Reincarnation 〜TOKYO輪廻〜

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16. 決戦への決意

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~新宿区~

ワルバの駐車場に緑のベンツが停まる。

「神さん、この車まだあったんですね」

「当たり前ぇだろうが、高かったんだぞ!」
外だけでなく、内装までグリーングリーン。

「エコカーにはするなら、これぐらいやらねぇとおかしいだろうが」🌱🌱

エコカーを完全に取り違えている神である。

「しかしね、神さん。…スーツまで緑にしなくてもいいんじゃないすかね💦。シートと同化して、カメレオンみたいになってますよ」

中途半端が嫌いな神である。

「うるせぇ、行くぞ」

既に注目の的の車から、🟢マンが降り立つ。
携帯で写真を撮る人々。
気にしてない風でバザールへ向かう。

「神さんなんか歩き方変っすよ」

意外と緊張していた💧

「しかし、何でまた?」

「いちいちうるせぇって、何だその距離は!」

並んで歩きたく無い気持ちは分かる。
ラブに頼まれてあの店を見に来たのであった。

「ん?」
首狩り族の店の前には、若い女性店員がいた。

「い、いらっしゃいませ💦」
驚きを通り越して、焦る。

「店主はいるか?」

「あ、はい。奥におります」

「邪魔するぜ」

奥には、あのバイト青年が座っていた。

「おい、店主は、どうした?」

「あ、あの時の…実はあれから少しして亡くなったんです」

(なんだってーッ⁉️)

「そうか、気の毒にな。お前が後取りか、シッカリ働けよ」

(ラブ…驚くよなぁ💧)

何と告げるか考えていると、彼が呼び止めた。

「もしかして、ラブさんの知り合いですか?」

「ああ、彼女に言われて見に来たんだが…」

「じゃあ、これを渡して下さい」

小さな木箱を渡された。

「亡くなる前に、また彼女が来るはずだから、これを渡すように言われてたんです」

「そうか、分かった。まぁ、そう気を落とすな若者!誰でもいつかは死ぬんだからな」

ガッカリしている理由は明らかに違う。

「おい、行くぞ」



車に戻ると、また人が集まっていた。
ただ…距離を保って。

さりげなくドアの前で振り向く神。
サッと携帯をしまう周り。

(…まぁいいか)

「TERRAへ行け」


暫く走ると、神の勘が働く。

「次左へ曲がれ」

「真っ直ぐですよ?」

「いいから曲がれ!」

「次も左だ」

「神さん…」子分も気付いた。

(何だってんだ、全く)

「元の道に出たら、とにかくぶっ飛ばせ!」

「了解っす!」

(3台か…そう言ゃぁ、気をつけて❣️とか言ってた気がするが…これか)

❣️は定かではないが、これである。

「行きやすぜ」

左折して、信号の代わり際を突き抜けた。
3台も続き、クラクションが怒鳴る。

猛スピードで走り抜ける緑のベンツ。
彼の腕を見込んでの専属ドライバーであった。

赤信号になる瞬間まで引きつけ、アクセルをベタ踏みする。

「ブロロローン❗️」

高排気量独特の音が響く。
後ろの2台が交差する車と接触し、消える。

(あと1台か)
と思った瞬間。
「ガシャン❗️」
左の脇道から飛び出した車が側面に激突した。

が、さすがは高級車ベンツ。
側面も強固である。

かろうじて、スピンも回避した。
赤信号の大通りが迫る。

「右折だ、行けぇー❗️」

右からの車の流れに、一瞬の隙間を見抜き、猛スピードで突っ込む。

「ギュルギュルギュル!…バン❗️」

ドリフトしながら、左から流れてくる流れに見事に割り込み、トラックの横っ腹を利用して、態勢を立て直し、流れに乗った。

「ふぅ~まけましたね神さん、ありゃ?」

後部座席でひっくり返っている神が、シートと同化して良く分からなかった。

「ご、ご苦労💧」

声だけが聞こえた。



~某所~

窓際で東京の街並みを眺める2人。

「京極のシリアルキラーも、なかなかやるじゃないか」

「はい。理解できない力が働いています」

「少しは、様子をみるか」

「しかし、彼は血に飢えています。もう引き止めるのは限界かと」

「完璧だな。では、時間潰しにどこかを潰せ」

「御意」

(まだまだ、これからだ…)



~警視庁対策本部~

『骨細工同時多発テロ対策本部』
富士本の自信作であった。

「諸君、今再びこの東京が狙われている。敵の数は少なくとも200人以上。今こそ我々警察が正義を示す時である。よろしく頼む」

富士本が始め、紗夜と代わる。

「ご存知の通り、昨日、三大リゾート施設で、33人が死亡、12人が重症という残忍な事件がおきました。主犯は、溝口清。彼の怨恨が込められた骨細工を所持する若者が、犯行を犯しているものです」

騒めきが起こる。

「うるさい❗️最後まで聞け❗️」
咲の一喝で、静まり返る。

「彼らの目的は不明ですが、全国から集まりつつあり、それを誇示する様に、昨日東京周辺で、同じ方法による無差別殺人を起こしました。恐らく、次はこの東京で何らかの事件を起こすものと考えられます」

「死んだ溝口が主犯とは、どういうことだ?」
当然の質問である。

ミニスカハイヒールの音が響く。

「そう思うわよね。紗夜、代わるわ。私も信じられないんだけどね。これらの彫り物は、溝口が、殺害した被害者の骨で作った骨細工。これが新宿のある店で売られ、ネット通販でも販売されてたのよね。何でこんな物が人気になるか理解できないけど」

モニターに幾つかの写真が映る。

「それと事件の関連性は?たまたま犯人が持っていただけだろう」

「じゃあ聞くけど、先日溝口が死んだ時、我々に襲い掛かった人は皆、この骨細工を持っていたのよ。更に、今回の3箇所で起きた事件の犯人達は、全員ネット通販で、骨細工を購入した者。加えて、ネット通販で購入した98人全員が、溝口が死んだ夜から行方不明になってんのよ。これでも、たまたまだと言えるかしら?」

知らされていなかった事実。
騒めき立つ場内。

「一種の暗示やカルト教団みたいなものか?」

「そうね、普通なら私もそう思うわ。でも、私は溝口の最後をこの目で見て、最後の言葉をこの耳で聞いた!昴」

昴がメモリーチップをPCへ繋ぐ。

「これは…その最後を録画した証拠よ❗️」

昴は、後に必要になると考え、咄嗟の判断で、携帯で撮影していたのであった。

「こ、こんな!」
「酷すぎる…」「なんだこれは?」

様々な呟きが聞こえ、また何人かはトイレへと出て行く。

テーブルに並んだ、解体された手足。
手足のない生きた倉木の体。
その横で、英語を話す溝口の喜悦の笑み。

報告書は読んだが、これ程とは、誰も想像できるはずはなかった。

榊原が、溝口を撃ちながら突進する。
倒れずに笑う溝口。

「I …won.  Know the true hell that is about to begin.」

溝口の最後の言葉である。

画面が乱れ、激しい爆音で映像が消えた。




余りの衝撃に、静まり返る。

ラブが立ち上がり、前へ歩く。

「溝口のラストメッセージは、『私の…勝ちだ。これから始まる真の地獄を思い知るがいい』です」

メッセージがモニターに映る。

「彼は自分を殺させるために、あの凶行を企て、我々はその罠にハマった」

ラブの言葉が、全員に重くのしかかる。

「第12号:幼女食人連続殺人事件、第13号:指切り連続殺人事件、第14号:連続死体解体遺棄事件、第15号:老人施設連続不審死事件。これらは、京極教授と別の何者かによって、実在の殺人鬼の凶行を潜在意識に埋め込まれたことによるもの」

モニターに、4人の写真と概要が映る。

「ブルックリンの吸血鬼と呼ばれたアメリカの殺人鬼アルバート・フィッシュ、チェスボード・キラーと呼ばれたロシアの殺人鬼アレクサンドル・ピチュシキン、ブレインフィールドの解体職人と呼ばれたアメリカの殺人鬼エド・ゲイン、ヘルスケア・キラーと呼ばれたアメリカの殺人鬼エフレン・サルディヴァー。12号から15号は、この殺人鬼と全く同じ手口のシリアルキラーとなり、同じ言語を話すまでに至っていました」

「洗脳…」
誰かが呟いた。

「その通り、輪廻説もありますが、チェスボード・キラーはまだ服役中で生きており、洗脳により、殺人鬼の人格が生まれ、この人格に支配されたものと考えられます」

一呼吸おくラブ。

「但し、溝口清の場合は、別です。彼には元々シリアルキラーの兆候があった。素質と言った方が正確かも知れません。彫り師の厳しい父親を越えたいが為に、その素材を求め、最初は小動物を用い、骨という素材に囚われたのです」

モニターに、亀の彫り物が映る。

「これは、動物の骨から作ったもので、ある店の店主の為に彼が想いを込めて彫ったものです。実際に私も手に取り、温かな優しさを強く感じました」

そう言われてみると、確かに、優しさが伝わってくる様に感じる捜査員達。

「でもその店で、店主が若い頃に南米から盗んで持ち帰った、邪悪な骨の彫り物に触れてしまったのです。その時、彼の純粋な心に、悪魔的な邪気が入り込み、溝口を支配してしまいました。その後、素材を求めて浮浪者を殺害し、逮捕されて服役。出所したところを京極教授の手の者に拉致され、偶然にも類似した殺人鬼、エド・ゲインの人格を埋め込まれた」

じわじわと恐怖が事実として、全員の心に染み込んでいくのを感じたラブ。

「京極教授に悪意はなく、シリアルキラーの心理や行動パターンを解析する為に、違法な道を選んだ。その結果、最悪のモノを呼び覚まし、自らもその手によって殺害されました」

目を閉じて、また一呼吸おいた。

「溝口は、他とは違います。殺人鬼が実際に輪廻したのかも知れません。但し、それよりもあの邪悪なモノの力が強かった。その悪魔は、より多くの命を奪うべく、怨恨のこもった骨細工を作らせたのです」

あの映像の事実を見た後である。
異論を唱えるものは無かった。

「ヤツは、自らの死を持って…」

会場が息を呑む。

「Reincarnation。つまり、骨細工を持つ者全員に、輪廻転生したのです❗️」

「ぜ…全員…が、同じ一人…と言うことか」

「はい。今回の3箇所での凶行も、それ故に成し得たことです」

それが意味する恐ろしい事態。
次の標的は東京。

恐怖が漂う会場。

「だからって何さ❗️個々は操られているだけの普通の人間よ。来るなら来て見ろって~の。我々警察は負けたりしないわよ❗️」

気合いを入れた咲。

「そうだ!恐れることはねぇ❗️」
淳一が追従する。

士気が高まるのを感じたラブ。

「みんな、最大の注意を払って、監視する様に。ネットリストにある未成年以外は、捜索願いとして指名手配するわ!」

最善の体制は整った。
だが、そう簡単ではないことを、ラブ達は分かっていたのである。
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