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第四章
153 カオスアーマー
しおりを挟む全能感が、凄い。
まず初めに感じたのは、体中から力が漲るという事だった。
ゲヘナデモクレスを装備した時と、似た感じである。
これは、身体能力も全体的に上昇していることだろう。
そして気になる見た目を確認するために、いつものように氷鏡を作り出す。
だが魔法の出力も上昇しているのか、巨大な氷鏡が出来上がる。
凄い威力だ。生活魔法でこのレベルだとすれば、攻撃系の上位魔法であればかなりのものになるだろう。
そう思いながらも、俺は氷鏡に映った姿を確認する。
まず漆黒の全身鎧というのには、以前と変わらない。
所々に、赤い線が走っているのも同様だ。
大きく違うのは、後方へと捻じれた二本の角がある事だろうか。
加えて蛇腹剣、連接剣という名称の剣を彷彿とさせるような、尻尾があった。
この尻尾は自在に操ることができて、自由に伸ばすことができる。
また意外と太く、先は鋭い。
突き刺すだけではなく、直接敵を薙ぎ払うのにも使えそうだ。
あとは他にも肩当てが増えており、一見邪魔そうに見える。
だが腕を回しても違和感がなく、阻害されている様子はない。
そして全体的な雰囲気は、禍々しい感じだ。
魔王と言われても、遜色はないだろう。
サンを横に置けば、より説得感が増す。
更に身長も2m程になっており、迫力があった。
しかしこの身長では、愛用している緑斬のウィンドソードが体に合いそうにはない。
何か専用の武器を、他に用意した方がいいだろう。
それと武器といえば、シャドーネイルは問題なく発動する。
全ての指から生やすことができ、長さや太さも自由自在だ。
軽く近くの岩に当ててみれば、バターのように切れて線が入る。
切れ味は、以前よりも断然増していた。
これは、下手な武器を持っても仕方がなさそうである。
専用の武器はそれこそ、高位の武器が必要だろう。
またシャドーアーマーと同様に、身につけていた装備は一時的な異空間に保管されているみたいだ。
それで驚いたのは、保管されている装備の効果が適応されていたことである。
防具や装飾品の効果はもちろんのこと、緑斬のウィンドソードも同様だった。
つまり、ウィンドやウィンドカッターが発動できることになる。
異空間に追加で物を収納することは不可能なようだが、これは大きな利点だろう。
さて、何か他にも効果が隠されているかもしれない。
そう思ってシャドーネイルのようなものがないか、探してみる。
すると尻尾、肩当て、角に反応があった。
まず尻尾に魔力を送ってみると、尻尾の先端が光る。
試しに岩に向かって尻尾を伸ばすと、簡単に岩を貫通した。
加えてそれだけに留まらず、尻尾がどこまでも伸びていく。
これなら、中距離相手にも攻撃が可能だろう。
だが伸ばし過ぎたらそれが隙になりそうなので、長距離相手への使用は難しそうだ。
そして次の肩当てだが、魔力を送ると背中に漆黒のマントが現れる。
よく見れば若干透き通っており、実体はなさそうだ。
闇の光にも見える。
いったいこのマントには、どのような効果があるのだろうか。
そう思い意識を向けると、突然の浮遊感が発生する。
下を見れば、俺は浮いていた。
なるほど。このマントがあれば、空を飛べるのか。
そう理解した途端、俺の意識を汲み取って、思い通りに空を飛ぶことができた。
魔力を込めれば込めるほど、速度が上昇するみたいである。
これは、凄いな。
空を飛べるだけで、戦闘の幅は大きく変わる。
カオスアーマーは、想像以上に優秀だ。
それにもかかわらず、あと一つ隠し効果が存在している。
どのような効果なのかワクワクしながら、俺は最後の一つ、角に魔力を集め始めた。
ん? 何も起きないな。
しかし魔力を込めても、一向に何も起きない。
だが魔力は問題なく集まっているので、構わずどんどん魔力を込めていく。
すると次第に、角へと黒い雷のようなものが走り始める。
同時に莫大な力が、角から産み出されているのを俺も感じ取った。
まずいっ。
今にも暴発しそうなそれに、俺は慌てる。
咄嗟に動かせないか意識を向けると、角に集まった力は鎧を通って、右の拳に移動した。
なるほど。これを放てという事だな。
そう理解した俺は上空で集中力を高め、前方に放つように拳を突き出した。
すると拳から黒色の魔力玉が放たれ、目にも留まらぬ速度で飛んでいく。
そして遠くの地面に着弾するのと同時に、大規模な爆発が発生した。
「グッ!?」
気がつけば、巨大なクレーターが荒野に生まれる。
何という威力だ……。
あのまま魔力を溜めていたら、暴発していたかもしれない。
強力だが、危険な技だ。
それに、体から一気に魔力が失われた。連射も難しいだろう。
けれどもこの技は、俺の切り札の一つになる事は間違いない
溜める時に隙ができるが、決まれば大きな成果を上げられるはずだ。
現状カオスアーマーには、近距離のシャドーネイル、中近距離の尻尾、そして長距離の魔力玉。加えて飛行可能な漆黒のマントが基本能力で備わっている。
更にカオスアーマーは発動中、次の効果も得られた。
・闇冥属性耐性(極大)を得る。
・闇冥属性の効果上昇(極大)
・闇冥属性の消費魔力減少(大)
・あらゆる闇を見通すことが可能になる。
・敵の聖なる者に弱体(小)を与える。
・味方の闇に連なる者に強化(小)を与える。
流石は最終強化の、超級スキルということだろう。
超級鑑定妨害があることから分かる通り、スキルは下級・中級・上級・超級に分けられる。
カオスアーマーはその区分だと、超級という訳だ。
だが思うに超級スキルの中でも、カオスアーマーは上位のスキルだろう。
ここまで凄いスキルは、最早神授スキルに近いかもしれない。
そう思いながら、俺はゆっくりと地面へと下りる。
続いて味方の闇に連なる者に強化(小)を与えるというのを確認するために、コボルトを召喚した。
ちなみにゴブリンではないのは、既に全て倒してしまったからである。
そしてサンに命じて戦わせてみると、明らかに先ほどよりも動きが良い。
全能力が上昇していた。
といっても(小)なので、大きな上昇ではないが。
けれども戦いでは、この小さな強化が馬鹿にならない。
更に召喚した数多くのモンスターにこの強化が行き届けば、凶悪そのものだろう。
まあ闇に連なる者という括りがあるので、対象は限られてしまうが。
「にゃあっ!」
見ればレフも、強化されていることを実感しているみたいである。
やはり闇に連なる者というのは、闇属性適性の事だったのだろう。
試しにスケルトンやジャイアントバットなど召喚してみるが、強化されている雰囲気はない。
スケルトンは見た目からして強化されそうなだけに、残念だ。
さて、カオスアーマーの確認は、これくらいでいいだろう。
現状の欠点は、魔力の消費が馬鹿にならないことだろうか。
戦闘中は他にも魔力を使うし、長期戦には向いていなさそうだ。
だとすればカオスアーマーは、基本短期決戦や切り札として運用するべきだろう。
なのでこれまでのシャドーアーマーと、使い方はそこまで変わらない感じだ。
そうしてレフ以外のモンスターをカードに戻すと、俺は一旦宿へと戻る。
とりあえず確認したいことは大体処理出来たと思うが、他に何かあっただろうか?
……そういえば、これがあったな。
俺はため息を吐くと、ストレージからある物を取り出した。
それは、ユグドラシルから渡された籠である。
中には、ユグドラシルの果実と種が無数に入っていた。
友好の印に貰ったが、どうにも裏がありそうなんだよな。
とりあえず、鑑定してみよう。
そう思い俺は、ユグドラシルの果実と種に鑑定を発動するのだった。
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