倒したモンスターをカード化!~二重取りスキルで報酬倍増! デミゴッドが行く異世界旅~

乃神レンガ

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第六章

225 ヴラシュに頼んでいたアレ

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 ギルンの挨拶の翌日、俺はヴラシュに連れられて、ある場所へと向かっていた。

 ちなみにギルンは、学力と常識がどの程度なのか判断するため、シャーリーからマンツーマンでテストを受けている。

 いきなりシャーリーに任せることになったが、本人がまんざらでもなさそうなので大丈夫だろう。

 そんなことを考えながら、ヴラシュと話しながら廊下を歩く。

「そうなんだよね。最近、やけに斥候が多いんだ。やっぱり、以前やってきた人たちの大本が、情報を流したのかもしれないね」
「であれば昨日見たやつも、そうした斥候の一人だったんだろう」
「たぶん、その通りだと思う」

 ヴラシュとの話題は、ここ数日でこのダンジョンの周辺に、怪しげな者が増えたことだ。

 今のところ裏の城下町に侵入した者はいないらしいが、それも時間の問題かもしれない。

 一応はよほどのことがない限り、普通のダンジョンとして対応するみたいだ。

 前回のように、俺が直接倒す必要はないらしい。

 女王としては現状ダンジョン運営が厳しく、侵入者は逆に来てほしいようだ。

 まあ、その原因は俺にあるので、できる限り協力はしようと思う。

 昨夜女王に、俺の維持コストが極端に上昇したことについて、追及をされた。
 
 おそらくそれは、俺が沼地のダンジョンで大量のモンスターをカード化したからだろう。

 女王はある程度俺の神授スキルについて知っているので、カード化自体を止めようとはしなかった。

 けれどもその分、ダンジョンの運営を少しでもいいので手伝ってほしいと、そう懇願こんがんされたのである。

 そのうちギルンも守護者として、雇う可能性があるかもしれない。

 であれば当然、必要なコストもその分上昇する。

 なら現状でも厳しいことを考えると、ダンジョンの運営は思ったよりもヤバいのかもしれない。

 俺も守護者となった以上、ダンジョンの利益が最大限増えるように協力するべきだろう。

 またギルンを連れてきた責任もあるし、今後もカード化を続けることは間違いない。

 それに所属しているところが赤字経営で、後々崩壊の危機に瀕したら困ると判断した。

 なので俺は女王に手伝うことを了承して、とりあえずは沼地のダンジョンで手に入れた素材等を渡している。

 おそらく多少は、ダンジョンの運営費になったことだろう。

 そういう訳で、このダンジョンを監視している斥候などは現状放置となり、同時に俺は俺なりに協力をすることになった。

 よって次に大量の侵入者がやってきたら、大部分は女王に引き渡すことにしよう。

 そうして俺は引き続きヴラシュと会話をしながら、目的地である工房のような場所にやってくる。

 この工房は、ヴラシュ専用の部屋のようだ。

 部屋は少し散らかっているが、様々な工具や素材などが置いてあった。

 ここに来たのは、ヴラシュに頼んでおいたアレを見せてもらうためである。

「ジン君、約束のアレだけど、今呼ぶから待っててね」
「ああ、わかった」

 ヴラシュはそう言うと、口笛を吹く。

 するとどこからともなく、一体のモンスターがこちらへやってきた。

 その見た目は、蜘蛛型のスケルトンという感じである。

 背中の髑髏どくろ模様が、特徴的だ。

 大きさは大玉スイカを半分にして、そこにクモの足をつけたくらいかもしれない。

「ジン君、紹介するね。これが僕が作ったモンスター。【クモドクロ】だよ」

 余程の自信作なのか、ヴラシュはキメ顔でそう言った。

 そう、俺がお願いしたのは、ヴラシュにある特徴を持ったモンスターを作ってもらう事である。

 ヴラシュはガシャドクロを作った経験があり、中々の才能の持ち主だ。

 ちなみにこのモンスターを作り出す能力は、ヴラシュの神授スキルである【不死者の友達】と関係があるらしい。

 女王と仲良くなったことで、アンデッド系のモンスターを作れるようになったみたいだ。

 最初はよく分からない神授スキルだと思ったが、潜在能力はとても高いかもしれない。

「鑑定してもいいか?」
「もちろんだよ! だってこのモンスターは、ジン君のために作ったんだからね!」
「そうか。助かる」

 ヴラシュからの了承も得られたので、俺は鑑定を発動した。

 
 種族:クモドクロ
 種族特性
【糸生成】【生命探知】【闇属性適性】
【罠感知】【罠発動】【上級罠解除】
【罠作成】【万能修復】【万能製作】
【保管庫】【上級開錠】【身体変化】
【身体操作(中)】【眷属召喚】
【逃走】【隠密】【擬態】
 
 エクストラ
【クリエイトモンスター】


 これは凄いな。いや、凄すぎる。

 見れば種族特性が、大変なことになっていた。

 種族名こそヴラシュが名付けたのかシンプルだが、その実罠関係のスペシャリストという感じだ。

「ふふっ、どう? 凄いでしょ。僕の最高傑作だよ!」

 どや顔でヴラシュが高らかにそう言うが、それだけの成果を出したのは事実だった。

「ああ、本当に凄い。いったいどうしたら、ここまでのモンスターが出来上がるんだ?」

 俺の神授スキルでは、ここまで理想的なモンスターはまず作れない。

 頼んだ要望を、想像以上に実現してくれた。

 沼地のダンジョンで斥候ゾンビを手に入れたが、元々罠系モンスターはヴラシュに頼んでいたのである。

 なので斥候ゾンビを手に入れたときは、嬉しさもあったが、同時に少し不安もあった。

 心境としては、頼んだ商品を偶然手に入れてしまった感じだろうか。

 しかしその不安も、杞憂きゆうに終わる。

 このクモドクロは斥候ゾンビが足元にも及ばないほどに、能力が優れているからだ。

 加えて、こんなエクストラスキルも所持している。


 名称:クリエイトモンスター
 効果
 ・素材になった物の質などによって、生命力や魔力、身体能力などが上昇する。
 ・製作者への危害を加えることができなくなる。
 ・知力を上昇させ、個を確立する。


 戦闘系スキルこそないものの、素の能力はかなり高そうだ。

 今後、役に立つことは間違いない。

「このクモドクロを制作するにあたって、ルミナリア女王様にも素材をたくさん提供してもらったんだ。僕もそれでつい制作に熱を上げてしまってね。種族特性にあれもこれもと、力技でどんどん追加していったんだよ。
 まあ結果として、ガシャドクロの数倍どころではないリキャストタイムが発生したけど、後悔はないよ」

 どうやら俺のオーバーレボリューションのように、一度発動すると再使用までかなりの時間が必要になるらしい。

 Bランクのガシャドクロの数倍以上となると、いったいどれくらい長く使用できなくなったのだろうか。

 それに女王にも、色々素材を出してもらったらしい。

 これは思っていた以上に、二人には借りができてしまったな。

「それはすまなかったな。だが、とてもありがたい。しかし俺が本当に貰っても良いのか?」

 これほどの傑作だ。ヴラシュとしても渡すのには躊躇ちゅうちょがあると思い、そう問いかけた。

「もちろんだよ。ジン君に渡したかったから、ここまで頑張れたんだからね。それにルミナリア女王様に渡すということは、この城のダンジョンに登録することになるからね。
 登録すると元のモンスターは消滅するし、相応のダンジョンポイントが必要になるみたいなんだ」
「なるほど」

 現状ダンジョンの運営が大変な時に、新たなモンスターを登録するのは難しいだろう。

「それに登録したモンスターを召喚できるようにするのもポイントがかかるし、設置条件や維持コストもかかるんだ。
 そして何より、登録するということは結果的にこの大陸の支配者の元にも渡るということだからね。そういう意味でも、このクモドクロは登録できないよ」

 この大陸の支配者か。宝珠を集めた先に、そいつがいるのかもしれない。

 詳しいことについてヴラシュも知らないことは、以前時間があるときに訊いていた。

 なので実際に宝珠を集めた先に行ってみなければ、その支配者については分からないままだろう。

 そんな情報の少ない状況で、このクモドクロがその支配者に渡るのは大変不味い。

 確かに戦闘能力こそ低いが、罠関係は特出している。

 他にも材料があれば様々な物を製作できるみたいであり、とても有能だ。

 そのクモドクロが相手に量産されれば、攻略難易度は跳ね上がるのは間違いない。

 コスト面での問題もあったらしいが、ダンジョンに登録しなかったことには感謝しようと思う。

 実際ヴラシュの作ったガシャドクロは、他国への侵攻にも使われていた。

 エクストラは登録時に消えたみたいだが、それでもガシャドクロは優秀な個体である。

 ガシャドクロを上手く活用しているということは、クモドクロも間違いなく使うはずだろう。

 なのでそれを未然に防げたことは、とても大きい。

「それなら、俺が受け取っても問題はなさそうだな。ヴラシュ、改めて言うが、本当に助かる。ありがとう」
「うん! 僕もジン君の助けになれたようで、何よりだよ! このクモドクロのことを、どうかよろしくね!」
「ああ、もちろんだ」

 そうして俺は、ヴラシュからクモドクロを受け取るのだった。

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