258 / 320
第七章
247 船のダンジョン ④
しおりを挟むこの両刃斧の振り子罠は、普通ならかなり理不尽な物だろう。
しかし、俺たちの場合は違った。
「アンク、向こうまで行ってきてくれ」
「おけまるー!」
俺はアンクにそう命じて、両刃斧の届かないところからアンクを飛ばす。
こうしたズルに何か起きるかと身構えてもいたのだが、結果アンクはゴール地点に問題なく辿り着いた。
そして当然のように、召喚転移で俺たちも移動する。
ふむ。普通にゴールできたな。
「あーし役に立ったでしょ?」
「ああ、助かった」
「ガァ。役に立てて嬉しい!」
そう言うとアンクは、俺の肩に乗って羽をすり寄せた。
今回は役に立ったので、羽を撫でてやる。
「ガァ。きもちぃ」
「にゃぁ!」
「きゅい!」
するとレフとアロマが抗議の声を上げるので、ついでに軽く撫でてやった。
最近誰か一匹が撫でられると、他も群がって来るんだよな。
そんなことを思いつつ、俺たちは両刃斧の振り子罠を突破した。
しかし少し気になる事があったので、先に進む前にスケルトンナイトを召喚する。
「済まないが、この先を見てきてくれ」
「カタッ!」
そう言うとスケルトンナイトが、細道の横にある穴に落ちていく。
この罠の両脇にある穴に落ちた場合、どこへ行くのか気になったのだ。
そしてスケルトンナイトが落ちていくと、どうやら着水と同時に離れていっているらしい。
なるほど。ここから落ちると、ダンジョン外へと排出されるのか。
海の上と考えると、かなり効率的な罠だろう。
普通の冒険者なら、海に排出されたら一巻の終わりである。
ちなみにだいぶ前に落ちたもう一体のスケルトンナイトだが、ゾンビアリゲーターたちが無事に見つけたようだ。
これでダンジョン外に排出されたことが、立証されたことになる。
とりあえず今落ちたスケルトンナイトも含めて、カードへと戻す。
カード召喚術だとこうした通常確認が困難なことも可能なため、かなり便利だ。
さて、この部屋で特に変わったところはもう無いし、次の部屋に行こう。
鍵と罠はないみたいなので、ホブンに開けさせる。
そして次の部屋に入ると、即座に背後のドアが消えた。
また罠か?
そう思い周囲を見渡すと、部屋は広く何も置いていない。
前方には、ドアが普通にあった。
一体何が始まるのかと思っていると、天井が少しずつ下がってくる。
「そういうことか……急ぐぞ!」
俺はそう言って、配下たちと共にドアの元へ向かう。
また追加の罠を警戒して、クモドクロを先頭に走らせた。
幸い追加の罠は無いみたいで、問題なくドアまで辿り着く。
だが当然のように、ドアには鍵がかかっていた。
しかも難易度が異常に高いらしく、クモドクロでも時間がかかるらしい。
なるほど。この天井が落ちる前に、何か仕掛けを解除する必要があるのか。
だが時間があまり無いのも確かだな。とりあえず、時間稼ぎをしよう。
俺はそう考えると、ロックゴーレムを四体召喚した。
種族:ロックゴーレム
種族特性
【地属性適性】【地属性耐性(中)】
【ストーンバレット】【硬化】【再生】
【物理耐性(中)】
少し床が抜けないか心配だったが、問題なさそうだ。
いや、床が抜けて脱出させないために、床も強化されているのだろう。
ロックゴーレムが乗っても、軋みすらしない。
なら、追加で出しても大丈夫そうだな。
そう判断した俺は、新たに六体召喚した。
これで合計十体のロックゴーレムが、この部屋に現れる。
「お前らは天井を支えてくれ」
「「「ゴゴゴ!」」」
ロックゴーレムたちにそう命じて、天井を支えさせた。
それにより、天井の動きが止まる。
流石にBランクのロックゴーレム10体を押しつぶす力までは、天井にはなかったみたいだ。
ある意味十本の柱が建ったみたいなものだし、十分に時間稼ぎはできるだろう。
もちろんその間配下たちと手分けして、仕掛けの解除方法も探す。
途中海賊アンデッドたちが召喚されてきたが、相手にはならない。
結果部屋には五つのボタンが隠されており、全て押したところ天井の動きが完全に止まった。
ちなみにボタンを見つける間に、クモドクロがドアの開錠には成功している。
なんとなく、全部見つけたくなったのだ。
それと最初の天井の落ちる速度からして、上級開錠のスキルでギリギリ間に合う程度だったな。
俺たちはロックゴーレムたちが支えていたので、十分に余裕があったが。
これも普通の冒険者だったら、かなり悪辣な罠だっただろう。
なおボタンの位置は、以下の通りである。
・カーペットの下に一つ。
・色の違う部分の壁の裏に一つ。
・途中出てくる海賊アンデッドが所持しているのが一つ。
・落ちてくる天井に二つ。
こんな感じだった。
冷静に見れば分かるが、焦って集中力が散漫になっていた場合、見つけるのは困難かもしれない。
そんなことを思いつつ、俺たちはロックゴーレムたちをカードに戻すと、次の部屋へと向かう。
さて、次はどんな罠が待っているんだ?
もはや罠がある前提で、進んでいく。
そして次の部屋は、迷路のようになっていた。
しかも足元には水があり、少しずつ水位が上昇してきている。
加えて当然のように、出入口が消えた。
ちなみに先ほどの部屋と同じなら、罠を突破することでこの出入口は再び現れることだろう。
それと試しに近くの壁を力強く叩いてみると、スライムのようにぐにゃっと凹むだけで、壊れることはない。
ならばと次は双骨牙で斬り裂いてみるも、切った瞬間即座に繋がってしまう。
この再生速度では、繋がる前にストレージに収納するというのも難しい。
またレフにシャドーランスを叩き込ませても、壊れることはなかった。
ふむ。壁の破壊は許さないということか。
鑑定しても異常は見られないので、モンスターとかでもなさそうである。
天井が下がってくる罠の次は、水が上がってくる罠ということか。
どちらもいやらしい罠だ。
それに壁の破壊は不可能みたいであり、正攻法で挑む必要がありそうである。
だがまあ、先ほどと同じように、時間を稼ぐことは可能だろう。
俺はそう思い、足元の水をストレージに収納していく。
またできるだけ入り口を大きくして、移動しながら再配置していった。
ものすごい速度で水が吸い込まれていくので、水位の上昇を遅らせることができそうである。
けれども単なる時間稼ぎというのは事実なので、先を急ぐことにしよう。
また迷路を攻略するのは流石に手間なので、ここはカード召喚術の能力を遺憾なく発揮することにした。
「でてこい」
「「「――!」」」
そう言って召喚したのは、ゾンビモスキート。
種族:ゾンビモスキート
種族特性
【闇属性適性】【生命探知】【吸血】
【疫病攻撃】【疫病耐性(小)】
【身体能力上昇(小)】
百匹ずつ召喚して先行させると、それを十回ほど繰り返す。
結果千匹のゾンビモスキートが、迷路内を飛んで行った。
道中の敵は極力無視をして、ゴールを探させることに専念させる。
多少はやられるかもしれないが、これだけいれば大丈夫だろう。
当初はロットキャリアを召喚して、罠を強制発動させながら進ませようとも考えたが、どんな罠があるか分からない。
もしかしたら、一気に水位を上昇させる罠がある可能性もあった。
なのでここは、飛行可能で小回りの利くゾンビモスキートを選んだのである。
さて、俺たちも進もう。
そうして、迷路の攻略を始めるのであった。
127
お気に入りに追加
1,602
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-
すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン]
何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?…
たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。
※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける
縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は……
ゆっくりしていってね!!!
※ 現在書き直し慣行中!!!
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜
夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。
不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。
その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。
彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。
異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!?
*小説家になろうでも公開しております。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる