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10. 秘密
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~千代田区~
11:50
京極ビル7階。
プロジェクト室の電話が鳴る。
「はい、安斎です、総監」
緊急事態の発令後、ビルに戻った安斎。
「京極教授は?」
「まだ来ていません。駐車場に車はあるんですが…おかしいですね。滝川博士も体調が悪いって、ここには戻らず、帰宅しました」
「そうか…もしみえたら電話する様、伝えてくれ。君も無理しないで、気をつけてな」
「はい、ありがとうございます。では」
電話を切り、今回の一連の事件データの再確認を始める。
(みごとな手口だわ…輪廻か…)
精神医学の境界線。
その分析に辿り着いた者はまだいない。
~警視庁対策本部~
終わりの見えない悪夢の連鎖に、捜査員達の疲労も精神も限界に達していた。
そんな中での今日の非常事態は、警察のみならず、東京都の1400万人に大きな衝撃を与えた。
今朝までは、連続殺人事件も一つの話題としか感じていなかった。
その殺人鬼が、不意に真昼の日常の中に現れ、無差別に大勢の人を襲ったのである。
はけ口のない恐怖は、他人ごとではない不安をあおり、警察への批判は、期待に変わった。
すがる希望は、他になく、命懸けで殺人鬼達を止める姿が報道されたのである。
「皆さんご苦労。昴、報告を頼む」
苦し気に富士本が指示する。
「千代田区を中心に、突然複数の通り魔が出現。逮捕者5名、他12名はその場で死亡。被害は……一般人20名死亡、31名が重軽傷。警官8名が死亡、11名が重軽傷です」
「17名の殺人鬼は、全員あの行方不明リストに載っている、元受刑者です」
ラブが告げる。
捜査員達の頭に、驚きと絶望感が渦巻く。
衣服には、その壮絶さを物語る血痕が付着し、傷を負っている者も少なくない。
「リストは…確か73名だったな。まだ、あんな奴らがいると言うことか…」
「富士本さん、残りの全員ではないと思いますが、間違いはないかと。千代田区にある、京極ビルへの捜査令状をお願いします」
ラブのみならず、京極教授の失踪もあり、誰もがその疑いを抱いていた。
「そう言えば…」
「どうしました咲さん?」
紗夜が、その心に蟠《わだかま》る不思議な真理を察知した。
「信じて貰えるかは分かんないけど…七海は、運命の繋がりが見えていたのよ。だから、私を何度か救おうとして……」
七海の最後の安らかな顔、そして抱いた腕の感触が蘇る。
「聞いたことはあります。世の中には、数字や何かの波長を感知して、その運命の繋がりが見える者がいるって。確か、海外ドラマにも取り上げられて、見た時はゾクっとしました」
「昴様のおっしゃる通り、実証された例もございます。決まって天才的な頭脳を持ち、若年層に見られるようでございます」
「七海は…何度も私を助けようとしてくれてた。私がその声を信じていれば、死なずに済んだのに…」
「咲さん、私も七海さんがあなたを止めようとする声を聞きました。きっと見えていたんだと思います。すべての物事を逆に辿れば、沢山の人や出来事の偶然の導きだと分かります。彼女は、その何処かに干渉し、変えようとしたのかも知れません」
ラブは七海の存在に、異次元的なものを感じていたのである。
「…最後に、七海が教えてくれました。7年前、私が彼女の想いを叶えたと」
「7年前と言えば確か…」
「はい、富士本部長と、まだ弁護士だった私が名古屋で出会った、あの時よ。私はあの日、七海に会っていたのよ」
裁判に向かう途中で、偶然的に出会った少女を思い出していた。
「咲様に頼まれ、調べてみました」
突然、アイが話に割り込んだ。
「七海様の実のお母様は、小さな頃に不運な交通事故で亡くなっており、7年前の名古屋の同じ場所で、七海様のお父様も同じ様な事故で亡くなっておりました。そしてその事故で、お母様をひき逃げしていた犯人も命を落としております」
「私はその出来事にきっと関与していた。七海が大きく運命を変えて、その記憶を消したみたいなの。それから、今回のシリアルキラーも止めようとしてくれいた。でも出来ず、操られてると言い残した…」
こんなに静かな咲は珍しい。
七海の死が、咲の心に大きな悲しみを残したことが、そしてその辛さが分かる。
大切な仲間として。
アイと、入って来た豊川がその沈黙を破った。
「今回の殺人鬼の血液から、同じものが検出されたぜ!」
「やはり、薬物の影響でしたか」
撃たれても、平気で立ち上がったあの光景が思い出され、ゾクッとする昴。
豊川が、映像に映す。
「なんなのですかこれは?」
世界最高頭脳が、その異様さに驚く。
「これは、普通の薬物じゃねぇ。細菌の一種かとも思ったが、血液を与えるとこれだ」
緑色をした球体が赤血球を取り込み、黄色い輝きを放ち、激しく動き回る。
「光の三原色反応…しかし、そんなことが体内で起きるなんてありえないわ」
「もし、生きた体内にこいつがいたら、交感神経が活性化し、副腎髄質が分泌するアドレナリンが異常な速さで増加しちまう。そして、人の許容領域を超えちまうかもしれねぇ」
「痛みも死も感じない極限状態になる…」
「そういうことだ、ラブさん」
豊川のその声に、含みを感じた。
「もしかて、あの殺人鬼達は…こいつに?」
「痛みや恐怖は、人そのものが感じる訳ではございません。あくまで脳が判断して初めて感じるものでございます」
「その極限状態って、こいつが脳を支配するってことね!」
その意味を理解したラブ。
「そうだ、まぁ…今日の殺人鬼達は、その領域にまでは達していなかった様だがな」
「そんな薬物が大量に使われたら、今日の騒ぎどころではなくなるわね」
「咲さんよぅ。薬物ってのは2種類あってな、外部から入るドラッグって奴と、体内で生じるものがある」
「そうね、アドレナリン自体がいい例ね。あれこそ体内で生まれる薬物の際たるものですわ」
「どの殺人鬼にも、こんな劇薬を注入された痕跡はねぇ。飲んだり吸ったりで入り込めるものでもない」
そこで豊川の勢いが下がる。
「どうしたらこんなものが体内に生まれるか?それが大きな問題ってことね」
「付け加えとくが、あの2人のシリアルキラーは、完全に支配されてた様だ。信じられねぇが、アイツらの脳はまともに機能できる状態じゃなかった。言わば、脳死状態と同じだ」
得体の知れないモノ。
怪異の世界への入り口が開こうとしていた。
「皆様、そろそろよろしいでしょうか?」
~中央区~
築地にある小さな廃ビル。
その周りを私服の警察が包囲していた。
緑川洋子の捜索公開から、多くの情報が寄せられていた。
信憑性に欠けるものがほとんどであったが、それらを整理して分析し、アイとT2が出した答えがこのビルであった。
「夜になると、人の呻き声が聞こえるってありましたけど…雰囲気ありますよね」
「ば~か、幽霊探しに来たんじゃないのよ。なにビビってんのよ」
正面の入り口に着く2人。
「…………」
「早く開けなさいよ、昴」
「僕ですか?」
「男でしょ!私まだこれだし」
肩から吊った腕をアピールする咲。
ドアノブに手を伸ばす昴。
「バカ!」「うわっあ💦」
「手袋、手袋!」
「な、なんだもう、脅かさないで下さいよ」
手袋をはめ、ドアを引く。
「キィーィ…」
耳障りな音がより雰囲気を醸《かも》し出す。
(固いな)
そう思った昴が力を込めて引いた。
「バンッ!」「キゃあー❗️」
ドアが外れて倒れた。
「いててて、あれ?さ…咲さん…💧」
外れたドアが頭に当たった昴。
瞬間移動並みの速さで、警官のいる場所まで戻っている咲。
かなりのビビリであった。
「な、何だ、壊しちゃダメじゃないの」
白々しく戻ってくる咲。
「怖いなら怖いって素直に言えば…あ、いえ、なんでもないです💦」
「さっさと行きなさいよ!」
(幽霊より怖いんだから、全く)
咲の手招きで、警官達が突入し、一階のフロアを捜索する。
「昴」咲の視線の先をみる。
「この足跡はヒールですね」
足跡を追って2階へ上がる。
その頃。
ラブは、隣の高いビルの屋上にヘリで下りた。
幾つかの衛生アンテナを壊して💦
(あらら、またヴェロニカに怒られるわ)
ワイヤーを使い、廃ビルの屋上に着く。
「さて、行きますか」
ドアノブに手をかけた。…………
ビクともしない。
(まっ、そりょそうよね💧)
紗夜は、逆隣りのビルにある非常階段を登り、複数の思念が絡まっている、3階の窓から中を覗いた。
(なにこれ?大変!)
(下がって!)
紗夜の『声』を聞いたラブが、屋上から交互にビルの壁を蹴りながら一気に降りて来た。
「ガシャーん」
その勢いのまま、紗夜が見ていた窓を割って飛び込んだ。
「これは!なんてことを…」
近くにあった板を隣のビルの非常階段へ渡す。
紗夜が入ると同時に、音に驚いた昴と咲が上がって来た。
「何よこれ?」
警官隊が他の階を捜索に行く。
「昴、救急車を10台!」
綺麗に掃除されたフロアに、10台のベッドが並び、全てに人がいた。
「筋弛緩剤で、動きを封じてるんだわ」
ゴミ箱の中から多数の注射器と、薬の瓶が見つかった。
中には、両足を固定器具で固定されているものもいた。
「恐らく犯人が折ったのね」
さまざまな薬の容器や袋があり、点滴が繋がれていた。
顔に包帯を巻かれている者もいて、火傷の一部が覗いていた。
警官隊が戻って来た。
「他の階には異常ありません」
「ちっ!留守か」悔しがる咲。
救急車のサイレンが近づいて来る。
「もうここには戻って来ないわね」
(アイ、念のために監視衛星でスキャンを)
TERRAの専用衛星🛰を使用して、熱源スキャンを行う。
(他に人は見当たりません)
「嫌な匂いね、早く出ましょ」
救急車が次々に到着し、全員を近くにある日本最大級の総合病院へ搬送したのであった。
「紗夜、昴、ここの捜査は彼らに任せて、行くわよ京極ビルへ!」
「はい、いよいよですね、ラブさんは?」
外れることのない、嫌な予感がした。
「分かったわ、向かいます」
~千代田区~
15:00
黒光の外装が一際目立つ15階建ての京極ビル。
昴の運転で、紗夜、咲が地下1階の駐車場に到着した。
「あれが、京極の車ね」
エレベーターに一番近い場所に専用スペースがあり、1台の黒い高級車が停まっていた。
そこに少し遅れて、豊川の車が来た。
ヴェロニカと鑑識班の2人が降りる。
「まずは車を、紗夜と昴は先に行って」
「はい」
咲がくるまのドアに手をかける。
「あら?開いてるわ」
豊川も助手席を開ける。
「んん? おい」部下を呼ぶ。
「どうかしたの?」
「この匂いは、何かの薬品だな」
「薬品の芳香剤?趣味悪ぅ」
豊川が、助手席の足マットを調べさせる。
部下が、アタッシュケースから機器や薬品を取り出して、それにあたる。
「部長、これを見てください」
「なんか分かった?他にはな~にもないわ」
部下が示した計器の数値を見る豊川。
TERRAコーポレーションが開発した小型分析器で、ほとんどの薬物を分析できる優れ物。
「キクサキゾラムにエチゾラム、まだあるな」
「日本語で言ってくれるかな?」
「これらはみんな、強い安定剤に使用される成分だ。像でも秒で眠るぜ」
会話はイヤホン型通信機でビル内の全員に通じていた。
「紗夜、何だか知らないけど、気をつけて」
「分かりました」
「確か…砂川様の話では、彼は23:00頃に車で帰って来たと言ってらっしゃいました。京極様はすぐに自宅へお帰りになるつもりだったのでしょう」
「もしくは…荷物があってタッチキーが押せなかったかだな。おい、指紋と髪の毛くらい採取しとけ。あぁ、後はドライブレコーダーのデータもな!」
エレベーターへ向かう3人。
紗夜と昴は、7階で降りた。
ドアが開くと安斎が待っていた。
「何事ですか?皆さんお揃いで」
「京極教授の捜査に来ました。何か連絡は?」
「依然としてありません。捜索って、教授を疑ってるのですか?」
「捜査内容は明かせませんが、誘拐と殺人共謀の容疑で任意同行してもらいます」
「そんな!警察との共同プロジェクトのリーダーですよ、令状はあるんですか?」
「ここにありますわ」
追いついたヴェロニカが、タブレットPCに送られて来た令状を見せる。
「プロジェクトだとしても、違法なやり方は許せないのよ!教授の部屋はどこなの❗️」
攻める咲。
「…15階が教授の研究フロアです」
観念した様子で安斎が告げる。
「エレベーターには10階しか無かったわよ?」
「京極教授の専用エレベーターです」
安斎が指さす。
「行くわよ!」
「捜査協力、ありがとうございます」
紗夜が近づいて礼を述べ、エレベーターへ。
「あっ、でも…」
エレベーターが閉まった。
「専用エレベーターとはね」
「怪しいですね」
「咲さん、彼女は全く動揺してませんでした」
近づいて、それを確かめた紗夜。
「心を読んだのね。共犯?」
「いえ、あれは彼女も教授を怪しんでいた様に感じました」
「おいおい、何の話ししてんだ?」
紗夜の能力をまだ知らない豊川。
エレベーターが開く。
「どれどれ、ん?あら?何よこれ?」
「咲さんあれ」昴が指さす。
「生体認証」紗夜が呟く。
「大丈夫、任せて」
TERRAに戻ったラブの声がした。
「このビルは外部と完全遮断されて…」
咲が言い終わる前に、ドアが開いた。
ビルの制御システムに侵入したAIが、強制的にロックを解除したのである。
「ま、まぁいっか、昴、ヴェロニカさん、任せるわ。よろしく」
技術資料や並んだIT機器は、専門外である。
「凄い設備…」
いつの間にか、安斎が入ってきていた。
「安斎さん達もここには?」
「はい。研究設備のある10階迄は入れますが、11階から上の教授専用フロアへは許可して貰えませんでした」
「まぁ、業界で言えば競合相手ですからね。仕方ないでしょう」
昴が呟く。
「咲さん、アイが確認したところでは、そこのデータに、事件に関係性があるものは見あたりません」
「ハッキングは違法です」
必死で調べていた昴には面白くない。
「まぁまぁ、堅いこと言わないのよ、捜査協力ってことでいいじゃない」
「ありがとうございます、咲さん」
「あてが外れたかぁ…怪しいと思ったんだけどなぁ~」
状況を観察していた富士本の頬を、冷や汗が流れ落ちていた💦
咲、紗夜、昴、豊川、ヴェロニカ。
無言でエレベーターに乗り込む。
このまま何も得られず帰れば、令状を取った富士本が苦しい立場となる。
駐車場へのボタンを押しあぐねている豊川。
(……ん?)
恐らくいつもの様に、昴であれば気付けなかった違和感。
たまたま、部屋から出てこない安斎を連れに、昴が戻ったため、豊川がそこに立った。
「妙だな…」
内ポケットから指紋採取キットを取り出す。
「そんなの持ち歩いてるんですか💦」
「当たり前だ」
いやいや💧
「ボタンに京極の指紋があっても当たり前よ、何を今さら」
豊川が気付いたのは、地下1階の下。
特殊なテープを貼り、しっかり押さえて慎重に剥がす。
剥がし終えた時。
「えっ?」
エレベーターが下降を始めた。
地下1階では止まらない。
「何なの?」
エレベーターが止まり、ドアが開いた。
真っ暗な空間が広がる。
「地下3階くらいですね」
入り口にいた昴が、一歩を踏み出す。
その瞬間明かりがつき、通路の突き当たりにドアが見えた。
「そこは、ビルの総合システムにはないわ」
ラブの驚きの声が聞こえた。
ドアの横に、番号のないボタンが並んでいた。
「これは……おどきください」
ヴェロニカがボタンの前に立つ。
「シリウスの神盤」
「何なの?」
「シリウスって確か、おおいぬ座や冬の大三角形の星ですよね」
「ええ、地球から見えている恒星でもっとも明るい星。大きさは太陽の約2倍」
「それがどうしたって言うのよ?」
「古代エジプトでは、太陽暦の始まりの星。別名は沢山あって「イシスの星」「ナイルの星」「天狼星」とも呼ばれて、崇《あが》められたり不吉な星と言われたり、様々でございます」
「精神の配列…ですね」
「さすが精神医学の安斎様、京極様も精神工学の権威。脳の精神的な信号系統ポイントを天盤に見立てて、脳の中枢から上向きに見て並べると、この配置になるのでございます」
「その中心にあるのがシリウスと呼ばれる精神伝達の始点。シリウスが脳の中枢の左にあれば弱性、右にあれば強性と分析します」
「よくわかんねぇが、開けれんのか?」
悩む安斎とヴェロニカ。
「弱い精神の解放と考えれば、中、左、上。強い精神の解放と考えれば、中、右、上」
「あの京極が、弱気になるとは思えませんよ」
イラつく昴。
「押してみて、違ったらやり直せばいいんじゃないの?」
この時、紗夜は異様なモノを感じていた。
様々なモノが絡まり合い、定まらない。
ただ、全て悪に満ちていた。
(…まさか!)
「待って❗️」
「えっ?」昴が押し終えていた。
ドアは開かない。
(何なの、この異様なモノ……恐怖?)
「大丈夫、紗夜?」
紗夜の真っ青な顔に気づいた咲。
「開いた!」
逆を試した昴であった。
その瞬間。
紗夜の頭に邪悪な思念が溢れた。
「逃げて❗️」
真っ暗なドアの向こうから、何かが来る。
(複数…いや、大勢❗️)
咲もその恐怖の意味に気付いた。
「エレベーターへ、急いで❗️」
走って乗り込んだ時、最初の1人が現れた。
「早く早く、閉まれ!」
次々と溢れ出て、迫り来る殺意に満ちた顔。
閉まったドアにぶつかる音。
エレベーターが上がり始めた。
11:50
京極ビル7階。
プロジェクト室の電話が鳴る。
「はい、安斎です、総監」
緊急事態の発令後、ビルに戻った安斎。
「京極教授は?」
「まだ来ていません。駐車場に車はあるんですが…おかしいですね。滝川博士も体調が悪いって、ここには戻らず、帰宅しました」
「そうか…もしみえたら電話する様、伝えてくれ。君も無理しないで、気をつけてな」
「はい、ありがとうございます。では」
電話を切り、今回の一連の事件データの再確認を始める。
(みごとな手口だわ…輪廻か…)
精神医学の境界線。
その分析に辿り着いた者はまだいない。
~警視庁対策本部~
終わりの見えない悪夢の連鎖に、捜査員達の疲労も精神も限界に達していた。
そんな中での今日の非常事態は、警察のみならず、東京都の1400万人に大きな衝撃を与えた。
今朝までは、連続殺人事件も一つの話題としか感じていなかった。
その殺人鬼が、不意に真昼の日常の中に現れ、無差別に大勢の人を襲ったのである。
はけ口のない恐怖は、他人ごとではない不安をあおり、警察への批判は、期待に変わった。
すがる希望は、他になく、命懸けで殺人鬼達を止める姿が報道されたのである。
「皆さんご苦労。昴、報告を頼む」
苦し気に富士本が指示する。
「千代田区を中心に、突然複数の通り魔が出現。逮捕者5名、他12名はその場で死亡。被害は……一般人20名死亡、31名が重軽傷。警官8名が死亡、11名が重軽傷です」
「17名の殺人鬼は、全員あの行方不明リストに載っている、元受刑者です」
ラブが告げる。
捜査員達の頭に、驚きと絶望感が渦巻く。
衣服には、その壮絶さを物語る血痕が付着し、傷を負っている者も少なくない。
「リストは…確か73名だったな。まだ、あんな奴らがいると言うことか…」
「富士本さん、残りの全員ではないと思いますが、間違いはないかと。千代田区にある、京極ビルへの捜査令状をお願いします」
ラブのみならず、京極教授の失踪もあり、誰もがその疑いを抱いていた。
「そう言えば…」
「どうしました咲さん?」
紗夜が、その心に蟠《わだかま》る不思議な真理を察知した。
「信じて貰えるかは分かんないけど…七海は、運命の繋がりが見えていたのよ。だから、私を何度か救おうとして……」
七海の最後の安らかな顔、そして抱いた腕の感触が蘇る。
「聞いたことはあります。世の中には、数字や何かの波長を感知して、その運命の繋がりが見える者がいるって。確か、海外ドラマにも取り上げられて、見た時はゾクっとしました」
「昴様のおっしゃる通り、実証された例もございます。決まって天才的な頭脳を持ち、若年層に見られるようでございます」
「七海は…何度も私を助けようとしてくれてた。私がその声を信じていれば、死なずに済んだのに…」
「咲さん、私も七海さんがあなたを止めようとする声を聞きました。きっと見えていたんだと思います。すべての物事を逆に辿れば、沢山の人や出来事の偶然の導きだと分かります。彼女は、その何処かに干渉し、変えようとしたのかも知れません」
ラブは七海の存在に、異次元的なものを感じていたのである。
「…最後に、七海が教えてくれました。7年前、私が彼女の想いを叶えたと」
「7年前と言えば確か…」
「はい、富士本部長と、まだ弁護士だった私が名古屋で出会った、あの時よ。私はあの日、七海に会っていたのよ」
裁判に向かう途中で、偶然的に出会った少女を思い出していた。
「咲様に頼まれ、調べてみました」
突然、アイが話に割り込んだ。
「七海様の実のお母様は、小さな頃に不運な交通事故で亡くなっており、7年前の名古屋の同じ場所で、七海様のお父様も同じ様な事故で亡くなっておりました。そしてその事故で、お母様をひき逃げしていた犯人も命を落としております」
「私はその出来事にきっと関与していた。七海が大きく運命を変えて、その記憶を消したみたいなの。それから、今回のシリアルキラーも止めようとしてくれいた。でも出来ず、操られてると言い残した…」
こんなに静かな咲は珍しい。
七海の死が、咲の心に大きな悲しみを残したことが、そしてその辛さが分かる。
大切な仲間として。
アイと、入って来た豊川がその沈黙を破った。
「今回の殺人鬼の血液から、同じものが検出されたぜ!」
「やはり、薬物の影響でしたか」
撃たれても、平気で立ち上がったあの光景が思い出され、ゾクッとする昴。
豊川が、映像に映す。
「なんなのですかこれは?」
世界最高頭脳が、その異様さに驚く。
「これは、普通の薬物じゃねぇ。細菌の一種かとも思ったが、血液を与えるとこれだ」
緑色をした球体が赤血球を取り込み、黄色い輝きを放ち、激しく動き回る。
「光の三原色反応…しかし、そんなことが体内で起きるなんてありえないわ」
「もし、生きた体内にこいつがいたら、交感神経が活性化し、副腎髄質が分泌するアドレナリンが異常な速さで増加しちまう。そして、人の許容領域を超えちまうかもしれねぇ」
「痛みも死も感じない極限状態になる…」
「そういうことだ、ラブさん」
豊川のその声に、含みを感じた。
「もしかて、あの殺人鬼達は…こいつに?」
「痛みや恐怖は、人そのものが感じる訳ではございません。あくまで脳が判断して初めて感じるものでございます」
「その極限状態って、こいつが脳を支配するってことね!」
その意味を理解したラブ。
「そうだ、まぁ…今日の殺人鬼達は、その領域にまでは達していなかった様だがな」
「そんな薬物が大量に使われたら、今日の騒ぎどころではなくなるわね」
「咲さんよぅ。薬物ってのは2種類あってな、外部から入るドラッグって奴と、体内で生じるものがある」
「そうね、アドレナリン自体がいい例ね。あれこそ体内で生まれる薬物の際たるものですわ」
「どの殺人鬼にも、こんな劇薬を注入された痕跡はねぇ。飲んだり吸ったりで入り込めるものでもない」
そこで豊川の勢いが下がる。
「どうしたらこんなものが体内に生まれるか?それが大きな問題ってことね」
「付け加えとくが、あの2人のシリアルキラーは、完全に支配されてた様だ。信じられねぇが、アイツらの脳はまともに機能できる状態じゃなかった。言わば、脳死状態と同じだ」
得体の知れないモノ。
怪異の世界への入り口が開こうとしていた。
「皆様、そろそろよろしいでしょうか?」
~中央区~
築地にある小さな廃ビル。
その周りを私服の警察が包囲していた。
緑川洋子の捜索公開から、多くの情報が寄せられていた。
信憑性に欠けるものがほとんどであったが、それらを整理して分析し、アイとT2が出した答えがこのビルであった。
「夜になると、人の呻き声が聞こえるってありましたけど…雰囲気ありますよね」
「ば~か、幽霊探しに来たんじゃないのよ。なにビビってんのよ」
正面の入り口に着く2人。
「…………」
「早く開けなさいよ、昴」
「僕ですか?」
「男でしょ!私まだこれだし」
肩から吊った腕をアピールする咲。
ドアノブに手を伸ばす昴。
「バカ!」「うわっあ💦」
「手袋、手袋!」
「な、なんだもう、脅かさないで下さいよ」
手袋をはめ、ドアを引く。
「キィーィ…」
耳障りな音がより雰囲気を醸《かも》し出す。
(固いな)
そう思った昴が力を込めて引いた。
「バンッ!」「キゃあー❗️」
ドアが外れて倒れた。
「いててて、あれ?さ…咲さん…💧」
外れたドアが頭に当たった昴。
瞬間移動並みの速さで、警官のいる場所まで戻っている咲。
かなりのビビリであった。
「な、何だ、壊しちゃダメじゃないの」
白々しく戻ってくる咲。
「怖いなら怖いって素直に言えば…あ、いえ、なんでもないです💦」
「さっさと行きなさいよ!」
(幽霊より怖いんだから、全く)
咲の手招きで、警官達が突入し、一階のフロアを捜索する。
「昴」咲の視線の先をみる。
「この足跡はヒールですね」
足跡を追って2階へ上がる。
その頃。
ラブは、隣の高いビルの屋上にヘリで下りた。
幾つかの衛生アンテナを壊して💦
(あらら、またヴェロニカに怒られるわ)
ワイヤーを使い、廃ビルの屋上に着く。
「さて、行きますか」
ドアノブに手をかけた。…………
ビクともしない。
(まっ、そりょそうよね💧)
紗夜は、逆隣りのビルにある非常階段を登り、複数の思念が絡まっている、3階の窓から中を覗いた。
(なにこれ?大変!)
(下がって!)
紗夜の『声』を聞いたラブが、屋上から交互にビルの壁を蹴りながら一気に降りて来た。
「ガシャーん」
その勢いのまま、紗夜が見ていた窓を割って飛び込んだ。
「これは!なんてことを…」
近くにあった板を隣のビルの非常階段へ渡す。
紗夜が入ると同時に、音に驚いた昴と咲が上がって来た。
「何よこれ?」
警官隊が他の階を捜索に行く。
「昴、救急車を10台!」
綺麗に掃除されたフロアに、10台のベッドが並び、全てに人がいた。
「筋弛緩剤で、動きを封じてるんだわ」
ゴミ箱の中から多数の注射器と、薬の瓶が見つかった。
中には、両足を固定器具で固定されているものもいた。
「恐らく犯人が折ったのね」
さまざまな薬の容器や袋があり、点滴が繋がれていた。
顔に包帯を巻かれている者もいて、火傷の一部が覗いていた。
警官隊が戻って来た。
「他の階には異常ありません」
「ちっ!留守か」悔しがる咲。
救急車のサイレンが近づいて来る。
「もうここには戻って来ないわね」
(アイ、念のために監視衛星でスキャンを)
TERRAの専用衛星🛰を使用して、熱源スキャンを行う。
(他に人は見当たりません)
「嫌な匂いね、早く出ましょ」
救急車が次々に到着し、全員を近くにある日本最大級の総合病院へ搬送したのであった。
「紗夜、昴、ここの捜査は彼らに任せて、行くわよ京極ビルへ!」
「はい、いよいよですね、ラブさんは?」
外れることのない、嫌な予感がした。
「分かったわ、向かいます」
~千代田区~
15:00
黒光の外装が一際目立つ15階建ての京極ビル。
昴の運転で、紗夜、咲が地下1階の駐車場に到着した。
「あれが、京極の車ね」
エレベーターに一番近い場所に専用スペースがあり、1台の黒い高級車が停まっていた。
そこに少し遅れて、豊川の車が来た。
ヴェロニカと鑑識班の2人が降りる。
「まずは車を、紗夜と昴は先に行って」
「はい」
咲がくるまのドアに手をかける。
「あら?開いてるわ」
豊川も助手席を開ける。
「んん? おい」部下を呼ぶ。
「どうかしたの?」
「この匂いは、何かの薬品だな」
「薬品の芳香剤?趣味悪ぅ」
豊川が、助手席の足マットを調べさせる。
部下が、アタッシュケースから機器や薬品を取り出して、それにあたる。
「部長、これを見てください」
「なんか分かった?他にはな~にもないわ」
部下が示した計器の数値を見る豊川。
TERRAコーポレーションが開発した小型分析器で、ほとんどの薬物を分析できる優れ物。
「キクサキゾラムにエチゾラム、まだあるな」
「日本語で言ってくれるかな?」
「これらはみんな、強い安定剤に使用される成分だ。像でも秒で眠るぜ」
会話はイヤホン型通信機でビル内の全員に通じていた。
「紗夜、何だか知らないけど、気をつけて」
「分かりました」
「確か…砂川様の話では、彼は23:00頃に車で帰って来たと言ってらっしゃいました。京極様はすぐに自宅へお帰りになるつもりだったのでしょう」
「もしくは…荷物があってタッチキーが押せなかったかだな。おい、指紋と髪の毛くらい採取しとけ。あぁ、後はドライブレコーダーのデータもな!」
エレベーターへ向かう3人。
紗夜と昴は、7階で降りた。
ドアが開くと安斎が待っていた。
「何事ですか?皆さんお揃いで」
「京極教授の捜査に来ました。何か連絡は?」
「依然としてありません。捜索って、教授を疑ってるのですか?」
「捜査内容は明かせませんが、誘拐と殺人共謀の容疑で任意同行してもらいます」
「そんな!警察との共同プロジェクトのリーダーですよ、令状はあるんですか?」
「ここにありますわ」
追いついたヴェロニカが、タブレットPCに送られて来た令状を見せる。
「プロジェクトだとしても、違法なやり方は許せないのよ!教授の部屋はどこなの❗️」
攻める咲。
「…15階が教授の研究フロアです」
観念した様子で安斎が告げる。
「エレベーターには10階しか無かったわよ?」
「京極教授の専用エレベーターです」
安斎が指さす。
「行くわよ!」
「捜査協力、ありがとうございます」
紗夜が近づいて礼を述べ、エレベーターへ。
「あっ、でも…」
エレベーターが閉まった。
「専用エレベーターとはね」
「怪しいですね」
「咲さん、彼女は全く動揺してませんでした」
近づいて、それを確かめた紗夜。
「心を読んだのね。共犯?」
「いえ、あれは彼女も教授を怪しんでいた様に感じました」
「おいおい、何の話ししてんだ?」
紗夜の能力をまだ知らない豊川。
エレベーターが開く。
「どれどれ、ん?あら?何よこれ?」
「咲さんあれ」昴が指さす。
「生体認証」紗夜が呟く。
「大丈夫、任せて」
TERRAに戻ったラブの声がした。
「このビルは外部と完全遮断されて…」
咲が言い終わる前に、ドアが開いた。
ビルの制御システムに侵入したAIが、強制的にロックを解除したのである。
「ま、まぁいっか、昴、ヴェロニカさん、任せるわ。よろしく」
技術資料や並んだIT機器は、専門外である。
「凄い設備…」
いつの間にか、安斎が入ってきていた。
「安斎さん達もここには?」
「はい。研究設備のある10階迄は入れますが、11階から上の教授専用フロアへは許可して貰えませんでした」
「まぁ、業界で言えば競合相手ですからね。仕方ないでしょう」
昴が呟く。
「咲さん、アイが確認したところでは、そこのデータに、事件に関係性があるものは見あたりません」
「ハッキングは違法です」
必死で調べていた昴には面白くない。
「まぁまぁ、堅いこと言わないのよ、捜査協力ってことでいいじゃない」
「ありがとうございます、咲さん」
「あてが外れたかぁ…怪しいと思ったんだけどなぁ~」
状況を観察していた富士本の頬を、冷や汗が流れ落ちていた💦
咲、紗夜、昴、豊川、ヴェロニカ。
無言でエレベーターに乗り込む。
このまま何も得られず帰れば、令状を取った富士本が苦しい立場となる。
駐車場へのボタンを押しあぐねている豊川。
(……ん?)
恐らくいつもの様に、昴であれば気付けなかった違和感。
たまたま、部屋から出てこない安斎を連れに、昴が戻ったため、豊川がそこに立った。
「妙だな…」
内ポケットから指紋採取キットを取り出す。
「そんなの持ち歩いてるんですか💦」
「当たり前だ」
いやいや💧
「ボタンに京極の指紋があっても当たり前よ、何を今さら」
豊川が気付いたのは、地下1階の下。
特殊なテープを貼り、しっかり押さえて慎重に剥がす。
剥がし終えた時。
「えっ?」
エレベーターが下降を始めた。
地下1階では止まらない。
「何なの?」
エレベーターが止まり、ドアが開いた。
真っ暗な空間が広がる。
「地下3階くらいですね」
入り口にいた昴が、一歩を踏み出す。
その瞬間明かりがつき、通路の突き当たりにドアが見えた。
「そこは、ビルの総合システムにはないわ」
ラブの驚きの声が聞こえた。
ドアの横に、番号のないボタンが並んでいた。
「これは……おどきください」
ヴェロニカがボタンの前に立つ。
「シリウスの神盤」
「何なの?」
「シリウスって確か、おおいぬ座や冬の大三角形の星ですよね」
「ええ、地球から見えている恒星でもっとも明るい星。大きさは太陽の約2倍」
「それがどうしたって言うのよ?」
「古代エジプトでは、太陽暦の始まりの星。別名は沢山あって「イシスの星」「ナイルの星」「天狼星」とも呼ばれて、崇《あが》められたり不吉な星と言われたり、様々でございます」
「精神の配列…ですね」
「さすが精神医学の安斎様、京極様も精神工学の権威。脳の精神的な信号系統ポイントを天盤に見立てて、脳の中枢から上向きに見て並べると、この配置になるのでございます」
「その中心にあるのがシリウスと呼ばれる精神伝達の始点。シリウスが脳の中枢の左にあれば弱性、右にあれば強性と分析します」
「よくわかんねぇが、開けれんのか?」
悩む安斎とヴェロニカ。
「弱い精神の解放と考えれば、中、左、上。強い精神の解放と考えれば、中、右、上」
「あの京極が、弱気になるとは思えませんよ」
イラつく昴。
「押してみて、違ったらやり直せばいいんじゃないの?」
この時、紗夜は異様なモノを感じていた。
様々なモノが絡まり合い、定まらない。
ただ、全て悪に満ちていた。
(…まさか!)
「待って❗️」
「えっ?」昴が押し終えていた。
ドアは開かない。
(何なの、この異様なモノ……恐怖?)
「大丈夫、紗夜?」
紗夜の真っ青な顔に気づいた咲。
「開いた!」
逆を試した昴であった。
その瞬間。
紗夜の頭に邪悪な思念が溢れた。
「逃げて❗️」
真っ暗なドアの向こうから、何かが来る。
(複数…いや、大勢❗️)
咲もその恐怖の意味に気付いた。
「エレベーターへ、急いで❗️」
走って乗り込んだ時、最初の1人が現れた。
「早く早く、閉まれ!」
次々と溢れ出て、迫り来る殺意に満ちた顔。
閉まったドアにぶつかる音。
エレベーターが上がり始めた。
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