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第四章
142 フェアリーから貴重な情報を得る
しおりを挟む「主様、何なりとご命令ください!」
「主様のために頑張ります!」
「全ては主様のために!」
分かっていたことだが、カード化すると俺に絶対服従である。
これまで言葉を話すモンスターはゲヘナデモクレスくらいだったが、アレは例外だ。
一応他のモンスターたちとは直接話はできずとも、意思疎通は出来ていた。
だがこのように言葉を話す相手だと、より一層カード化のヤバさが分かる。
けれども俺にとっては、便利な事に違いはない。
今更考えても仕方が無いことだし、有効活用させてもらおう。
俺は早速悪いフェアリー、いや、もう俺の配下だし元悪いフェアリーか。
元悪いフェアリーたちに、色々と気になる事を訊いてみた。
結果として、重要なことがいくつか判明した。
まずあの巨大な木は、”ユグドラシル”というらしい。
加えてそのユグドラシルは、自称ハイエルフの一人である”エリシャ”という老婆が創り出したみたいだ。
転移者は若者が多いと思っていただけに、老婆という事に驚いた。
そのエリシャという老婆の力で、あちら側のフェアリーたちは補助スキルの制限などの影響を受けないらしい。
また他の転移者についてだが、ボンバーはやはり嫌われ者で、フェアリーたちは近づかないようにしていたようだ。
どうやら一時期、爆発鬼という非道な遊びを強制させられたとのこと。
ルールは鬼ごっこと変わりないが、制限時間が来るとその鬼は爆死するらしい。
だが他の転移者に止められたことで、爆発鬼はしなくなったみたいだ。
特に”ルフルフ”という女性は、転移者の中でも優しいらしい。
弓が得意みたいだが、詳しい神授スキルについては情報を得られなかった。
またボンバーの相棒には、カルトスという男がいる。
最初はお菓子などをくれたのでフェアリーたちにも人気があったが、後に本性を現した。
何人かのフェアリーが、カルトスという男にイタズラされたらしい。
加えて口止めもされていた事もあり、ルフルフが気が付くまで被害が出続けたようだ。
そんなカルトスという男の神授スキルも、不明である。
だが雰囲気からして斥候系のようで、また悪知恵が回るらしい。
こうしたタイプが一番面倒な感じがするので、どうにか消しておきたいところだ。
あと転移者には、”エルオ”という男もいるとのこと。
このエルオについては、何をしているのか全く知らないらしい。
ただエルフにしては珍しく、太っていて顔も醜いようだ。
またフェアリーたちにはよく威張り散らしていて、罵声を浴びせてくる人物とのこと。
それなのにボンバーなどには、やけにへこへこしていたらしい。
加えて何度もルフルフにナンパしては、振られているようだ。
訊いた印象からは、分かりやすいダメな人間という感じの人物である。
そして肝心な自称ハイエルフの女王についてだが、ほとんど分からなかった。
人目に出てくることがほとんど無く、また限られた人物しか会えないみたいだ。
どうやらクイーンフェアリーから、能力を奪ったという事しか知らないようである。
とりあえず以上が、自称ハイエルフの一味について分かったことだ。
情報を纏めると、以下の通りになる。
【能力を奪う女王】
・ティニア・ユグレイア
【ユグドラシルを創り出した老婆】
・エリシャ
【弓が得意でフェアリーに優しい少女】
・ルフルフ
【既に倒した戦闘能力の高い男】
・ボンバー
【知恵の回る斥候っぽい男】
・カルトス
【何をしているのか不明な男】
・エルオ
合計六人。
倒したボンバーを除けば、転移者があと五人いることになる。
一か所にこれほど多くの転移者が集まっていることに、驚きを隠せない。
もしかしたらこの元悪いフェアリーたちが知らないだけで、他にもいる可能性がある。
これは想像していた以上に、ヤバイ相手かもしれない。
そして現状この森に残っている自称ハイエルフについてだが、訊いたところによるとこのような感じだった。
・ティニア・ユグレイア→おそらく城の奥にいる。
・エリシャ→基本ユグドラシルの洞の中にいる。
・ルフルフ→エルフを率いて侵攻しに行った。
・ボンバー→死亡済み。
・カルトス→不明。
・エルオ→村で普通に若い女のエルフをナンパしていた。
この中で気になるのは、元悪いフェアリーたちも知らないカルトスの行方だな。
斥候みたいだし、案外侵攻するときに行った可能性がある。
それとも、女王の護衛をしているのだろうか?
カルトスの現在地によって、この先大きく事態が変わりそうだ。
願わくば、不在であることを祈るしかない。
ちなみにユグドラシルから少し離れた場所に城があり、その手前には村があるようだ。
元々はフェアリーたちの村があったみたいだが、今は普通のエルフたちの住居などが並んでいるとのこと。
であるならば村を迂回して、直接城に乗り込んだ方が良さそうだ。
村には転移者のエルオがいるらしいが、下手に戦って気が付かれる方が面倒になる。
最短で女王のところまで行き、決着を付けるべきだろう。
ユグドラシルの洞は城から多少距離があるみたいなので、エリシャという老婆と出会う可能性は低い。
これは意外と、なんとかなりそうだ。
といっても、その女王が油断できる相手ではない。
そこにカルトスが加われば、勝率は極端に落ちるだろう。
転移者が二人以上の場合、初手でゲヘナデモクレスを出すことにする。
切り札はここぞという場面で出すべきだが、出す前にやられては話にならない。
しかし今後のことも考えて、ゲヘナデモクレスの召喚を温存しておきたいのも事実だ。
これから自称ハイエルフたち以上の転移者と出会う事も、あり得るからな。
そして他にも、重要な情報を手に入れた。
何とユグドラシルから南に行ったところに、小さな国境門があるらしい。
しかも開いており、向こうの国と取引をしているようだ。
詳しい取引内容は知らないみたいだが、捕まえた善良なフェアリーたちを売っているとのこと。
なので村の牢屋には、あまり善良なフェアリーたちが残っていないらしい。
近頃では、自然発生したばかりのフェアリーを捕まえて売っているようだ。
また成績が著しく悪いフェアリーも、他国に売られてしまうという。
なるほど。国境門があるのも、侵攻を決めた理由かもしれない。
他国から補給できるのは、十分強みになる。
それに国境門があるということは、その周辺の守りを固める必要があるだろう。
貿易相手とはいえ、油断はできない。
であるならば侵攻で減った兵力を、更にそちらに割いている可能性がある。
加えてユグドラシルの重要度によっては、そこにも兵がいるだろう。
そう考えると、城の守りは最低限かもしれない。
もちろん油断はできないが、難易度は下がっているはずだ。
加えて敵もまさか、味方からここまで情報が短期間に漏れているとは、流石に気づかないだろう。
俺もカード化した元悪いフェアリーたちから、ここまでの情報を得られるとは思ってもみなかった。
そうして俺は早速元悪いフェアリーたちに道案内を頼もうと考えたとき、ふとあることを思い出す。
ユグドラシルから一定の範囲内では、補助系スキルなどに影響が出るんだったな……。
ただし攻撃系・耐性系・上昇系・適性系・特殊な系統スキルなどは、影響を受けないらしい。
だが俺の場合、ストレージ・鑑定・偽装・軍団行動・軍団指揮・超級鑑定妨害・全感共有・以心伝心+・召喚転移が対象のようだ。
補助系以外にも、それに近い役に立つスキルもダメなようである。
流石にここまでのハンデを背負って女王と戦うのは、自殺行為だろう。
これは城に乗り込むよりも先に、ユグドラシルをどうにかするべきだな。
エリシャという老婆を倒せば、このデバフは消える気がする。
ただ老婆を倒すのは、少々罪悪感がしてしまう。
だが今更止まる訳にもいかないし、偽善者ぶっても仕方がない。
転移者と戦う以上、覚悟を決めよう。
そうして俺は元悪いフェアリーたちの案内の元、ユグドラシルに向けて進み始めるのであった。
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