倒したモンスターをカード化!~二重取りスキルで報酬倍増! デミゴッドが行く異世界旅~

乃神レンガ

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第二章

035 自問自答の末に決めたこと

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 あれから俺は移動を続け、数日ほど野宿を繰り返した。

 村や町には、滞在していない。

 仮に追手がいた場合、それが俺の痕跡こんせきになってしまうからだ。

 幸い幸運の蝶の戦争用物資が大量にあるので、俺一人なら数か月くらいは余裕で野宿できる。

 ちなみにホワイトキングダイルの幻影は解除しており、案の定灰色になって使用できなくなった。

 数日経っても変化はなく、いつ戻るかは不明だ。

 そしてあの時手に入れたグリフォンのステータスは、驚くものだった。


 種族:グリフォン
 種族特性
【風属性適性】【風属性耐性(大)】
【高速飛行】【威圧】【鷹の目】
【身体能力上昇(中)】【自然治癒力上昇(中)】

 スキル★
【上級鑑定妨害】【以心伝心】【騎獣】
【ウィンド】【ウィンドカッター】
【トルネード】【気配感知】【縮小】
【精神耐性(小)】【状態異常耐性(小)】


 見ると分かる通り、かなりのスキルを習得している。

 おそらくあの男が、グリフォンにスキルオーブを使って覚えさせたのだろう。

 妙に攻撃数が多いと思ったが、このグリフォンも風属性魔法を使っていたようだ。

 それとスキルの横にある★は、推測だが容量限界に達したからだと思われる。

 これ以上スキルオーブを使用しても、この個体はもうスキルを習得できないだろう。

 初めて見たが、何を習得するか取捨選択する重要性をより理解させられる。

 このグリフォンのスキル構成は、かなり洗練されていると思う。

 あの男がどれだけこのグリフォンを大切にしていたのか、とてもよく伝わってくる。

 ゆえに何となくだが、このグリフォンをあまり使う気にはなれない。

 手に入れた当初は喜んだが、時間が経つにつれて冷めてきた。

 このような状況下で、なにを言っているのかと思うかもしれない。

 使える手は、何でも使うべきだろう。

 そう思っているのは、今も変わりない。

 だがどういう訳か、人が大事に育てたモンスターを使うのは何となく違うと思った。

 これは感情的な部分もあるが、直感的な部分が大きい。

 おそらくこのモンスターを使い続けても、将来性が低いと感じていた。

 カードを見ていると、それを強く感じるのである。

 エクストラの直感も、働いている気がした。

 それとこれは、カード召喚術にも何か関係があると思われる。

 これを使い続けることで、何かしらのデメリットがあるのだろう。

 今は分からないが、そのうち理由が分かる可能性がある。

 なのでその時まではこの直感を信じて、グリフォンはあまり使わないことにしよう。

 だがこのカードが強いことには変わりないので、窮地きゅうちの時は使用することにする。

 命をかけてまで、それは守ることではない。

 また他人のモンスターを奪うのも、今後は止めておく。

 上記の理由もあるが、自分で最強の軍団を作りたいというのもあった。

 他人が育てた強いモンスターを並べても、むなしいだけだろう。

 それに元々この力を得たのも偶然なのに、モンスターまで他人のものというのは、なんだか恰好が付かないというのもある。

 また自分の能力を研鑽けんさんして模索しなければ、いずれ取り返しのつかないことになりそうな気がした。

 ただ単に強いモンスターを用意するだけでは、いずれ足元をすくわれる。

 強いだけの存在など、転移者なら何人もいるだろう。

 またその転移者の神授スキルが、どこまで強力なのかは分からない。

 対抗するには、こちらも神授スキルを鍛える必要がある。

 デミゴッドという優位性はあるが、それを過信するのは危なかった。

 なのでその時に備えて、俺は強くならなければいけない。

 タヌゥカに不意を突かれて恩人を死なせたようなことは、二度と繰り返す訳にはいかなかった。

 であれば尚更、カード召喚術のポテンシャルを引き出す必要がある。

 だからこそ、他人の育てた強いだけのモンスターではダメなのだ。

 グリフォンに感じたことは、おそらくこれなのだろう。

 一見近道に思えるそれは、大きな落とし穴なのかもしれない。

 だから窮地には使っても、多用しない方が今後の為になる。

 何もかもが思い通りになるのは、都合が良すぎるということだろう。

 俺は数日間野宿を繰り返しながら、このことを自問自答の末に導き出した。

 現状の危うさを理解しつつも、強くなるためには必要なことなのである。

 だから、グリフォンは切り札の一枚程度に考えよう。

 また他にも、この数日間で困った事がある。

 それは、モンスターをカード化できないことだった。

 これはホワイトキングダイルの幻影を解除した時から、できなくなっている。

 おそらく幻影化はそのカードが使用不可になることに加えて、こうしたリスクもあったのだろう。

 ただ幸いにも、モンスターの召喚自体はできる。

 しかし召喚に必要な魔力量は、増えている気がした。

 幻影化はとても強力だったが、カード化ができなくデメリットは大きすぎる。

 またいつ再びカード化できるようになるかも、不明だった。

 何となく時間経過でどうにかなるとは思うが、少々不安である。

 現状幻影化は偶然できただけで発動方法は明確になっていないが、使う時は考えなければいけない。

 なのでそういうこともあり、この数日間俺のカードは一切増えていなかった。

 ただひたすらに、移動を続けている。

 それと男の亡骸は、使えるものを剥いだ後に埋めた。
 
 敵から物を剥ぐのは、普通に行う。

 といっても、男は碌なものを持っていなかった。

 この鎧は持っているだけで面倒になりそうだし、武器も家紋みたいなものが刻まれているので使えない。

 男の荷物は、僅かな金銭に水と食料だけ。

 おそらく、わざとだと思われる。

 唯一大丈夫だと思った装飾品も、一つ一つに名前などを彫る念の入りようだ。

 ここまでくると、物によっては何らかの方法で追跡できるのではないだろうか?

 この世界のことはまだ知らないことばかりだし、無理して持っていく必要はない。

 結局男からは、僅かな硬貨だけを頂いた。

 しかし盗賊などに持っていかれるのはしゃくなので、全て男と共に埋葬している。

 追跡できるのであれば、いずれ男の関係者が取りにくるだろう。

 そうでなければ、遥か未来で歴史的物品として出土されるかもしれない。

 あの男関連については、これで以上だ。

 他にも色々確認したいことはあるが、落ちついたところに着くまで我慢しよう。

 簡単に決めて、後で取り返しのつかない状況になったら困るしな。
 
 それから俺は国境門から離れ続け、北上していく。

 たまに東へと進み、少しずつ北東へ向った。

 現れるモンスターはラスターダ王国とは少し違い、とてもカード化したくなる。

 しかしできないものは仕方がないので、ぐっと我慢した。

 それとゴブリンとホーンラビットは、この国にもいるらしい。

 グレイウルフは、今のところ見ていなかった。

 代わりにファンタジーの代名詞であるスライムや、見ただけでゾッとする巨大な芋虫などがいる。

 このデメリットが解消されたら、カード化することを心に誓った。

 もちろん他にも多種多様なモンスターを見かけたが、基本は無視をしている。

 倒してもカード化できない以上、余計にくやしく思うからだ。

 そして森を越え、山を越え、川を越えると、巨大な砦が見えた。

 もしかして、この近くに別の国境門があるのだろうか?

 そう考えて、少しの間砦の様子を覗く。

 だが稀に商人の荷馬車の集団が通り過ぎるくらいで、冒険者の行き来はない。

 俺の知っている国境門付近の砦は、大量の冒険者が行き来していたんだけどな……。

 この先の国境門は、開く前兆などがないのだろうか?

 国によってルールが違うかもしれないし、何とも言えないな。

 だが待てよ、国境門の印象が強かったが、この先に別の国がある可能性はないだろうか。

 他の大陸が無いだけで、同じ大陸に複数の国ができる可能性はある。

 もしそうなら、是非通っておきたい。

 他の国に行ければ、逃げ切ったと判断してもいいだろう。

 そのためには、あの砦が国境の砦かどうか判断する必要がある。

「出てこい」
「「「キキィ」」」
「「「シュルル」」」

 俺は無数のスモールモンキーとグリーンスネークを召喚すると、見つからないように情報を得てくるよう命令を出した。

 俺のモンスターたちは、人の言葉が分かる。

 また軍団行動のスキルでそれなりの距離でも、意思疎通ができるはずだ。

 今後のことも考えて、ここで実践してみるべきだろう。

 そうして砦に向けて、スモールモンキーとグリーンスネーク達が向かっていく。

 問題は見つかったとき、俺のモンスターだと気が付かれる可能性だよな。
 
 おそらくスモールモンキーとグリーンスネークは、この周辺にはいないだろう。

 余計に目立つ。

 しかし俺の手持ちのカードで、砦への侵入に適したモンスターはあまりいない。

 ジャイアントバットもありだったのだが、砦はむしろ空中の方を気にしている気がする。

 砦の上には、何人もの兵士が見えた。

 なので今回は、地上から接近させる。

 するとしばらくして、モンスターから情報の思念が届く。

 なになに? 


 ”プリティクラブのミミンちゃんが最高” 
 ”給料が安すぎる。もっとギャンブルしてぇ”
 ”ドラゴルーラでまた侵略戦争だってよ。俺らの国も負けてらんねえな”
 ”おい、誰だ、俺の下着を盗んだ奴は! 気色悪い!”
 ”げへへ、あいつ、男のくせに顔が女みてぇで最高だ。今はこのブツで我慢しとくか”
 ”はぁ、俺の出世は終わった。こんな国境の砦とか、左遷されたようなものだ……”
 ”モンスターの面倒を見る係りは嫌なんだよなぁ……あっ! またゴブリンが他のモンスターと無理やり交尾してやがる! やめろ!!”
 ”モンスター無しのテイマーだからって馬鹿にしやがって! ゴブリンやホーンラビットで威張るんじゃねえよ!”
 ”ホーンラビットって、後ろ下アングルから見るとエロくね?”


 一部おかしな情報もあるが、知りたい内容は理解した。

 どうやら、あの砦は国境の砦らしい。

 そして、その先は別の国のようだ。

 強行突破しても良いが、国境門でそれをして少し失敗してしまった。

 今回は、久々にあれを使おう。

 俺は砦にいるモンスター達をカードに戻すと、静かに移動を開始した。

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