倒したモンスターをカード化!~二重取りスキルで報酬倍増! デミゴッドが行く異世界旅~

乃神レンガ

文字の大きさ
上 下
264 / 320
第七章

253 船のダンジョン ⑩

しおりを挟む
 
「うめぇ。あぁ、うめぇなぁ。嫌なことは何もかも、この肉があれば忘れられるぜぇ。がははっ、こいつも俺様と同じ立場・・・・だが、対等じゃなかったのは救いだぜぇ。あのお方には、それだけは感謝しないとなぁ」

 そう言うと先ほどのいきどおりが嘘のように、消えてなくなった。

 海賊船長は冷静になり、息を吐く。

「んで、てめぇはアレだろ? このダンジョンを攻略しに来た冒険者とかなんだろ? よろこべ、ここまでこれたのは、お前が初めてだ。
 俺様はこの海賊船、デスグランドの船長、レッドアイという。そしてこいつはあわれな奴隷人魚。名前は……忘れちまった。がはは」

 レッドアイと名乗った海賊船長は、剣先を人魚に向けてそう言った。

 悠長に会話をしてくれたのは、ここまで到達した者が初めてだったかららしい。

 まあそもそも、百数十年ぶりの侵入者ということを考えれば、やってきた人数自体が少ないと思われる。

 それと普通にあのお方とか出てきたが、もしかして赤い煙のことだろうか?

 一応、確認をとってみよう。

「そうか。俺は冒険者のジンという。それで、あのお方というのはもしかしてだが、アルハイドという金髪碧眼の男を器にしている存在のことか?」
「なぁ!? なぜてめぇがあのお方、×××様のことを知っている!?」

 すると想像以上に、良い反応を返してくれた。

 なるほど。やはりあのお方というのは、あの赤い煙のことだったか。

 であればこのレッドアイという海賊船長は、赤い煙と繋がっていることになる。

 言い方からして、赤い煙に従っているのだろう。

「お前が船の上でのんびりしている間に、世の中は変わっているということだ。なんだ? あのお方とやらは、お前に何も教えていないのか? かわいそうに」

 そうしてわざとあおった言い方をすると、レッドアイは再び冷静さを失い始める。

「そ、そんなはずはない! な、ないはずだ! そもそもおかしい、このダンジョンがある限り、あのお方に辿り着けるはずがない!
 このダンジョンは、特別あのお方に目をかけてもらっているんだ! そのダンジョンボスである俺様が、ないがしろにされるはずがないだろ!」

 確かにこのダンジョンに辿り着くこと自体が、そもそも困難だ。

 たとえ入れたとしても、攻略難易度についても実際高い。

 おそらくこのダンジョンを運営するのに、赤い煙からそれなりの援助を受けている可能性がある。

 だがそれでも、絶対に攻略できないという訳ではない。

 そもそも攻略を阻止したいのであれば、宝珠にダンジョンの場所を示させることはしないだろう。

 それとも、赤い煙も何かしらの制約を受けているのか?

 俺がそんなことを考えていると、レッドアイの様子が変わる。

「お前は危険だ。奴隷として飼ってやろうとも考えたが、止めにする。あのお方を知る人族を、このまま生かしていられるか! ここで、死んでもらうぞ!」

 その瞬間、辺り一面に大量のパイレーツスケルトンとパイレーツゾンビが姿を現す。

 これは、面倒だな。

「ルトナイ」
「カタッ!」

 俺はルトナイに声をかけると、アンデッド軍団を召喚した。

 スケルトンソードマン×50
 スケルトンアーチャー×50
 スケルトンソーサラー×50

 この150体をルトナイの指揮下に入れ、周囲の海賊アンデッドの相手をさせる。

「なぁ!? やっぱりてめぇ、おかしいだろ!?」
「ゾンビモスキート1,000匹よりは、可愛いだろ?」
「そう言う意味じゃねえ!」

 怒号を上げるレッドアイに軽口を叩きながら、俺は次に鑑定を飛ばす。

 鑑定妨害があるみたいで抵抗されるが、魔力を過剰に込めることで打ち破った。

 かなりの魔力が持っていかれたが、無事に鑑定が発動する。


 種族:パイレーツキャプテンゾンビ(レッドアイ)
 種族特性
【生命探知】【闇属性適性】【闇属性耐性(小)】
【身体能力上昇(中)】【剣適性】【スラッシュ】
【サークルスラッシュ】【シャドーニードル】
【シャドーステップ】【瘴気生成】【悪食】
【集団指揮】

 エクストラ
【ダンジョンボス】

 スキル
【水属性適性】【水中呼吸】【アイテムボックス】
【ウォーターシールド】【レインニードル】
【眷属召喚】【呪喰い】【上級鑑定妨害】


 種族名は、パイレーツキャプテンゾンビというらしい。

 だがダンジョンボスにしては、少し弱くはないか?

 ランクはおそらく、Bというところだろう。

 それにこいつにはゾンビになる前、生前がある気がする。

 だとすれば【水属性適性】【水中呼吸】【アイテムボックス】は、生前から所持していたスキルかもしれない。

 ゾンビ化液の効果と似たような感じでゾンビになったのなら、他のスキルはほとんど失ったのだろう。
 
 現状存在している他のいくつかは、ダンジョンボスになったことで獲得したのだと思われる。

 にしても、ダンジョンボスとしては弱い。せいぜいが、エリアボスレベルだろう。

 これは少々、拍子抜けかもしれない。

 俺がステータスを確認すると、レッドアイが怒りの声を上げた。

「てめぇ! 鑑定しがったな!」

 そう言ってレッドアイはシャドーステップで俺に接近すると、剣を振るってくる。

 だが、それが俺に届くことはない。

「にゃぁ」
「なに!?」

 レフが寸前のところで、ダークネスチェインを発動してレッドアイの動きを封じる。

「連れていけ」
「にゃんにゃ!」
「て、てめっ! は、離しやがっ――」

 俺がそう言うとレフは元の姿に戻り、そのままレッドアイを連れて離れていった。

 実はレッドアイと話している間に、レフには命じておいたのだ。

 これで、ある程度の時間は稼げるだろう。

 それか、案外倒してしまうかもしれない。

「お前たちも行ってくれ」
「ギギギ!」
「おけまるー!」

 ついでにアンクとサンを、レフのサポートとして向かわせた。

 さて、邪魔者もいなくなったことだし、こっちをどうにかしよう。

 そうして俺は、はりつけにされている人魚に近づいた。
 
 うなっているが、敵意が無いことは直感と殺気の有無で分かっている。

 先に、鑑定をしてみよう。

 俺はそう思い、人魚に鑑定を飛ばした。

 
 種族:カースドマーメイドゾンビ(ルルリア)
 種族特性
【生命探知】【水闇属性適性】【水闇耐性(中)】
呪毒じゅどく命肉めいにく】【再生】【魔力上昇(中)】
【カースソング】【ウォーターランス】

 エクストラ
【ダンジョンボス】

 スキル
【音属性適性】【歌上手】【泳ぎ上手】
【魅力上昇(小)】【ボイスショック】
【ウィスパー】【ボイスコンフュージョン】


 そういうことか。

 どうやら、このルルリアという人魚もダンジョンボスらしい。

 そういえばレッドアイも、同じ立場と言っていた。

 つまりこの船のダンジョンのダンジョンボスは、二体いたことになる。

 ダンジョンボスが二体というのは初めてのことだが、こういうこともあるのだろう。

 いや、これには赤い煙が絡んでいそうな気がする。

 であれば何か、この人魚をダンジョンボスにする理由があったのだろうか?

 侵入者の同情を誘うためか? それとも、別の何かがあるのかもしれない。

 またレッドアイがダンジョンボスとして弱かったのは、これが原因だったみたいだ。

 このルルリアという人魚も、ランクとしてはBというところだろう。

 Bランクが二体であれば、ダンジョンボスとしても納得できる。

 それとこのルルリアだが、スキル構成が珍しい。

 音属性適性は、初めて見た。おそらく希少属性だろう。

 またその中でも、【呪毒じゅどく命肉めいにく】という種族特性スキルが気になった。

 周囲を警戒しつつ、効果を確認してみる。


 名称:呪毒じゅどく命肉めいにく
 効果
 ・その身は呪いと毒でできている。
 ・摂取した者に、以下の効果を与える。
【呪い(大)】【猛毒(大)】【精神異常(大)】
【衰弱(大)】【幻覚作用(大)】
【老化速度低下(中)】【寿命上昇(中)】


 なるほど。人魚の肉を食べて寿命を延ばすには、この状態異常を全て乗り越える必要があるみたいだ。

 不老不死とまではいかないが、それなりの期間若い体を保ち、寿命も伸ばすことができることだろう。

 だが大抵の者は食べた場合、無惨むざんな死を迎えると思われる。

 しかしだとすれば、おかしいことが一つあった。

 それはレッドアイが普通に、この肉を食っていたことである。

 アンデッドであるし、悪食という種族特性もある。なにより、呪喰いというスキルを持っていた。

 そのあたりがどうにも、関係していそうな気がする。

 まあそれについては、必要であれば後で考えよう。

 それと人魚の肉だが、不老で寿命のない俺には、無用の長物だ。

 普通の人族ならヤバいと分かりつつも、多くの者が欲しがるものだろう。

 そう考えると、このルルリアという人魚は生前も苦労をしていたのかもしれない。

 とりあえず鑑定から分かるのは、それくらいになる。

 さて、このルルリアという人魚を、いったいどうしたものか。

 ダンジョンボスである以上、倒す必要がある。

 俺が、そう思った時だった。

『死に……たく、ない……』

 そんなささやくような女性の声が、俺の耳元へと聞こえてくる。

しおりを挟む
感想 75

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜

夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。 不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。 その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。 彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。 異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!? *小説家になろうでも公開しております。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

処理中です...