倒したモンスターをカード化!~二重取りスキルで報酬倍増! デミゴッドが行く異世界旅~

乃神レンガ

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第一章

008 キョウヘン村付近の森

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 翌日、俺は村の外の森にいた。

 冒険者ギルドで常備依頼をいくつか確認して、出てきた感じである。

 前衛には剣持ちゴブリン二匹、後衛には短剣持ちゴブリン二匹という隊列だ。

 ちなみにモンスターに何か装備させると、カードの絵にもそれが反映される。

 なので無数のゴブリンの中から、この四匹を見つけるのは簡単というわけだ。

 さて、そろそろゴブリン以外のモンスターカードがほしいところ。

 この森にはゴブリンはもちろんのこと、ホーンラビットやグレイウルフがいるらしい。

 特にグレイウルフは役に立ちそうなので、それなりの数を確保するつもりだ。

 しかしダンジョンとは違い、なかなかモンスターが見つからない。

 道中は周囲を警戒しつつ、生えている草花を鑑定している。


 名称:薬草
 説明
 僅かながら治癒能力を内包している。 
 ポーションなどの材料になる。


「みつけた」

 ギルドの依頼の一つに、薬草採取というものがある。

 形が分からなかったが、見本に押し花のようなものを見せてもらった。

 図鑑のようなものは、村のギルドには置いていないとのこと。

 そもそも冒険者の識字率が低く、依頼の掲示板を読み上げることを生業にしている者がいるほどらしい。

 そういえば、早朝に行ったら掲示板の近くに棒立ちの人物がいたし、それかもしれないな。

 あと早朝ギルドに行って気が付いたが、この村の冒険者の数はそこまで多くはなさそうだ。

 いるのは若者がほとんどで、初心者が多いイメージだった。

 どうやら実力のある者は、街に行くらしい。

 出戻りの冒険者は最低限生きるためにしか働かず、やる気がないとのこと。

 これは昨日、ベックに酒の席で聞いたことだ。

 それとベックたちは、あれでもこの村では優良株らしい。

 モンスターも弱く、元々ダンジョンも無かったことを考えると、こんなものなのだろう。

 そんなことを考えながら、俺は薬草を見つけては採取していく。

「きゅい!」
「ん?」

 すると、とうとつに角の生えた兎が現れる。

 おそらく、これがホーンラビットだろう。

 俺は反射的に、鑑定を行った。


 種族:ホーンラビット
 種族特性
【気配感知】【逃げ足】


 本来は相手の気配を先に感知して、見つかる前に逃げるのだろう。

 しかしモンスターのさがなのか、人に襲い掛かってきている。

 スキル構成と行動が一致していない、あわれなモンスターだ。

「ごぶ!」
「ごっぶ!」
「きゅいぃい!?」

 案の定、剣持ちゴブリンにやられてしまう。

 とりあえず、カード化するか。

 そして倒れたホーンラビットに右手を向けて、カード化する。

 気配感知は使えそうだが、そこまでの数はいらないかな。

 三枚くらいあればいいだろう。

 そう思いつつ、俺はさっそくホーンラビットを召喚してみる。

「きゅい!」
「ふむ」

 見た目は角の生えた白うさぎだ。

 グローブを外してストレージにしまい触ってみると、もふもふしている。

 カード化しておとなしくなると、愛玩動物にしか見えない。

「とりあえず、モンスターが近くにいるのに気が付いたら教えてくれ」
「きゅぃい!」

 俺の命令を理解したのか、ホーンラビットはそう鳴いて返事をする。

 隊列では俺の横を歩かせることにしよう。

 それからしばらく森の中を歩いていると、ゴブリンやホーンラビットを何度か見つける。

 ゴブリンは倒し、ホーンラビットは追加で二枚のカードを得た。

 それとホーンラビットの中には、こちらに気が付いて逃げる個体もいる。

 どうやら、全てが襲い掛かってくるわけではなさそうだ。

 臆病な個体や、勇敢な個体がいるのだろう。

 薬草もかなり集まったし、そろそろグレイウルフを見つけたい。

 俺はそのまま森の奥まで進み、何度か休憩を挟む。

 中級生活魔法の種火で火をつけて、道中に狩ったホーンラビットの肉を焼く。

 カード化したホーンラビットが近くにいるが、気にしない。

 ホーンラビットも、特に気にしていないようだ。

 ちなみにカード化したモンスターは、食事はできるがする必要がない。

 俺の魔力で動いており、空腹を感じないようだ。

 これからどんどん数が増えていく予定なので、食料問題を悩まずに済んでよかった。

 それとホーンラビットは討伐依頼ではなく、納品依頼となっている。

 角・毛皮・肉・魔石。ホーンラビットは、ゴブリンと比べて素材の宝庫だ。

 ゴブリンは魔石だけだし、ダンジョンが無くなってもそこまで問題になっていないのも頷ける。

 当初ダンジョンがなくなって冒険者ギルドで騒ぎになっていたようだが、利用価値が無かったからか一晩で落ち着いていた。

 ダンジョンのボスを倒すと宝箱が出ることを考慮しても、それ以外の赤字が許容できないのかもしれない。

 ゴブリンは素材としての旨味が無く、ダンジョン内に資源は無かった。

 ゴブリンから魔石が取れるとしても、所詮はゴブリン。

 加えて、森のモンスターからも魔石は取れる。

 他の町には、もっと簡単な初心者向けのダンジョンもあるらしい。

 結局あのゴブリンダンジョンを村が保持していても、いいことはないのだ。

 ……と、破壊した俺は思うことにしている。

 今のところ犯人探しはされていないが、この森での狩りを終えたら村を出ようと思う。

 俺は焼いたホーンラビットの肉に、持参した塩をかけて頬張る。

 不味くはないが、屋台のと比べると微妙だな。

 残りはストレージにしまい、火を消して先へと進む。

 道中、他の冒険者とは出会わない。

 村付近が、一番遭遇率が高いと思われる。

 しかし今は森の奥深くなので、当然出会うことは少ない。

 けれどもそれは、絶対ではなかった。

「た、助けてくれぇ!」
「ひぇっ!? ゴブリン!?」
「お、おわった!」
「やっぱり奥まで行くべきじゃなかったんだよ!」

 現れたのは、冒険者に成り立てと思われる少年少女。

 何かから逃げていたようだが、俺のゴブリンを見て足を止めてしまった。

 するとその背後から、数匹のモンスターが現れる。

「ガウッ!」
「グルルッ!」
「グウッ!」

 灰色の毛皮をした狼、あれがグレイウルフか。


 種族:グレイウルフ
 種族特性
【嗅覚向上(小)】【集団行動】

 
 鑑定してみると、思った通りグレイウルフだった。

 とりあえず、こいつらは邪魔だな。

「このゴブリンたちは俺のモンスターだ。ここはどうにかするから、そのまま走れ」

 俺がそう言うと、少年少女たちは一瞬戸惑うが、背後のグレイウルフに気が付いて再び駆けだした。

「ありがとうございます!」
「助かります!」
「ごめんなさい!」
「お礼はあとでします!」

 そして残されたのは、こちらを警戒して様子を見ていたグレイウルフたちである。

「きゅいきゅい!」

 すると横にいたホーンラビットが、周囲にもグレイウルフがいることを教えてくれた。

 カード化したモンスターの言葉自体は分からないが、何となく伝えたいことが分かる。

 それとグレイウルフの種族スキルには、集団行動というものがあった。

 あれはどうやら仲間との集団行動時に補正がかかり、情報共有などの意思疎通がしやすくなるらしい。

 個人的に、俺も欲しいスキルだ。

 とりあえず、目の前の三匹を仕留めよう。

「いくぞ!」
「ごぶっ!」
「ごぶぶ!」
「ごっぶ!」
「ごぶごぶ!」
「きゅい!」

 俺の掛け声とともに、ゴブリンたちが動き出す。

「ガルル!」
「ガウ!」
「グルル!」

 当然グレイウルフたちも臨戦体制であり、周囲のグレイウルフたちも動き出す。

 だが、それは想定の内だ。

 俺たちの背後から他のグレイウルフが迫る瞬間に、追加でゴブリンとホブゴブリンを召喚する。

「「「ゴブッ!」」」」

 なおホブゴブリンには、既に昨日借りた棍棒を返している。

 それと召喚時に命令を念じると、それに対応した行動を取ることに気が付いた。

 ホブゴブリンたちは、やって来たグレイウルフたちを迎え撃つ。

 そして俺も剣を抜いて、目の前のグレイウルフを斬り裂いた。

「ギャンッ!?」

 剣や短剣を持ったゴブリンたちも二対一に持ち込んで、勝利を収める。

「ゴッブ!」
「キャインッ!」

 背後を確認すれば、ホブゴブリンが無双していた。

 やはり、ダンジョンボスのエクストラを持つホブゴブリンは強い。

 それからは、消化試合だった。

 いかにして敵を逃がさないかに重点を置いて、戦う。

 ゴブリンが数匹やられたが、二十四時間後には復活するので気にしない。

 あと負傷などは、カードに戻すと少しずつ治っていく。

 重傷だと、やはり完治まで二十四時間近くかかるようだ。

 そうしてグレイウルフを仕留め、カード化していく。

「グレイウルフ、ゲットだ」

 手にしたグレイウルフカードは、合計十枚。

 ゴブリンと同じく三十枚欲しかったが、今回はこれで我慢しておく。

 続けてホブゴブリンたちをカードに戻すと、目の前から消す。

 これも気が付いたことだが、カードはストレージとは違う異空間にしまう事ができるみたいだった。

 ストレージだと時間が止まってしまうので、時間経過で回復する関係上、これはありがたい。

 そして手に入れたグレイウルフを、さっそく一匹召喚する。

「ガウッ!」

 現れたグレイウルフは大型犬ほどのサイズで、手触りがいい。

 撫でると嬉しそうに尻尾を振り、ペロペロと舐めてきた。

 一瞬ゴブリンを乗せて戦わせることが脳裏に浮かんだが、普通に別々で戦った方が強そうだ。

 そもそも、グレイウルフは騎乗に向いていないだろう。

 加えて、ゴブリンにそんな技術はない。

 さて、俺も村に戻るか。

 グレイウルフに先ほど助けた少年少女の臭いを追わせることで、帰り道は判明した。

 ちなみに、ホーンラビットは知らないうちにやられている。

 まあ、グレイウルフの嗅覚向上でモンスターの接近が分かるし、いなくてもいいか。

 そうして、俺たちはキョウヘンの村へと帰るのであった。
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