倒したモンスターをカード化!~二重取りスキルで報酬倍増! デミゴッドが行く異世界旅~

乃神レンガ

文字の大きさ
上 下
58 / 320
第二章

057 領主邸での模擬戦 ①

しおりを挟む
 客室の一つを与えられた俺は、そこでさっそくレフに縮小のスキルオーブを使用する。

 するとレフは縮小により、まるで毛長黒猫のように小さくなった。

「にゃん!」

 そしてレフはそんな鳴き声を上げながら、俺の足に体を擦りつける。

 加えてレフから抱き上げてほしいという思念が伝わったので、俺はレフを両手で抱えた。

「にゃにゃ!」

 レフはそれが嬉しかったようで、俺の顔をペロペロと舐める。

 そんな俺の元に、訪問者がやってきた。

「ジン様、グレートキャタピラーの件につきまして、お話に参りました」

 そう言って現れたのはセヴァンであり、どうやら冒険者ギルドへと話を通し終えたらしい。

 またグレートキャタピラーの巨体を保存するため、現在場所を用意しているとのこと。

 二日後くらいに、俺がその場所に納品すればいいらしい。

 あとは時間があれば、兵士長とモンスターバトルの模擬戦をしてほしいみたいだ。

 俺もちょうど暇を持て余していたので、それに同意して今から案内してもらう。

 ちなみにレフはカードには戻らず、そのまま俺について行くらしい。

 そうしてやってきた場所は、先ほどグレートキャタピラーを出した練習場である。

 見物なのか、多くの兵士たちが待っていた。

「君がジン君か。俺はここで兵士長をしているディーバだ。君の噂は既に聞いているぜ。それでダンジョン踏破者の実力を是非見たくなってな。どうか俺とモンスターバトルをしてほしい」

 そう口にするのは、ディーバと名乗る三十代後半の男性。

 俺とモンスターバトルをしたいようであり、もちろんここにはそのために来たので了承する。

「わかった」
「よし、それじゃあさっそくやるか!」

 するとディーバは年齢に見合わず嬉しそうな笑みを浮かべて、専用の場所に移動する。

 練習場には、モンスターバトルをする為のスペースが用意されているようだ。

 おそらくこの試合は、俺の実力を確認することが本来の目的だろうな。

 だがまあ、タヌゥカの時のこともあるし、実力は早めに見せておいた方がいいだろう。

 指定位置に俺が立つと、ディーバが簡単なルールを説明し始める。

「ルールは一対一の三回勝負だ。動けなくなるか降参したら負けとなる。何か質問はあるか?」
「別にない。いつでも始めてくれ」

 どうやら勝ち抜き戦ではなく、三匹のモンスターでそれぞれ勝つ必要があるみたいだ。
 
「それじゃあ、まずはこいつからから行くぞ」

 そう言ってディーバは、オークを召喚した。

 ディーバはサモナーなのか。それにあのオーク、かなり鍛えられているな。

 加えて全身に鎧を身に纏い、手には槍と盾を装備している。

 これは強敵だ。

 それにおそらく、オークを出したのは様子見だろう。

 これ以上に強いモンスターが、控えているに違いない。

 出すとしても、同じオークでは負ける可能性がある。

 であるならば、ここはあいつを出そう。

「いでよ、ハイオーク」

 俺が繰り出したのは、ハイオーク。

「うおっ!? ハイオークか!? よく使役できたな! もしかして、あのモンスターハウスのハイオークなのか?」
「あのモンスターハウスがどこを指しているのか分からないが、ハパンナダンジョンの五階層目にいたやつだ」
「おいおい、俺が言ったのはそこだよ。こりゃ、凄い奴が現れたな。だが見たところ使役したばかりで、鍛えてはいないみたいだな。それなら、俺の方に分があるぜ」

 するとディーバは、オークに命令を出す。

「ロルゴ、三番だ」
「ぶひ!」

 たったそれだけの命令で、オークが動き出した。

 なるほど。番号で事前に命令を決めているのか。

 オークは盾を前に出しながら、少しずつ近寄ってくる。

 このまま闇雲に戦ったら、ハイオークの方が負けるかもしれないな。

 なら、ここは面白いことを試してみよう。

 実験無しのぶっつけ本番だが、やってみる価値はある。

 俺はまずハイオークに全感共有を発動した後、以心伝心+で心を通じ合わせた。

 更にカード召喚術や軍団行動、軍団指揮などで情報共有や意思疎通を補助していく。

 ”お前の全てを俺にゆだねろ”

 そしてそのように命じると、ハイオークの体がまるで俺の体のように動かせるようになっていく。

 ハイオークの全ての感覚を共有し、僅かな時間差もなく命令を下す。

 それによって、ハイオークは完全に俺の傀儡くぐつと化した。

 よし、行くぞ。

 そうしてハイオーク、いや俺はパワーアップを発動して能力を上昇させる。

「ロルゴ、二番だ!」

 するとそれを見て、ディーバが命令を下した。
 
 どうやら、守りを固める命令のようだ。

 俺は棍棒を手に持ち、振り上げる。
 
 対してオークは、盾の側面から槍を繰り出してきた。

 しかし、それが俺の狙いだ。

 その瞬間槍の軌道から僅かに回避すると、槍を脇へと挟む。

「ぶぎ!?」

 オークはそれに驚愕して引き抜こうとするが、全く抜ける様子がない。

 俺はその隙を見て棍棒を槍に振り下ろし、叩き折る。

 反動でオークがたたらを踏むのに対し、俺は続けてタックルをかます。

「ぶぎゃっ!?」

 オークはそれを盾で防ぎきれず、勢いのまま尻もちをつく。

 そうなれば、もう勝負は決まったも同然だ。

 棍棒をオークの脳天に振り下ろそうとしたその時――。

「まいった。ロルゴの負けだ」

 ディーバがオークの敗北を宣言した。

 ふぅ、これは結構疲れるな。

 それにハイオークの闘争本能に、少し影響を受けた気がする。

 ディーバが止めていなければ、あのオークを殺していたかもしれない。

「まさか思念だけで完全に命令を下せるとは、こりゃレベルがちげえな」

 そう言って頭をかくディーバに対して、俺は落ちている折れた槍を生活魔法の修理で直してから、ディーバへと返す。

「折って悪かったな。これは返しておく」
「おおっ、修復まで出来るのか。すげえな。あんがとよ」

 ディーバは俺にお礼を言うと、オークに槍を渡して送還する。

 俺も元の位置に戻り、ハイオークを戻した。

 さて、次は何が出てくる? いや、ここは俺から出すべきか。

 一戦目はディーバがモンスターを先に出したので、次は俺が出す番だ。

 下手に弱いのを出すと負けるかもしれないし、コイツで行こう。

 俺が続いて繰り出したのは、安定した強さを持つホブンだ。

「ゴブア!!」

 グレートキャタピラー戦ではやられてしまったが、既に復活している。

「ホブゴブリンか。次は俺も格上を出そう。出てこい、サベス!」
「シャー!」

 するとディーバが次に出したのは、大蛇だった。

 言葉通りなら、ホブゴブリンの格上モンスターということになる。

「六番だ!」

 ディーバの命令で、大蛇が動き出した。

 捕まったら不味そうだな。よし、初回からでかいのを叩きこもう。

 とりあえず殺すわけにはいかないし、胴体を狙うことにする。

「ゴッブア!」

 俺の命令を受け、ホブンは大蛇の胴体に向ってスマッシュを横なぎに叩きこむ。

「ギャッシャ!?」

 すると一撃で大蛇はくの字に折れ曲がり、動かなくなった。

「……嘘だろ。何でホブゴブリンがスマッシュを使えるんだ? もしかしてユニーク個体か? それとも、希少な武器を持たせているのか? どちらにしても、普通じゃねえ……」

 ディーバはこの光景に対して、有り得ないものを見たように驚く。

 まあ普通のホブゴブリンに棍適性は無いし、そもそもホブンはダンジョンボスだ。

 基礎能力が全く違う。
 
「俺のホブンは少し特別なんだ」

 そう言ってサモナーのような送還に見せかけて、ホブンを消す。

「どうやら、単独でダンジョンを踏破したというのも、あながち嘘じゃなさそうだな」

 どうやらディーバは、そもそも俺がダンジョンを単独で踏破したことを信じていなかったらしい。

 モンスターがいるとはいえ、単独で踏破するのはやはり普通では無いようだ。

 これは疑われても、仕方がないだろう。

「それじゃあ、次は俺の一番強いモンスターを出す。だから、ジン君も相応のものを見せてくれ」

 そう言ってディーバが最後に繰り出したのは、四メートルはある岩の巨人。

「凄いな」

 俺は思わず、そう呟いた。

「こいつはロックゴーレムのロックだ。等級でいえばBランクになる」
「なるほど」

 今更だが、モンスターにはランクが存在している。

 下はFから始まり、E.D.C.B.A.S.SSと上がっていく。

 ちなみにオークはDランクであり、カード化したグリフォンがおそらく同じBランクだ。

 ただこのランクは野生の場合であり、テイマーやサモナーに育てられれば、当然ランク以上に強くなる。

 野生の格上モンスターを、テイマーが育てた格下モンスターが倒すことも可能という訳だ。

 つまりあのロックゴーレムは、野生のBランクよりも強い。

 ましてや、ディーバがあれほど自信を持って出したモンスターだ。

 そうとう力を入れて育てたのだろう。

 であれば、俺の手持ちで勝てるモンスターはあいつしかいない。

 俺がそう考えた時だった。

「にゃーん」
「レフ……」

 俺の足元でこれまでおとなしくしていたレフが、静かにそう鳴いた。

 理由は分かり切っている。

 レフは、自分が戦うと言っているのだ。

「よし、行ってこい」
「にゃん!」

 俺はレフを信じて、送り出した。

「おいおい、なんだその猫ちゃんは? もしかして俺を馬鹿に……え?」
「グルオウッ!」

 縮小が解除されて現れた黒毛の巨大獅子に、ディーバは言葉を失う。

「レフ、お前の新たな力を見せてくれ」

 そして、戦いが始まった。
しおりを挟む
感想 75

あなたにおすすめの小説

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜

夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。 不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。 その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。 彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。 異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!? *小説家になろうでも公開しております。

処理中です...