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第二章
058 領主邸での模擬戦 ②
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レフが駆ける。
同時に周囲には闇の鎖が現れ、ロックゴーレムへと向っていく。
あれはおそらく、ダークネスチェインという種族特性のスキルか。
「ロック九番だ!」
「グゴゴ」
すると相手も石の弾丸を無数に作り出し、放ってきた。
狙いはレフの生み出した、闇の鎖だ。
けれども不思議なことに、闇の鎖はそれをするりと避けていく。
どうやらあの鎖は、かなり繊細な動きができるようである。
「グオウ!」
「グゴ」
そうしてレフの生み出した鎖が先にロックゴーレムに辿り着き、相手を束縛してしまう。
ロックゴーレムは当然もがくが、闇の鎖から抜け出すことができない。
これで動きは封じたが、ここからどうするかだな。
ロックゴーレムは、見るからに耐久力が高い。
それを突破するには、並大抵の威力ではダメだろう。
レフもそれを理解しているのか、次の行動に出る。
「グルオウ!」
そうか。レフにはそれがあったな。
レフが発動したのは、シャドーアーマー。
俺と同様に漆黒の全身鎧が、レフを包む。
その姿はまるで、SF作品に出てくるような獣型の機械にも見える。
所々に赤い線の入った漆黒の全身鎧を纏う四足獣は、そういう兵器だと言われても違和感はない。
俺の戦いを見ていたレフなら、こうするのは当然だな。
するとレフは右前足にシャドーネイルを生やし、魔力を集めていく。
「っ!? ロック! 全力で二番だ!」
「ゴゴゴ」
ディーバも異変を感じたのか、急いで命令を下す。
それにより、ロックゴーレムの全身の色が濃くなった
おそらく、何かスキルを発動したのだろう。
だが、それで耐えられるのか?
俺がそう思った瞬間、レフが跳躍する。
そして魔力を込めた一撃を、ロックゴーレムへと叩きこんだ。
「グルオゥ!」
「ゴゴゴッ!?」
それは一瞬の拮抗を見せたが、レフの一撃が一気に押し込まれていく。
これは、凄いな。
「嘘だろ……」
俺とディーバが見たのは、ロックゴーレムが砕け散る光景だった。
「グオウ!」
地面に着地したレフが、勝利の雄たけびを上げる。
今の一撃は流石としか言いようがないが、これは果たしてどうしたものか……。
しかしレフとは対照的に、俺は少々頭を悩ませた。
なぜならレフの周囲には、ロックゴーレムの残骸が散らばっているからだ。
「ロ、ロック!」
ディーバも慌てて、残骸へと向かう。
これはもしかすると、ロックゴーレムを殺してしまったのかもしれない。
かなり不味いことになった。
俺は少々焦りながらも、ディーバへと近付く。
「よ、よかった。核は無事だ」
「核?」
するとディーバが残骸の中から、一つの赤い宝石のようなものを取り出した。
「ああ、ロックゴーレムは核さえ無事なら、再生して元に戻ることができるんだ」
「そ、そうか。それは良かった」
どうやら、死んではいないらしい。
本当によかった。
「よければ、ロックの体を集めるのを手伝ってもらってもいいか?」
「あ、ああ。もちろんだ」
ディーバにそう言われ、俺は周囲の残骸を一か所に集めるのを手伝った。
この試合を見守っていた他の兵士たちも、手伝ってくれる。
そうして一か所に集まった残骸にディーバが核を置き、魔力を送り始めた。
すると少しずつ残骸が動き始め、核を中心に集まっていく。
最後は元の姿へと戻り、無事にロックゴーレムは復活を果たした。
「ふぅ、これでもう大丈夫だ。まさかBランクの下位とはいえ、ロックが負けるとは思わなかったぞ」
どうやらロックゴーレムは、Bランクの中でも弱い方らしい。
おそらくCランクの上位と、いい勝負なのだろう。
「君凄いな!」
「まさか兵士長に勝つとは!」
「噂は本当だったんだな!」
するとこれまで様子を見守っていた兵士たちが、そう言って俺を称えてくれた。
ディーバに勝ったことは、それほどまでに凄いことらしい。
「これでも俺は以前までAランク冒険者で、あのダンジョンも攻略したことがあるんだぜ?」
「そうだったのか」
俺が勝利したことへの実感が薄そうだと思ったのか、ディーバは自慢するようにそう言った。
なるほど。だからこれほどまでに強かったのか。
「このハパンナの街じゃ、俺は五本の指に入るモンスター使いだ。過去には王都の本戦にも出場したことがある。その俺に勝ったジン君の実力は、本物と認めざるを得ないという訳だ」
この街で五本の指に入るのか。流石はハパンナ子爵に仕えている兵士長というところだろう。
いや、逆にそれほどの実力を持っているのに、兵士長という事に驚愕だ。
それについて訊いてみると、どうやら兵士長に収まっているのはディーバの意志らしい。
「兵士長は本当は騎士に推薦されていたのに、それを蹴った変わり者だからな」
「騎士になっていれば、小さな町の一つでも任せられていたかもしれないのに、もったいない」
「それか、南部騎士団に所属できたかもしれないのにな」
どうやらディーバは、騎士になるのを自ら拒んだようだ。
「俺はそんな重荷を背負いたくないだけだ。金は冒険者時代に稼いだし、都会で愛する妻と息子と平凡に暮らせればそれでいい」
加えて出世などには興味がなく、今の安定した生活を気に入っているらしい。
これも、一つの生き方だろう。
その後は兵士たちに色々と質問攻めにされながらも、何とかやり過ごす。
特にレフについての質問が多く、途中でディーバが止めに入ったほどである。
どうやら兵士の大部分はテイマーやサモナーらしいので、希少で強いモンスターには目がないのだろう。
その気持ちは凄く分かるのだが、どこで見つけたかという質問に対して、俺が答えられるはずがない。
レフはフュージョンの結果進化したので、新種という可能性もある。
また俺とは対照的に、ディーバは意外にもロックゴーレムについて簡単に教えてくれた。
ロックゴーレムは、北部にあるダガルマウンテンという山に住み着いているらしい。
冒険者時代に仲間たちと協力して、何とか従えたとのこと。
元々意思自体の薄いロックゴーレムを認めさせるのは、並大抵のことではないようだ。
認めさせようとしても、まず反応が返ってこないことがほとんどらしい。
必要なのは根気と、ロックゴーレムの核を壊さない程度に刺激することが重要だという。
そんな貴重な情報を教えてくれたが、兵士曰くディーバは酔うとその時の自慢をよくするみたいである。
つまりロックゴーレムについては、そもそも秘密でも何でもないようだった。
ちなみにモンスターバトルの二番目に出てきた大蛇は、ジャイアントサーペントというらしい。
Cランクの下位で、西部のリジャンシャン樹海で手に入れたとのこと。
ディーバは冒険者時代、仲間たちと共に様々な場所を巡っていたようだ。
それとダンジョンではモンスターと契約しなかったのかと訊くと、面白いことを訊けた。
どうやらダンジョン外のモンスターの方が契約しやすいようで、更には種族特性とは違うスキルを覚えている事が稀にあるという。
これはダンジョンに出現するモンスターは基本的に生まれたてであり、またダンジョンから多少の干渉があるためだと思われる。
対してダンジョン外のモンスターは長い間生存していたり、自然出産で誕生した個体もいるようだ。
そうした自然出産で生まれた個体が、ユニーク個体へと稀になるらしい。
俺のホブンも、そのユニーク個体だと思われたようだ。
ちなみにそのユニーク個体が、本来そのモンスターが覚えているはずのないスキルを所持している可能性が高いようである。
これまではダンジョンばかりでモンスターをカード化していたが、ダンジョン外でもモンスターを探してみるべきだな。
思えば、一度鑑定したら他の個体を鑑定したことはなかった。
後でダンジョン外のモンスター、区別するために自然種と呼ぼう。自然種だったカードを確かめることにする。
もしかしたら、面白いスキルを覚えている個体がいるかもしれない。
それからディーバや兵士たちとしばらく話をした後、俺は近くに控えていたセヴァンに部屋へと戻る事を告げた。
あとは二次予選までの余裕がまだまだあるし、何かその間にできる事を考えよう。
俺は今後の予定について頭を悩ませながら、与えられた客室に戻るのだった。
同時に周囲には闇の鎖が現れ、ロックゴーレムへと向っていく。
あれはおそらく、ダークネスチェインという種族特性のスキルか。
「ロック九番だ!」
「グゴゴ」
すると相手も石の弾丸を無数に作り出し、放ってきた。
狙いはレフの生み出した、闇の鎖だ。
けれども不思議なことに、闇の鎖はそれをするりと避けていく。
どうやらあの鎖は、かなり繊細な動きができるようである。
「グオウ!」
「グゴ」
そうしてレフの生み出した鎖が先にロックゴーレムに辿り着き、相手を束縛してしまう。
ロックゴーレムは当然もがくが、闇の鎖から抜け出すことができない。
これで動きは封じたが、ここからどうするかだな。
ロックゴーレムは、見るからに耐久力が高い。
それを突破するには、並大抵の威力ではダメだろう。
レフもそれを理解しているのか、次の行動に出る。
「グルオウ!」
そうか。レフにはそれがあったな。
レフが発動したのは、シャドーアーマー。
俺と同様に漆黒の全身鎧が、レフを包む。
その姿はまるで、SF作品に出てくるような獣型の機械にも見える。
所々に赤い線の入った漆黒の全身鎧を纏う四足獣は、そういう兵器だと言われても違和感はない。
俺の戦いを見ていたレフなら、こうするのは当然だな。
するとレフは右前足にシャドーネイルを生やし、魔力を集めていく。
「っ!? ロック! 全力で二番だ!」
「ゴゴゴ」
ディーバも異変を感じたのか、急いで命令を下す。
それにより、ロックゴーレムの全身の色が濃くなった
おそらく、何かスキルを発動したのだろう。
だが、それで耐えられるのか?
俺がそう思った瞬間、レフが跳躍する。
そして魔力を込めた一撃を、ロックゴーレムへと叩きこんだ。
「グルオゥ!」
「ゴゴゴッ!?」
それは一瞬の拮抗を見せたが、レフの一撃が一気に押し込まれていく。
これは、凄いな。
「嘘だろ……」
俺とディーバが見たのは、ロックゴーレムが砕け散る光景だった。
「グオウ!」
地面に着地したレフが、勝利の雄たけびを上げる。
今の一撃は流石としか言いようがないが、これは果たしてどうしたものか……。
しかしレフとは対照的に、俺は少々頭を悩ませた。
なぜならレフの周囲には、ロックゴーレムの残骸が散らばっているからだ。
「ロ、ロック!」
ディーバも慌てて、残骸へと向かう。
これはもしかすると、ロックゴーレムを殺してしまったのかもしれない。
かなり不味いことになった。
俺は少々焦りながらも、ディーバへと近付く。
「よ、よかった。核は無事だ」
「核?」
するとディーバが残骸の中から、一つの赤い宝石のようなものを取り出した。
「ああ、ロックゴーレムは核さえ無事なら、再生して元に戻ることができるんだ」
「そ、そうか。それは良かった」
どうやら、死んではいないらしい。
本当によかった。
「よければ、ロックの体を集めるのを手伝ってもらってもいいか?」
「あ、ああ。もちろんだ」
ディーバにそう言われ、俺は周囲の残骸を一か所に集めるのを手伝った。
この試合を見守っていた他の兵士たちも、手伝ってくれる。
そうして一か所に集まった残骸にディーバが核を置き、魔力を送り始めた。
すると少しずつ残骸が動き始め、核を中心に集まっていく。
最後は元の姿へと戻り、無事にロックゴーレムは復活を果たした。
「ふぅ、これでもう大丈夫だ。まさかBランクの下位とはいえ、ロックが負けるとは思わなかったぞ」
どうやらロックゴーレムは、Bランクの中でも弱い方らしい。
おそらくCランクの上位と、いい勝負なのだろう。
「君凄いな!」
「まさか兵士長に勝つとは!」
「噂は本当だったんだな!」
するとこれまで様子を見守っていた兵士たちが、そう言って俺を称えてくれた。
ディーバに勝ったことは、それほどまでに凄いことらしい。
「これでも俺は以前までAランク冒険者で、あのダンジョンも攻略したことがあるんだぜ?」
「そうだったのか」
俺が勝利したことへの実感が薄そうだと思ったのか、ディーバは自慢するようにそう言った。
なるほど。だからこれほどまでに強かったのか。
「このハパンナの街じゃ、俺は五本の指に入るモンスター使いだ。過去には王都の本戦にも出場したことがある。その俺に勝ったジン君の実力は、本物と認めざるを得ないという訳だ」
この街で五本の指に入るのか。流石はハパンナ子爵に仕えている兵士長というところだろう。
いや、逆にそれほどの実力を持っているのに、兵士長という事に驚愕だ。
それについて訊いてみると、どうやら兵士長に収まっているのはディーバの意志らしい。
「兵士長は本当は騎士に推薦されていたのに、それを蹴った変わり者だからな」
「騎士になっていれば、小さな町の一つでも任せられていたかもしれないのに、もったいない」
「それか、南部騎士団に所属できたかもしれないのにな」
どうやらディーバは、騎士になるのを自ら拒んだようだ。
「俺はそんな重荷を背負いたくないだけだ。金は冒険者時代に稼いだし、都会で愛する妻と息子と平凡に暮らせればそれでいい」
加えて出世などには興味がなく、今の安定した生活を気に入っているらしい。
これも、一つの生き方だろう。
その後は兵士たちに色々と質問攻めにされながらも、何とかやり過ごす。
特にレフについての質問が多く、途中でディーバが止めに入ったほどである。
どうやら兵士の大部分はテイマーやサモナーらしいので、希少で強いモンスターには目がないのだろう。
その気持ちは凄く分かるのだが、どこで見つけたかという質問に対して、俺が答えられるはずがない。
レフはフュージョンの結果進化したので、新種という可能性もある。
また俺とは対照的に、ディーバは意外にもロックゴーレムについて簡単に教えてくれた。
ロックゴーレムは、北部にあるダガルマウンテンという山に住み着いているらしい。
冒険者時代に仲間たちと協力して、何とか従えたとのこと。
元々意思自体の薄いロックゴーレムを認めさせるのは、並大抵のことではないようだ。
認めさせようとしても、まず反応が返ってこないことがほとんどらしい。
必要なのは根気と、ロックゴーレムの核を壊さない程度に刺激することが重要だという。
そんな貴重な情報を教えてくれたが、兵士曰くディーバは酔うとその時の自慢をよくするみたいである。
つまりロックゴーレムについては、そもそも秘密でも何でもないようだった。
ちなみにモンスターバトルの二番目に出てきた大蛇は、ジャイアントサーペントというらしい。
Cランクの下位で、西部のリジャンシャン樹海で手に入れたとのこと。
ディーバは冒険者時代、仲間たちと共に様々な場所を巡っていたようだ。
それとダンジョンではモンスターと契約しなかったのかと訊くと、面白いことを訊けた。
どうやらダンジョン外のモンスターの方が契約しやすいようで、更には種族特性とは違うスキルを覚えている事が稀にあるという。
これはダンジョンに出現するモンスターは基本的に生まれたてであり、またダンジョンから多少の干渉があるためだと思われる。
対してダンジョン外のモンスターは長い間生存していたり、自然出産で誕生した個体もいるようだ。
そうした自然出産で生まれた個体が、ユニーク個体へと稀になるらしい。
俺のホブンも、そのユニーク個体だと思われたようだ。
ちなみにそのユニーク個体が、本来そのモンスターが覚えているはずのないスキルを所持している可能性が高いようである。
これまではダンジョンばかりでモンスターをカード化していたが、ダンジョン外でもモンスターを探してみるべきだな。
思えば、一度鑑定したら他の個体を鑑定したことはなかった。
後でダンジョン外のモンスター、区別するために自然種と呼ぼう。自然種だったカードを確かめることにする。
もしかしたら、面白いスキルを覚えている個体がいるかもしれない。
それからディーバや兵士たちとしばらく話をした後、俺は近くに控えていたセヴァンに部屋へと戻る事を告げた。
あとは二次予選までの余裕がまだまだあるし、何かその間にできる事を考えよう。
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