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第七章
255 船のダンジョン ⑫
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歩きながらレフに訊いたところ、俺が来るまでにレッドアイは三回再生したという。
つまり肉を喰ったのは、四回目の再生前となる。
だとすれば瞬間再生の使用できる回数は、三回なのかもしれない。
ならいま頭部を再生したのが五回目になるので、レッドアイの再生はあと一度だろう。
その時に肉を喰うのを阻止できれば、形勢は一気に傾くと思われる。
現状呪喰いの効果で、レッドアイはAランク相当の強さだ。
油断はできないが、十分に対処が可能である。
ただスキル強化(中)があるため、攻撃系スキルが強くなっていることに注意が必要だろう。
どうやら一度レフのシャドーアーマーが、レッドアイのレインニードルの集中砲火で破壊されたらしい。
スキルが強化された結果、針のような雨ではなく、槍のような雨が飛んできたみたいだ。
とっさにアンクとサンを守った結果、ダメージを負ったという。
先ほどの傷は、その時のもののようだ。
シャドーアーマーが無ければ、重傷だった可能性が高い。
それと当然他のスキルも強化されているので、思わぬ大ダメージに繋がる可能性もある。
これは俺も、注意した方が良さそうだな。
しかしレッドアイには訊きたいこともあるし、レフたちの経験もできれば積んでおきたい。
そのちょうど良い塩梅を、見極める必要がある。
俺がそう考えていると、レッドアイが先に動いた。
口から紫色の瘴気を吐き出すと、あっという間に自身の周囲を包み隠していく。
俺たちが闇属性適性を持つ以上、瘴気が強化されたとしても意味はない。
だが、目隠しとしては十分だった。
「サン!」
「ギギ!」
俺はサンに命じて、緑斬のウィンドソードからウィンドを発動させる。
瘴気は瞬く間に飛ばされていくが、その時には既にレッドアイの準備が完了していた。
自身の周りをウォーターシールドで守り、眷属召喚で配下を何体も生み出している。
しかもその配下は、パイレーツスケルトンとパイレーツゾンビの上位種に見えた。
そして何よりも、レッドアイはその守りの中で大量の肉を取り出し、食べ始めている。
これは不味い。
俺は咄嗟にそれを阻止するため、セイントカノンを放つ。
「!!!???」
「ヴぉヴぁぁ!?」
「――ッ!!」
それにより海賊アンデッド達は一掃されるが、ウォーターシールドの破壊までは至らない。
強化されているのか、思ったよりも頑丈みたいだった。
流石にウォーターシールドの内側に、セイントカノンを発動することはできない。
敵の足元で爆発しているように見えるが、それには通すための隙間が直線状で必要なのである。
つまりウォーターシールドで隙間なく守られている場合、内側へ発動することはできない。
俺はそれに舌打ちをしながら、二発目を発射する。
結果として、二発目でウォーターシールドを破壊した。
またそこへ、レフたちが攻撃魔法を行う。
「グルオウ!」
「ギギギ!」
「ガァ!」
レフはシャドーランス。サンはライトアロー。アンクはシャドーニードルを放った。
攻撃魔法を受けて、軽い魔力の爆発が巻き起こる。
「やったか?」
ついそれを見て、俺はそう口にしてしまう。
だが案の定、レッドアイは無事である。
それもレフたちの攻撃は、思ったよりも効いてはいない。
やはり闇属性耐性も、効果がアップしているのだろう。
ダークネスチェインで床に叩きつけるような、実質属性が関係ない攻撃でなければだめだったようだ。
ただサンのライトアローだけが、唯一致命傷を与えていた。
属性的な相性までは、無くなってはいないらしい。
だがその傷も、瞬く間に再生していく。
「痛ぇじゃねえか。だが、一歩遅かったな! 俺様は既に、肉を喰い終えている! これでお前らとの戦闘中、呪喰いの効果が切れることはない!
それに再生回数も、喰った肉の量に比例する! 何が言いたいのか分かるか? 俺様が実質、不死身になったってことだ! がはは!」
余裕そうな笑みを浮かべて、レッドアイが高らかにそう言った。
通常再生系は、かなりの魔力を必要とする。
だがあの余裕からして、呪喰いの瞬間再生は回数制限というデメリットがあることで、代わりに魔力消費がほとんど無いのかもしれない。
でなければいくら回数を増やしたとしても、先に魔力が尽きることになる。
それとレッドアイはああ見えて、意外と機転が利くようだ。
海賊の船長をしていただけのことは、あるということだろう。
そんなレッドアイが、魔力切れのことを考えないはずがない。
加えて許容量を超えないギリギリの肉を摂取したのであれば、反動による自滅も狙えないだろう。
何度も再生するBランクモンスター。それに多彩なスキルと技術力を持っている。
更には、使用するスキルが全て強化されているとなれば、やっかい極まりない。
それを加味したランクは、おそらくAランクの上位だろう。
普通に考えたら、ボーンドラゴンよりも強敵かもしれない。
しかし厄介さで言えば、ゲシュタルトズンプフよりはマシである。
まああれは単純に、倒すのが面倒なだけだったので、基準が違うかもしれないが。
それと強化されたと言っても、マイナスばかりではない。
俺たちの場合、今後より強い相手が待ち構えている。
今更Aランクが立ちはだかっても、十分に勝つことができるだろう。
故にこれは、どちらかと言えばプラスなのである。
レッドアイが強ければその分、経験が積めるというだけだった。
「そうか。なら簡単には死なない分、こちらも遠慮がいらないという訳だ」
「はぁ?」
俺がそう言うと、レッドアイは予想した反応と違ったのか、間の抜けた返事をする。
正直今のレッドアイなら、レフたちの敵としてはかなり良い相手だろう。
ただこのままだと、レフたちだけでは厳しいのもまた事実だ。
なので少し、テコ入れをさせてもらうことにした。
そう思い、俺はアロマとリーフェを召喚する。
「きゅい!」
「やっと私の出番~?」
すると俺の配下が増えたことに、レッドアイは警戒感を募らせる。
だが警戒したとして、どうにかなるものではない。
俺は繋がりから、アロマとリーフェに命令を出す。
「きゅい!」
そしてまずアロマが、レフたちにミックスアロマでバフをかけた。
名称:ミックスアロマ
効果
・ターゲットを任意選択可能なアロマを生成する。
・このアロマは、以下の効果を内包している。
【自然治癒力上昇(小)】【自然魔力回復量上昇(小)】
【状態異常耐性(小)】【病回復(小)】【精神改善(小)】
これで多少は、戦闘がしやすくなっただろう。
「ちぃ!」
レッドアイも何かバフをしたと気がついたのか、舌打ちをした。
「行け!」
「グルオウ!」
「ギギ!」
「ガァ、おけまるー!」
そしてシャドーアーマーを発動させたレフが、先頭に立ち突き進む。
サンとアンクはその斜め後ろをそれぞれ飛び、三角形の陣形を生み出す。
当然レッドアイは迎え撃つために、ウォーターシールドを発動させる。
更にはレフたちに向けて、レインニードルを行った。
槍のような無数の雨が、レフたちを襲う。
「無駄だ」
「なにぃ!?」
だがそれを俺は、双骨牙と持ち替えていた追尾の瞬弓で、次々に撃ち落とした。
名称:追尾の瞬弓
説明
・適性があれば装備中に限り、スキル【連射】【ホーミングアロー】をこの弓から発動できる。
・弓に矢をつがえる速度が上昇する。
・この弓は時間経過と共に修復されていく。
レインニードルは槍のように太くなった関係で、レインという名称の割に数が少ない。
結果連射とホーミングアローで、簡単に撃ち落とせた。
もちろん全ては撃ち落とせないが、レフたちに当たるものだけを的確に狙ったので問題はない。
「ふむ。弓も悪くないな」
思った以上の成果が出たことで、俺はそう呟いた。
またその間に、レフたちがレッドアイの元へと辿り着く。
だがレッドアイの前は、ウォーターシールドによって塞がれている。
「ギギ!」
「ガァ!」
そこにサンとアンクが、攻撃を仕掛けた。
だがそれで破壊はできなかったので、俺がセイントカノンで道を開く。
「なぁ!? クソがぁ!」
それを見てレッドアイが悪態をつくが、その時にはもうレフが迫っていた。
当然その隙を見逃さず、レフの前足から魔力の込められた一撃が繰り出される。
対してレッドアイも、迎え撃つように強化したスラッシュを発動した。
「グルオウ!」
「く、喰らいやが――」
だがそこで、予想外な事態が起きる。
「――れ? ぐヴぁげらっ!?」
なんとレッドアイの振るった剣が、枝のように折れてしまったのだ。
結果レフの一撃が、レッドアイへとモロに決まってしまう。
肉が大きく引き裂かれると同時に、転がるようにして吹き飛ぶ。
「ぐ、ぐぉ……な、なにが……」
レッドアイは再生しながらも、訳が分からないと言ったような表情で、そう呟いた。
しかし次の光景を見て、状況を理解する。
「ごしゅ~。盗ってきたよ~」
「でかした」
「えへへ」
そう言ってリーフェが俺に手渡したのは、レッドアイの剣だった。
「な、な、何で俺の剣がそこにある!? じゃあ俺が今握っているのは、いったいなんなんだ!? ――は!? き、木の枝だとッ!?」
すると本物を目にしたからか、レッドアイの持っていた折れた剣が、同様に折れた木の枝へと姿を変える。
そう、レッドアイの剣は、リーフェのイリュージョンチェンジによって、奪われていたのだ。
「そういうことだ。悪いが、これは預からせてもらう」
俺はわざとらしい笑みを浮かべると、レッドアイの剣をストレージへと入れる。
種族由来の武器は収納できないかと一瞬考えたが、問題なく収納できた。
「て、てめぇ! 返せ! それは俺様の相棒だぞ! クソが! 卑怯者! それでてめえは満足か!」
高らかにそう罵ってくるレッドアイだが、そんなことはどうでもよかった。
「あんな罠部屋を用意しているお前が、それを言うのか? 小賢しく肉を喰うところからしても、本当は卑怯と思うかよりかは、してやられたと思っているんじゃないのか?」
「――ッ!?」
すると図星を突かれたのか、レッドアイが一瞬押し黙る。
だがそうだとしても、納得できるかどうかは、また別問題のようだ。
「お前、悪魔と言われたことはないか?」
「悪魔? そう言えば昔、そんなことを言われたこともあったな」
もうだいぶ前のことだが、タヌゥカにそう言われた気がする。
「けっ、最悪だ。勝てる気がしねぇ……。なあ、ここいらで戦いをやめにしねえか?」
するとレッドアイが唐突に、そんな提案を口にするのだった。
つまり肉を喰ったのは、四回目の再生前となる。
だとすれば瞬間再生の使用できる回数は、三回なのかもしれない。
ならいま頭部を再生したのが五回目になるので、レッドアイの再生はあと一度だろう。
その時に肉を喰うのを阻止できれば、形勢は一気に傾くと思われる。
現状呪喰いの効果で、レッドアイはAランク相当の強さだ。
油断はできないが、十分に対処が可能である。
ただスキル強化(中)があるため、攻撃系スキルが強くなっていることに注意が必要だろう。
どうやら一度レフのシャドーアーマーが、レッドアイのレインニードルの集中砲火で破壊されたらしい。
スキルが強化された結果、針のような雨ではなく、槍のような雨が飛んできたみたいだ。
とっさにアンクとサンを守った結果、ダメージを負ったという。
先ほどの傷は、その時のもののようだ。
シャドーアーマーが無ければ、重傷だった可能性が高い。
それと当然他のスキルも強化されているので、思わぬ大ダメージに繋がる可能性もある。
これは俺も、注意した方が良さそうだな。
しかしレッドアイには訊きたいこともあるし、レフたちの経験もできれば積んでおきたい。
そのちょうど良い塩梅を、見極める必要がある。
俺がそう考えていると、レッドアイが先に動いた。
口から紫色の瘴気を吐き出すと、あっという間に自身の周囲を包み隠していく。
俺たちが闇属性適性を持つ以上、瘴気が強化されたとしても意味はない。
だが、目隠しとしては十分だった。
「サン!」
「ギギ!」
俺はサンに命じて、緑斬のウィンドソードからウィンドを発動させる。
瘴気は瞬く間に飛ばされていくが、その時には既にレッドアイの準備が完了していた。
自身の周りをウォーターシールドで守り、眷属召喚で配下を何体も生み出している。
しかもその配下は、パイレーツスケルトンとパイレーツゾンビの上位種に見えた。
そして何よりも、レッドアイはその守りの中で大量の肉を取り出し、食べ始めている。
これは不味い。
俺は咄嗟にそれを阻止するため、セイントカノンを放つ。
「!!!???」
「ヴぉヴぁぁ!?」
「――ッ!!」
それにより海賊アンデッド達は一掃されるが、ウォーターシールドの破壊までは至らない。
強化されているのか、思ったよりも頑丈みたいだった。
流石にウォーターシールドの内側に、セイントカノンを発動することはできない。
敵の足元で爆発しているように見えるが、それには通すための隙間が直線状で必要なのである。
つまりウォーターシールドで隙間なく守られている場合、内側へ発動することはできない。
俺はそれに舌打ちをしながら、二発目を発射する。
結果として、二発目でウォーターシールドを破壊した。
またそこへ、レフたちが攻撃魔法を行う。
「グルオウ!」
「ギギギ!」
「ガァ!」
レフはシャドーランス。サンはライトアロー。アンクはシャドーニードルを放った。
攻撃魔法を受けて、軽い魔力の爆発が巻き起こる。
「やったか?」
ついそれを見て、俺はそう口にしてしまう。
だが案の定、レッドアイは無事である。
それもレフたちの攻撃は、思ったよりも効いてはいない。
やはり闇属性耐性も、効果がアップしているのだろう。
ダークネスチェインで床に叩きつけるような、実質属性が関係ない攻撃でなければだめだったようだ。
ただサンのライトアローだけが、唯一致命傷を与えていた。
属性的な相性までは、無くなってはいないらしい。
だがその傷も、瞬く間に再生していく。
「痛ぇじゃねえか。だが、一歩遅かったな! 俺様は既に、肉を喰い終えている! これでお前らとの戦闘中、呪喰いの効果が切れることはない!
それに再生回数も、喰った肉の量に比例する! 何が言いたいのか分かるか? 俺様が実質、不死身になったってことだ! がはは!」
余裕そうな笑みを浮かべて、レッドアイが高らかにそう言った。
通常再生系は、かなりの魔力を必要とする。
だがあの余裕からして、呪喰いの瞬間再生は回数制限というデメリットがあることで、代わりに魔力消費がほとんど無いのかもしれない。
でなければいくら回数を増やしたとしても、先に魔力が尽きることになる。
それとレッドアイはああ見えて、意外と機転が利くようだ。
海賊の船長をしていただけのことは、あるということだろう。
そんなレッドアイが、魔力切れのことを考えないはずがない。
加えて許容量を超えないギリギリの肉を摂取したのであれば、反動による自滅も狙えないだろう。
何度も再生するBランクモンスター。それに多彩なスキルと技術力を持っている。
更には、使用するスキルが全て強化されているとなれば、やっかい極まりない。
それを加味したランクは、おそらくAランクの上位だろう。
普通に考えたら、ボーンドラゴンよりも強敵かもしれない。
しかし厄介さで言えば、ゲシュタルトズンプフよりはマシである。
まああれは単純に、倒すのが面倒なだけだったので、基準が違うかもしれないが。
それと強化されたと言っても、マイナスばかりではない。
俺たちの場合、今後より強い相手が待ち構えている。
今更Aランクが立ちはだかっても、十分に勝つことができるだろう。
故にこれは、どちらかと言えばプラスなのである。
レッドアイが強ければその分、経験が積めるというだけだった。
「そうか。なら簡単には死なない分、こちらも遠慮がいらないという訳だ」
「はぁ?」
俺がそう言うと、レッドアイは予想した反応と違ったのか、間の抜けた返事をする。
正直今のレッドアイなら、レフたちの敵としてはかなり良い相手だろう。
ただこのままだと、レフたちだけでは厳しいのもまた事実だ。
なので少し、テコ入れをさせてもらうことにした。
そう思い、俺はアロマとリーフェを召喚する。
「きゅい!」
「やっと私の出番~?」
すると俺の配下が増えたことに、レッドアイは警戒感を募らせる。
だが警戒したとして、どうにかなるものではない。
俺は繋がりから、アロマとリーフェに命令を出す。
「きゅい!」
そしてまずアロマが、レフたちにミックスアロマでバフをかけた。
名称:ミックスアロマ
効果
・ターゲットを任意選択可能なアロマを生成する。
・このアロマは、以下の効果を内包している。
【自然治癒力上昇(小)】【自然魔力回復量上昇(小)】
【状態異常耐性(小)】【病回復(小)】【精神改善(小)】
これで多少は、戦闘がしやすくなっただろう。
「ちぃ!」
レッドアイも何かバフをしたと気がついたのか、舌打ちをした。
「行け!」
「グルオウ!」
「ギギ!」
「ガァ、おけまるー!」
そしてシャドーアーマーを発動させたレフが、先頭に立ち突き進む。
サンとアンクはその斜め後ろをそれぞれ飛び、三角形の陣形を生み出す。
当然レッドアイは迎え撃つために、ウォーターシールドを発動させる。
更にはレフたちに向けて、レインニードルを行った。
槍のような無数の雨が、レフたちを襲う。
「無駄だ」
「なにぃ!?」
だがそれを俺は、双骨牙と持ち替えていた追尾の瞬弓で、次々に撃ち落とした。
名称:追尾の瞬弓
説明
・適性があれば装備中に限り、スキル【連射】【ホーミングアロー】をこの弓から発動できる。
・弓に矢をつがえる速度が上昇する。
・この弓は時間経過と共に修復されていく。
レインニードルは槍のように太くなった関係で、レインという名称の割に数が少ない。
結果連射とホーミングアローで、簡単に撃ち落とせた。
もちろん全ては撃ち落とせないが、レフたちに当たるものだけを的確に狙ったので問題はない。
「ふむ。弓も悪くないな」
思った以上の成果が出たことで、俺はそう呟いた。
またその間に、レフたちがレッドアイの元へと辿り着く。
だがレッドアイの前は、ウォーターシールドによって塞がれている。
「ギギ!」
「ガァ!」
そこにサンとアンクが、攻撃を仕掛けた。
だがそれで破壊はできなかったので、俺がセイントカノンで道を開く。
「なぁ!? クソがぁ!」
それを見てレッドアイが悪態をつくが、その時にはもうレフが迫っていた。
当然その隙を見逃さず、レフの前足から魔力の込められた一撃が繰り出される。
対してレッドアイも、迎え撃つように強化したスラッシュを発動した。
「グルオウ!」
「く、喰らいやが――」
だがそこで、予想外な事態が起きる。
「――れ? ぐヴぁげらっ!?」
なんとレッドアイの振るった剣が、枝のように折れてしまったのだ。
結果レフの一撃が、レッドアイへとモロに決まってしまう。
肉が大きく引き裂かれると同時に、転がるようにして吹き飛ぶ。
「ぐ、ぐぉ……な、なにが……」
レッドアイは再生しながらも、訳が分からないと言ったような表情で、そう呟いた。
しかし次の光景を見て、状況を理解する。
「ごしゅ~。盗ってきたよ~」
「でかした」
「えへへ」
そう言ってリーフェが俺に手渡したのは、レッドアイの剣だった。
「な、な、何で俺の剣がそこにある!? じゃあ俺が今握っているのは、いったいなんなんだ!? ――は!? き、木の枝だとッ!?」
すると本物を目にしたからか、レッドアイの持っていた折れた剣が、同様に折れた木の枝へと姿を変える。
そう、レッドアイの剣は、リーフェのイリュージョンチェンジによって、奪われていたのだ。
「そういうことだ。悪いが、これは預からせてもらう」
俺はわざとらしい笑みを浮かべると、レッドアイの剣をストレージへと入れる。
種族由来の武器は収納できないかと一瞬考えたが、問題なく収納できた。
「て、てめぇ! 返せ! それは俺様の相棒だぞ! クソが! 卑怯者! それでてめえは満足か!」
高らかにそう罵ってくるレッドアイだが、そんなことはどうでもよかった。
「あんな罠部屋を用意しているお前が、それを言うのか? 小賢しく肉を喰うところからしても、本当は卑怯と思うかよりかは、してやられたと思っているんじゃないのか?」
「――ッ!?」
すると図星を突かれたのか、レッドアイが一瞬押し黙る。
だがそうだとしても、納得できるかどうかは、また別問題のようだ。
「お前、悪魔と言われたことはないか?」
「悪魔? そう言えば昔、そんなことを言われたこともあったな」
もうだいぶ前のことだが、タヌゥカにそう言われた気がする。
「けっ、最悪だ。勝てる気がしねぇ……。なあ、ここいらで戦いをやめにしねえか?」
するとレッドアイが唐突に、そんな提案を口にするのだった。
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