバーになって、関東方面へ旅行へ。という話が出たのだ。ところが、翔吾は偶然家庭の予定が数日入ってしまっており、行けなかった。
 これが決定的な分かれ道だった。

 今から六年前の五月二二日。翔吾は父親の実家である香川県高松市から、テレビのニュースで見てしまった。

『中央高速道路駒ヶ根多重玉突き事故』

 原因はタンクローリーの横転と、トラックの事故。そこから対向車線まで含めて多数の車や大型車両を巻き込んだ二〇二〇年代から二〇三〇年代にかけて最大で最悪の自動車事故だった。
 死者三六名。重軽傷者一一六名。行方不明者四名。
 その中の行方不明者に、四人の名前があったのだ。死者の大抵が悲惨な状況だったこの事故。何日経っても見つからないことから周辺まで捜索したもののそれでも発見出来ない。
 結果として四人は焼死体の中にいたかもしれないが、行方が分からないままというわけで行方不明者として処理されることになる。

 当然世間では孝弘達四人がどうなったかの注目が集まった。が、それも事故から一ヶ月まで。事故の節目の時には多少思い出されるものの謎を残して消えた事になっており、時が経つに連れて忘れ去られていった。
 四人の親族は大いに悲しみ、絶望した。それでも何とか納得しようと、割り切ろうと過ごした。行方不明者故に死亡届は出さざるをえず、とはいえ四人の生きた証は未だに残していた。
 たまたま四人と居合わせていなかった翔吾も大きなショックを受けた。だが、いなくなった友人達が帰ってくるわけがない。
 事故の当初と暫くはどこかに神隠しにあったのではという荒唐無稽な話も出てたし、出来ればそれを信じたかったが、いくら魔法が存在する世界とはいえそれはありえないし、有り得るのならば魔法の学問体系として証拠や実証実験が無ければならなかった。

 結局、翔吾もまた割り切らなければならないと心中に思いを抱いたままの一人になった。
 事故から五年以上が経過して、ようやく翔吾も自分なりの四人に対する気持ちの着地点を見つけて日々を過ごしていた。

 ところが、二〇三六年七月末。魔法学部卒業生としては比較的ある進路である魔法軍に入り中尉になった彼は、異なる世界からの侵略者によって戦地に身を投じることとなる。
 今のところ最前線で戦う経験は幸いなかったが、今いる富士宮や富士はすぐそこが最前線。いつどうなるかも分からない。
 そんな不安に苛まれる中で突如姿を現したのは、行方不明者のはずで、真相は異世界アルストルムに転移させられ戦場の六年を生き抜いた四人だった。
 もちろん、その事を翔吾は知るわけもない。


 ・・Φ・・
「ほ、本当に、本当に生きてる……!   は、ははは、嘘だろう……?   は、ははははは……」

 翔吾は死んだと思ったはずの四人が生きていて、目の前に姿があって身体を震わせていたし、四人は四人でまさかこんなところに翔吾がいるとは思っていなかったから驚愕していた。古川少将は彼等の関係性を察してか何も言わないでいた。

「なんて言えばいいんだろうな……。まあ、その生きてたんだ」

「そう、ね。表現しがたいわね……」

「んー、どう伝えりゃいいんだろうな。ま、幽霊じゃねえのは確かだぜ」

「う、うん」

「なんでもいいさ……!!   皆が生きていて、それだけで……!!   あの時は、あの時は、本当に……!!   ああもう、まさかこんな時に、こんな事が起きるなんて……!!」

 四人ともどうしたものかと、言葉を濁す。だが翔吾にとってはそんなことはどうでも良く、四人が生きていた喜びと感動に震えるばかりだった。
 とはいえ、彼も学生ではないし子供でもない。立派な大人である。まして軍人であるから五分程度は感動の再会を分かちあっていたものの、彼は心を切り替えた。

「本ッッッッッ当に、生きてて良かった。今なんて言えばいいか僕は分からないし、何を伝えたいのかも混乱して分からない。ただ、ただ、さ。プライベートの自分として、軍人としての双方の観点から聞くよ。生きていたとして、だ。どこにいたんだい……?」

 翔吾が聞きたいのも当然だろう。何せ六年だ。六日ではないし、六ヶ月でもない。生きていたとしても六年も姿を表さないのは謎が過ぎる。国内にいれば見つかるはずだし、国外とて似たようなものだ。
 翔吾は言葉を続ける。

「見たところ、四人とも健康だ。服装は綺麗だし、痩せてもいない。むしろ孝弘と大輝は逞しくなっていないかい……?   高崎さんや関さんにしても、なんかこう、六年前と雰囲気が全く違うような……。いやそりゃ六年も経ってるんだから変わるんだろうけど……」

 孝弘達は言葉が詰まる。真相を話せるわけが無いのだ。異世界に転移してました。六年間戦ってました。格好が綺麗なのはアルストルムの人達が当時の服や持ち物を保管してくれていたからで、体格が良くなったのは戦場に六年もいたから。雰囲気が違うのは長いこと戦場にいたからで、当然それが原因で自分達の価値観も変わってしまっているから。
 今日本や世界で起きている異なる世界からの侵略者について混乱こそしているものの、絶望に満ちてこの後自死や引きこもる事が選択肢に毛頭無いのもそのせい。なんならさっき約数百のバケモノを倒してきたところで、動じなかったどころか割と余裕が残っていた。

 こんなこと、口が裂けても言えないだろう。だから四人は何も言えなかった。
 その時だった。しばらく口を閉じていた古川少将が言った。

「まあ、君達が言いにくい気持ちもよく分かる。大方、言ったところで信じて貰えない。といった所だろう?」

「どういう、ことですか?」

 古川少将の謎の問いに対して、孝弘は警戒して問いを返す。古川少将は何かを知っていそうな口ぶりだったからだ。三人もやや身構える形をとる。
 しかし、反して古川少将の表情は変わらない。むしろ防音魔法を冷静に発動したくらいだ。

「福地少尉には予め話していたが、豊川中尉含め二人にはくれぐれも本件を口外しないよう。軍機だ」

「はっ」

「了解しました」

 福地少尉、翔吾の順に言うと、古川少将は改めて四人の方に顔を向ける。

「君らもあまり警戒しないでくれ。私も初めて聞いた時は耳を疑ったが、今や異世界からの侵略者によって世界が危機に瀕している。もう疑う余地もない。君達に聞こう。悲劇の玉突き事故の被害者だった君達は、どこの世界かまでかは分からないが、異世界に飛ばされた。そして、何があったかまで分からないが帰還を果たせた『帰還組』。――違うかね?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

処理中です...