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第六章
204 沼地のダンジョン ②
しおりを挟むこの大陸では珍しく、ペストモスキートはアンデッドではない。
なので生命感知に引っかかり、見つけるのは容易だった。
そうしてペストモスキートの群れを見つけては、リーフェの活躍で楽にカード化をしていく。
枚数もだいぶ集まり、もう少しで1,000枚に届きそうである。
だがそんな探索のさなか、俺たちはとあるモンスターと遭遇をした。
それは直径二メートルほどはあろう、巨大な蚊である。
見た目はペストモスキートとそっくりであるが、その複眼が赤く光っていた。
俺はそのモンスターに対して、鑑定を発動する。
種族:ルーラーモスキート
種族特性
【闇属性適性】【闇属性耐性(小)】
【吸血】【血液探知】【疫病攻撃】
【疫病耐性(小)】【ゾンビ化液生成】
【ゾンビ支配】
エクストラ
【エリアボス】
スキル
【巨大化】【飛行】
【集団指揮】【集団招集】
【シャドーニードル】
こいつは……。
どうやらこのルーラーモスキートは、浅層のエリアボスのようである。
またゾンビ化液生成という、名称からしてヤバそうなスキルを持っていた。
その効果は生前に取り込ませることによって、死後にゾンビ化するというもの。
加えてゾンビ支配というスキルからも分かる通り、ルーラーモスキートの周囲にはその配下が大量にいた。
種族:ゾンビモスキート
種族特性
【闇属性適性】【生命探知】【吸血】
【疫病攻撃】【疫病耐性(小)】
【身体能力上昇(小)】
◆
種族:ゾンビスラッグ
種族特性
【生命探知】【悪臭】
【腐敗耐性(小)】【分裂増殖】
ペストモスキートがアンデッドではなかったことを意外だと思っていたが、それはこうした理由があったからか。
それにロットスラッグも、同じようにゾンビ化している。
ゾンビ化してもたいして能力は強化されていないが、その悪臭は離れていても届いてきた。
もしかしたら悪臭のスキル効果が、ゾンビ化したことで向上しているのかもしれない。
そして最も厄介そうなのは、ルーラーモスキートの周囲に、四体の人型ゾンビがいることだろう。
おそらく元は、四人組の冒険者だったのかもしれない。
俺はその詳細が気になり、鑑定で確かめてみる。
種族:ハイゾンビ
種族特性
【生命探知】【闇属性適性】
【身体能力上昇(小)】【毒爪】
スキル
【剣適性】【連撃】
【気配感知】
◆
種族:ハイゾンビ
種族特性
【生命探知】【闇属性適性】
【身体能力上昇(小)】【毒爪】
スキル
【短剣適性】【罠感知】
【中級罠解除】
◆
種族:ゾンビソーサラー
種族特性
【生命探知】【闇属性適性】【闇属性耐性(小)】
【シャドーニードル】【マナドレイン】
【魔力上昇(小)】
スキル
【水属性適性】【ウォーターランス】
【精神耐性(小)】
◆
種族:ゾンビアコライト
種族特性
【生命探知】【闇癒属性適性】
【闇属性耐性(小)】【マナドレイン】
【シャドーニードル】【ダークヒール】
スキル
【キュア】【マインドヒール】
【自然魔力回復量上昇(小)】
驚くことに、この大陸ではまず見かけないユニーク個体だった。
それと思った通り、このダンジョンに来た冒険者の成れの果てのようである。
スキル構成からして、剣士、斥候、魔法使い、僧侶とバランスが取れていた。
スキル数が少ないのが気になるところだが、それは何か理由があるのかもしれない。
この四名は生きながらにしてゾンビ化液を注入され、死後にゾンビ化したのだろう。
そして今では、ルーラーモスキートに支配されている。
気の毒なことではあるが、俺はこれを見て多少なりとも嬉しく思ってしまった。
なぜならゾンビ化していることで、この四人をカード化できるかもしれないと考えたからである。
モンスターになっている以上、カード化できる可能性は十分にあった。
そんな配下たちに守られているルーラーモスキートは、現在沼地を進んでいる。
俺たちはその群れの側面におり、距離もそれなりに離れていた。
現状まだ気がつかれていないみたいだが、しかしそれも時間の問題だろう。
するとそう思った直後、気配感知を持つハイゾンビが俺たちを指さす。
生命探知は自分で探る方向を決める必要があるが、気配感知は全方位を自動で探る。
なので俺たちに気がつくのも、まあ当然だろう。それは分っていたことだ。
けれどもそれに対して、慌てる必要はない。なぜならこちらは既に、準備を終えている。
そんな俺は今、カオスアーマーを纏っていた。
加えて角には、大量の魔力が集まっている。
そう、ルーラーモスキートのゾンビ化液生成の効果を見た瞬間から、俺はカオスアーマーを発動して、魔力を溜めていた。
万が一配下にゾンビ化液を注入された場合、どうなるか分からなかったからだ。
配下の戦闘経験は、他で積ませればいい。
故に俺は、ここで一気に決めることにした。
角に集めた魔力を拳に移動させると、俺はルーラーモスキートへと目掛けて、魔力玉を解き放つ。
「喰らえ」
そうして解き放った魔力玉は、物凄い速度で対象へと向かう。
ルーラーモスキートも魔力玉から発する異様な威圧を肌で感じたのか、流石に気がついたようだ。
けれども、気がついたときにはもう遅い。
「!!!???」
回避する暇もなく、魔力玉はルーラーモスキートへと着弾した。
そして着弾と共に、巨大な爆発が発生する。
また沼の汚泥が、上空へと吹きあがった。
周囲のゾンビたちも巻き込み、辺り一帯を壊滅させる。
魔力玉は以前試した時よりも小規模ではあるものの、やはりとてつもない威力だった。
推定Cランクだと思われるルーラーモスキートが、この攻撃に絶えられるはずもない。
周囲のゾンビ共を含めて、一掃される。
爆心地には汚泥の雨が降り、そこには僅かな残骸が散らばるばかりだった。
これ、問題なくカード化できるのだろうか?
やり過ぎてしまったかもしれないと、俺は後から少々不安になる。
だがそんな俺の気持ちとは裏腹に、配下たちが嬉しそうに近寄ってきた。
「ふええっ、さすごしゅ~」
「だーりん、ぱないっ」
「ギギギ!」
「にゃふふん!」
リーフェとアンクは驚きのあまりそう口走り、サンも賞賛の声を上げる。
そしてサンに抱きかかえられているレフは、何故か自慢げだ。
ちなみに魔力玉を放つとき危ないので、レフは一時的にサンに預けていた感じである。
なので危険が過ぎ去れば、跳躍して俺の肩に戻ってきた。
変わらず子猫サイズなので、そこまで邪魔にはならない。
「よし、無事に倒せたみたいだな。お前ら、残党狩りに行くぞ」
「は、はい!」
「ガァ、かしこま!」
「ギギ!」
「にゃにゃん!」
俺はそう言って、ルーラーモスキートがいた場所へと向かう。
そして向かったはいいものの、ほとんど残党はいない。
残っていても、死にかけがほとんどである。結果難なく、敵の殲滅が完了した。
しかしその時不思議なのは、ルーラーモスキートがいたと思われる場所に、無傷の宝箱が鎮座していたことである。
これはおそらく、エリアボスを倒したことによる報酬だろう。
ボス撃破後の宝箱は、塔のダンジョンでもあったので納得できた。
だが宝箱の中身よりも先に、まずはするべきことがある。
それはもちろん、モンスターのカード化だ。
魔力玉でほとんど吹き飛んでしまったが、果たして大丈夫だろうか?
そう思いながらも、俺はなるべく広範囲を意識してカード化を試みる。
すると俺の不安は杞憂であったみたいであり、光の粒子が俺の元へ集まってきた。
そして光の粒子は大量のカードとなって、俺の両手に収まる。
思っていた通り、凄い量だ。
俺は無事にカード化できたことに笑みを浮かべながらも、内容を精査していく。
そうして結果として俺は、以下のカードを手にした。
・ルーラーモスキート 1枚
・ゾンビモスキート 312枚
・ゾンビスラッグ 169枚
・ハイゾンビ(ユニーク個体) 2枚
・ゾンビソーサラー(ユニーク個体) 1枚
・ゾンビアコライト(ユニーク個体) 1枚
合計486枚
やはり、結構な数になったな。
それと、ルーラーモスキートがゾンビ化したモンスターをカード化できたことが、かなり嬉しい。
これは色々と、今後実験をする必要がありそうだ。
そう思いつつも、俺は今カード化したばかりのハイゾンビを召喚する。
種族:ハイゾンビ
種族特性
【生命探知】【闇属性適性】
【身体能力上昇(小)】【毒爪】
スキル
【短剣適性】【罠感知】
【中級罠解除】
スキルを見れば分かる通り、生前は斥候だったと思われる男だ。
全体的に茶色い軽鎧をしており、所々破損しておりボロボロである。
一応、色々訊いてみるか。
「生前の記憶はあるか?」
「ヴぁ~?」
どうやら、生前の記憶は無いらしい。
これはある意味、転生なのだろうか?
それとも生前の魂は無くなっており、新たにモンスターの魂的なものが宿ったのだろうか?
う~む。これは、何とも言えないな。
とりあえず今は、問題なくカード化できたことに満足しておこう。
さて、せっかくの斥候職だし、宝箱を開けさせるか。
「そこの宝箱に罠が無いか、確認をしてくれ」
俺が命じると、ハイゾンビは宝箱に罠がないかを確認し始める。
「ヴぁ~!」
どうやら、罠の類はないらしい。
まあ、ボス討伐後の宝箱に罠は無い気がするが、念のため確認をさせた。
そうして罠が無いことが判明したので、宝箱を開けさせる。
結果宝箱の中に入っていたのは、指輪が一つだけ。
名称:耐病の指輪(中級)
説明
装備している間、病気耐性(中)を得る。
ふむ。俺的にハズレだが、欲しがる者は多いだろうな。
病気に耐性ができるというのは、それだけで価値がある。
中耐性ともなれば、おそらく大抵の病気にはかからないだろう。
とりあえず、これはストレージの奥へとしまっておく。
しかし思わぬところで、念願の罠解除と罠感知を持つ配下を手に入れてしまった。
予想外の展開だったが、まあ良しとしよう。
だが気になるのは、斥候なら開錠のスキルを持っているはずだ。
他のゾンビたちもスキルが三つだけだったし、もしかしたらゾンビ化するとスキルが消えるのかもしれない。
適性系が多いことから、十歳の時に与えられるスキルが優先して残るのだろう。
未だにスキルオーブで、適性系スキルを習得できる物は見たことがない。
なのでこの推察は、そこまで外れてはいない気がする。
まあ罠解除系のスキルが残っているだけでも、ありがたいと思うことにしよう。
幸い開錠に関しては、魔法の鍵がある。
俺はそう考えると、道中の罠用に召喚していたスケルトンたちをカードへと戻す。
これからは、このハイゾンビに道中の罠を確認させることにする。
さて、これでダンジョン探索を再開してもいいのだが、簡単に確認できることは先に済ませておこう。
俺はそう思い、ルーラーモスキートを召喚するのだった。
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