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第七章
244 船のダンジョン ①
しおりを挟む現在位置は、幽霊船の先頭付近である。
そこから後方部に向けて、俺たちは進む。
道中現れるモンスターは、今のところスケルトンパイレーツとゾンビパイレーツだけである。
ランクはD程度なので、配下たちの相手ではない。
ちなみに現在の隊列は、以下の通りである。
前衛
・ホブン
中衛
・レフ
後衛
・アロマ
遊撃
・アンク
他
・俺
・クモドクロ
この中で俺は、邪魔にならない程度に後方で控えている感じだ。
またクモドクロは罠があり次第解除に向かい、なければ俺の横にいる。
「ゴッブア!」
「うにゃぁ!」
「きゅいぃ!」
「ざ~こ♡」
ホブンは安定して敵を薙ぎ倒し、レフも無双状態だ。
またアロマも仲間をサポートしつつ、隙あれば死竜の角で敵を貫く。
死竜の角は刺突武器としても、かなりの能力を発揮しているみたいだ。
純粋に硬く鋭いので、ゾンビパイレーツは脳天を貫かれると途端に動かなくなる。
ゾンビ系は既に腐っていて機能しているのか微妙だが、それでも脳が弱点のようだ。
そしてアンクはアンデッド系とあまり相性は良くないものの、遊撃として頑張っている。
猛毒と麻痺それぞれの指爪は効果が見込めないので、闇属性魔法で攻撃していた。
アンデッド系は闇属性耐性を持っていることが多いし、状態異常も効きにくい。
アンクにとっては、少々厳しい戦いになるかもしれないな。
あとは、意外とアロマが好戦的な件が気になる。
以前までの戦闘に対する恐れは、あまり感じられない。
それよりも、何だか鬼気迫るものを感じる。
アロマも、何か焦っているのだろうか?
もしかしたら、このままだと置いていかれると思っているのかもしれない。
なんだか、進化前のレフを思い出す。
俺は戦う配下たちにそんな印象を抱きつつも、倒されたモンスターをストレージに収納していく。
カード化するほどではないし、これらは女王へ渡すことにする。
そうして先へと進んでいくと、幽霊船の後方までやってきた。
すると目の前には、船内へと入るための扉がある。
ホブンに開かせてみると、その先は漆黒に染まっていた。
おそらく次のエリアに繋がっていると思われるが、念のためモンスターを召喚して様子を見に行かせる。
その時選んだのは、ここでカード化したゾンビパイレーツだ。
なおゾンビパイレーツにはこのエリアのことを訊いたが、有益な情報は得られなかった。
エリアボスのような存在は、この場所にはいないとのこと。
故にここには、もう用はない。
「行って戻ってこい」
「ヴぁ」
そしてゾンビパイレーツを送り込むと、問題なく戻ってきた。
訊けばやはり、船内へと繋がっているみたいだ。
敵もいないみたいなので、俺たちも進む。
ちなみにゾンビパイレーツは、カードに戻した。
先ほどの甲板が第一エリアだとすれば、ここは第二エリアと言ったところだろうか?
見れば長い廊下が続いており、向かい合わせに無数のドアがいくつも続いている。
あとは規則正しく燭台に取り付けられたロウソクが並んでおり、タルやら道具やらが辺りには散乱していた。
また少し薄暗く天井からは、なぜか水が滴り落ちている。
雨は降っていなかったはずだが、雨漏りだろうか?
そしてなによりもダンジョンらしく、構造が拡張されていることはもちろんのこと、方向もおかしい。
入ってきた方向からして、通常目の前に長い廊下があるのはあり得ない。
この廊下の長さだと、明らかに船の後方を突き破り、海の上にこの廊下があることになってしまう。
だがまあ、これくらいダンジョンでは、よくあることだ。
なので、そこまで気にする必要はない。
逆に通常の構造だと思っていては、足元を掬われるだろう。
とりあえずは警戒しつつ、俺たちは一部屋ずつ調べることにした。
まず一部屋目を確認すると、そこは薄暗く荒れ果てた船員室である。
中には、数体のゾンビパイレーツがいた。
「ゴッブア!」
それを先頭にいたホブンが、難なく打倒す。
ふむ。使えそうなものは、特になさそうだな。
割れた空き瓶にカンテラ、その他のゴミが無数に落ちている。
更には壊れた机や椅子、二段ベッドなどもあり、おそらく海賊がこの部屋で寝泊まりしていた事が伺えた。
また壁には燭台があり、ロウソクが小さく周囲を灯している。
そして血のような赤い血痕と無数の傷が、いたるところに刻まれていた。
加えてモンスターではない、普通のガイコツも転がっている。もしかして、元居た海賊か? それとも、単なるオブジェだろうか?
それに臭いもひどく、埃と腐臭が漂っている。
何というか、雰囲気があるな。ホラー的な意味で。
また足元の板にも小さな穴が開いており、その先は見通せない闇が続いている。
床が抜けて落ちた場合、いったいどこに続いているのだろうか?
まあ、破壊してわざと落ちるのは止めとこう。
それと今更だが、こうしたゴミは持ち帰るべきだろうか?
もしかしたら、僅かでもダンジョンポイントになるかもしれない。
まあ念のため、女王に訊いてみよう。
俺は守護者の指輪を通じて、このゴミを持って帰るべきか尋ねてみた。
すると女王の返答は、持ってこなくていいとのこと。
どうやら明らかなゴミの場合、全くポイントにはならないという。
同様に呪いの品も、止めてほしいようだ。
物によっては、ダンジョンにバグが混入する可能性があるらしい。
ちなみにモンスターの素材については、基本的に問題はないようだ。
ゾンビの肉片でも、一度に大量であれば黒字になるとのこと。
細かいことは俺には分からないが、モンスターの素材と他の物品では、何か違いがあるのかもしれない。
とりあえず女王との連絡を終えると、俺はベッドなどのゴミを放置することを決めた。
またゾンビパイレーツを一体カード化して、案内役につける。
残りは、ストレージへと収納した。
「このエリアの案内を頼むぞ」
「ヴぁ?」
「は? 分からないのか?」
「ヴぁぁ……」
「そうか……」
しかし召喚したゾンビパイレーツは、案内ができないと言う。
どうやらこの船員室一つ一つが階層扱いなのか、部屋を出た先は何も知らないとのこと。
これは少々当てが外れたな。だがまあ、素材をできるだけ集めるのであれば、一部屋一部屋確かめるのも悪くはない。
それにダンジョンの構造が全く分からないというのも、それはそれで経験になるだろう。
あと気になっていた、床下の先についても訊いてみる。
だがこれについても、どうやら知らないらしい。
そもそも、訊かれたことで初めて意識をしたという。
だとすれば、そこまで重要ではない可能性がある。
そのエリアにいるモンスターは、出入り口を把握していることがほとんどだ。
またそもそもとして、床の穴は人が入れるほど大きくはない。
なので床の穴については、俺の考え過ぎだったのだろう。
そう納得した俺は、召喚したゾンビパイレーツをカードに戻す。
加えて枚数的に必要ないので、悪いと思いつつも処分をした。
守護者としてのコストが上昇する以上、こうしたちょっとしたことも必要だ。
そうしてこの船員室での用は済んだので、俺たちは部屋を出る。
とりあえず、順番に回っていくか。
俺はそう決めると、ホブンが見やすいように生活魔法の光球を浮かべる。
これで、かなり明るくなった。
敵からは目立つかもしれないが、探索がしやすくなるので背に腹は代えられない。
「よし、進んでくれ」
「ゴブッ!」
そう言って、ホブンに次の部屋へと進ませるのだった。
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