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第八章
281 大戦前の準備
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それから情報収集を続け、様々な大陸から人々が集まってきていることが判明する。
比較的多いのが、一~三か月以内に国境門が繋がったところだった。これは、小規模と通常の国境門、どちらにも言えることだ。
また国境門は一定の時間経過で閉じてしまうので、半年以上繋がっているところは少なくなっている。
更に驚くべきことに、どういう訳か小規模国境門が移動する事件が、直近で起きているらしい。
それも特徴的な地形の場所に移動することが多く、加えて一定の範囲には、他国の国境門が配置されているようだ。
故に様々な国の者たちが、比較的遭遇しやすい状況になっているとのこと。
なんとなくこれは、赤い煙が動いている気がする。勇者勢力に都合のいいような位置に、国境門を移動させたのだろう。
それと赤い煙は、国境門をどうにかできるだけの力があるらしい。国境門は創造神が用意したと聞いたことがあるのだが、これはどういうことだろうか?
もしかして小規模国境門が多いのも、赤い煙が設置しているからかもしれない。その可能性は、十分に考えられる。
そういう状況なので、新たな勢力が合流し続けているのだ。勇者勢力は益々、強大になっていく。
しかし一見よさそうなそれは、マイナス面もあるようだった。人が増え過ぎたことで動きがとても遅く、中には好き勝手に動き始める者まで現れ始めたみたいである。
そういえば城のダンジョンにも、侵入者が何人か現れていたらしい。幸い弱い者ばかりだったようで、俺が呼ばれることはなかった。
おそらくそういった侵入者たちが、好き勝手に動いていた者たちなのだろう。
実際周囲には、いたるところに城のダンジョンへと勝手に行かないようにという注意書きがある。
これは城のダンジョンに魔王がいるという前提故に、慎重になっていることへの表れだろう。
勇者勢力側で一番避けたいことは、情報が洩れて、この拠点に攻め込まれることかもしれない。
魔王であれば、ダンジョンから出てきて攻めてきても、おかしくないと考えているのだろう。現に配下だと思われているゲヘナデモクレスが、自由に動いていたという事実がある。
更にここには非戦闘員が大勢いた。それを守りながら戦うのは、非常に難しい。
なので作戦実行日までは、城のダンジョンをなるべく刺激したくはないのだと思われる。
けれどもこうして数が増え過ぎた結果、それも統制できなくなっているようだった。つまり、ここらへんが人数集めの限界だろう。
今のところ勇者勢力が城のダンジョンへ侵攻する日は、決まってはいない。だが、その日が決まるのも近いはずだ。
侵攻する日が判明すれば、こちらとしても対処がしやすくなる。それと俺がここで大暴れするのも一つの手だが、それは得策ではない。
まず俺個人としては、非戦闘員を巻き込みたくはなかった。対して冒険者は命をかけて侵入してきているはずなので、そちらを倒すのには抵抗がない。
またここで倒しても、ダンジョンのポイントにはならないというのも大きかった。それにダンジョンで迎え撃つ方が、確実に戦いやすいだろう。
加えてSランクが三体いるとはいえ、ここで完勝できるとは考えてはいない。
ここで戦うのは、明らかに不利になる気がした。数は力である。そして上位冒険者もそれなりに多く、質も高い。
油断せずに、適切な場所で戦う方が勝率が高くなるはずだ。
それと暗殺や小規模な破壊工作もやめておく。暗殺は低ランク冒険者にしても誤差の範囲だし、上位冒険者にしようとすれば、流石に発覚の恐れがある。
何よりも再度言うが、ここで暗殺してもポイントにならない。Sランクになったアンクなら可能かもしれないが、そんなことのためにアンクの情報が漏れるリスクを負うのは悪手だろう。
であれば破壊工作だが、これもあまり意味は無い。国同士の戦争なら重要かもしれないが、こちらはダンジョンだ。色々と状況が違ってくる。
また破壊工作をして起きるのは、侵攻の遅延くらいだろう。それで侵攻日が把握しづらくなり、日にちが伸びた結果、更なる冒険者たちが合流する方が面倒に思えた。
そもそも女王たちとの話し合いで、問題は起こさず反撃の準備を充実させた方が、相手に予想外の大打撃を与えられるという考えで落ち着いている。
破壊工作をして怪しまれた結果、警戒されるのは避けたい。
そう言う訳で現状ここではおとなしく、俺は情報収集に専念をすることにした。
◆
これだけ人が多いと、俺一人に注目する者はほとんどいない。しかし何人かの女性や、俺を男娼として一晩買いたいという、おかしな者が声をかけてくることはあった。
当然それは断り、場合によっては実力で追い払っている。人が多いと、そういう者も現れるみたいだ。
そんな些細なことがありつつも、俺は数日ほど怪しまれることなく、様々な情報を手に入れた。
勇者パーティの情報はもちろんのこと、上位冒険者やまとめ役、冒険者たちが今回の侵攻に何を思っているかなど、多岐にわたる。
ちなみに勇者パーティとは、接触はしていない。既に容姿やある程度の情報を得ていることもあるが、余計なリスクを減らすという意味もある。
鑑定をするのはどう考えても悪手だし、何らかのスキルでこちらの情報が漏れる可能性もあった。
何より俺の直感も、止めておいた方がいいと反応を示している。なので、勇者パーティとの接触は避けた感じだ。
しかしそんな中でも、重要なことを知ることができた。それは、侵攻日が決まったことだろう。
進行の決行日は、ちょうど一週間後だった。どうやら勇者の一言で、それが決まったらしい。
なので俺もその情報を城に持ち帰って、女王たちと準備を進めることになった。
情報はかなり手に入ったので、残りは素材集めに集中しつつ、数回ほど勇者勢力の拠点に行く程度でいいだろう。
また勇者勢力の侵攻日だが、驚くことにゲヘナデモクレスと決闘する日と同じだった。
偶然と言えばおしまいだが、もしかしたら赤い煙が調整した可能性がある。
勇者の近くに、赤い煙と繋がっている者がいるのかもしれない。その者が、侵攻日について勇者に助言した可能性も考えられた。
なのでそう考えると、やはり騒ぎを起こさなくて良かったと言える。勇者勢力だけではなく、赤い煙にも警戒を強められたかもしれない。
しかし同時に問題なのは、これでゲヘナデモクレスと勇者勢力を一度に相手にすることになってしまうことだ。当然ここに、赤い煙も何かしてくると考えたほうがいい。
思っていた以上に、このままだと苦戦を強いられそうだ。そのためにも、ダンジョンを如何に強化できるかが、重要になってくる。
故に俺は結果として、なりふり構わずに配下たちを各地へと送り込んだ。素材集めを重視するなら、これが一番だろう。
荷物持ちとして、アイテムポケットを使えるロットキャリアを数体付ければ、素材の収集も問題はない。
あとは他にもレッドアイのいる場所に行き、大量に集まっているゾンビシャークを狩ったりもした。
ゾンビシャークはCランクなので、ダンジョンポイントの変化率としては、おいしい素材なのだ。
そのときレッドアイが何か言っていた気がするが、どうでもいいことだろう。またゾンビシャークが集まったら、狩りに来ることにする。
思った以上にレッドアイは、撒き餌としての才能があったらしい。数体ほどゾンビシャークを残して、俺はその場を去った。
そうして素材集めに専念していたら、あっという間に一週間が過ぎてしまう。
もちろんその間に、勇者勢力の拠点にも数回ほど潜入をしていた。
冒険者の総数自体は増えたみたいだが、上位冒険者はそこまで増えてはいない。Sランク冒険者も、結局無双のゼンベンスただ一人だけである。
どうやら他の大陸にいるSランク冒険者は、様々な理由から勇者勢力に合流できないらしい。
Sランク冒険者ともなると、様々なしがらみがあるのだろう。また勇者勢力が集結した期間は、そこまで長くはない。
即座に動けるほど、フットワークが軽くはないのだろう。無双のゼンベンスはソロ故に、その点では動きやすかったのだと思われる。
Sランク冒険者はとても目立つので、いれば流石に少しは情報が手に入っただろう。しかしそれが一切無いということは、勇者勢力に新たに加わった可能性は低いと言えた。
個人的にSランク冒険者が増えないのは、素直に嬉しい。これ以上強者が増え続ければ、流石に危ないと感じていた。
現状でも自分の手札を適切に使わなければ、敗北する可能性もあるだろう。油断は、一切できない。
なので女王たちと相談して、ダンジョンの構造にも色々と手を加えさせてもらった。
もちろんその情報を隠すため、侵入者は全て逃がさずに排除している。
ただ赤い煙から情報が漏れることも考えて、いくつか作戦を用意しておき、その都度変えていくことにした。
またダンジョンのポイントも十分に集まったことで、勇者勢力とも十分に戦える確信がある。
そして問題となるゲヘナデモクレスとの決闘だが、当然そのままにはできない。三勢力を同時に相手にするのは、流石に無謀だろう。
故に俺はここで、一つの賭けに出ることにした。それを行ったのが、ちょうど昨日のことである。
俺は激しい戦闘にも耐えられる強固な大広間で、ゲヘナデモクレスを召喚したのだ。
「ふはは! 我との決闘の日時は、明日のはずであろう? 汝よ、何故我を召喚したのだ?」
召喚されたゲヘナデモクレスは、腕を組みながら当然のように、そう問いかけてきた。
それを問いかけられることは事前に予想していたため、俺は迷わず返事をする。
「それは分かっているが、一つ訊きたいことがある。明日勇者たちの勢力も攻めてくるんだが、それについて何か知らないか? まさか俺とお前の戦いに、水を差すようなことをしてないよな?」
俺がそう言うと、ゲヘナデモクレスは分かりやすいくらいに動揺をし始めた。
「な、なななんのことであるかッ? わ、我は知らぬ。知らぬぞ! き、きっと偶然であろう! 我は悪くないっ!」
「……そうか」
「そ、そうである!」
何という、分かりやすさであろうか。ゲヘナデモクレスが吹聴していたことは、既に知っている。
なので余計に、今のゲヘナデモクレスが滑稽に見えた。
あれ? ゲヘナデモクレスって、こんなキャラだったか?
俺はそんなことを思いつつも、ゲヘナデモクレスとの話しを再開するのであった。
比較的多いのが、一~三か月以内に国境門が繋がったところだった。これは、小規模と通常の国境門、どちらにも言えることだ。
また国境門は一定の時間経過で閉じてしまうので、半年以上繋がっているところは少なくなっている。
更に驚くべきことに、どういう訳か小規模国境門が移動する事件が、直近で起きているらしい。
それも特徴的な地形の場所に移動することが多く、加えて一定の範囲には、他国の国境門が配置されているようだ。
故に様々な国の者たちが、比較的遭遇しやすい状況になっているとのこと。
なんとなくこれは、赤い煙が動いている気がする。勇者勢力に都合のいいような位置に、国境門を移動させたのだろう。
それと赤い煙は、国境門をどうにかできるだけの力があるらしい。国境門は創造神が用意したと聞いたことがあるのだが、これはどういうことだろうか?
もしかして小規模国境門が多いのも、赤い煙が設置しているからかもしれない。その可能性は、十分に考えられる。
そういう状況なので、新たな勢力が合流し続けているのだ。勇者勢力は益々、強大になっていく。
しかし一見よさそうなそれは、マイナス面もあるようだった。人が増え過ぎたことで動きがとても遅く、中には好き勝手に動き始める者まで現れ始めたみたいである。
そういえば城のダンジョンにも、侵入者が何人か現れていたらしい。幸い弱い者ばかりだったようで、俺が呼ばれることはなかった。
おそらくそういった侵入者たちが、好き勝手に動いていた者たちなのだろう。
実際周囲には、いたるところに城のダンジョンへと勝手に行かないようにという注意書きがある。
これは城のダンジョンに魔王がいるという前提故に、慎重になっていることへの表れだろう。
勇者勢力側で一番避けたいことは、情報が洩れて、この拠点に攻め込まれることかもしれない。
魔王であれば、ダンジョンから出てきて攻めてきても、おかしくないと考えているのだろう。現に配下だと思われているゲヘナデモクレスが、自由に動いていたという事実がある。
更にここには非戦闘員が大勢いた。それを守りながら戦うのは、非常に難しい。
なので作戦実行日までは、城のダンジョンをなるべく刺激したくはないのだと思われる。
けれどもこうして数が増え過ぎた結果、それも統制できなくなっているようだった。つまり、ここらへんが人数集めの限界だろう。
今のところ勇者勢力が城のダンジョンへ侵攻する日は、決まってはいない。だが、その日が決まるのも近いはずだ。
侵攻する日が判明すれば、こちらとしても対処がしやすくなる。それと俺がここで大暴れするのも一つの手だが、それは得策ではない。
まず俺個人としては、非戦闘員を巻き込みたくはなかった。対して冒険者は命をかけて侵入してきているはずなので、そちらを倒すのには抵抗がない。
またここで倒しても、ダンジョンのポイントにはならないというのも大きかった。それにダンジョンで迎え撃つ方が、確実に戦いやすいだろう。
加えてSランクが三体いるとはいえ、ここで完勝できるとは考えてはいない。
ここで戦うのは、明らかに不利になる気がした。数は力である。そして上位冒険者もそれなりに多く、質も高い。
油断せずに、適切な場所で戦う方が勝率が高くなるはずだ。
それと暗殺や小規模な破壊工作もやめておく。暗殺は低ランク冒険者にしても誤差の範囲だし、上位冒険者にしようとすれば、流石に発覚の恐れがある。
何よりも再度言うが、ここで暗殺してもポイントにならない。Sランクになったアンクなら可能かもしれないが、そんなことのためにアンクの情報が漏れるリスクを負うのは悪手だろう。
であれば破壊工作だが、これもあまり意味は無い。国同士の戦争なら重要かもしれないが、こちらはダンジョンだ。色々と状況が違ってくる。
また破壊工作をして起きるのは、侵攻の遅延くらいだろう。それで侵攻日が把握しづらくなり、日にちが伸びた結果、更なる冒険者たちが合流する方が面倒に思えた。
そもそも女王たちとの話し合いで、問題は起こさず反撃の準備を充実させた方が、相手に予想外の大打撃を与えられるという考えで落ち着いている。
破壊工作をして怪しまれた結果、警戒されるのは避けたい。
そう言う訳で現状ここではおとなしく、俺は情報収集に専念をすることにした。
◆
これだけ人が多いと、俺一人に注目する者はほとんどいない。しかし何人かの女性や、俺を男娼として一晩買いたいという、おかしな者が声をかけてくることはあった。
当然それは断り、場合によっては実力で追い払っている。人が多いと、そういう者も現れるみたいだ。
そんな些細なことがありつつも、俺は数日ほど怪しまれることなく、様々な情報を手に入れた。
勇者パーティの情報はもちろんのこと、上位冒険者やまとめ役、冒険者たちが今回の侵攻に何を思っているかなど、多岐にわたる。
ちなみに勇者パーティとは、接触はしていない。既に容姿やある程度の情報を得ていることもあるが、余計なリスクを減らすという意味もある。
鑑定をするのはどう考えても悪手だし、何らかのスキルでこちらの情報が漏れる可能性もあった。
何より俺の直感も、止めておいた方がいいと反応を示している。なので、勇者パーティとの接触は避けた感じだ。
しかしそんな中でも、重要なことを知ることができた。それは、侵攻日が決まったことだろう。
進行の決行日は、ちょうど一週間後だった。どうやら勇者の一言で、それが決まったらしい。
なので俺もその情報を城に持ち帰って、女王たちと準備を進めることになった。
情報はかなり手に入ったので、残りは素材集めに集中しつつ、数回ほど勇者勢力の拠点に行く程度でいいだろう。
また勇者勢力の侵攻日だが、驚くことにゲヘナデモクレスと決闘する日と同じだった。
偶然と言えばおしまいだが、もしかしたら赤い煙が調整した可能性がある。
勇者の近くに、赤い煙と繋がっている者がいるのかもしれない。その者が、侵攻日について勇者に助言した可能性も考えられた。
なのでそう考えると、やはり騒ぎを起こさなくて良かったと言える。勇者勢力だけではなく、赤い煙にも警戒を強められたかもしれない。
しかし同時に問題なのは、これでゲヘナデモクレスと勇者勢力を一度に相手にすることになってしまうことだ。当然ここに、赤い煙も何かしてくると考えたほうがいい。
思っていた以上に、このままだと苦戦を強いられそうだ。そのためにも、ダンジョンを如何に強化できるかが、重要になってくる。
故に俺は結果として、なりふり構わずに配下たちを各地へと送り込んだ。素材集めを重視するなら、これが一番だろう。
荷物持ちとして、アイテムポケットを使えるロットキャリアを数体付ければ、素材の収集も問題はない。
あとは他にもレッドアイのいる場所に行き、大量に集まっているゾンビシャークを狩ったりもした。
ゾンビシャークはCランクなので、ダンジョンポイントの変化率としては、おいしい素材なのだ。
そのときレッドアイが何か言っていた気がするが、どうでもいいことだろう。またゾンビシャークが集まったら、狩りに来ることにする。
思った以上にレッドアイは、撒き餌としての才能があったらしい。数体ほどゾンビシャークを残して、俺はその場を去った。
そうして素材集めに専念していたら、あっという間に一週間が過ぎてしまう。
もちろんその間に、勇者勢力の拠点にも数回ほど潜入をしていた。
冒険者の総数自体は増えたみたいだが、上位冒険者はそこまで増えてはいない。Sランク冒険者も、結局無双のゼンベンスただ一人だけである。
どうやら他の大陸にいるSランク冒険者は、様々な理由から勇者勢力に合流できないらしい。
Sランク冒険者ともなると、様々なしがらみがあるのだろう。また勇者勢力が集結した期間は、そこまで長くはない。
即座に動けるほど、フットワークが軽くはないのだろう。無双のゼンベンスはソロ故に、その点では動きやすかったのだと思われる。
Sランク冒険者はとても目立つので、いれば流石に少しは情報が手に入っただろう。しかしそれが一切無いということは、勇者勢力に新たに加わった可能性は低いと言えた。
個人的にSランク冒険者が増えないのは、素直に嬉しい。これ以上強者が増え続ければ、流石に危ないと感じていた。
現状でも自分の手札を適切に使わなければ、敗北する可能性もあるだろう。油断は、一切できない。
なので女王たちと相談して、ダンジョンの構造にも色々と手を加えさせてもらった。
もちろんその情報を隠すため、侵入者は全て逃がさずに排除している。
ただ赤い煙から情報が漏れることも考えて、いくつか作戦を用意しておき、その都度変えていくことにした。
またダンジョンのポイントも十分に集まったことで、勇者勢力とも十分に戦える確信がある。
そして問題となるゲヘナデモクレスとの決闘だが、当然そのままにはできない。三勢力を同時に相手にするのは、流石に無謀だろう。
故に俺はここで、一つの賭けに出ることにした。それを行ったのが、ちょうど昨日のことである。
俺は激しい戦闘にも耐えられる強固な大広間で、ゲヘナデモクレスを召喚したのだ。
「ふはは! 我との決闘の日時は、明日のはずであろう? 汝よ、何故我を召喚したのだ?」
召喚されたゲヘナデモクレスは、腕を組みながら当然のように、そう問いかけてきた。
それを問いかけられることは事前に予想していたため、俺は迷わず返事をする。
「それは分かっているが、一つ訊きたいことがある。明日勇者たちの勢力も攻めてくるんだが、それについて何か知らないか? まさか俺とお前の戦いに、水を差すようなことをしてないよな?」
俺がそう言うと、ゲヘナデモクレスは分かりやすいくらいに動揺をし始めた。
「な、なななんのことであるかッ? わ、我は知らぬ。知らぬぞ! き、きっと偶然であろう! 我は悪くないっ!」
「……そうか」
「そ、そうである!」
何という、分かりやすさであろうか。ゲヘナデモクレスが吹聴していたことは、既に知っている。
なので余計に、今のゲヘナデモクレスが滑稽に見えた。
あれ? ゲヘナデモクレスって、こんなキャラだったか?
俺はそんなことを思いつつも、ゲヘナデモクレスとの話しを再開するのであった。
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