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第五章
180 塔からの帰還
しおりを挟む狩りも終わったので、俺はカードの確認に移る。
現状この塔で出現したDランク以上の所持カード枚数は、以下の通りになった。
【Dランク】
スケルトンアーチャー 500枚
スケルトンソードマン 500枚
スケルトンソーサラー 500枚
ハイゾンビ 20枚
【Cランク】
スケルトンナイト 100枚 (一枚はボス個体)
ノーブルゾンビ 10枚
アーマーゾンビ 100枚
ボーンリザード 100枚
【Aランク】
ボーンドラゴン 1枚
まずハイゾンビとノーブルゾンビは、そこまで必要ないので増やしてはいない。
ハイゾンビは各種スケルトン系がいるので、不要だろう。
ノーブルゾンビも、指揮系はスケルトンナイトがいるので必要はない。
なにより、ゾンビ系は臭いのだ。大量にいると、嗅覚が大変なことになる。
ちなみにアーマーゾンビは、一撃が強いので採用した感じだ。
けれどもやはり、腐った臭いは強烈である。
隠密には全く向かないので、その点は注意しよう。
またレフなど嗅覚のある配下と一緒に使うのは、止めた方がいいかもしれない。
実際レフなどは、ゾンビ系に近づくことをかなり嫌がっている。
そうした理由などもあって、ゾンビ系はアーマーゾンビのような強さが無ければ、大量に揃えるのは難しい。
なので同じアンデッドなら、臭くないスケルトン系を選択するのは仕方がないのである。
手に入れたカードを確認して、俺はそんなことを思った。
まあ何はともあれ、これで軍団としてはかなり成長できただろう。
しかしその成長と引き替えに、一つ問題も起きたのも事実か。
それはカードが一気に増えたことで、俺の容量が残り半分を切ったことである。
何となく感覚で、それが分かった。
強いモンスターほど、一枚辺りのコストが重い。
Aランクのボーンドラゴンは当然として、DランクとCランクが数百枚単位で増えたのも原因だ。
今後魔力が増えることで容量を増やせるとは思うが、無暗にカード化するのは止めた方がいいだろう。
なので取捨選択をして、いらないカードは取得する度にできるだけ消していった方がいいと思われる。
今は大丈夫だが、いずれ全く使わないカードも容量確保のために、ある程度の枚数を残して消すこともあり得た。
何だかんだでこの大陸では、これからもカード化していくと思うので、そんな日は案外近いかもしれない。
そうして狩りを終えた俺は、瞬間転移で一度拠点へと帰還するのだった。
◆
なんだか、久々に帰ってきた気がする。
宝珠が指し示す場所はまだ見つけていないみたいだし、今は待つしかない。
この大陸は、思った以上に広大だ。
もしかしたらリジャンシャン樹海の小さな国境門の先も、案外この大陸なのかもしれない。
だとすればこの大陸のどこかに、ゲヘナデモクレスがいる可能性がある。
不意に遭遇したら、面倒なことになるだろう。
いずれ戦うつもりだが、まだ少し早い。
それに今は、宝珠を集める方が先決だ。
四つ集めた先に何が待っているのかは不明だが、早い者勝ちの可能性がある。
であれば、時間的制限のないゲヘナデモクレスを後回しにしても、問題はないだろう。
ん? 何か一瞬寒気がしたが……気のせいか? 俺も、疲れているのかもしれない。
次はいつ休めるのか不明なので、時間がある今の内に休んでおくことにしよう。
そう思い俺は死竜の鎧をストレージに収納して、ラフな服装になる。
死竜の鎧は見た目より楽だが、流石に脱いだ時には敵わない。
まあ、周囲の温度が極端であれば、調整してくれるので逆に死竜の鎧
を着た方が快適な場合もある。
しかしこの拠点内では、少し肌寒い程度なので問題はない。
俺は暖炉に火をつけると、専用の鍋をその上に吊るす。
そして水を入れると、在庫が少なくなったマッドクラブを投入した。
今日は久しぶりに、豪勢にしよう。
赤く茹で上がったマッドクラブを取り出し、旨味が濃縮された湯を元にスープも作る。
他にはダークエルフの村で購入した、モスボールのサラダを出しておく。
最後にパンを取り出せば、完成だ。
レフと共に食事を摂り、マッドクラブの旨さに舌鼓を打つ。
やはり、マッドクラブは旨いな。
どこかに生息していないだろうか? この大陸だと……まあ無理だろうな。
そうして久しぶりに満足いく食事を終えると、生活魔法の清潔で体を清める。
流石に今から浴槽ごと風呂を用意するのは、かなり面倒だ。
時間に余裕があれば、拠点を拡張するのもアリだろう。
現状、この洞窟が元に戻る様子はない。
であればそれを気にしなくてもいいし、拡張しても大丈夫だろう。
そして食器類や鍋の片づけを済ませると、俺はベッドで横になった。
すごいな、ふかふかだ。
流石は、領主の館にあったベッドである。
「にゃにゃにゃ」
レフも縮小を調節して、俺の枕になった。
やわらかいお腹と、触り心地の良い毛が枕として最高だ。
抱き枕としてアロマを召喚すると、何やらアンクも出せという。
なので仕方なく、アンクも召喚した。
「ガァ。羽毛布団、だょ」
「そうか」
アンクがそう言って、俺の左脇あたりに陣取る。
「きゅいきゅい!」
すると次は、アロマが俺の右脇あたりにくっつく。
温かいな。
ちなみにアロマに渡した角は、危ないので就寝している時は外している。
なので角を気にせずに、ゆっくり眠ることができそうだ。
「にゃ~ん」
最後にレフがそう鳴いて、俺の顔をぺろりと舐める。
寝る前のあいさつだろうか? お返しに軽く頭を撫でてやると、レフは喜ぶ。
するとアンクとアロマも撫でろと意思表示をするので、どちらも撫でておいた。
そうして時間が流れ、俺は眠りにつく。
これから、忙しくなりそうだ。
◆ ◆ ◆
ベッドで眠りにつくジンを、覗き見る存在がいた。
「ぐぬぬ、あの畜生どもめ! 貴様らの天下も今の内だけだ!」
そう、ゲヘナデモクレスである。
以前カルトスが持っていた神授スキル、全知の追跡者の効果で常にジンの動向を確認していた。
「あのワニ公など出さず、我を召喚すればいいものを……。ぐっ、召喚回数を三回としたのが、裏目に出たか……しかし、あの指輪の効果はあれが限界……ぐぬぬ」
そう言って誰もいない小屋の中で、ゲヘナデモクレスは唸る。
ゲヘナデモクレスは塔のダンジョンでの出来事も、当然覗いていた。
ジンの配下たちが皆活躍する中で、自分だけがハブられたような気持である。
仲間に入りたいが、今更これまでのキャラを覆すことなど、できるはずもない。
「くっ、あの時の我は、どうしてあのような言動をしてしまったのだ……」
後悔しても仕方がない。生まれた直後のゲヘナデモクレスにそのような考えを求めても、土台無理な話だ。
なので、ゲヘナデモクレスは考える。どうすれば、ジンが再び召喚してくれるのかと。
「強敵だ。主が我を呼ぶほどの強敵が必要だ」
故にそのような答えに、ゲヘナデモクレスは辿り着く。
しかしジンが窮地に陥るような強敵など、中々いない。
だがその時、ゲヘナデモクレスはあることを思い出す。
「確か主のいた塔から、謎の四人組が空を飛んでいたな……ふむ」
その時塔の近くに潜んでいたゲヘナデモクレスは、高速で空を飛ぶ四人の冒険者たちを目撃していた。
確認出来たのはほんの僅かだったが、中々の強者だとゲヘナデモクレスも感じている。
「ふはは、名案を思いついたぞ! こうしてはいられない、早速動くとしよう!」
そしてゲヘナデモクレスはひとつの迷案を思いつき、小屋から飛び出した。
当然それはジンとって迷惑極まりないことだが、ゲヘナデモクレスは大真面目である。
「何かあれば、我が助けに入れば問題ない! むしろ、その方が良い! 主よ待っていよ! そして我無しでは、いられなくさせてみせよう! ふははは!」
そうして荒れ地を駆けるゲヘナデモクレスの笑い声が、周囲に響き渡るのであった。
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