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第1章 ハッピーエンドは幻夢の如く
第5話 バケモノの増援
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・・5・・
「敵の種類は変わらず、犬型と人型の化け物か。数が多いのがちょっと厄介か」
「普通は四対五〇〇なんてありえないわよね。でも、この数相手に後退するのも得策じゃないし」
「お前ら、魔力残量はばっちりだろ? オレはほぼ魔法使ってないからな」
「わたしは全然大丈夫。孝弘くんや水帆さんは?」
「あの程度問題無しよ」
「俺もまだまだいける」
この程度の戦闘なら四人は魔力をあまり消費していない。地球世界の現代だと魔法軍将兵が装備する『総合戦闘支援パッケージシステム』(通称:賢者の瞳)で一パーセント単位で魔力残量が分かるが、感覚で大体は分かるものだ。
魔力残量の問題は無し。敵は弱いといえど数は一個大隊相当。中級魔法で一気にどれだけか潰した方が得策かもしれないと孝弘は作戦を組み立てた。
アルストルム世界で使っていた武器があれば便利だったし、この世界の魔法軍装備である魔法小銃があれば魔力節約にもなったがどちらも手元にない。無いものねだりをしてもな、とも彼は思っていた。
「距離約一〇〇〇、まずは犬型が先行してるよ」
「水帆、俺と二人で『ファイア・レイン』の同時法撃を」
「オッケー!」
「大輝と知花は撃ち漏らしを。数が多いから今回は大輝も頼む」
「分かったぜ!」
「了解!」
孝弘は三人に指示を送ると、水帆と同時に中級魔法『火球之雨』の詠唱を始める。大輝と知花は撃ち漏らしの撃破を目的とした攻撃魔法の詠唱を開始。全員が近接武器を持っていないのと、先の会話にあるように得体の知れない相手へ近接戦を仕掛けるのを避けたい為だ。
孝弘と水帆が詠唱を終えるのと、知花の彼我距離報告はほぼ同時だった。
「距離約七〇〇!」
「やるぞ水帆」
「ええ」
二人が詠唱の終えた魔法を発動する。
『火球之雨!!』
発動の言霊を口にすると、現れたのは多数の緋色の魔法陣。降り注いだのは火球の豪雨だった。
着弾すると凄まじい爆発音が周辺に響き渡る。先に突っ走ってきた犬型の化け物が爆発で四散。榴弾の効力射のような光景だった。
中級魔法とはいえ、敵を狙った正確な法撃で犬型の化け物は半数ほどを撃滅。だが数が多いだけに全てを倒すほどには及ばない。爆煙を抜けて生き残った犬型の化け物が突撃してくる。
「土礫弾丸、十六重射出!」
「光矢射撃、二十重射出!」
続けて放たれたのは大輝の土属性魔法と知花の光属性魔法だ。合わせて三十を越える法撃が抜け出してきた犬型の化け物を貫いた。
これで犬型の化け物はおおよそ討伐。残すは人型のみで約三〇〇となった。
「さすがに五〇〇相手は骨が折れそうだなあ……」
「突撃してくるだけだからいいけれど、これで法撃までしてきたら厄介よね」
「いっその事四人同時で中級魔法でもぶっぱなすか?」
「大輝くんの案もありかも。このままじゃラチがあかないし……」
四人は初級魔法で近づきつつある人型の化け物――一番近いのでも距離は約四〇〇あるが――を討ちながら次の攻撃を話し合う。それだけ余裕がある証拠でもあるのだが、知花のラチがあかないというのは確かなことだった。
「大輝の案でいくか。敵は横に広がりがちだ。範囲のダブりが無いようにしよう。どの属性でも効果はあっあから無属性の魔法弾でも大丈夫だろうし、多重魔法弾でも十分なはずだ。全員、準備!」
『了解!』
四人は詠唱を開始。短縮詠唱ですぐに終えると。
『多重魔法弾!』
一斉に無属性の魔法弾を多数発射する。鎧袖一触とはまさにこの事で、人型の化け物は木っ端微塵になる。
しかし、約一五〇が残る。あと何発か放てば約一個大隊相当を潰滅させられるが、再び状況が変化した。
「新たに敵の追加を探知。数は約一〇〇、けど、大型目標アリ!」
「大型目標だって?」
「ほんっとキリが無いわね。私達ってそんな魔境を通ってたの?!」
「ったくよお。勘弁してほしいよな」
流石に第三波が新たに現れた上、大型目標を探知という知花の報告に彼等は辟易とする。
変化は彼等の正面だけでは無かった。
「後方から高速で接近する何かを探知! 速度は約六〇! 早いよ!」
「約六〇!? 自動車並じゃないか!」
孝弘は前方だけではなく後方からも不明体が高速接近していることに思わず声を大きくする。
「大輝、知花! 後方は任せた!」
「任せとけ!!」
「分かった! ん、でも待って! この感覚は、今までと違う! もしかして……、やっぱり!」
後方から高速接近した不明体。現れたのは現代に相応しくこの場には頼もしい『組織』だった。
車両には日の丸。彼等の服装には覚えがある。ニュースだけではなく、講義でも紹介されていたそれ。かなり近付いてから見えたあるエンブレムで知花達は確信した。
「魔法軍! 魔法軍の偵察装甲車だよ!」
知花の発言と同時に、高速で走る文明の機械が接近。日本魔法軍の偵察装甲車が二両だった。
偵察装甲車にいる軍人は四人に近づかんとしていたが、偵察装甲車に備え付けられている軽機関銃が火を吹いた。
「なんでこんな所に民間人がいるんだ!? いや待てヤツらの大量の死骸といい君らの魔力の濃さといい、まさか君らがやったのか!? 本当に民間人か!?」
「笹原三等軍曹! んなこたぁいいからさっさと撃て! 君達、早くこっちへ!! 車両に乗れ!! 二人に分かれて乗れ!!」
偵察装甲車は急停車すると男は四人に早く車両に乗るように催促し、二両の偵察装甲車に孝弘と水帆、大輝と知花に分かれて乗る。その間にも軽機関銃の射撃は続けられ、着弾すると明らかに通常弾とは思えない爆発系火属性の爆発の仕方をする。
「総員撤退!! ずらかるぞ!!」
『了解!!』
男が叫ぶと、二両の偵察装甲車はこの場を急速離脱していった。
「敵の種類は変わらず、犬型と人型の化け物か。数が多いのがちょっと厄介か」
「普通は四対五〇〇なんてありえないわよね。でも、この数相手に後退するのも得策じゃないし」
「お前ら、魔力残量はばっちりだろ? オレはほぼ魔法使ってないからな」
「わたしは全然大丈夫。孝弘くんや水帆さんは?」
「あの程度問題無しよ」
「俺もまだまだいける」
この程度の戦闘なら四人は魔力をあまり消費していない。地球世界の現代だと魔法軍将兵が装備する『総合戦闘支援パッケージシステム』(通称:賢者の瞳)で一パーセント単位で魔力残量が分かるが、感覚で大体は分かるものだ。
魔力残量の問題は無し。敵は弱いといえど数は一個大隊相当。中級魔法で一気にどれだけか潰した方が得策かもしれないと孝弘は作戦を組み立てた。
アルストルム世界で使っていた武器があれば便利だったし、この世界の魔法軍装備である魔法小銃があれば魔力節約にもなったがどちらも手元にない。無いものねだりをしてもな、とも彼は思っていた。
「距離約一〇〇〇、まずは犬型が先行してるよ」
「水帆、俺と二人で『ファイア・レイン』の同時法撃を」
「オッケー!」
「大輝と知花は撃ち漏らしを。数が多いから今回は大輝も頼む」
「分かったぜ!」
「了解!」
孝弘は三人に指示を送ると、水帆と同時に中級魔法『火球之雨』の詠唱を始める。大輝と知花は撃ち漏らしの撃破を目的とした攻撃魔法の詠唱を開始。全員が近接武器を持っていないのと、先の会話にあるように得体の知れない相手へ近接戦を仕掛けるのを避けたい為だ。
孝弘と水帆が詠唱を終えるのと、知花の彼我距離報告はほぼ同時だった。
「距離約七〇〇!」
「やるぞ水帆」
「ええ」
二人が詠唱の終えた魔法を発動する。
『火球之雨!!』
発動の言霊を口にすると、現れたのは多数の緋色の魔法陣。降り注いだのは火球の豪雨だった。
着弾すると凄まじい爆発音が周辺に響き渡る。先に突っ走ってきた犬型の化け物が爆発で四散。榴弾の効力射のような光景だった。
中級魔法とはいえ、敵を狙った正確な法撃で犬型の化け物は半数ほどを撃滅。だが数が多いだけに全てを倒すほどには及ばない。爆煙を抜けて生き残った犬型の化け物が突撃してくる。
「土礫弾丸、十六重射出!」
「光矢射撃、二十重射出!」
続けて放たれたのは大輝の土属性魔法と知花の光属性魔法だ。合わせて三十を越える法撃が抜け出してきた犬型の化け物を貫いた。
これで犬型の化け物はおおよそ討伐。残すは人型のみで約三〇〇となった。
「さすがに五〇〇相手は骨が折れそうだなあ……」
「突撃してくるだけだからいいけれど、これで法撃までしてきたら厄介よね」
「いっその事四人同時で中級魔法でもぶっぱなすか?」
「大輝くんの案もありかも。このままじゃラチがあかないし……」
四人は初級魔法で近づきつつある人型の化け物――一番近いのでも距離は約四〇〇あるが――を討ちながら次の攻撃を話し合う。それだけ余裕がある証拠でもあるのだが、知花のラチがあかないというのは確かなことだった。
「大輝の案でいくか。敵は横に広がりがちだ。範囲のダブりが無いようにしよう。どの属性でも効果はあっあから無属性の魔法弾でも大丈夫だろうし、多重魔法弾でも十分なはずだ。全員、準備!」
『了解!』
四人は詠唱を開始。短縮詠唱ですぐに終えると。
『多重魔法弾!』
一斉に無属性の魔法弾を多数発射する。鎧袖一触とはまさにこの事で、人型の化け物は木っ端微塵になる。
しかし、約一五〇が残る。あと何発か放てば約一個大隊相当を潰滅させられるが、再び状況が変化した。
「新たに敵の追加を探知。数は約一〇〇、けど、大型目標アリ!」
「大型目標だって?」
「ほんっとキリが無いわね。私達ってそんな魔境を通ってたの?!」
「ったくよお。勘弁してほしいよな」
流石に第三波が新たに現れた上、大型目標を探知という知花の報告に彼等は辟易とする。
変化は彼等の正面だけでは無かった。
「後方から高速で接近する何かを探知! 速度は約六〇! 早いよ!」
「約六〇!? 自動車並じゃないか!」
孝弘は前方だけではなく後方からも不明体が高速接近していることに思わず声を大きくする。
「大輝、知花! 後方は任せた!」
「任せとけ!!」
「分かった! ん、でも待って! この感覚は、今までと違う! もしかして……、やっぱり!」
後方から高速接近した不明体。現れたのは現代に相応しくこの場には頼もしい『組織』だった。
車両には日の丸。彼等の服装には覚えがある。ニュースだけではなく、講義でも紹介されていたそれ。かなり近付いてから見えたあるエンブレムで知花達は確信した。
「魔法軍! 魔法軍の偵察装甲車だよ!」
知花の発言と同時に、高速で走る文明の機械が接近。日本魔法軍の偵察装甲車が二両だった。
偵察装甲車にいる軍人は四人に近づかんとしていたが、偵察装甲車に備え付けられている軽機関銃が火を吹いた。
「なんでこんな所に民間人がいるんだ!? いや待てヤツらの大量の死骸といい君らの魔力の濃さといい、まさか君らがやったのか!? 本当に民間人か!?」
「笹原三等軍曹! んなこたぁいいからさっさと撃て! 君達、早くこっちへ!! 車両に乗れ!! 二人に分かれて乗れ!!」
偵察装甲車は急停車すると男は四人に早く車両に乗るように催促し、二両の偵察装甲車に孝弘と水帆、大輝と知花に分かれて乗る。その間にも軽機関銃の射撃は続けられ、着弾すると明らかに通常弾とは思えない爆発系火属性の爆発の仕方をする。
「総員撤退!! ずらかるぞ!!」
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