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第四章
127 ゲッコー車での移動 ②
しおりを挟むそれから道中、俺は情報収取のために荒野の闇の面々の話を聞く。
村の周囲はFランクモンスターがほとんどで、稀にEランクモンスターが出る程度らしい。
村の近くにあるダンジョンは全十五階層だが、三人は四階層までしか行ったことがないようだ。
また五階層目と十階層目には、守護者がいるらしい。
守護者を倒さないと、次の階層にはいけないようだ。
これまで挑んだダンジョンよりも、難易度が高そうである。
とても行ってみたい。
なので出現するモンスターについては、あえて訊かないことにした。
訊いたら、行くのを我慢するのが辛くなる。
そうしてゲッコー車がしばらく進んだ頃、気配感知が発動した。
購入したばかりの気配感知のネックレスが、さっそく役に立ったようだ。
すると同時に、ルビスが声を上げる。
「モンスターよ!」
その声を聞いて、出入り口側にいた冒険者が動き出す。
「まじか! 行くぞ!」
「ヒャッハー! 狩りの時間だぜ!」
「俺が一番だ!」
「戦いだぁ!」
彼らは好戦的な掛け声を上げて、ゲッコー車から飛び降りた。
「あっ! 私が先に気が付いたのに! 皆、行くわよ!」
「ね、姉さん待ってよ!」
「やれやれ、仕方ないな」
三人も飛び出したので、俺も続く。
ゲッコー車の御者も敵に気が付いたのか、動きが止まった。
そして外に出ると、既に他のゲッコー車に乗っていた冒険者たちが戦っている。
周囲は光球が浮かんでいるので、意外と明るい。
俺は三人と共に、他の冒険者が戦っていないモンスターへと向かう。
「ヴウウアウッ!」
そんな特徴的な鳴き声を出すモンスターは、ぱっと見ハイエナである。
茶色っぽい毛に、黒いブチが無数にあった。
また牙が長く、噛みつきには注意が必要そうだ。
とりあえず俺は、視界に入ったことで鑑定を飛ばす。
種族:ファングハイエナ
種族特性
【咢強化(中)】【集団行動】
【悪食】【夜目】
集団での戦いを得意としているようだが、俺たちの前にいるのは一匹だ。
「Eランクのファングハイエナだよ! 咢強化(中)があるから気をつけて!」
するとギルスがそう言って、注意を促す。
どうやらギルスは、鑑定のスキルを持っているみたいだ。
「こっちを見ろぉ!」
続いて盾と槍を持ったダンリが、声を上げる。
「ヴヴヴアぁ!」
ファングハイエナは、その声に反応して襲い掛かった。
おそらく、挑発系のスキルを使ったと思われる。
そしてダンリは、ファングハイエナの攻撃に耐えきった。
一瞬盾が光ったので、何かスキルを使っているのだろう。
「スラッシュ!」
「アロー!」
「ギャイィンッ!」
更にそこへルビスがスラッシュを放ち、ギルスが弓スキルであるアローを放った。
それにより、ファングハイエナが倒れる。
良い連携だ。俺が攻撃する必要は既になさそうだな。
だが、ファングハイエナは他にもいる。
現に二匹のファングハイエナが、こちらに向かって来ていた。
ここは、俺も力を見せた方がいいな。
「いでよ。トーン!」
「……!」
そう思い、俺はトーンを召喚した。
種族:トーン(トレント)
種族特性
【自然治癒力上昇(中)】【硬化】
【エナジードレイン】【身体操作上昇(小)】
スキル
【樹液生成】【再生】
「ヴウウ!」
「ヴアウッ!」
ファングハイエナは、突然現れたトーンに臆せずに襲い掛かる。
トーンは硬化を使うが、噛みつかれた部位に牙が突き刺さった。
だがそれで倒れるトーンではなく、逆に根で二匹のファングハイエナを捕まえる。
そしてエナジードレインを発動させて、生命力を吸い取っていく。
「ギャゥウ!」
「ヴヴギャ!」
ファングハイエナは逃れようと藻掻くが、抜け出すことができない。
エナジードレインで倒そうとすれば時間がかかるし、直接処理するか。
俺はそう考えると、剣を抜いてファングハイエナの首を両断した。
当然二匹のファングハイエナは、息絶える。
カード化したいところだが、それは我慢するしかないな。
「流石Dランク! ジン君強いわね!」
「凄い、トレントだよ! エルフの領域にしかいないモンスターだ!」
「耐久力も高そうだな。それにファングハイエナの牙の痕が、もう塞がっているぞ!」
すると三人が戦いを見ていたようで、好奇心と驚きの声を上げる。
やはりこの国にいるモンスターであれば、召喚してもそこまで怪しまれない。
エルフの森にいたことは既に話しているので、俺がトレントであるトーンを使役していても問題ないという訳だ。
「コイツはトーン。タンクとして優秀だ。けれども見た目通り動きは鈍いし、攻撃手段もあまりない感じだ」
「なるほど。タンクとして頼りになるわね」
「トレントは確か意思が薄いから心を通わせづらく、使役するのが難しいと聞いたことがあるけど、それを使役しているなんて凄いよ!」
「優秀なタンクか。汎用性では、負けてないはず……」
二人には好印象であるが、盾を使うダンリは若干危機感があるみたいだ。
それとギルスは思ったよりも、モンスターへの知識が豊富だった。
使役系スキルを所持しているように見えないが、その知識はどこから来ているのであろうか?
これは下手にこの国にいないモンスターを召喚したら、怪しまれるかもしれない。
そんなことを思いながら周囲を見渡すと、既にファングハイエナの群れは全て討伐されたようだった。
何人かの冒険者がトーンを警戒しているため、送還に見せかけて消しておく。
勘違いして、攻撃してくる冒険者がいないとも限らない。
それからファングハイエナの解体をして、必要な部位だけを持っていく。
超級生活魔法の解体は、流石に今使う事はできない。
周囲を見れば、牙と魔石だけ取り出している者がほとんどのようだ。
またアイテムバッグを持っている者は、毛皮や肉なども持っていくみたいである。
ルビスはアイテムポケットのスキルを持っているので、同様に毛皮や肉なども集めていた。
俺もアイテムポケットのスキルを使えることになっているので、同じように解体して収納しておく。
そしてファングハイエナの襲撃を無事に乗り切ったので、俺たちはゲッコー車に戻る。
ちなみにゲッコー車は、周囲の景色と同化して透明になっていた。
加えて隠密系スキルも発動しているのか、気配も薄い。
これならモンスターと戦っている間に、ゲッコー車が襲われる可能性は低いだろう。
意外と優秀なモンスターだ。
鑑定してみたいところだが、鑑定すると使役している者にそのことがバレる。
それはオブール王国で俺も体験済みなので、間違いない。
なので、安易な鑑定は控える。
いずれアサシンクロウに探させて、カード化するときに確かめよう。
そして再び、ゲッコー車が動き出すのだった。
◆
夜も更けると、冒険者内で夜番を行う。
ゲッコー車には、三パーティ合計十二人乗っている。
なので各パーティ一人ずつ出し、出入口付近に移動した。
順番は四人で話し合い、俺の番は最後になる。
なおデミゴッドである俺は、数日徹夜しても問題はない。
それもあり、寝たふりをして警戒をするつもりだ。
同時に、アサシンクロウと意識を繋げて偵察を行う。
アサシンクロウはナイトビジョンのスキルが使えるので、夜中でも周囲がよく見えるのだ。
それはそうと、皆ゲッコー車の中で慣れたように眠っている。
座りながら器用に眠っており、ずり落ちることはない。
しかしそれもそのはずであり、ゲッコー車にはシートベルトのような紐があった。
当初は安全のためかと思っていたが、寝る時に身体を多少なりとも固定するためのようである。
通りで、出発時に誰もつけないはずだ。
それとゲッコー車だが、先ほどよりも速度が上昇している。
深夜の方が、ナイトゲッコーは元気のようだ。
同時に揺れも少し激しくなるが、冒険者たちはそれくらい許容範囲なのだろう。
また御者は安全なルートを選んだのか、モンスターの襲撃もない。
アサシンクロウで周囲を見る限り、いるのはEランク以下のモンスターばかりだ。
Dランクのナイトゲッコーを警戒して、近づいてこなかった。
ちなみに、御者は徹夜でゲッコー車を走らせているみたいである。
確かナイトゲッコーは昼間動かないらしいので、その時に睡眠をとるのだろう。
同時に昼間は、俺たちも暇になると思われる。
そう考えると確かに、ナイトゲッコーが夜行性というのは唯一の欠点だな。
あと暇と言えば、寝たふりをしている今もそうだ。
ならちょうど良さそうだし、アレを試してみよう。
俺はそう考えると、さっそく行動に移すのだった。
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