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第七章
SS 心が読めるにゃん♡
しおりを挟む※時期的には078くらいの話です。
__________
私は真面目な兵士。
自分で言うのもなんだが、周囲からも真面目で堅物な男だと思われている。
だからこそ、ハパンナ子爵様や他の有力者方がいる場所で、警備を任された。
国始まって以来のテロ事件が起こり、周囲もピリついている。
何が現れてもいいように、私は気を張り詰めていた。
しかしそんな時、その天使が突如として現れる。
メイド服に身を包んだケモミミ美少女、ジフレ様だ。
腰まで伸びる黒髪に、黄金の瞳。そして黒い猫耳と猫尻尾を持つお方である。
正直に言おう、私の性癖にドストライクだった。
そして再度口にするが、私は真面目で堅物な兵士。そう周囲には、思われている。
しかしそんな私にも、一つだけ秘密があった。
それは、重度のケモミミ好きということである。
偶然書物で獣人という存在を知ってから、私はその虜になってしまった。
故に夜のお店では、獣人の衣装や小道具を持参して楽しむほどである。
もちろん、このことは絶対に知られたくはない秘密だ。
仮に知られたら、おそらく大変なことになるだろう。
私の社会的地位や、友人関係という意味で。
それに最近では、街をうろつく犬や猫に対しても、気持ちが揺らぐのだ。
モンスターであれば、ホーンラビットがもうたまらない。
私もサモナーの端くれであり、当然ホーンラビットのメス個体を使役している。
酒の勢いで何度か過ちを犯してしまったが、まだ、まだ私は戻ることができるだろう。
こうしてジフレ様を前にしても、己を律して警備の任務に従事できている。
ハパンナ子爵様のご息女であらせられるルーナ様が、ジフレ様の尻尾を掴んだときは大変羨ましかった。
しかし私はそれを見ても、グッと我慢したのである。
私は自分の我慢強さと真面目さに、心の中で自画自賛したのは言うまでもない。
だがそれも、ジフレ様が心を読めると言ってから、崩れ去る。
非常に不味いと思った。
私は表面上は真面目な兵士だが、心の中では大変なことになっている。
心を読まれたら、一巻の終わりだ。
どうか、どうか私の心は読まないで欲しい。
そう、神に祈った。
しかし、現実は残酷だ。私はジフレ様に心を読めることを証明するための人物として、選ばれてしまう。
もうだめだ。こうなってしまえば、己の欲望に従うしかない。
それに、こんなチャンスは二度とこないだろう。
だから私は、心の中でこう繰り返した。
”両手を猫のように握り、片足を後ろにあげて、『心が読めるにゃん♡』ってウィンクしながら言ったら信じます!!”
するとジフレ様は驚愕の表情で私を見つめると、恥ずかしいのか少し顔を赤くして、私のことをキッと睨《にら》む。
正直、その表情はたまらなかった。
けれども、これは前菜だ。
私はジフレ様の次の行動で、取り繕うことが出来なくなる。
「心が読めるにゃん♡」
やってくれた。本当に、やってくれたのだ。
私の願いを、ジフレ様が聞き入れてくれた。
神様、そう、ジフレ様こそが、神様に違いない。
創造神様とは違う、もうひと柱の神様だ。
だからだろう。その瞬間、私はこのように叫んでいた。
「うぉおおお!! 本物ッ! 圧倒的本物ッ! 圧倒的感謝ッ! 確かに心が読まれる違和感がありました!!」
こうして私はその日から、真面目で堅物な兵士という偽りの姿をやめた。
代わりに今日からは、重度のケモナー兵士として、同志を増やす日々である。
あの日の感動を忘れないように、私は記憶が鮮明なうちにジフレ様のお姿を絵に残した。
もちろん、警備の仕事も抜かりない。
今の私は、きっと二十四時間戦える。
これでも昔は、画家を目指していたのだ。
画力には自信があった。
そうして出来上がった一枚目の絵はもちろん、両手を猫のように握り、片足を後ろにあげて、『心が読めるにゃん♡』ってウィンクしているジフレ様のお姿だ。
これほどの作品を仕上げたことは、これまでとして一度もない。
その時私は気がついたのだ。なぜ自分が画家になれなかったのか。
理由は簡単だ。この滾るような情熱が、以前の私には欠如していたのである。
そしてこの絵は、ハパンナ子爵様が超高額で購入してくださった。
更に私をお抱えの絵師として、雇ってくれるという。
私はそれを、もちろん承諾した。
なので私は兵士を辞めて、これからはケモナー絵師として生きていく。
私の夢は、大陸中にジフレ様のお姿を広めることだ。
そしていずれは、国境門の先にある別の国にも、ジフレ様の偉大さを伝えてみせよう。
これは、私にしかできない天命に違いない。
それから私は、ジフレ様のお姿を描き続けた。
すると驚くことに、多くの街から私の絵の評判を聞きつけて、購入を希望する者が殺到したのである。
中には強引な者もいたが、私はハパンナ子爵様のお抱えの絵師だ。
そうした者は、ハパンナ子爵様のお力で対処していただいた。
しかし不思議なのは、既にジフレ様が人気であることである。
もちろん、ジフレ様は素晴らしい。
だが何か理由があるのかもしれないと、私はその者たちに訊いてみた。
するとどうやら、ジフレ様は多くの街を救った英雄とのこと。
やはりジフレ様は、私が思った通り特別なケモミミ女神様だ。
これはますます、絵師として頑張らなければいけない。
そうして私の努力も実り、次第に弟子たちも増えていく。
皆がジフレ様の素晴らしさを理解した、同志たちでもあった。
そして私は後に、偉大な画家として名を残すことになる。
私は生涯、ジフレ様や美しいケモミミたちを描き続けるだろう。
この滾る情熱は、もう誰にも止められないのだから。
私は元真面目な兵士、今はジフレ様とケモミミを愛する、ケモナー絵師だ。
その名を、ケモノスキーという。
代表作は、ジフレ様シリーズ。ホーンラビットシリーズ。犬猫シリーズ等である。
どの作品も私や同志たちにとっては、たまらない一品に仕上がった。
これからも生涯、この滾る想いが消えない限り、ケモナー絵師として活躍していくことだろう。
ジフレ様、万歳!!
____________________
今回のSS投稿は、以上になります。
また次に何か記念を迎えたときに、SSを投稿すると思います。
それと今日は、クリスマスイブですね。
メリークリスマス!
引き続き、モンカドをよろしくお願いいたします。
<m(__)m>
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