倒したモンスターをカード化!~二重取りスキルで報酬倍増! デミゴッドが行く異世界旅~

乃神レンガ

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第四章

136 裏で動いていた作戦

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「い、いったい何が……?」

 ギルドマスターがそう呟き、呆然ぼうぜんとしている。

 それは周囲も同様であり、何が起きたのか理解するのに時間がかかっているようだ。

 まあ絶体絶命かと思ったら、どこからともなく溶岩の龍がやってきた訳だからな。

 混乱するのも無理はない。

 それと訓練場の外から、様子を見ているダークエルフたちもいる。

 あれだけ派手に戦えば、当然だろう。

 それから数十秒間沈黙が続いたが、ボンバーが死亡したことをようやく受け入れたらしい。

「や、やった。やったんだ……」

 誰かがそう言ったのを皮切りに、冒険者たちが声を上げ始める。

「生き残ったんだ!」
「あのクソったれは死んだに違いない!」
「やったぞ! 奇跡だ!」
「助かった!」
「ボンバーめ! ざまあみろ!」

 そのほとんどは、生き残ったことによる歓喜とボンバーへの罵声に満ちていた。

 だが当然、あの溶岩の龍は何だったのかという疑問が湧き上がる。

「あの炎は、何だったんだ?」
「炎? 溶岩じゃないのか? 前に本で見たことがある」
「いや、あれはモンスターだ。顔もあったし、あいつが避けても逃がさなかっただろ」
「だが奴と共に消えたぞ? 何か凄いスキルだったんじゃないか?
「ならそのスキルを発動したのは、いったい誰になる?」
「方向からして、村の外れから現れたぞ」

 などと、議論し始めた。

 だが、喜んでばかりもいられない。

「お前たち! 今はそれよりも、怪我人の治療を優先しないか!」

 するとギルドマスターの一言により、冒険者たちが動き出す。

 ほとんどは即死だったが、息のある者もいる。

 ポーションや回復魔法を使える冒険者が、治療を始めた。

 しかし怪我の状態がひどく、現状の治療では助かりそうにない者も多数いる。

 だがそうだとしても、簡単には移動できない理由があった。

 周囲には、ボンバーが残した地雷があるかもしれないからだ。

 ボンバーの死亡と同時に消えている可能性もあるが、逆に残っている可能性もある。

 踏めばただでは済まないので、移動することが出来ないのだ。

 また先ほどの戦闘では、魔法などで起動したものは一切ない。

 直接踏んで確かめるしか、現状方法が無かった。

 ここは少し、手助けをしておこう。

 既にサモナーというのは知られているし、問題はない。

 俺はそう思い、ファングハイエナを一匹召喚する。

「ジン君?」

 突然モンスターを召喚したことに、ルビスが疑問の声を上げた。

 だがそれをあえて無視して、俺はファングハイエナに命令を下す。

「いけ。ギルドまでの道を確保するんだ」 
「ヴウゥアウ!」

 俺の命を聞き、ファングハイエナが訓練場からギルドまで突き進む。

「ジン君! 何て命令を!」
「そうだよ! 危険だ!」

 ルビスとギルスから、批難ひなんの声が上がる。

「言いたいことはよく分かる。だが、俺にできるのはこれしかない。今は一刻を争う」
「そ、そうだけど……」
「くっ……」

 二人にそう言って、ファングハイエナを見守った。

 そして結果として、地雷が無いことが判明する。

 どうやら地雷は、ボンバーが死亡すると消えるタイプだったようだ。

「そこの少年! 礼を言う! 皆の者! 怪我人を運ぶぞ!」

 そうして地雷の有無を確認できたことで、ギルドマスターと冒険者が行ってしまう。

 ギルドマスターも向かったのは、状況説明をスムーズに行うためだと思われる。

「どなたか、先ほどの説明をお願いします!」

 すると次にギルド職員がやって来て、説明を求めてきた。

「俺が行こう」

 そう言って前に出たのは、ボーボスである。

 どうやら、生き残っていたみたいだ。

 ボンバーに狙われたのは、おそらくBランク以上だったのだろう。

 なのでもうすぐBランクとはいえ、Cランクのボーボスはギリギリ狙われなかったのだと思われる。

 そうしてボーボスとそのパーティメンバーが、ギルド職員と共にいなくなった。

 また残った冒険者たちは、念のためギルドで待機することになる。

 これはもう、依頼の報告という場合ではなくなったな。

 まあ、これについては逆に助かる。

 あの時少しでも目立つのを避けるため、討伐計測の腕輪をつけっぱなしだった。

 つまり計測記録には、”エルフ 1”と記録されてしまったのである。

 これを見られる訳にはいかないので、隙を見て腕輪の核を破壊した。

 結果としてコボルト討伐の計測記録も消え去ったが、俺がボンバーを倒した事実に辿り着く経路を一つ潰せただろう。

 だが当然、後から依頼関係で悪影響が出ると思われる。

 壊れた腕輪を、弁償することになるかもしれない。

 全く、ついていないな。

 計測記録をリセットする方法が分からない以上、こうするしかなかった。

 破壊して記録が消えなかった場合は、さいあく紛失したと言い張るしかなかっただろう。

 ちなみに、召喚したファングハイエナは既に送還している。

 今は荒野の闇の面々と共に、ギルドの端で待機している感じだ。

 その時にファングハイエナに地雷原を歩かせたことを、怒られてしまった。

 まあファングハイエナが死亡しても生き返ることを知らない以上、それは仕方がないだろう。

 またボンバーを倒した溶岩の龍について、話題に上がる。

 それについては、当然知らない振りをした。

 俺がボンバーを倒したとは、知られる訳にはいかない。

 にしても、今回の作戦は大成功だった。

 あの溶岩の龍はもちろん、俺が召喚したバーニングライノスのスキルである。


 種族:バーニングライノス
 種族特性
【火地無属性適性】【火地属性耐性(大)】
【炎弾連射】【大噴火】【物理耐性(大)】
【チャージ】【ホーミング】【気配感知】


 ボンバーが現れた瞬間に、人が全くいない場所に召喚したのだ。

 そして、チャージを発動させていた訳である。

 もちろん周囲はアサシンクロウに警戒させて、護衛のモンスターも何匹か召喚していた。

 また同時に、レフにも命令を出している。

 一度カードに戻し、人気ひとけのない離れた場所へと再召喚したのだ。

 真剣な時であれば、レフもカードに戻ることは拒絶しない。

 加えてドリルモールも一匹召喚して、穴を掘らせた。

 その背には、縮小で更に小型化したレフを乗せてである。

 体が触れ合っていれば、隠密スキルは相手にもある程度の効果があるからだ。

 そうしてドリルモールに地面を掘らせ、訓練場の近くまでやってこさせる。

 後はバーニングライノスのチャージを待ちながら、俺を通してホーミングの対象にボンバーを選ばせた。

 これについては、オーバーレボリューションする前に肉を振る舞っている時、実は試していたのである。

 どうやらホーミングは座標が重要であり、目視はその次のようだ。

 なので鑑定とは違い、全感共有を通しても発動できた。

 これは、召喚転移と同じタイプなのだろう。

 なので手に入れたばかりのバーニングライノスに何ができるのか、簡単なことは知っていた。

 また俺を魔力タンク代わりに消費を増やして、バーニングライノスのチャージ速度をできる限り上昇させている。

 それでもかなりギリギリとなってしまい、多くの犠牲者を出してしまった。

 だが結果として作戦は上手く行き、レフのダークネスチェインも地中から上手く捕らえることに成功している。

 最初は力の発覚を回避するための作戦だったが、ボンバーに対してはとても有効だった。

 おそらく直接の戦闘になった場合、不利になったのは俺だ。

 あの神授スキルの攻撃速度は、半端ではない。

 また威力も高く、罠を張ることもできる。

 それに、あの身代わり人形というスキルだ。

 勝ったと確信した瞬間、致命的な反撃を受けていた可能性がある。

 今回の勝利は、運がよかったのかもしれない。

 それはそうと、ボンバーのエクストラは滅茶苦茶だったな。

 自分で選んだとは、到底思えないレパートリーだった。

 重装備不可という、明らかにデメリットしかないスキルもあったはずだ。

 バッタの友達や、ミルク生成というおかしなスキルも確認している。

 うーむ。

 もしかしてキャラクターメイキングの時、ランダムにエクストラなどを選ぶ事ができたのだろうか?

 俺の時は確認できなかったが、何らかの条件を満たすと現れたのかもしれない。

 でなければ、ボンバーが雑に選んだということになる。

 まさか、真剣に選んでアレだったことはないよな?

 これは既に倒してしまった以上、真相は闇の中だ。
 
 それとボンバー撃破後、今回の作戦で動いたモンスターは全てカードに戻している。

 だから当然レフもカードに戻ったわけだが、今も出せ出せと思念が送られてきている気がした。

 けれども今の状況で出すと、他の冒険者に目をつけられるかもしれない。

 こんな時に愛玩モンスターを出すとは何事かと、いらぬ反感を買う恐れがあった。

 ボンバーが死亡したとはいえ、現状の不安からピリついた雰囲気が漂っている。

 一度はボンバーの死亡で盛り上がったとはいえ、冷静になれば大変な事態になっているのに気づくだろう。

 他の自称ハイエルフが、次にいつ襲ってきてもおかしくはない。

 戦争も近いだろう。

 そんな中で、上位冒険者が軒並みやられてしまったのだ。

 いずれダークエルフの戦士たちがやって来るらしいが、それまで不安感は拭えないだろう。

 この村は現状、戦力が明らかに足りていない。

 もちろん冒険者以外にも戦力はあると思われるが、個としての戦力が不足しているのだ。

 それだけの優秀な強者が、ボンバーにやられてしまった。

 これは、よくない流れだな。

 ボンバーの襲撃だけで終わったと考えてしまうと、痛い目に遭いそうだ。

 俺がちょうど、そう思った時だった。

 
『転移者を殺害したことにより、20ポイント獲得しました』
『神授スキル【二重取り】が発動しました。追加で20ポイント獲得します』


「は?」

 唐突に、そんな声が再び脳内に響くのだった。

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