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15. 輻輳する脅威
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~東京お台場~
TERRAコーポレーションの高層ビルに併設された、大きなコンサートホール。
四季に合わせて、TERRAが主催のミュージックフェスが開催されていた。
大観衆の中、オープニングは主催者である、トーイ・ラブが務める。
ドームの天井からステージを使って、神秘的で壮大なプロジェクションマッピングが始まり、その天から、ラブが舞い降りて来る。
大歓声が湧き起こり、ステージに降りたった瞬間、派手な爆発花火。
そして、ドーム内を闇が包み込む。
静まり返る場内。
静かにピアノが流れ、小さな光が灯る。
ラブの指先がメインモニターに映る。
徐々にテンポがあがり、拍手がシンクロする。
真似出来ない超高速の演奏に歓声があがり、そのタイミングで消えた。
3秒後、爆音と花火演出の中、ラブが新曲『心譜』を歌い始める。
超ミニのセクシーなローショートパンツ。
そこから伸びる美しい脚の先は裸足である。
ハートと星が🌟煌めくアンクレット。
ヘソ出しキャミソールに、シースルーの羽織。
これがミュージックスターラブの、いつものスタイルである。
期待を裏切らない演出。
綺麗に澄み渡る唄声。
世界中から愛されるラブの一つの顔。
「こんにちわ、ラブです」
大歓声が応える。
「こ~んなにも沢山❣️本当にありがとうございます。今回も、素敵なアーティスト達が来てくれました。最後まで皆さん楽しんで行ってくださいね❣️」
続けて2曲歌い、次のアーティストに代わる。
舞台を後にしたタイミングで、アイの『声』。
(ラブ様、例の骨細工について、ネット購入者のリストが出来ました)
(アイ、富士本さんに送って、回収をお願いして。十分気を付ける様にと)
(了解しました)
「またまた派手なステージでございましたね。盛況でなによりでございます」
「ヴェロニカ、解析はどう?」
「回収済みの分と、先日の新宿での騒ぎの分、ソレを盗まれた骨から差し引いて、残りは200個程かと思われます」
「ネット通販分が約80個…まだまだね」
「但し、見つかっていないご遺体も考えられますから、まだ確信は持てませんわ」
(彼の死からもう1週間。なぜ何も?)
ラブの携帯が鳴る。
「ラブです。咲さん、珍しいですね」
「ラブさん、リストありがとね。助かるわ」
基本ストレートな彼女が、本題から話さないことに、その深刻さを知るラブ。
「問題みたいですね」
「ええ…かなりね」
「分かりました、すぐに行きます」
今警察が抱えている問題は2つ。
どちらにしろ、深刻な脅威には違いない。
嫌な予感が外れることを祈った。
これがラブのもう一つの顔である。
事件解決の影にラブがいることは、マスコミも分かっていたが、警察はそれを伏せ、世間も追及はしない。
(ラブ様、クリスター長官からです)
ヴェロニカを見る。
察した彼女が、専用通信機を渡しす。
「長官、やはり今回も同じでしたか…」
クリスター長官は、ラブが率いる機密組織EARTHを任せている人物である。
「君の予想通りだ。これからはNASAと共同調査になるが…」
「ナスカの真実を話さなきゃならないわね。長官、ティークに護衛をさせます。気をつけて」
通信を切る。
また、人口25万人の町が、一晩で無人と化したのであった。
(いったい…何がおきてるの?)
そしてこれが、ラブの裏の顔。
地球規模の敵と戦う最強の戦士である。
舞台は今正に、想定外の新しい局面に突入したのであった。
~警視庁凶悪犯罪対策本部~
華やかなフェスのすぐそばでは、富士本率いる刑事課の面々が、対策に追われていた。
入り口のドアが開き、ラブが到着。
「あっ……」
日本には、空いた口が塞がらないと言う諺《ことわざ》がある。
まさにそれが、これであった。
「ラ…ラブさん、その格好で?」
紗夜も呆然とした。
「すみません、急を要する様でしたので、ステージからそのまま来ちゃいました💦」
「写真いいですか?」
「昴!」咲の一喝。
「そ、そうでしたか💦」
「カシャ」
「淳❗️💢」紗夜の激喝。
「ま、まぁ急いで来てくれたんだ💦話を始めようじゃないか」
目のやり場に困る富士本であった。
「そうだぜ、さっさと始めろ」
「そ…そうね。始めましょ…って❗️なんであんたがいるのよ⁉️」
入り口に立つ、飛鳥神。
「あんたは部外者でしょ!だいたいヤクザの組長が、警察の会議に出るかって~の❗️」
「部外者…か。そうならいいんだが」
いつになく、真剣な眼差しに圧《お》される咲。
「こんなもんが届いてな」
神が赤い封筒をテーブルに投げた。
「こ…これは!」
富士本も赤い封筒を出した。
「同じもの…内容は?」
ラブが神を見る。
神がラブを見る…❤️
「お、おい💦何なんだその格好はラブ❣️」
遅っ💧
「\(//∇//)\ テヘっ♪」
ついアイドルスマイルしてしまうラブ💧
「神さん、いいじゃないですか」
コッソリ写真を収めた昴であった。
「アイドルが警視庁って変だろうが💦」
「警視庁に組長よりはマシじゃねえか?」
たま~に鋭いツッコミをする淳一。
「………」神&ラブ。
「同じ…内容だわ」
我関せずと紗夜が話を戻し、モニターに映す。
『Далее - столичное управление полиции.』
「次は…警視庁」
20ヶ国語以上を話せるラブが呟く。
「神、あんたロシア語分かったの?」
(こいつ…ちゃんとした言葉だったのか💦)
「分からねぇから来たんだ!」
ロシア人は人間じゃないと思った。
「だが、ヤバいモノってのは分かる」
修羅の世界で生きる、天性の勘である。
「ダリィェ、スタリッシネォプラブリッシニェパリィツシィ。シンプルですわね。つまり…飛鳥様が、警察と繋がってらっしゃることも、良く知っていると言うことでございます」
ヴェロニカの両親はロシア人であった。
「湾岸署を襲ったヤツだな」
T2も一緒に来ていた。
「アイ、アレを」
メインモニターに、湾岸署の一部始終を映した監視カメラ映像が流れる。
次々と、瞬く間に切り捨てられていく警官。
銃を抜く時間さえない。
「俺も現場で奴の諸行、その切り口を見た」
「酷い…誰一人容赦なく、迷いも…無い」
紗夜には、斬られ、死んでいく者達の無念と、その悲しみが、伝わって来る気がした。
「咲警部殿に依頼されて、分析したんだが…」
「全く…無駄がない…」
昴には、殺人鬼の動線がイメージできた。
「その通り。かなり腕の立つ暗殺者でも、こう簡単には出来ねぇ」
「建物内の構造や、人員を…知っていた」
「そう言うことだ、ラブ」
「警察内部に、協力者がいるってことね」
唇を噛み締める咲。
「甘いわね~まだまだ。次は警視庁でございます。きっと内通者は、警視庁内にいますわ」
誰も否定できない推測。
苦々しい沈黙が絶望感すら連れて来る。
「あのぅ…」
予期せぬ訪問者が、沈黙を解き放つ。
「安斎博士! 先日はご協力をありがとうございました。無事解決…とは言えませんが、おかげで、4件の事件は終結できました」
富士本が愛想良く、礼を言う。
「いえ、もっと早く結果が出せてたらと思うと、犠牲になられた方々に申し訳なくて」
「京極教授や滝川博士も亡くなり、心中御察し致します」
紗夜が軽く頭を下げる。
「もう私の役目は終わりましたので、最後にご挨拶にと思って参りました」
咲と富士本が目を合わす。
「安斎さん。もしよろしければ、もう少し力を貸していただけませんか?実はまだ終わってはいないのです」
「そうなんですか?あの4人は全員死亡したと聞きましたが…」
「もう一人いるのよ。それと、溝口の計画はまだ終わってないのよね」
「分かりました。お役に立てるかは分かりませんが、ぜひ協力させていただきます」
「では、また明日の対策会議でお待ちしております。紗夜、資料を」
「あ、はい」
慌てて準備する紗夜。
「安斎さん、これが溝口に関する資料と、湾岸署を襲撃した犯人の関連資料になります」
「では、持ち帰って、分析をしてみますので、今日はこれで」
「よろしく頼みます」
軽く会釈して、出て行った。
(さすが精神医学の権威ですね)
(そうね、全く心に乱れがない)
(ほんとね。大したものだわ)
昴、紗夜、ラブの『会話』である。
「紗夜、淳、昴、警視庁に勤務する全員のリストをお願い。分かる範囲で個人情報も」
「私は、奴の正体を調べてみます。アレは間違いなく、プロの殺し屋」
解散しようとした時、刑事課の電話が鳴った…
~千葉県浦安市~
国内最大のリゾート施設、東京ディズニー。
開演当初から人気の衰えない、スペース・マウンテンに並ぶ人の列。
彼もたまの家族サービスをと、妻と二人の子供を連れて並んでいた。
「懐かしいね、あなた」
「もう20年くらい前かな?」
二人の初デートで、最初に乗ったのがこれであり、苦手な拓磨は彼女の手前、強がった末に大絶叫して声が枯れたのであった。
「今日はやめてよね(笑)」
二人の子供は小学生ながら背が高く、楽々身長をクリアした。
目の前に、コースターが止まった。
先頭に子供たち、次に二人と座る。
「少々お待ちくださ~い♪」
係員が、メンテナンス用の通路に人の気配を感じたのである。
(いない。まぁ…いっか!)
「は~い!お待たせしました。スリリングな宇宙の旅へ行ってらっしゃ~い♪」
笑顔ながらも、バーを握る手に力が入る拓磨。
それを笑う妻。
暗闇に星が光り✨、勢いよくスタートした。
中盤撚りながら降下する先に、一瞬何かが光った気がした。
そこを境に叫び声が消えた。
最前列の子供は、怖さにうつむいていて、それに気づく余裕はない。
プラットホームへコースターが帰って来る。
「皆様、おつか……えっ?」
降車の為にコースターが止まる。
「キャぁあぁー⁉️」
係員が叫び、そちらを見た次の客達も絶叫する。
入り口の係員にまでそれは届いた。
(今日の客は、盛り上がってるなぁ)
と思った矢先。
非常事態を告げるランプが点滅した。
丁度その頃。
人気のスプラッシュマウンテンでも、非常事態ランプが光り、赤く染まった水が、その異常を物語っていた。
TERRAには、二人乗りのラブ専用機と、非常用の7人乗りのヘリがあり、千葉県警から通報を受け、空から現地へ向かった。
夢のリゾート施設は、今や悪夢のパニック状態に陥《おちい》り、警備員やスタッフが懸命に客を外へと誘導していた。
その流れの中を、白い彫り物を首に掛けた、少女が4人出て行った。
微笑みを浮かべながら…
「昴さん、そっちはどう?
「先頭車両の2人の子供以外は、全員首や頭部がありません。今係員と県警が、内部を調べているところです」
「ひでぇなあ、リゾート施設で殺人かよ」
「かわいそうにあの子たち」
悲しみと恐怖に、震え泣く子供を見つめる昴。
「…いったい誰が」
紗夜が呟く。
「この切り口は、ワイヤーだな」
わざと大声で喋るT2。
「それって、皮むき器にあるやつ?」
その心遣いを感じる紗夜。
「同じようなもんだが、この長さは簡単に手に入るもんじゃない。おそらくピアノ線だろう」
「そう言えば、ラブさんは?」
そこへ暗い中からラブが現れた。
「中へ?」
「私は、アクションスターって呼ばれてるからね、大丈夫。それより、見つけたわ」
差し出した掌には、白い小さな欠片があった。
「何か動物の脚…まさか!」
その時、紗夜の携帯が鳴った。
~山梨県富士吉田市~
咲の連絡で、ラブと紗夜がヘリで到着した。
富士急ハイランド。
最高時速180km。
世界No.1の加速度を持つド・ドドンパ。
整備業者の点検が終わり、始動再開した直後。
最高速の地点に仕掛けられたワイヤーにより、
満席が全滅した。
「咲さん、凶器はやはりピアノ線です。県警の捜査で、途中の山中で、整備会社の社員も遺体で見つかりました」
「クソッ❗️こんな時に」
怒りを露わにする咲。
「咲さん、ラブです。アイに入り口の監視カメラ映像を送って確認した結果、2人共あの通販リストにいました」
「なんてことなの!淳の方も、手口は同じよ」
~神奈川県横浜市~
横浜八景島シーパラダイス。
海上の大ループが人気のサーフコースター リヴァイアサン。
24人の乗客の内、座高が高い数名の頭部と、手をあげていた10人の両腕が切断された。
「ラブ、ついに始まったな」
T2にいつものラフな雰囲気はない。
「犯行をただ止めていたのではなくて、作戦を練り、集まっていたってことですね」
「昴よぅ、だとしても、全国の離れた場所にいて、どうやったらこんな同時多発テロ並みの仕業ができるってんだ?」
淳一の言う通りであった。
境遇も場所も違う骨細工購入者に、今回の犯行は不可能と考えるのが普通である。
「方法は分からない。でもこれが溝口の計画であるのは間違いないわ」
「こんな時に、悪い情報なんだけどねぇ…」
咲の後ろで、富士本が項垂《うなだ》れている。
「通販サイトリストの者は、全員行方不明ね」
ラブが先にその事実を告げる。
「そうなのよ。それも…溝口が死んだ時から」
偶然と呼ぶには、余りにも無理がある事実。
ラブが溝口を殺してはいけないと言った理由。
「皆んな、本部へ帰りましょう。奴らはそこにはもういない。次は…東京❗️」
ラブの言葉に、全員が歯を噛み締めた。
「ヤツは輪廻の境界を超えた。死んではいない。魂を込めたあの骨細工を通して、複数に転生したのよ!」
「ラブさん、それじゃあ…」
絶望感が昴を押し潰す。
「全員がヤツってことよ❗️」
究極の輪廻転生。
京極が生み出した最悪の存在。
標的の見えない戦いに備える術《すべ》はない。
今また東京は、二つの凶暴な脅威に狙われたのである。
TERRAコーポレーションの高層ビルに併設された、大きなコンサートホール。
四季に合わせて、TERRAが主催のミュージックフェスが開催されていた。
大観衆の中、オープニングは主催者である、トーイ・ラブが務める。
ドームの天井からステージを使って、神秘的で壮大なプロジェクションマッピングが始まり、その天から、ラブが舞い降りて来る。
大歓声が湧き起こり、ステージに降りたった瞬間、派手な爆発花火。
そして、ドーム内を闇が包み込む。
静まり返る場内。
静かにピアノが流れ、小さな光が灯る。
ラブの指先がメインモニターに映る。
徐々にテンポがあがり、拍手がシンクロする。
真似出来ない超高速の演奏に歓声があがり、そのタイミングで消えた。
3秒後、爆音と花火演出の中、ラブが新曲『心譜』を歌い始める。
超ミニのセクシーなローショートパンツ。
そこから伸びる美しい脚の先は裸足である。
ハートと星が🌟煌めくアンクレット。
ヘソ出しキャミソールに、シースルーの羽織。
これがミュージックスターラブの、いつものスタイルである。
期待を裏切らない演出。
綺麗に澄み渡る唄声。
世界中から愛されるラブの一つの顔。
「こんにちわ、ラブです」
大歓声が応える。
「こ~んなにも沢山❣️本当にありがとうございます。今回も、素敵なアーティスト達が来てくれました。最後まで皆さん楽しんで行ってくださいね❣️」
続けて2曲歌い、次のアーティストに代わる。
舞台を後にしたタイミングで、アイの『声』。
(ラブ様、例の骨細工について、ネット購入者のリストが出来ました)
(アイ、富士本さんに送って、回収をお願いして。十分気を付ける様にと)
(了解しました)
「またまた派手なステージでございましたね。盛況でなによりでございます」
「ヴェロニカ、解析はどう?」
「回収済みの分と、先日の新宿での騒ぎの分、ソレを盗まれた骨から差し引いて、残りは200個程かと思われます」
「ネット通販分が約80個…まだまだね」
「但し、見つかっていないご遺体も考えられますから、まだ確信は持てませんわ」
(彼の死からもう1週間。なぜ何も?)
ラブの携帯が鳴る。
「ラブです。咲さん、珍しいですね」
「ラブさん、リストありがとね。助かるわ」
基本ストレートな彼女が、本題から話さないことに、その深刻さを知るラブ。
「問題みたいですね」
「ええ…かなりね」
「分かりました、すぐに行きます」
今警察が抱えている問題は2つ。
どちらにしろ、深刻な脅威には違いない。
嫌な予感が外れることを祈った。
これがラブのもう一つの顔である。
事件解決の影にラブがいることは、マスコミも分かっていたが、警察はそれを伏せ、世間も追及はしない。
(ラブ様、クリスター長官からです)
ヴェロニカを見る。
察した彼女が、専用通信機を渡しす。
「長官、やはり今回も同じでしたか…」
クリスター長官は、ラブが率いる機密組織EARTHを任せている人物である。
「君の予想通りだ。これからはNASAと共同調査になるが…」
「ナスカの真実を話さなきゃならないわね。長官、ティークに護衛をさせます。気をつけて」
通信を切る。
また、人口25万人の町が、一晩で無人と化したのであった。
(いったい…何がおきてるの?)
そしてこれが、ラブの裏の顔。
地球規模の敵と戦う最強の戦士である。
舞台は今正に、想定外の新しい局面に突入したのであった。
~警視庁凶悪犯罪対策本部~
華やかなフェスのすぐそばでは、富士本率いる刑事課の面々が、対策に追われていた。
入り口のドアが開き、ラブが到着。
「あっ……」
日本には、空いた口が塞がらないと言う諺《ことわざ》がある。
まさにそれが、これであった。
「ラ…ラブさん、その格好で?」
紗夜も呆然とした。
「すみません、急を要する様でしたので、ステージからそのまま来ちゃいました💦」
「写真いいですか?」
「昴!」咲の一喝。
「そ、そうでしたか💦」
「カシャ」
「淳❗️💢」紗夜の激喝。
「ま、まぁ急いで来てくれたんだ💦話を始めようじゃないか」
目のやり場に困る富士本であった。
「そうだぜ、さっさと始めろ」
「そ…そうね。始めましょ…って❗️なんであんたがいるのよ⁉️」
入り口に立つ、飛鳥神。
「あんたは部外者でしょ!だいたいヤクザの組長が、警察の会議に出るかって~の❗️」
「部外者…か。そうならいいんだが」
いつになく、真剣な眼差しに圧《お》される咲。
「こんなもんが届いてな」
神が赤い封筒をテーブルに投げた。
「こ…これは!」
富士本も赤い封筒を出した。
「同じもの…内容は?」
ラブが神を見る。
神がラブを見る…❤️
「お、おい💦何なんだその格好はラブ❣️」
遅っ💧
「\(//∇//)\ テヘっ♪」
ついアイドルスマイルしてしまうラブ💧
「神さん、いいじゃないですか」
コッソリ写真を収めた昴であった。
「アイドルが警視庁って変だろうが💦」
「警視庁に組長よりはマシじゃねえか?」
たま~に鋭いツッコミをする淳一。
「………」神&ラブ。
「同じ…内容だわ」
我関せずと紗夜が話を戻し、モニターに映す。
『Далее - столичное управление полиции.』
「次は…警視庁」
20ヶ国語以上を話せるラブが呟く。
「神、あんたロシア語分かったの?」
(こいつ…ちゃんとした言葉だったのか💦)
「分からねぇから来たんだ!」
ロシア人は人間じゃないと思った。
「だが、ヤバいモノってのは分かる」
修羅の世界で生きる、天性の勘である。
「ダリィェ、スタリッシネォプラブリッシニェパリィツシィ。シンプルですわね。つまり…飛鳥様が、警察と繋がってらっしゃることも、良く知っていると言うことでございます」
ヴェロニカの両親はロシア人であった。
「湾岸署を襲ったヤツだな」
T2も一緒に来ていた。
「アイ、アレを」
メインモニターに、湾岸署の一部始終を映した監視カメラ映像が流れる。
次々と、瞬く間に切り捨てられていく警官。
銃を抜く時間さえない。
「俺も現場で奴の諸行、その切り口を見た」
「酷い…誰一人容赦なく、迷いも…無い」
紗夜には、斬られ、死んでいく者達の無念と、その悲しみが、伝わって来る気がした。
「咲警部殿に依頼されて、分析したんだが…」
「全く…無駄がない…」
昴には、殺人鬼の動線がイメージできた。
「その通り。かなり腕の立つ暗殺者でも、こう簡単には出来ねぇ」
「建物内の構造や、人員を…知っていた」
「そう言うことだ、ラブ」
「警察内部に、協力者がいるってことね」
唇を噛み締める咲。
「甘いわね~まだまだ。次は警視庁でございます。きっと内通者は、警視庁内にいますわ」
誰も否定できない推測。
苦々しい沈黙が絶望感すら連れて来る。
「あのぅ…」
予期せぬ訪問者が、沈黙を解き放つ。
「安斎博士! 先日はご協力をありがとうございました。無事解決…とは言えませんが、おかげで、4件の事件は終結できました」
富士本が愛想良く、礼を言う。
「いえ、もっと早く結果が出せてたらと思うと、犠牲になられた方々に申し訳なくて」
「京極教授や滝川博士も亡くなり、心中御察し致します」
紗夜が軽く頭を下げる。
「もう私の役目は終わりましたので、最後にご挨拶にと思って参りました」
咲と富士本が目を合わす。
「安斎さん。もしよろしければ、もう少し力を貸していただけませんか?実はまだ終わってはいないのです」
「そうなんですか?あの4人は全員死亡したと聞きましたが…」
「もう一人いるのよ。それと、溝口の計画はまだ終わってないのよね」
「分かりました。お役に立てるかは分かりませんが、ぜひ協力させていただきます」
「では、また明日の対策会議でお待ちしております。紗夜、資料を」
「あ、はい」
慌てて準備する紗夜。
「安斎さん、これが溝口に関する資料と、湾岸署を襲撃した犯人の関連資料になります」
「では、持ち帰って、分析をしてみますので、今日はこれで」
「よろしく頼みます」
軽く会釈して、出て行った。
(さすが精神医学の権威ですね)
(そうね、全く心に乱れがない)
(ほんとね。大したものだわ)
昴、紗夜、ラブの『会話』である。
「紗夜、淳、昴、警視庁に勤務する全員のリストをお願い。分かる範囲で個人情報も」
「私は、奴の正体を調べてみます。アレは間違いなく、プロの殺し屋」
解散しようとした時、刑事課の電話が鳴った…
~千葉県浦安市~
国内最大のリゾート施設、東京ディズニー。
開演当初から人気の衰えない、スペース・マウンテンに並ぶ人の列。
彼もたまの家族サービスをと、妻と二人の子供を連れて並んでいた。
「懐かしいね、あなた」
「もう20年くらい前かな?」
二人の初デートで、最初に乗ったのがこれであり、苦手な拓磨は彼女の手前、強がった末に大絶叫して声が枯れたのであった。
「今日はやめてよね(笑)」
二人の子供は小学生ながら背が高く、楽々身長をクリアした。
目の前に、コースターが止まった。
先頭に子供たち、次に二人と座る。
「少々お待ちくださ~い♪」
係員が、メンテナンス用の通路に人の気配を感じたのである。
(いない。まぁ…いっか!)
「は~い!お待たせしました。スリリングな宇宙の旅へ行ってらっしゃ~い♪」
笑顔ながらも、バーを握る手に力が入る拓磨。
それを笑う妻。
暗闇に星が光り✨、勢いよくスタートした。
中盤撚りながら降下する先に、一瞬何かが光った気がした。
そこを境に叫び声が消えた。
最前列の子供は、怖さにうつむいていて、それに気づく余裕はない。
プラットホームへコースターが帰って来る。
「皆様、おつか……えっ?」
降車の為にコースターが止まる。
「キャぁあぁー⁉️」
係員が叫び、そちらを見た次の客達も絶叫する。
入り口の係員にまでそれは届いた。
(今日の客は、盛り上がってるなぁ)
と思った矢先。
非常事態を告げるランプが点滅した。
丁度その頃。
人気のスプラッシュマウンテンでも、非常事態ランプが光り、赤く染まった水が、その異常を物語っていた。
TERRAには、二人乗りのラブ専用機と、非常用の7人乗りのヘリがあり、千葉県警から通報を受け、空から現地へ向かった。
夢のリゾート施設は、今や悪夢のパニック状態に陥《おちい》り、警備員やスタッフが懸命に客を外へと誘導していた。
その流れの中を、白い彫り物を首に掛けた、少女が4人出て行った。
微笑みを浮かべながら…
「昴さん、そっちはどう?
「先頭車両の2人の子供以外は、全員首や頭部がありません。今係員と県警が、内部を調べているところです」
「ひでぇなあ、リゾート施設で殺人かよ」
「かわいそうにあの子たち」
悲しみと恐怖に、震え泣く子供を見つめる昴。
「…いったい誰が」
紗夜が呟く。
「この切り口は、ワイヤーだな」
わざと大声で喋るT2。
「それって、皮むき器にあるやつ?」
その心遣いを感じる紗夜。
「同じようなもんだが、この長さは簡単に手に入るもんじゃない。おそらくピアノ線だろう」
「そう言えば、ラブさんは?」
そこへ暗い中からラブが現れた。
「中へ?」
「私は、アクションスターって呼ばれてるからね、大丈夫。それより、見つけたわ」
差し出した掌には、白い小さな欠片があった。
「何か動物の脚…まさか!」
その時、紗夜の携帯が鳴った。
~山梨県富士吉田市~
咲の連絡で、ラブと紗夜がヘリで到着した。
富士急ハイランド。
最高時速180km。
世界No.1の加速度を持つド・ドドンパ。
整備業者の点検が終わり、始動再開した直後。
最高速の地点に仕掛けられたワイヤーにより、
満席が全滅した。
「咲さん、凶器はやはりピアノ線です。県警の捜査で、途中の山中で、整備会社の社員も遺体で見つかりました」
「クソッ❗️こんな時に」
怒りを露わにする咲。
「咲さん、ラブです。アイに入り口の監視カメラ映像を送って確認した結果、2人共あの通販リストにいました」
「なんてことなの!淳の方も、手口は同じよ」
~神奈川県横浜市~
横浜八景島シーパラダイス。
海上の大ループが人気のサーフコースター リヴァイアサン。
24人の乗客の内、座高が高い数名の頭部と、手をあげていた10人の両腕が切断された。
「ラブ、ついに始まったな」
T2にいつものラフな雰囲気はない。
「犯行をただ止めていたのではなくて、作戦を練り、集まっていたってことですね」
「昴よぅ、だとしても、全国の離れた場所にいて、どうやったらこんな同時多発テロ並みの仕業ができるってんだ?」
淳一の言う通りであった。
境遇も場所も違う骨細工購入者に、今回の犯行は不可能と考えるのが普通である。
「方法は分からない。でもこれが溝口の計画であるのは間違いないわ」
「こんな時に、悪い情報なんだけどねぇ…」
咲の後ろで、富士本が項垂《うなだ》れている。
「通販サイトリストの者は、全員行方不明ね」
ラブが先にその事実を告げる。
「そうなのよ。それも…溝口が死んだ時から」
偶然と呼ぶには、余りにも無理がある事実。
ラブが溝口を殺してはいけないと言った理由。
「皆んな、本部へ帰りましょう。奴らはそこにはもういない。次は…東京❗️」
ラブの言葉に、全員が歯を噛み締めた。
「ヤツは輪廻の境界を超えた。死んではいない。魂を込めたあの骨細工を通して、複数に転生したのよ!」
「ラブさん、それじゃあ…」
絶望感が昴を押し潰す。
「全員がヤツってことよ❗️」
究極の輪廻転生。
京極が生み出した最悪の存在。
標的の見えない戦いに備える術《すべ》はない。
今また東京は、二つの凶暴な脅威に狙われたのである。
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ある夜、動物たちが一斉に怯え、こう囁いた——
「そこに、"何か"がいる……。」
科学者・水原透子と共に、"見えざる来園者"の正体を探る。
これは幽霊なのか、それとも——?
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秘められた遺志
しまおか
ミステリー
亡くなった顧客が残した謎のメモ。彼は一体何を託したかったのか!?富裕層専門の資産運用管理アドバイザーの三郷が、顧客の高岳から依頼されていた遺品整理を進める中、不審物を発見。また書斎を探ると暗号めいたメモ魔で見つかり推理していた所、不審物があると通報を受けた顔見知りであるS県警の松ケ根と吉良が訪れ、連行されてしまう。三郷は逮捕されてしまうのか?それとも松ケ根達が問題の真相を無事暴くことができるのか!?
リモート刑事 笹本翔
雨垂 一滴
ミステリー
『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。
主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。
それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。
物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。
翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?
翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!
伏線回収の夏
影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。某大学の芸術学部でクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。かつての同級生の不審死。消えた犯人。屋敷のアトリエにナイフで刻まれた無数のXの傷。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の六人は、大学時代にこの屋敷で共に芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。グループの中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。
《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》
泉田高校放課後事件禄
野村だんだら
ミステリー
連作短編形式の長編小説。人の死なないミステリです。
田舎にある泉田高校を舞台に、ちょっとした事件や謎を主人公の稲富くんが解き明かしていきます。
【第32回前期ファンタジア大賞一次選考通過作品を手直しした物になります】
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